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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.05153
Udry et al. (2017)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXVI. Eight HARPS multi-planet systems hosting 20 super-Earth and Neptune-mass companions
(HARPS による南天の系外惑星探査 XXXVI:HARPS による 8 個の複数惑星系中の 20 個のスーパーアースと海王星質量天体)
観測と解析の結果,これらの恒星の周りに合計 20 個の,新しいスーパーアースから海王星質量の惑星を検出した.これらの惑星の最小質量は 2 - 30 地球質量の範囲,軌道周期は 3 - 1300 日であった.
また,上記の恒星に加えて HD 20782 を観測し,CORALIE と HARPS の観測データと,過去に報告されているデータと合わせることで,この恒星の周りに発見されていた極めて軌道離心率の大きい木星型惑星のパラメータの推定値を改善した.
等級:V = 8.39
有効温度:5494 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:0.875 太陽質量
光度:0.72 太陽光度
自転周期:38.9 日
軌道離心率:0.38
最小質量:11.48 地球質量
軌道離心率:0.06
最小質量:14.68 地球質量
軌道離心率:0.13
最小質量:12.68 地球質量
内側の惑星 HD 20003b は 0.38 と軌道離心率が大きいが,外側の惑星は軌道離心率がほぼ 0 であるという大きな特徴を持つ系である.
力学的な観点からはこの軌道の特徴は説明しづらい.また可能性としては,11.9 日の周期の惑星の高軌道離心率が,その軌道周期の半分の周期の惑星の存在を隠すことがあることが知られている (Anglada-Escude et al. 2010).
この可能性を調べるため,5.95 日の軌道周期の惑星の存在を仮定し,軌道周期 5.95 日と 11.9 日の惑星の離心率を 0 にしてパラメータのフィッティングを行った.しかしその場合は観測を再現できなかった.そのため,内側の惑星の持つ高い軌道離心率は本当の値だろうと考えられる.
この軌道配置は,HD 20003b と c の軌道周期が 3:1 の尽数関係に近いという事実によって説明できる可能性がある.
過去は 2 つの惑星は軌道共鳴に入っていて,その影響で内側の惑星の軌道離心率が増加する.その後,何らかのイベントが 2 つの惑星を共鳴からやや外れた状態にした,というものである.このイベントの候補としては,例えば円盤のガスが晴れたあとの軌道不安定や,離心率が増加した時に系からはじき出された別の惑星が存在していたというものが考えられる.
より長周期の 184 日のシグナルは,周期が半年に近いことから正しい解釈が難しい.これは,1 年やその倍音成分の周期のノイズが視線速度のシグナルに混入することがあることが原因である.しかし,そのノイズを取り除くための補正も提案されている (Dumusque et al. 2015).このノイズ除去を考慮した上で,このシグナルは惑星由来だと解釈するのが妥当である.
しかしデータ処理が全ての機器の影響を補正できていないという可能性もありうるため,惑星候補という段階に留めておく.今後の他の解析や HARPS 以外の装置を用いた確認が望まれる.
等級:V = 8.48
有効温度:5256 K
金属量:[Fe/H] = -0.11
質量:0.70 太陽質量
光度:0.49 太陽光度
自転周期:46.8 日
軌道離心率:0.10
最小質量:1.93 地球質量
軌道離心率:0.09
最小質量:5.33 地球質量
軌道離心率:0.11
最小質量:10.61 地球質量
軌道離心率:0.06
最小質量:14.03 地球質量
HD 20781 は 11 年以上に渡って観測し.合計で 226 の高シグナルノイズ比の視線速度データを取得した.この系は,2 つの内側のスーパーアースと,外側の海王星質量惑星を持つ系である.
HD 20782 は,この連星のうちの明るい方の恒星である.合計 71 のデータを取得した.
解析の結果,HD 20782b のパラメータは,軌道周期 587.0643 日,軌道離心率は 0.95,最小質量は 1.4878 木星質量となった.
等級:V = 7.95
有効温度:5430 K
金属量:[Fe/H] = 0.0
質量:0.80 太陽質量
光度:0.62 太陽光度
自転周期:35.2 日
軌道離心率:0.12
最小質量:8.23 地球質量
軌道離心率:0.07
最小質量:17.37 地球質量
16 日周期のシグナルが検出されているが,これは恒星の自転周期の倍音の周期であり,恒星活動に起因すると考えられる (Boisse et al. 2011).
