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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.01424
Gillon et al. (2017)
Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1
(近傍の超低温矮星 TRAPPIST-1 まわりの 7 つの温暖な惑星)
内側の 6 個の惑星はそれぞれ,軌道共鳴に近い状態に入っている.この軌道配置は,惑星が遠方で形成された後に内側に移動してきたことを示唆する.また 7 個の惑星は,表面に液体の水が存在できる程度に低い温度を持ちうる.
これまでの観測で,この恒星の周りには TRAPPIST-1b, c, d が検出されていたが,そのうちの TRAPPIST-1d はトランジットが 2 回しか検出されていなかった.
最初の発見論文の投稿後に,3 つの惑星が同時に TRAPPIST-1 をトランジットした特徴を光度曲線のデータ中に発見した.このことがさらなる観測へのモチベーションとなり,TRAPPIST-1d のトランジットを 6 回観測できると思われる期間の間,2016 年の 2月から 3月にかけてスピッツァー宇宙望遠鏡で観測を行った.また,フォローアップ観測は地上望遠鏡で 2016 年 5 月まで継続して行った.フォローアップ観測に用いたのは,チリにある TRAPPIST-South 望遠鏡,ハワイの 3.8 m UK InfrarRed Telescope (UKIRT),La Palma にある 4 m ウィリアム・ハーシェル望遠鏡,2 m Liverpool 望遠鏡,南アフリカ天文台の 1.0 m 望遠鏡である.
2016/9/19 以前に得られた光度曲線から,先の発見論文で報告した TRAPPIST-1d の軌道周期の候補 11 個の可能性を排除した.このことは,観測されていた 2 回のトランジットは異なる天体によって起こされていたことを示唆する.
また,単一周期でのトランジットとは結びつかない,いくつかのトランジットシグナルを検出した.これらのトランジットシグナルから,周期が 4.04日,6.06日,8.1日と 12.3日のものを同定した.これはそれぞれ,今回発見された TRAPPIST-1d, TRAPPIST-1e, TRAPPIST-1f と TRAPPIST-1g に対応するものである.
さらに,スピッツァー宇宙望遠鏡の測光観測から,は0.35%のトランジット深さ,トランジット継続時間が 75 分の孤立したトランジットシグナルも検出された.これは,最も外側にある,軌道周期が不明な 7 番目の惑星 TRAPPIST-1h によるものと解釈される.
地上観測データから TRAPPIST-1h の 2 回目のトランジットを探したが,明確なシグナルは発見できなかった.
またトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) での各惑星の質量の推定も行った.
光度:V = 18.8
距離:12.1 pc (39.5 光年)
質量:0.0802 太陽質量
半径:0.117 太陽半径
平均密度:50.7 太陽密度
光度:0.000524 太陽光度
有効温度:2559 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
軌道長半径:0.01111 AU
日射量:地球の日射量の 4.25 倍
平衡温度:400.1 K
半径:1.086 ± 0.035 地球半径
質量:0.85 ± 0.72 地球質量
平均密度:0.66 ± 0.56 地球密度
トランジット観測回数:37 回
軌道長半径:0.01521 AU
日射量:地球の日射量の 2.27 倍
平衡温度:341.9 K
半径:1.056 ± 0.035 地球半径
質量:1.38 ± 0.61 地球質量
平均密度:1.17 ± 0.53 地球密度
トランジット観測回数:29 回
軌道長半径:0.02144 AU
日射量:地球の日射量の 1.143 倍
平衡温度:288.0 K
半径:0.772 ± 0.030 地球半径
質量:0.41 ± 0.27 地球質量
平均密度:0.89 ± 0.60 地球密度
トランジット観測回数:9 回
軌道長半径:0.02817 AU
日射量:地球の日射量の 0.662 倍
平衡温度:251.3 K
半径:0.918 ± 0.039 地球半径
質量:0.62 ± 0.58 地球質量
平均密度:0.80 ± 0.76 地球密度
トランジット観測回数:7 回
軌道長半径:0.0371 AU
日射量:地球の日射量の 0.382 倍
平衡温度:219.0 K
半径:1.045 ± 0.038 地球半径
質量:0.68 ± 0.18 地球質量
平均密度:0.60 ± 0.17 地球密度
トランジット観測回数:4 回
軌道長半径:0.0451 AU
日射量:地球の日射量の 0.258 倍
平衡温度:198.6 K
半径:1.127 ± 0.041 地球半径
質量:1.34 ± 0.88 地球質量
平均密度:0.94 ± 0.63 地球密度
トランジット観測回数:5 回
軌道長半径:~ 0.063 AU
日射量:地球の日射量の ~ 0.131 倍
平衡温度:~ 168 K
半径:0.755 ± 0.034 地球半径
トランジット観測回数:1 回
6 個の内側の惑星の質量推定からは,どれも岩石組成であることを示唆する.ただしここでの質量推定の精度は,惑星組成のうちの揮発性物質の組成の割合を決定出来るほどは良くない.
