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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.07341
Manjavacas et al. (2017)
Testing the existence of optical linear polarization in young brown dwarfs
(若い褐色矮星における可視光直線偏光の存在の調査)
理論モデルでは,褐色矮星の扁平率に伴って観測される直線偏光度は増加すると予測されている.この扁平率は,褐色矮星の表面重力に反比例する.
ここでは,明るい若い褐色矮星のサンプル中に,可視光での直線偏光があるかの調査を行った.分析の対象は,スペクトル型が M6 から L2 で,Calar Alto Observatory から観測できる天体で,なおかつ分光観測から表面の重力が比較的小さいことが分かっている天体である.
直線偏光撮像は,I, R バンドで Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡の CAFOS を用いて観測した.その後,flux ratio method を用いて直線偏光度を決定した.
その結果 3 σ の確度で,観測された段階においては全てのターゲット天体が I バンドで平均 0.69%より小さい直線偏光,R バンドで 1.0%より小さい直線偏光を示した.
また,若い M6 矮星 2MASS J04221413+1530525 では R バンドで有意な直線偏光を検出し,直線偏光度 p* = 0.81 ± 0.17% であった.
この天体の偏光の起源として考えられるのは,以下の 2 種類である.
一つ目は,地球とこの天体の視線方向にあるダストによる偏光だとするものである.ただしこれは Liu et al. (2016) で報告されている三角視差の値が正しいとした場合である.この場合,この天体は Tauras-Auriga 星形成領域の中に位置しているか,あるいは背後にあるかである.
この仮説は,この天体のスペクトルの reddening (赤化) を説明することができる.またこの天体がこの星形成領域の一員である場合は,この天体が若いことを示す弱いアルカリのラインを持つことを説明できる.
二つ目は,この天体の周りの原始惑星系円盤かデブリ円盤,または天体大気中のダスト粒子によるものである.こちらは,三角視差の値として Faherty et al. (2012) の結果が正しいと仮定した場合である.
この仮説は,若い褐色矮星大気中でのサブミクロンサイズ粒子に関する予言 (Marocco et al. 2014, Hiranaka et al. 2016) と整合的である.この仮説の場合,この天体の赤い色と R バンドでの偏光の検出を説明することができる.
Allers & Liu (2013) によって,この天体の近赤外スペクトルは,このスペクトル型の天体にしては超過していることが報告されている.またスペクトル中には弱いアルカリ金属のラインが検出されており,これは天体の表面重力が小さいことを示唆している.
Faherty et al. (2012) は,この天体の絶対視差として 24.8 mas (距離 40.3 pc に対応) という値を報告している.しかし,これは Liu et al. (2016) による絶対視差 3.9 mas (240 pc に対応) と 6.4 σ 乖離している.
また,この天体は Taurus の星形成領域の 10 度程度南方に位置している.
arXiv:1703.07341
Manjavacas et al. (2017)
Testing the existence of optical linear polarization in young brown dwarfs
(若い褐色矮星における可視光直線偏光の存在の調査)
概要
直線偏光は,超低温矮星の大気中の凝縮物の存在を探査するのに使うことが出来る.理論モデルでは,褐色矮星の扁平率に伴って観測される直線偏光度は増加すると予測されている.この扁平率は,褐色矮星の表面重力に反比例する.
ここでは,明るい若い褐色矮星のサンプル中に,可視光での直線偏光があるかの調査を行った.分析の対象は,スペクトル型が M6 から L2 で,Calar Alto Observatory から観測できる天体で,なおかつ分光観測から表面の重力が比較的小さいことが分かっている天体である.
直線偏光撮像は,I, R バンドで Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡の CAFOS を用いて観測した.その後,flux ratio method を用いて直線偏光度を決定した.
その結果 3 σ の確度で,観測された段階においては全てのターゲット天体が I バンドで平均 0.69%より小さい直線偏光,R バンドで 1.0%より小さい直線偏光を示した.
また,若い M6 矮星 2MASS J04221413+1530525 では R バンドで有意な直線偏光を検出し,直線偏光度 p* = 0.81 ± 0.17% であった.
この天体の偏光の起源として考えられるのは,以下の 2 種類である.
一つ目は,地球とこの天体の視線方向にあるダストによる偏光だとするものである.ただしこれは Liu et al. (2016) で報告されている三角視差の値が正しいとした場合である.この場合,この天体は Tauras-Auriga 星形成領域の中に位置しているか,あるいは背後にあるかである.
この仮説は,この天体のスペクトルの reddening (赤化) を説明することができる.またこの天体がこの星形成領域の一員である場合は,この天体が若いことを示す弱いアルカリのラインを持つことを説明できる.
二つ目は,この天体の周りの原始惑星系円盤かデブリ円盤,または天体大気中のダスト粒子によるものである.こちらは,三角視差の値として Faherty et al. (2012) の結果が正しいと仮定した場合である.
この仮説は,若い褐色矮星大気中でのサブミクロンサイズ粒子に関する予言 (Marocco et al. 2014, Hiranaka et al. 2016) と整合的である.この仮説の場合,この天体の赤い色と R バンドでの偏光の検出を説明することができる.
2MASS J04221413+1530525 について
この天体は,可視光観測よりスペクトル型は M6γ (Cruz et al. 2009) とされている.Allers & Liu (2013) によって,この天体の近赤外スペクトルは,このスペクトル型の天体にしては超過していることが報告されている.またスペクトル中には弱いアルカリ金属のラインが検出されており,これは天体の表面重力が小さいことを示唆している.
Faherty et al. (2012) は,この天体の絶対視差として 24.8 mas (距離 40.3 pc に対応) という値を報告している.しかし,これは Liu et al. (2016) による絶対視差 3.9 mas (240 pc に対応) と 6.4 σ 乖離している.
また,この天体は Taurus の星形成領域の 10 度程度南方に位置している.
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