視線速度の残差を見ると,シグナルを取り除いた後もやや大きいばらつきを示す.ヒッパルコス星表ではこの恒星は G8 矮星にカタログされているが,分光サーベイでは G9IV-V であり,僅かに進化した恒星である (Gray et al. 2006).進化した恒星は大きな粒状斑の影響で,大きな視線速度のばらつきが生じる.これが残差のばらつきの原因であると考えられる (Bastien et al. 2014など).
この系は 2 つの海王星質量惑星を持ち,その軌道周期は 5:2 共鳴に近い.しかし,そのような共鳴に入っている場合,通常は内側の惑星は共鳴よりもわずかに長い周期にいるはずで,短い周期には入らない.そのため,この系は力学的に更なる調査をする対象として興味深い.
等級:V = 7.49
有効温度:5898 K
金属量:[Fe/H] = -0.17
質量:0.96 太陽質量
光度:1.20 太陽光度
自転周期:20.3 日
軌道離心率:0.10
質量:10.47 地球質量
軌道離心率:0.04
質量:14.16 地球質量
軌道離心率:0.24
質量:11.82 地球質量
中心星は G2 星であり,外側の惑星は太陽系における金星から地球の間を公転している.そのためハビタブルゾーン内を公転していると考えられる (Selsis et al. 2007).しかし最小質量が 13 地球質量のこの惑星は,ガスのエンベロープに覆われた惑星だろうと考えられる (Rogers 2015など).ただし,この惑星がケプラー10c のような組成に似ている場合を除く (Dumusque et al. 2014).
等級:V = 6.37
有効温度:5869 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:1.03 太陽質量
光度:1.13 太陽光度
自転周期:21.5 日
軌道離心率:0.07
質量:12.19 地球質量
軌道離心率:0.07
最小質量:8.81 地球質量
光度:V = 8.17
有効温度:5358 K
金属量:[Fe/H] = -0.07
質量:0.80 太陽質量
光度:0.57 太陽光度
自転周期:40.0 日
軌道離心率:0.09
質量:12.77 地球質量
軌道離心率:0.14
質量:14.31 地球質量
光度:V = 6.29
有効温度:5966 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.095 太陽質量
光度:1.44 太陽光度
自転周期:23.0 日
軌道離心率:0.45
最小質量:10.10 地球質量
軌道離心率:0.11
最小質量:29.29 地球質量
内側の惑星は軌道離心率が大きい.そのため,この大きな離心率の影響で,2:1 軌道共鳴に入っている惑星のシグナルが隠されている可能性がある.半分の軌道周期の惑星が存在する可能性があるため, 1.65 日の惑星の存在を仮定してフィッティングを行った.
軌道離心率をゼロに固定した場合と,フリーパラメータにした場合両方でフィットしたが,どちらも観測と合わなかった.そのため,高軌道離心率の惑星が 1 つ存在するという,シンプルな解が最も良く観測を説明すると結論づけた.
内側の惑星は,最小質量が 3 倍大きい長周期惑星を外側に持つ.そのため,外側の長周期惑星は内側の惑星を Lidov-Kozai 機構を通じて擾乱し,軌道の秤動を起こしている可能性がある (Kozai 1962, Lidov 1961).この機構が働いている間,内側の惑星の軌道離心率は非常に高い値になりうる.そのため,内側惑星は中心星の近星点通過の際に相互作用を起こし,非常に短周期の軌道へと円軌道化が起きる.全角運動量の保存則から,軌道傾斜角が変化する場合のみ軌道離心率は増加できる.そのため,Lidov-Kozai 共鳴の影響下にある内側の惑星は,恒星の赤道平面から傾いた軌道をとっていると思われる.
これは,惑星がトランジットしていればロシター効果を通じて検出することができる.ここでの困難点は,この惑星は 3.3 日周期であり,円軌道化のタイムスケールは一般に非常に短く,そのような配置での系の観測は困難であることである.