例外は TRAPPIST-1f で,この惑星は密度が低いため揮発性物質を多く含むと考えられる.この惑星の揮発性成分は,氷の層もしくは大気として (あるいはその両方として) 存在すると考えらる.これは今後のハッブル宇宙望遠鏡かジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追加観測で確認出来るかもしれない.
発見された惑星の軌道傾斜角はどれも 90°に近い.非常に同一平面上に揃っており,ほぼ edge-on で見えているという位置関係にある.
さらに内側の 6 個の惑星は,これまで発見されている軌道共鳴鎖 (resonant chain) に近い状態の軌道配置で最も長い軌道共鳴の連鎖に入っている.
各惑星の軌道周期の比は,TRAPPIST-1c/b ~ 8/5, TRAPPIST-1d/c ~ 5/3, TRAPPIST-1e/d ~ 3/2, TRAPPIST-1f/e ~ 3/2, TRAPPIST-1g/f ~ 4/3 となっている.この平均運動共鳴に近接した状態は,測定されたトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) の変動の大きさと整合的である.
このような関係は,ガス円盤内での複数惑星の相互作用によって自然に説明することができる.TRAPPIST-1 系の起源の理論的モデルとして考えられるのは,これらの惑星は恒星から遠い場所で形成され,円盤によって駆動される内側への軌道移動によって移動してきたというものである.これは,木星のガリレオ衛星の形成・進化メカニズムとして提案されているものと同じである.
各惑星の組成は,それぞれが形成された領域の組成を反映していると考えられる.そのためこのシナリオでは,各惑星は揮発性成分を多く含み,地球より低密度であることを予言する.これは,比較的精度良く分かっている TRAPPIST-1f の平均密度の暫定的な分析結果とも整合的である.
これらの惑星が受ける日射量は,地球の 4.3 - 0.13 倍の範囲にある.これは太陽系における,水星 (地球の日射量の 6.7 倍) からケレス (同 0.13 倍) の範囲に非常に似ている.特に,TRAPPIST-1c, d, f は,受け取る日射量がそれぞれ金星,地球,火星に近い.
しかしこのような低日射環境であっても,7 個のすべての惑星は公転周期と自転周期が潮汐的に同期していると考えられる.あるいは高次の spin-orbit 共鳴 (太陽系で言うと水星がその状態) に入っている可能性があるが,これは各惑星の軌道離心率の大きさの観測からの上限値を考えると,可能性は低い.
1 次元の雲なし気候モデルを,低温度星の中心星スペクトルの元で使用した場合,TRAPPIST-1e, f, g の 3 つの惑星は,大気組成が地球と似ている場合は表面に水の海を保持できると推定される.惑星が潮汐固定されている状態での 3 次元の気候モデルからも,同じ推論が得られる.
内側の TRAPPIST-1b, c, d に関しては,3 次元気候モデルでは暴走温室効果を起こすシナリオとなった.雲のフィードバックは一般に同期自転惑星の表面温度を低下させる効果を持つが,このような短周期の惑星にとってはそれでも効果が小さかった.
とは言え,もしいくらかの水が初期の高温の時期を生き残ったとしたら,TRAPPIST-1b, c, d への日射量は,惑星表面の限定された領域に液体の水を持つことが出来る程度には小さい.
TRAPPIST-1h に関しては,軌道周期が確定しておらず,そのため中心星からの距離も確定していない.しかしこの惑星への日射量は小さいため,水が溶解する温度以上に保つのは難しい.しかし,もしこの惑星に十分な内部エネルギーがあった場合,例えば潮汐加熱などがあった場合,あるいはもし初期の水素豊富な大気の大部分が生き残り,内部の熱の損失を強く抑制しているような場合は,表面に水を保持できる可能性がある.
