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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.05386
Astudillo-Defru et al. (2017)
The HARPS search for southern extra-solar planets XLI. A dozen planets around the M dwarfs GJ 3138, GJ 3323, GJ 273, GJ 628, and GJ 3293
(HARPS の南天系外惑星探査 XLI:M 型矮星 GJ 3138, GJ 3323, GJ 273, GJ 628, GJ 3293 のまわりの 12 個の惑星)

概要

低質量の恒星は,ハビタブルゾーン内にある岩石惑星を探すための最も良いターゲットである.これまでの 13 年の間に,HARPS 分光器での詳細な視線速度測定によって,M 型矮星の周りに多数のスーパーアースと地球質量惑星 (最小質量 10 地球質量以下) が発見されてきた.これらの低質量惑星のうちのいくつかは中心星のハビタブルゾーンの中にあり,将来的な大気のバイオマーカーの調査のターゲットとなっている.

この惑星のサンプル数を大きくすることを目的とし,低質量でより長周期の惑星を検出するための,高頻度で長期にわたる M 型星の視線速度のモニタリングを行ってきた.
ここでは HARPS によって,M 型星 GJ 3138,GJ 3323,GJ 273,GJ 628,GJ 3293 の視線速度と分光学的活動度を測定した.これらの変動性,周期性,ケプラー運動による変動と相関を調査した,また,惑星と恒星活動による視線速度変動の影響について調査した.

その結果,計 12 個の惑星を検出し,そのうちの 9 個は新しく発見されたものであった.新しく発見された 9 個の惑星の質量は 1.17 - 10.5 地球質量の範囲にある.これらの惑星は,軌道周期が 217.6 日と 257.8 日の長周期の 2 惑星を除けば,比較的短周期である (40 日未満).

これらの系の中で,GJ 273 は地球と似た質量の惑星を 2 つ持つ.この系は太陽系からの距離がわずか 3.8 パーセクであり,GJ 273 はハビタブルゾーン内に惑星を持つ,プロキシマ・ケンタウリに次いで二番目に近い惑星系である

パラメータ

GJ 3138 系

GJ 3138
スペクトル型:M0
等級:V = 10.98
質量:0.681 太陽質量
半径:0.50 太陽半径
有効温度:3717 K
金属量:[Fe/H] = -0.30
自転周期:34 日 (過去の観測結果) あるいは 42.5 日 (今回の活動度測定より)
GJ 3138b
軌道周期:1.22003 日
軌道離心率:0.19
最小質量:1.78 地球質量
軌道長半径:0.0197 AU
日射量:地球の日射量の 118.1 倍
トランジット確率:10.5%
GJ 3138c
軌道周期:5.974 日
軌道離心率:0.11
最小質量:4.18地球質量
軌道長半径:0.057 AU
日射量:地球の日射量の 13.9 倍
トランジット確率:3.7%
GJ 3138d
軌道周期:257.8 日
軌道離心率:0.32
最小質量:10.5地球質量
軌道長半径:0.698 AU
日射量:地球の日射量の 0.1 倍
トランジット確率:0.3%
GJ 3138 系について
この系では 199 の視線速度データを取得した.

最も強いシグナルは 6 日周期で,その他に 48.2 日,1.2 日,257 日周期のシグナルを検出した.これまでの自転周期の推定値は 34 日であり,これは 1.2, 6.0, 257 日の周期とは遠いが,48 日とは近い.恒星活動度の推定から,48 日周期の変動は自転周期によるものと推定される.

この系の惑星はスーパーアースからミニネプチューンの質量範囲にある.

各惑星が受けている日射量から,アルベドの範囲が 0.75 - 0.0 とすると,平衡温度はそれぞれ 640 - 900 K,375 - 530 K,107 - 150 K となる.

GJ 3323 系

GJ 3323
スペクトル型:M4
等級:V = 12.22
質量:0.164 太陽質量
半径:0.119 太陽半径
平衡温度:3159 K
金属量:[Fe/H] = -0.27
自転周期;33 日
GJ 3323b
軌道周期:5.3636 日
軌道離心率:0.23
最小質量:2.02 地球質量
軌道長半径:0.03282 AU
日射量:地球の日射量の 2.58 倍
トランジット確率:2.1%
(GJ 3323c)
軌道周期:40.54 日
軌道離心率:0.17
最小質量:2.31 地球質量
軌道長半径:0.1264 AU
日射量:地球の日射量の 0.17倍
トランジット確率:0.5%
GJ 3323 系について
この系では 157 の視線速度データセットを取得した.

GJ 3323b のシグナルは,中心星の自転周期によるシグナルより十分短い.黒点による変動は恒星の自転周期の 2 分の 1 や 3 分の 1 の周期の変動を生み出すこともある (Boisse et al. 2011).しかし 5.4 日のシグナルは,恒星の自転周期のどの倍音でもないため惑星起源であると考えられる.

GJ 3323c に関しては,確実に惑星起源のシグナルであると断言はできないが,惑星候補シグナルである.

GJ 3323 は,視線速度で惑星が発見された恒星の中では最も低質量なものの一つである.惑星 (と惑星候補シグナル) の平衡温度はそれぞれ 420 - 595 K と 214 - 303 K の間である.

