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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00509
Trifonov et al. (2017)
Three planets around HD 27894. A close-in pair with a 2:1 period ratio and an eccentric Jovian planet at 5.4 AU
(HD 27894 周りの 3 つの惑星.2:1 周期比を持つ近接したペアと 5.4 AU の高軌道離心率木星型惑星)

概要

HARPS を用いた視線速度観測で系外惑星の探査を行った.HARPS の新しい観測プログラムでは,惑星が一つ確実に発見されている系での,その惑星と平均運動共鳴に入っている惑星を持つような惑星系を探査している.このような系では,しばしば惑星の検出は観測頻度がスパースな (まばらな) 視線速度データのみを元に検出されている.

ここでは,過去のアーカイブデータと,HARPS での観測による新しい視線速度データから,K2V 星 HD 27894 の解析を行った.その結果,観測データは 3 つの惑星を持つモデルと整合的であった.また,最もよく合う軌道のパラメータにおける,惑星軌道の長期的な安定性も確認した.


結果,HD 27894 は少なくとも 3 つの重い惑星を持つ恒星であることが分かった.過去の観測で既に存在が知られていた周期 18 日の木星型惑星に加え,軌道周期 36 日の土星質量惑星を検出した.この惑星はおそらく 1 番目の惑星と 2:1 平均運動共鳴に入っている.

さらに,軌道周期 5170 日のややエキセントリック (e=0.39) な軌道を持つ,冷たく重い (5.3 木星質量) 惑星も検出した.


HD 27894 は,非対称な 2:1 平均運動共鳴に入っていると思われる,恒星近傍の狭い範囲に存在する重い惑星ペアと,それを周回する高軌道離心率の巨大惑星を持つ系である.この系は,惑星系の形成と進化シナリオの重要なマイルストーンとなるかもしれない.

パラメータ

HD 27894
スペクトル型:K2V
質量;0.8 太陽質量
金属量:[Fe/H] = 0.30
等級:V = 9.36

この恒星は非活発な太陽型星である.自転周期は遅く,およそ 44 日である (Moutou et al. 2005).過去の HARPS の観測で HD 27894b が検出されていた (Moutou et al. 2005).
HD 27894b
軌道周期:18.02 日
軌道離心率:0.047
軌道長半径:0.125 AU
最小質量:0.665 木星質量
HD 27894c
軌道周期:36.07 日
軌道離心率:0.015
軌道長半径:0.198 AU
最小質量:0.162 木星質量
HD 27894d
軌道周期:5174 日
軌道離心率:0.389
軌道長半径:5.448 AU
最小質量:5.414 木星質量

系の安定性の解析

この惑星系の軌道安定性を調べるため,SyMBA (Duncan et al. 1998) を用いて軌道積分を行った.その結果,一般に 10 Myr の間は安定であることが確かめられた.

重い外側の惑星 HD 27894d は,軌道間隔と離心率にほとんど変化は見られなかった.軌道間隔が大きいため,HD 27894d による内側の惑星ペア対する永年摂動は無視できる.

しかし HD 27894b と c は力学的に非常に活発であることが分かった.これは両惑星の質量が大きいことと,惑星同士の軌道間隔が小さいことから予想される結果である.

内側の 2 惑星は軌道周期比が 2:1 に近く,平均軌道離心率はそれぞれ 0.036 と 0.047 となった.

議論

この系は,重く,距離が離れたやや軌道離心率の大きい木星型惑星と,おそらく共鳴に入っている重い惑星のペアが共存するという独特な系である.これらの惑星の軌道配置からは,惑星形成と進化は,円盤の特性と原始惑星系円盤の段階での惑星の軌道移動率に大きく依存することが示唆される.内側の惑星ペアはおそらく,スムーズな軌道移動によって共鳴に捕獲されたと思われる.一方で外側の重い惑星は星周円盤が蒸発する前に 5.4 AU まで移動したと考えられ,そのため軌道移動が止まったと思われる.


内側の 2 惑星については 2:1 平均運動共鳴に入っていることを示す強い示唆があるが,最も良く合う軌道パラメータから間違いなく確認することは出来ていない.ベストフィットモデルでは軌道周期は 2:1 に非常に近いが,共鳴角は 0° から 360° を循環している.共鳴の配置としては,反平行の共鳴か,非対称配置であると思われる.

知る限りでは,この系は非対称の 2:1 平均運動共鳴を示す初めての系である.ただし,共鳴の性質とその起源を理解するためにはさらなる観測が必要である.例えば,現段階では 3 惑星の存在自体は確認できるが,内側の 2 惑星の共鳴の性質の解明や,軌道のパラメータの制限 (特に d について) はさらなるデータが必要である.

外側の d の視線速度データはデータの取得間隔が空いているため,真の軌道のパラメータがベストフィットモデルの不定性の範囲内に存在しないという可能性は排除できない.

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