ニュースで非常に話題になった,TRAPPIST-1 まわりの 7 個の系外惑星の発見を報告する論文です.
この星系では,Gillon et al. (2016) で既に 3 個 (TRAPPIST-1b, c, d) の惑星の存在が報告されていました.このうち,TRAPPIST-1b と c は観測の精度も良く,今回の新しい結果でも存在が確認されました.しかし TRAPPIST-1d は観測の精度が比較的悪く,軌道周期も 2016 年の段階では確定していませんでした.今回の観測では,2016 年に報告されていた TRAPPSIT-1d の取りうる軌道周期の候補 11 個を全て否定し,代わりに TRAPPIST-1d, e, f, g, h の新たな 5 惑星の存在を報告しました.
このうち TRAPPIST-1e, f, g の 3 つについてはハビタブルゾーン内にあると考えられ,表面に水を持つ (海が存在する) 可能性があると指摘されています.
ニュースでは話題が先行して,「海が発見された」とするような情報も見られましたが,実際に海が発見されたわけではなく,大気の成分が検出されたわけでもありません.従って各惑星の大気や表面の様子,海が存在するかどうかについては不明です.
なお,2016 年の TRAPPIST-1b, c, d の発見報告論文はこちらです.
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
arXiv:1703.01424
Gillon et al. (2017)
Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1
(近傍の超低温矮星 TRAPPIST-1 まわりの 7 つの温暖な惑星)
概要
木星サイズの恒星 TRAPPIST-1 (トラピスト1) の測光観測から,少なくとも 7 個の惑星が存在していることを発見した.観測は地上望遠鏡と宇宙望遠鏡の双方で行われた.内側の 6 個の惑星はそれぞれ,軌道共鳴に近い状態に入っている.この軌道配置は,惑星が遠方で形成された後に内側に移動してきたことを示唆する.また 7 個の惑星は,表面に液体の水が存在できる程度に低い温度を持ちうる.
これまでの観測で,この恒星の周りには TRAPPIST-1b, c, d が検出されていたが,そのうちの TRAPPIST-1d はトランジットが 2 回しか検出されていなかった.
最初の発見論文の投稿後に,3 つの惑星が同時に TRAPPIST-1 をトランジットした特徴を光度曲線のデータ中に発見した.このことがさらなる観測へのモチベーションとなり,TRAPPIST-1d のトランジットを 6 回観測できると思われる期間の間,2016 年の 2月から 3月にかけてスピッツァー宇宙望遠鏡で観測を行った.また,フォローアップ観測は地上望遠鏡で 2016 年 5 月まで継続して行った.フォローアップ観測に用いたのは,チリにある TRAPPIST-South 望遠鏡,ハワイの 3.8 m UK InfrarRed Telescope (UKIRT),La Palma にある 4 m ウィリアム・ハーシェル望遠鏡,2 m Liverpool 望遠鏡,南アフリカ天文台の 1.0 m 望遠鏡である.
2016/9/19 以前に得られた光度曲線から,先の発見論文で報告した TRAPPIST-1d の軌道周期の候補 11 個の可能性を排除した.このことは,観測されていた 2 回のトランジットは異なる天体によって起こされていたことを示唆する.
また,単一周期でのトランジットとは結びつかない,いくつかのトランジットシグナルを検出した.これらのトランジットシグナルから,周期が 4.04日,6.06日,8.1日と 12.3日のものを同定した.これはそれぞれ,今回発見された TRAPPIST-1d, TRAPPIST-1e, TRAPPIST-1f と TRAPPIST-1g に対応するものである.
さらに,スピッツァー宇宙望遠鏡の測光観測から,は0.35%のトランジット深さ,トランジット継続時間が 75 分の孤立したトランジットシグナルも検出された.これは,最も外側にある,軌道周期が不明な 7 番目の惑星 TRAPPIST-1h によるものと解釈される.
地上観測データから TRAPPIST-1h の 2 回目のトランジットを探したが,明確なシグナルは発見できなかった.
またトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) での各惑星の質量の推定も行った.