GJ 273 系

GJ 273
スペクトル型:M3.5
等級:V = 9.872
質量:0.29 太陽質量
半径:0.293 太陽半径
平衡温度:3382 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
自転周期:99 日
GJ 273b
軌道周期:18.6498 日
軌道離心率:0.10
最小質量:2.89地球質量
軌道長半径:0.091101 AU
日射量:地球の日射量の 1.06 倍
トランジット確率:1.6%
GJ 273c
軌道周期:4.7234 日
軌道離心率:0.17
最小質量:1.18 地球質量
軌道長半径:0.036467 AU
日射量:地球の日射量の 6.66 倍
トランジット確率:4.3%
GJ 273 系について
この系では集中的に 280 の視線速度データ取得した.

GJ 273b はスーパーアースであり,保守的なハビタブルゾーン (Kopparapu et al. 2013) の内縁をかすめるような軌道を持つ.ただし地球の 1.06 倍という日射量の大きさは,この惑星が大気に覆われていると考えた場合,また GCM での大気計算 (Kopparapu et al. 2016) の結果を考慮すると,ハビタブルゾーンの中にあると言える.アルベドが 0.75 - 0.0 の範囲だと仮定すると,この惑星の平衡温度の範囲は 206 - 293 K となる.

GJ 273c は,視線速度で検出された系外惑星の中では最も低質量の部類である.同様にアルベドを仮定すると平衡温度は 327 - 462 K の範囲となり,これはハビタブルゾーンよりもずっと恒星に近い.

GJ 628 系

GJ 628
スペクトル型:M3.5
等級:V = 10.03
質量:0.294 太陽質量
半径:0.307 太陽半径
平衡温度:3342 K
金属量:[Fe/H] = -0.09
自転周期:93 日 (過去の観測結果) あるいは 95 日 (今回の活動度測定より)
GJ 628b
軌道周期:4.8869 日
軌道離心率:0.15
最小質量:1.91 地球質量
軌道長半径:0.0375 AU
日射量:地球の日射量の 7.34 倍
トランジット確率:3.3%
GJ 628c
軌道周期:18.8719 日
軌道離心率:0.11
最小質量:3.41 地球質量
軌道長半径:0.0890 AU
日射量:地球の日射量の 1.30 倍
トランジット確率:1.4%
GJ 628d
軌道周期:217.21 日
軌道離心率:0.55
最小質量:7.70 地球質量
軌道長半径:0.470 AU
日射量:地球の日射量の 0.06 倍
トランジット確率:0.2%
GJ 628 系について
この系では 190 の視線速度データを取得した.このうち,148 データは既に Wright et al. (2016) で解析済みである.

過去の解析と比較して,短い方の 2 つの周期は確認出来たが,長い方については結果は異なった.また,より長い周期の検出と,恒星の活動サイクルの同定を行った.

GJ 3293 系

GJ 3293
スペクトル型:M2.5
等級:V = 11.962
質量:0.42 太陽質量
半径:0.404 太陽半径
平衡温度:3466 K
金属量:[Fe/H] = 0.02
自転周期:50 日 (過去の観測結果) あるいは 41 日 (今回の活動度測定より)
GJ 3293e
軌道周期:13.2543 日
軌道離心率:0.21
最小質量:3.28 地球質量
軌道長半径:0.08208 AU
日射量:地球の日射量の 3.34 倍
トランジット確率:2.3%
GJ 3293b
軌道周期:30.5987 日
軌道離心率:0.06
最小質量:23.54 地球質量
軌道長半径:0.14330 AU
日射量:地球の日射量の 1.07 倍
トランジット確率:1.3%
GJ 3293d
軌道周期:48.1345 日
軌道離心率:0.12
最小質量:7.60 地球質量
軌道長半径:0.19394 AU
日射量:地球の日射量の 0.59 倍
トランジット確率:1.0%
GJ 3293c
軌道周期:122.6196 日
軌道離心率:0.11
最小質量:21.09 地球質量
軌道長半径:0.36175 AU
日射量:地球の日射量の 0.17 倍
トランジット確率:0.5%
GJ 3293 系について
Astudillo-Defru et al. (2015) では,2 つの海王星的な天体 (軌道周期 30.6, 124 日) を検出していた,また,48.1 日周期のスーパーアースと思しき惑星候補シグナルを検出していた.ここでは 61 の視線速度データを取得した.

その結果,2 つのスーパーアース (軌道周期 13.3, 48.1 日) と 2 つの海王星質量惑星 (軌道周期 30.6, 122.6 日) の存在を確認した.

海王星質量の GJ 3293b とスーパーアース GJ 3293d はハビタブルゾーン内の惑星である.

その他の特徴

GJ 273 はハビタブルゾーン内に惑星 GJ 273b を持つ.ハビタブルゾーン内に惑星を持つ系としては,プロキシマ・ケンタウリ (Anglada-Escude ́ et al. 2016) に次いで 2 番目に近い (3.8 pc)

活発なフレア活動のあるプロキシマ・ケンタウリと比べ,GJ 273 は活動が静穏であることは注目すべき特徴である.そのため大気の侵食が小さく,プロキシマ・ケンタウリb と比較してハビタビリティの観点からはより好ましい環境であると考えられる.


GJ 628 は少なくとも 3 個の惑星を持つ.今回の観測により,太陽的な磁気的サイクルと恒星の自転による 128 日のシグナルを検出した.これにより,67 日周期の視線速度シグナルは,Wright et al. で報告されていたような惑星起源ではなく,恒星の活動によるものと考えられる.

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