等級:V = 5.65
有効温度:5664 K
金属量:[Fe/H] = -0.34
質量:0.81 太陽質量
光度:0.99 太陽光度
自転周期:23.8 日
軌道離心率:0.14
質量:4.81 地球質量
軌道離心率:0.04
最小質量:10.80 地球質量
軌道離心率:0.09
質量:8.58 地球質量
この系は,3 つのスーパーアースを持つ.内側の 2 惑星は,軌道周期が 5:2 の尽数関係に近い.また HD 21693 の 2 惑星とは異なり.最も内側の惑星は 5:2 共鳴の場合の軌道周期より僅かに長い.これは,このタイプの軌道配置をしている場合に一般的なものである.
arXiv:1705.05153
Udry et al. (2017)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXVI. Eight HARPS multi-planet systems hosting 20 super-Earth and Neptune-mass companions
(HARPS による南天の系外惑星探査 XXXVI:HARPS による 8 個の複数惑星系中の 20 個のスーパーアースと海王星質量天体)
概要
チリの La Silla 3.6 m 望遠鏡の HARPS エシェル分光器を用いて 8 個の恒星の視線速度を測定した.その解析結果について報告する.視線速度データの取得スパンは 10 年を超える.観測対象は,HD 20003, HD 20781, HD 21693, HD 31527, HD 45184, HD 51608, HD 134060 と HD 136352 である.観測と解析の結果,これらの恒星の周りに合計 20 個の,新しいスーパーアースから海王星質量の惑星を検出した.これらの惑星の最小質量は 2 - 30 地球質量の範囲,軌道周期は 3 - 1300 日であった.
また,上記の恒星に加えて HD 20782 を観測し,CORALIE と HARPS の観測データと,過去に報告されているデータと合わせることで,この恒星の周りに発見されていた極めて軌道離心率の大きい木星型惑星のパラメータの推定値を改善した.
パラメータ
HD 20003 系
HD 20003
スペクトル型:G8V等級:V = 8.39
有効温度:5494 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:0.875 太陽質量
光度:0.72 太陽光度
自転周期:38.9 日
HD 20003b
軌道周期:11.8496 日軌道離心率:0.38
最小質量:11.48 地球質量
HD 20003c
軌道周期:33.8994 日軌道離心率:0.06
最小質量:14.68 地球質量
HD 20003d (?)
軌道周期:183.6129 日軌道離心率:0.13
最小質量:12.68 地球質量
HD 20003 系の特徴
この系は合計で 184 のスペクトルデータを取得した.内側の惑星 HD 20003b は 0.38 と軌道離心率が大きいが,外側の惑星は軌道離心率がほぼ 0 であるという大きな特徴を持つ系である.
力学的な観点からはこの軌道の特徴は説明しづらい.また可能性としては,11.9 日の周期の惑星の高軌道離心率が,その軌道周期の半分の周期の惑星の存在を隠すことがあることが知られている (Anglada-Escude et al. 2010).
この可能性を調べるため,5.95 日の軌道周期の惑星の存在を仮定し,軌道周期 5.95 日と 11.9 日の惑星の離心率を 0 にしてパラメータのフィッティングを行った.しかしその場合は観測を再現できなかった.そのため,内側の惑星の持つ高い軌道離心率は本当の値だろうと考えられる.
この軌道配置は,HD 20003b と c の軌道周期が 3:1 の尽数関係に近いという事実によって説明できる可能性がある.
過去は 2 つの惑星は軌道共鳴に入っていて,その影響で内側の惑星の軌道離心率が増加する.その後,何らかのイベントが 2 つの惑星を共鳴からやや外れた状態にした,というものである.このイベントの候補としては,例えば円盤のガスが晴れたあとの軌道不安定や,離心率が増加した時に系からはじき出された別の惑星が存在していたというものが考えられる.
より長周期の 184 日のシグナルは,周期が半年に近いことから正しい解釈が難しい.これは,1 年やその倍音成分の周期のノイズが視線速度のシグナルに混入することがあることが原因である.しかし,そのノイズを取り除くための補正も提案されている (Dumusque et al. 2015).このノイズ除去を考慮した上で,このシグナルは惑星由来だと解釈するのが妥当である.
しかしデータ処理が全ての機器の影響を補正できていないという可能性もありうるため,惑星候補という段階に留めておく.今後の他の解析や HARPS 以外の装置を用いた確認が望まれる.
