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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1702.07414
Brown & Butler (2017)
The density of mid-sized Kuiper belt objects from ALMA thermal observations
(ALMA による熱的観測による中間サイズカイパーベルト天体の密度)

概要

中間サイズのカイパーベルト天体 (Kuiper belt objects, KBO) の密度は,外部太陽系の天体の集まりを理解する上で重要な制限である.中間サイズのカイパーベルト天体は,今のところ起源が説明されていない「平均密度が水よりも低い最も小さいカイパーベルト天体」と「岩石成分を多く含む最も大きい天体」の間の遷移を理解するのに重要な研究対象である.しかし,これらの天体の直径の不定性のため,この遷移の図示は難しい.天体の直径の不定性は体積の,つまり平均密度の不定性にも繋がる.

ALMA (Atacama Large Millimeter Array) の大口径によって,外部太陽系の天体からの熱放射のより正確な測定と,密度測定の大幅な改善が可能となる.
ここでは,新しい 4 天体の熱的な観測から,天体の直径測定の改善の可能性について探った.これらの 4 天体は衛星を持っている天体である (※注釈:そのため精度良く天体の質量が決定できる).

その結果,ミリ波での有効放射の影響によって,ミリメートル波長のデータを天体直径の測定に直接使うのは難しく,従ってその天体の体積の測定に直接使うのも難しいことが判明した.加えて,モデルの不定性の影響も考慮すると,外部太陽系の電波観測での天体のサイズにおける真の不定性は,これまでに別の波長帯で観測された結果よりも大きくなる.

そのため,天体サイズ測定の精度向上のためには,詳細な掩蔽時の測定が必要であると考えられる.

主な結果と結論

ALMA の観測データから,天体からの熱放射を MCMC (マルコフチェーンモンテカルロ法) でフィッティングして直径を求めた.

2002 UX25 の直径は 742 (+76, -109) km,Orcus (オルクス) は 1075 (+121, -156) km,Salacia (サラキア) は 900 (+95, -140) km,Quaoar (クワオアー) は 1057 (+107, 168) km となった.ALMA データのみを用いた直径推定であるこれらの値は,スピッツァー宇宙望遠鏡やハーシェルの観測による直径推定値の 1 σ 以内に入っているが,不定性はそれよりも 2 - 3 倍大きい.

セカンドチェックとして,Charon (カロン,冥王星の衛星) の直径も観測から推定した.Charon に関しては,840 µm の波長の観測で 7.0 mJy という結果が得られている (Butler et al. 2015).ALMA のみの観測結果に,天体表面の放射率として 0.685 を仮定した.この値は,上記の 4 つの KBO の平均値である.

その結果,Charon の推定直径は 1355 ± 110 km で,より正確に測定された値である 1212 ± 6 km の 1.3 σ (Stern et al. 2015) であった.従って,この手法では密度にさらなる制限を与えられるほどの精密な測定は出来ないことが判明した

精密な直径測定,および密度推定にもっとも有望なのは,衛星を持った中間サイズのカイパーベルト天体の,掩蔽観測データを得ることだろう.

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