パラメータ
TRAPPIST-1
別名:2MASS J23062928−0502285光度:V = 18.8
距離:12.1 pc (39.5 光年)
質量:0.0802 太陽質量
半径:0.117 太陽半径
平均密度:50.7 太陽密度
光度:0.000524 太陽光度
有効温度:2559 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
TRAPPIST-1b
軌道周期:1.51087081 日軌道長半径:0.01111 AU
日射量:地球の日射量の 4.25 倍
平衡温度:400.1 K
半径:1.086 ± 0.035 地球半径
質量:0.85 ± 0.72 地球質量
平均密度:0.66 ± 0.56 地球密度
トランジット観測回数:37 回
TRAPPIST-1c
軌道周期:2.4218233 日軌道長半径:0.01521 AU
日射量:地球の日射量の 2.27 倍
平衡温度:341.9 K
半径:1.056 ± 0.035 地球半径
質量:1.38 ± 0.61 地球質量
平均密度:1.17 ± 0.53 地球密度
トランジット観測回数:29 回
TRAPPIST-1d
軌道周期:4.049610 日軌道長半径:0.02144 AU
日射量:地球の日射量の 1.143 倍
平衡温度:288.0 K
半径:0.772 ± 0.030 地球半径
質量:0.41 ± 0.27 地球質量
平均密度:0.89 ± 0.60 地球密度
トランジット観測回数:9 回
TRAPPIST-1e
軌道周期:6.099615 日軌道長半径:0.02817 AU
日射量:地球の日射量の 0.662 倍
平衡温度:251.3 K
半径:0.918 ± 0.039 地球半径
質量:0.62 ± 0.58 地球質量
平均密度:0.80 ± 0.76 地球密度
トランジット観測回数:7 回
TRAPPIST-1f
軌道周期:9.206690 日軌道長半径:0.0371 AU
日射量:地球の日射量の 0.382 倍
平衡温度:219.0 K
半径:1.045 ± 0.038 地球半径
質量:0.68 ± 0.18 地球質量
平均密度:0.60 ± 0.17 地球密度
トランジット観測回数:4 回
TRAPPIST-1g
軌道周期:12.35294 日軌道長半径:0.0451 AU
日射量:地球の日射量の 0.258 倍
平衡温度:198.6 K
半径:1.127 ± 0.041 地球半径
質量:1.34 ± 0.88 地球質量
平均密度:0.94 ± 0.63 地球密度
トランジット観測回数:5 回
TRAPPIST-1h
軌道周期:20 (+15, -6) 日軌道長半径:~ 0.063 AU
日射量:地球の日射量の ~ 0.131 倍
平衡温度:~ 168 K
半径:0.755 ± 0.034 地球半径
トランジット観測回数:1 回
惑星系の特徴
惑星の組成
TRAPPIST-1b, c, e, f, g の 5 個はサイズが地球と似ており,TRAPPIST-1d, h の 2 個は火星と地球の中間的なサイズを持つ.6 個の内側の惑星の質量推定からは,どれも岩石組成であることを示唆する.ただしここでの質量推定の精度は,惑星組成のうちの揮発性物質の組成の割合を決定出来るほどは良くない.
例外は TRAPPIST-1f で,この惑星は密度が低いため揮発性物質を多く含むと考えられる.この惑星の揮発性成分は,氷の層もしくは大気として (あるいはその両方として) 存在すると考えらる.これは今後のハッブル宇宙望遠鏡かジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追加観測で確認出来るかもしれない.
惑星の形成と進化
中心星 TRAPPIST-1 と各惑星の質量比は 0.02%程度であり,この比は木星のガリレオ衛星と似ている.この事は,TRAPPIST-1 まわりの惑星と木星の衛星は形成過程が似ている可能性を示唆している.発見された惑星の軌道傾斜角はどれも 90°に近い.非常に同一平面上に揃っており,ほぼ edge-on で見えているという位置関係にある.
さらに内側の 6 個の惑星は,これまで発見されている軌道共鳴鎖 (resonant chain) に近い状態の軌道配置で最も長い軌道共鳴の連鎖に入っている.
各惑星の軌道周期の比は,TRAPPIST-1c/b ~ 8/5, TRAPPIST-1d/c ~ 5/3, TRAPPIST-1e/d ~ 3/2, TRAPPIST-1f/e ~ 3/2, TRAPPIST-1g/f ~ 4/3 となっている.この平均運動共鳴に近接した状態は,測定されたトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) の変動の大きさと整合的である.
