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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.06378
Bayo et al. (2017)
First millimeter detection of the disk around a young, isolated, planetary-mass object
(若い孤立した惑星質量天体の周りの円盤のミリ波での初めての検出)

概要

OTS44 は,周囲に円盤があることが知られてるわずか 4 つの自由浮遊惑星のうちの一つである.過去の観測でも,OTS44 は活発に周囲の物質を降着している一定量の円盤を持った,最も低温で軽い自由浮遊惑星 (~ 12 木星質量) であることが示されてきた.

ここでは,ALMA の Band 6 (344 GHz) で,この非常に若い円盤を持った天体の連続波観測を行い,光源は空間分解されていないが明確な検出を得た.若く質量の大きい中心天体 (準恒星) のための経験的な相関関係を介して,この天体の周りにある円盤質量を推定した.

その結果,円盤内のダスト質量は 0.07 - 0.63 地球質量の範囲内の値だと推定される.

この独特な円盤の特性を,最近報告されている,より高質量の若い天体 (褐色矮星) まわりの円盤と比較した.この目的は,軽い天体周囲での円盤の形成機構へ制約を与えるためである.

ダスト温度に対する極端な仮定を行った推定では,得られた円盤質量は重い褐色矮星周りに見つかっている円盤の一般的な傾向とはやや外れている.しかし信頼できる値の範囲からは,ダスト質量と中心天体質量の間に見られる関係と整合的な円盤質量であると考えられる.

背景

分子雲中での低質量天体の形成

高密度な分子雲環境の中にある準恒星質量コアが,恒星質量まで成長するのを阻害するためのいくつかの機構が提案されている.例えば,力学的相互作用 (Reipurth & Clarke 2001など),円盤分裂 (Goodwin & Whitworth 2007など),光蒸発 (Whitworth & Zinnecker 2004) などである.

別の形成手段として,褐色矮星と自由浮遊惑星 (質量が重水素燃焼質量限界 13 木星質量より小さいもの) は,直接崩壊による孤立モードで形成されるというものがある.これは,乱流によるもの (Padoan & Nordlund 2002など),フィラメントの崩壊 (Inutsuka & Miyama 1992など) によって形成される,アウトフローによって強い自己侵食を経験した低質量のコア (Machida et al. 2009) などがある.

円盤を持つ低質量天体

若い褐色矮星は星周物質を持つことが示されている.これは近赤外 (Oasa et al. 1999など),中間赤外 (Natta & Testi 2001など),遠赤外 (Harvey et al. 2012) や,単一鏡でのミリ波連続波観測 (Klein et al. 2003など) で検出されている.

数年前に,ミリ波干渉計がより高感度になり,2M J0444 (M 7.52,~ 0.05 太陽質量) がこの手の天体の中で初めて 1.3 mm の波長で空間分解された (CARMA observation, Ricci et al. 2013).この観測では,円盤の半径は 15 - 30 AU と推定された.

さらに低質量側の観測例もある.最も低質量の孤立した天体で円盤を持つものは,Proplyd 133-353 (≦ 13 木星質量, Fang et al. 2016),Cha 1109-7734 (~ 8 木星質量, Luhman et al. 2005),J0226565805327032 (~ 13 木星質量, Boucher et al. 2016),OTS44 (~ 12 木星質量, Joergens et al. 2013) がある.

今回の観測では,OTS44 をミリ波で観測し,この天体の円盤をミリ波で初めて検出した

OTS44 について

OTS44 は Chamaeleon I (Cha I) 星形成領域にある低質量天体である.質量は褐色矮星と惑星の境界に近いか,あるいは下回っている.

OTS44 のまわりの円盤は,中間赤外と遠赤外で赤外超過を捉えることでその兆候が検出されている.円盤の検出観測は,スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルで行われていた (Luhman et al. 2005, Harvey et al. 2012).
※注釈
OTS は,Chamaeleon I という星形成領域を観測した論文の著者名から採られており,"Oasa, Tamura, Sugitani" の頭文字.OTS 論文では全部で 61 天体がリストアップされている (Tamura et al. 1998, Oasa et al. 1999).

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