HD 20781 系
HD 20781
スペクトル型:K0V等級:V = 8.48
有効温度:5256 K
金属量:[Fe/H] = -0.11
質量:0.70 太陽質量
光度:0.49 太陽光度
自転周期:46.8 日
HD 20781b
軌道周期:5.3135 日軌道離心率:0.10
最小質量:1.93 地球質量
HD 20781c
軌道周期:13.8905 日軌道離心率:0.09
最小質量:5.33 地球質量
HD 20781d
軌道周期:29.1580 日軌道離心率:0.11
最小質量:10.61 地球質量
HD 20781e
軌道周期:85.5073 日軌道離心率:0.06
最小質量:14.03 地球質量
HD 20781 系および HD 20782 系の特徴
HD 20781 は HD 20782 との実視連星である.さらに後者は軌道周期 595 日の,非常に高軌道離心率の惑星を持っている (Jones et al. 2006).前者の詳細な視線速度観測と共に,後者の観測も行って軌道のデータを更新した.HD 20781 は 11 年以上に渡って観測し.合計で 226 の高シグナルノイズ比の視線速度データを取得した.この系は,2 つの内側のスーパーアースと,外側の海王星質量惑星を持つ系である.
HD 20782 は,この連星のうちの明るい方の恒星である.合計 71 のデータを取得した.
解析の結果,HD 20782b のパラメータは,軌道周期 587.0643 日,軌道離心率は 0.95,最小質量は 1.4878 木星質量となった.
HD 21693 系
HD 21693
スペクトル型:G8V等級:V = 7.95
有効温度:5430 K
金属量:[Fe/H] = 0.0
質量:0.80 太陽質量
光度:0.62 太陽光度
自転周期:35.2 日
HD 21693b
軌道周期:22.6786 日軌道離心率:0.12
最小質量:8.23 地球質量
HD 21693c
軌道周期:53.7357 日軌道離心率:0.07
最小質量:17.37 地球質量
HD 21693 系の特徴
11 年に渡る観測で,合計で 212 の視線速度データを取得した.16 日周期のシグナルが検出されているが,これは恒星の自転周期の倍音の周期であり,恒星活動に起因すると考えられる (Boisse et al. 2011).
視線速度の残差を見ると,シグナルを取り除いた後もやや大きいばらつきを示す.ヒッパルコス星表ではこの恒星は G8 矮星にカタログされているが,分光サーベイでは G9IV-V であり,僅かに進化した恒星である (Gray et al. 2006).進化した恒星は大きな粒状斑の影響で,大きな視線速度のばらつきが生じる.これが残差のばらつきの原因であると考えられる (Bastien et al. 2014など).
この系は 2 つの海王星質量惑星を持ち,その軌道周期は 5:2 共鳴に近い.しかし,そのような共鳴に入っている場合,通常は内側の惑星は共鳴よりもわずかに長い周期にいるはずで,短い周期には入らない.そのため,この系は力学的に更なる調査をする対象として興味深い.
HD 31527 系
HD 31527
スペクトル型:G2V等級:V = 7.49
有効温度:5898 K
金属量:[Fe/H] = -0.17
質量:0.96 太陽質量
光度:1.20 太陽光度
自転周期:20.3 日
HD 31527b
軌道周期:16.5535 日軌道離心率:0.10
質量:10.47 地球質量
HD 31527c
軌道周期:51.2053 日軌道離心率:0.04
質量:14.16 地球質量
HD 31527d
軌道周期:271.6737 日軌道離心率:0.24
質量:11.82 地球質量
HD 31527 系の特徴
11 年に渡る観測から,合計 257 のスペクトルを取得した.その結果,3 つの海王星質量惑星を検出した.中心星は G2 星であり,外側の惑星は太陽系における金星から地球の間を公転している.そのためハビタブルゾーン内を公転していると考えられる (Selsis et al. 2007).しかし最小質量が 13 地球質量のこの惑星は,ガスのエンベロープに覆われた惑星だろうと考えられる (Rogers 2015など).ただし,この惑星がケプラー10c のような組成に似ている場合を除く (Dumusque et al. 2014).
