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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.04354
Wakeford et al. (2017)
HAT-P-26b: A Neptune-Mass Exoplanet with a Well Constrained Heavy Element Abundance
(HAT-P-26b:重元素存在度がよく分かっている海王星質量の系外惑星)

概要

巨大惑星の質量と大気の重元素存在度の相関は,過去一世紀の間の我々の太陽系の惑星の観測から明らかになっている,惑星形成理論の重要な礎である.ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を用いて 0.5 - 5 µm の範囲でデータを取得し,海王星質量の系外惑星 HAT-P-26b の大気の詳細な研究を行った.

惑星大気透過光の観測から,最大の base-to-peak 振幅が 525 ppm の,水の吸収バンドを検出した.

大気中の水の存在度を金属量の存在度の代用として用いることで,この惑星の大気の重元素含有量は太陽組成の 4.0 (+21.5, -4.0) 倍と推定した.これは,この惑星の大気が始原的なものであり,原始惑星系円盤の最終段階に円盤からガスのエンベロープを獲得したことを示唆する結果である.また,金属量豊富な微惑星による汚染は僅かであったことを示唆する.

研究背景

HAT-P-26b は海王星質量の惑星である.質量と半径がよく測定されているその他の 4 つの海王星サイズの惑星 (天王星,海王星,GJ 436b,HAT-P-11b) と比較して,低い平均密度を持つ惑星である.

この惑星の表面重力は小さく,平衡温度は温暖 (~ 990 K) であるため,この惑星の大気スケールハイトは大きい.そのため,トランジット分光観測での大気の研究に適した対象である.

海王星サイズの惑星は,広い範囲の大気組成を持ちうる.その惑星の形成と進化の歴史によって,H/He,H2O,CO2 が豊富な大気の全てを持ちうる.
H/He 豊富な大気は,ガスが原始惑星系円盤から直接降着した場合に形成される.別の可能性として,多くの惑星は水が豊富な大気を持った水惑星になりうる.あるいは,主に脱ガスで大気が形成された岩石惑星などがある.

ホットネプチューンの場合,これらの惑星が水やその他の氷の成分を大量に含んでいるかどうか,そしてそれらのうちどの程度が検出可能な大気エンベロープの中に混合しているかは不明である.

過去の海王星質量の系外惑星の観測では,雲の多い大気が観測されている.例えば,GJ 436b や,いくらか晴れた大気を持つ HAT-P-11b などがその例である.これらの惑星では,雲によって弱められた水の吸収バンドが検出されている.

巨大ガス惑星質量と大気中の元素存在度は,木星,土星,天王星,海王星の大気における CH4 の存在度から測定されている.惑星質量と元素存在度の関係は,惑星形成理論への制約として使われる.
鍵となる分子種の測定は系外惑星でも行われ始めており,例えば WASP-43b などで H2O の存在度が測定されている.海王星質量やさらに小さい系外惑星での大気の元素存在度測定は限定的であり,数桁の間の制約のみが与えられていた.例えば HAT-P-11b での水の検出からは,大気中の金属量は太陽組成の 1 - 700 倍の範囲内という制限が与えられている.

結果

1.4 µm での水の吸収バンドの測定から,8.8 σ の確度で,base-to-peak 振幅が 525 ± 43 ppm であることが分かった.ハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いた可視光での観測と,WFC3 G102 の近赤外での観測から,吸収する雲層の存在が示唆された.これは過去の可視光のデータと整合的である.

ここでは,大気中の水を金属量推定のための代用指標として使用する.
この惑星の金属量は,太陽系の巨大ガス惑星が示す傾向よりも低く,惑星の形成過程と進化過程のどちらか,あるいはその両方が太陽系とは異なることを示唆する.

惑星の進化モデルからは,H/He エンベロープが全体の質量の ~21%を占め,中心のコアは 10%が岩石で 90%が水と推定される.コア質量が比較的大きいため,光蒸発ではエンベロープ質量の数%以上は失われない.


大気の重元素存在度が低いことから,この惑星のエンベロープは始原的なもの (進化過程で大きく成分が変化していない) であると結論付けることが出来る.

測定された低い金属量からは,この惑星の重元素成分はほとんどがコアに含まれること,惑星のエンベロープはガスが降着した後に微惑星によって汚染されていないか.あるいは似た質量の他の惑星に比べて汚染が少ないことを示唆する.これは,惑星が恒星に近い所で形成されると起こり得る.恒星に近い場所は固体の氷が存在するには高温過ぎるため,固体の存在度が低い.特に炭素と酸素を含む成分が少なくなる.
または,微惑星の大部分がなくなってしまった後の,円盤の寿命の後期にエンベロープを降着した可能性もある.あるいはこれらの両方が重なった可能性もある.このような形成シナリオは,多くのホットネプチューンは自身のエンベロープを円盤が散逸する前にその場で短時間で降着したとする,最近のエンベロープ降着モデルと整合的である.

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