このような関係は,ガス円盤内での複数惑星の相互作用によって自然に説明することができる.TRAPPIST-1 系の起源の理論的モデルとして考えられるのは,これらの惑星は恒星から遠い場所で形成され,円盤によって駆動される内側への軌道移動によって移動してきたというものである.これは,木星のガリレオ衛星の形成・進化メカニズムとして提案されているものと同じである.
各惑星の組成は,それぞれが形成された領域の組成を反映していると考えられる.そのためこのシナリオでは,各惑星は揮発性成分を多く含み,地球より低密度であることを予言する.これは,比較的精度良く分かっている TRAPPIST-1f の平均密度の暫定的な分析結果とも整合的である.
惑星の居住可能性
楽観的なハビタブルゾーン (optimistic habitable zone) の中には,TRAPPIST-1d, e, f, g の 4 つの惑星が入る.また,保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone) の場合,TRAPPIST-1e, f, g の 3 つの惑星が入る.これらの惑星が受ける日射量は,地球の 4.3 - 0.13 倍の範囲にある.これは太陽系における,水星 (地球の日射量の 6.7 倍) からケレス (同 0.13 倍) の範囲に非常に似ている.特に,TRAPPIST-1c, d, f は,受け取る日射量がそれぞれ金星,地球,火星に近い.
しかしこのような低日射環境であっても,7 個のすべての惑星は公転周期と自転周期が潮汐的に同期していると考えられる.あるいは高次の spin-orbit 共鳴 (太陽系で言うと水星がその状態) に入っている可能性があるが,これは各惑星の軌道離心率の大きさの観測からの上限値を考えると,可能性は低い.
1 次元の雲なし気候モデルを,低温度星の中心星スペクトルの元で使用した場合,TRAPPIST-1e, f, g の 3 つの惑星は,大気組成が地球と似ている場合は表面に水の海を保持できると推定される.惑星が潮汐固定されている状態での 3 次元の気候モデルからも,同じ推論が得られる.
内側の TRAPPIST-1b, c, d に関しては,3 次元気候モデルでは暴走温室効果を起こすシナリオとなった.雲のフィードバックは一般に同期自転惑星の表面温度を低下させる効果を持つが,このような短周期の惑星にとってはそれでも効果が小さかった.
とは言え,もしいくらかの水が初期の高温の時期を生き残ったとしたら,TRAPPIST-1b, c, d への日射量は,惑星表面の限定された領域に液体の水を持つことが出来る程度には小さい.
TRAPPIST-1h に関しては,軌道周期が確定しておらず,そのため中心星からの距離も確定していない.しかしこの惑星への日射量は小さいため,水が溶解する温度以上に保つのは難しい.しかし,もしこの惑星に十分な内部エネルギーがあった場合,例えば潮汐加熱などがあった場合,あるいはもし初期の水素豊富な大気の大部分が生き残り,内部の熱の損失を強く抑制しているような場合は,表面に水を保持できる可能性がある.
ニュースで非常に話題になった,TRAPPIST-1 まわりの 7 個の系外惑星の発見を報告する論文です.
この星系では,Gillon et al. (2016) で既に 3 個 (TRAPPIST-1b, c, d) の惑星の存在が報告されていました.このうち,TRAPPIST-1b と c は観測の精度も良く,今回の新しい結果でも存在が確認されました.しかし TRAPPIST-1d は観測の精度が比較的悪く,軌道周期も 2016 年の段階では確定していませんでした.今回の観測では,2016 年に報告されていた TRAPPSIT-1d の取りうる軌道周期の候補 11 個を全て否定し,代わりに TRAPPIST-1d, e, f, g, h の新たな 5 惑星の存在を報告しました.
このうち TRAPPIST-1e, f, g の 3 つについてはハビタブルゾーン内にあると考えられ,表面に水を持つ (海が存在する) 可能性があると指摘されています.
ニュースでは話題が先行して,「海が発見された」とするような情報も見られましたが,実際に海が発見されたわけではなく,大気の成分が検出されたわけでもありません.従って各惑星の大気や表面の様子,海が存在するかどうかについては不明です.
なお,2016 年の TRAPPIST-1b, c, d の発見報告論文はこちらです.
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
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