HD 45184 系
HD 45184
スペクトル型:G1.5V等級:V = 6.37
有効温度:5869 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:1.03 太陽質量
光度:1.13 太陽光度
自転周期:21.5 日
HD 45184b
軌道周期:5.8854 日軌道離心率:0.07
質量:12.19 地球質量
HD 45184c
軌道周期:13.1354 日軌道離心率:0.07
最小質量:8.81 地球質量
HD 45184 系の特徴
11 年に渡る観測から,合計 309 のデータを取得した.中心星の近くを公転する 2 つの海王星質量惑星を持つ系である.HD 51608 系
HD 51608
スペクトル型:G7V光度:V = 8.17
有効温度:5358 K
金属量:[Fe/H] = -0.07
質量:0.80 太陽質量
光度:0.57 太陽光度
自転周期:40.0 日
HD 51608b
軌道周期:14.0726 日軌道離心率:0.09
質量:12.77 地球質量
HD 51608c
軌道周期:95.9446 日軌道離心率:0.14
質量:14.31 地球質量
HD 51608 系の特徴
11 年に渡る観測から,合計 218 のスペクトルを取得した.この系は 2 つの海王星型惑星を持つ.ただし惑星の組成がケプラー10c 的なものだった場合 (大型の地球型惑星) を除く.HD 134060 系
HD 134060
スペクトル型:G3IV光度:V = 6.29
有効温度:5966 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.095 太陽質量
光度:1.44 太陽光度
自転周期:23.0 日
HD 134060b
軌道周期:3.2696 日軌道離心率:0.45
最小質量:10.10 地球質量
HD 134060c
軌道周期:1291.5646 日軌道離心率:0.11
最小質量:29.29 地球質量
HD 134060 系の特徴
11 年に渡る観測から,合計 335 のスペクトルを取得した.内側の惑星は軌道離心率が大きい.そのため,この大きな離心率の影響で,2:1 軌道共鳴に入っている惑星のシグナルが隠されている可能性がある.半分の軌道周期の惑星が存在する可能性があるため, 1.65 日の惑星の存在を仮定してフィッティングを行った.
軌道離心率をゼロに固定した場合と,フリーパラメータにした場合両方でフィットしたが,どちらも観測と合わなかった.そのため,高軌道離心率の惑星が 1 つ存在するという,シンプルな解が最も良く観測を説明すると結論づけた.
内側の惑星は,最小質量が 3 倍大きい長周期惑星を外側に持つ.そのため,外側の長周期惑星は内側の惑星を Lidov-Kozai 機構を通じて擾乱し,軌道の秤動を起こしている可能性がある (Kozai 1962, Lidov 1961).この機構が働いている間,内側の惑星の軌道離心率は非常に高い値になりうる.そのため,内側惑星は中心星の近星点通過の際に相互作用を起こし,非常に短周期の軌道へと円軌道化が起きる.全角運動量の保存則から,軌道傾斜角が変化する場合のみ軌道離心率は増加できる.そのため,Lidov-Kozai 共鳴の影響下にある内側の惑星は,恒星の赤道平面から傾いた軌道をとっていると思われる.
これは,惑星がトランジットしていればロシター効果を通じて検出することができる.ここでの困難点は,この惑星は 3.3 日周期であり,円軌道化のタイムスケールは一般に非常に短く,そのような配置での系の観測は困難であることである.
HD 136352 系
HD 136352
スペクトル型:G4V等級:V = 5.65
有効温度:5664 K
金属量:[Fe/H] = -0.34
質量:0.81 太陽質量
光度:0.99 太陽光度
自転周期:23.8 日
HD 136352b
軌道周期:11.5824 日軌道離心率:0.14
質量:4.81 地球質量
HD 136352c
軌道周期:27.5821 日軌道離心率:0.04
最小質量:10.80 地球質量
HD 136352d
軌道周期:107.5983 日軌道離心率:0.09
質量:8.58 地球質量
HD 136352 系の特徴
11 年に渡る観測から,合計で 649 のスペクトルを取得した.この系は,3 つのスーパーアースを持つ.内側の 2 惑星は,軌道周期が 5:2 の尽数関係に近い.また HD 21693 の 2 惑星とは異なり.最も内側の惑星は 5:2 共鳴の場合の軌道周期より僅かに長い.これは,このタイプの軌道配置をしている場合に一般的なものである.
PR
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天文・宇宙物理関連メモ vol. 38 Dumusque et al. (2015) CCDの構造に起因する1年周期の視線速度の混入