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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00466
Lewis et al. (2017)
Atmospheric Circulation and Cloud Evolution on the Highly Eccentric Extrasolar Planet HD 80606b
(非常に大きな軌道離心率を持つ惑星 HD 80606b における大気循環と雲の進化)

概要

非常に離心率の大きい (~ 0.9) ホットジュピター HD 80606b の,スピッツァー宇宙望遠鏡での観測から,系外惑星大気に関する情報を得ることができる.例えば,HD 80606b が近点を通過する時の観測からは,大気の輻射,移流,化学的なタイムスケールが直接測定でき,惑星の自転周期,潮汐散逸率,大気組成 (エアロゾルを含む) などの基本的な惑星の特性に制約を与えるのに使うことが出来る.

ここでは,HD 80606b の 3 次元 general circulation model を用いて,スピッツァー宇宙望遠鏡で
観測された位相曲線を再現出来る大気の力学について調査した.その結果,惑星の自転周期が擬同期 (pseudo-synchronous) 自転周期の 2 倍であった場合に,スピッツァーで観測した近点通過周辺の位相曲線をよく再現出来ることが判明した

さらに,近点通過周辺での惑星大気中における雲の速い形成と散逸,鉛直輸送が,観測された位相変動を良く説明することを発見した.

また,近点通過前後の可視光波長での観測が,この惑星大気中の主要な雲の成分の組成や,形成・移流のタイムスケールを制限するのに使えると予測される.

研究背景

HD 80606b は,3.94 木星質量,0.98 木星半径の惑星で,非常に軌道離心率が大きい (e=0.9332 ) 軌道にあるホットジュピターである (Pont et al. 2009).この惑星の極端に大きな軌道離心率は,伴星の存在による Kozai Migration (古在効果による軌道移動) の結果である (Qu & Murray 2003).

この惑星は最初に視線速度観測から発見された (Naef et al. 2001).その後,惑星の二次食 (Laughlin et al. 2009),トランジット (Moutou et al. 2009) が観測された.軌道離心率が非常に大きいため,軌道周期 ~ 111 日の間に,近点と遠点で ~ 800 倍もの入射フラックスの大きな変化を経験することになる.


スピッツァー宇宙望遠鏡でのこの惑星系の観測 (de Wit et al. 2016, Laughlin et al. 2009) では,近点通過の前後で惑星からのフラックスに大きな変化を持つことが観測されている.この観測からは,惑星大気の輻射のタイムスケールを推定する事ができる.de Wit et al. (2016) の観測では,4.5 µm と 8 µm でのこの惑星の大気の輻射タイムスケールの推定 (~ 4 時間) だけではなく,測定している場所の大気圧力における大気の吸収度と,惑星の全体の自転周期を測定した.

de Wit et al. (2016) によると惑星本体の自転周期は 93 時間で,”pseudo-synchronous (擬同期)” 自転周期 (Hut 1981) から予測されていた ~ 40 時間という値よりも有意に長かった.

これまでのスピッツァーの位相変化の観測の解釈 (Laughlin et al. 2009, de Wit et al. 2016) は半解析的なものであり,2 次元の大気流体モデル (Langton & Laughlin 2008) に基いていた.

モデル

Substellar and Planetary Atmospheric Radiation and Circulation (SPARC) モデル (Showman et al. 2009) を使用してシミュレーションを行った.大気組成は太陽組成を仮定し,また TiO と VO はオパシティの評価から取り除いた.これは,これらの分子種は大気の深いところに “cold trap” されてしまい,観測できる大気中には存在しなくなると考えられるためである (Fortney et al. 2008).

雲は global circulation model の中では無視した.ただし雲の効果は,シミュレーションの後処理の段階で考慮した.

自転周期は,Hut (1981) での 擬同期自転周期関係から,40.4761 時間を仮定した.しかし自転周期はこの基準値から大きく異なっている可能性もありうるため,その半分の 20.2380 時間と 2 倍の 80.9522 時間も計算した.

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