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論文の元サイト
arXiv:1706.06723
Scott Gaudi et al. (2017)
A giant planet undergoing extreme-ultraviolet irradiation by its hot massive-star host
(高温で重い主星による極端紫外線輻射に曝されている巨大惑星)

概要

これまでに数千個の系外惑星が知られているが,A 型星 (有効温度 7300 - 10000 K) の周囲でのトランジット惑星は 6 個のみが知られていて,さらに高温の B 型星では発見されていない.

例えば WASP-33 は有効温度 7430 K の A 型星であり,これまで知られていた中で最も高温なトランジット惑星 WASP-33b を持つ.強い輻射を受けているため,WASP-33b の表面は M 型の赤色矮星と同程度の温度を持つ.WASP-33b は昼側と夜側で大きな温度差があり,また高い日射量と関係していると思われる大きく膨張した半径を持っている.しかしそのような高温の昼側であっても,大気の組成は分子が主体であると考えられ,またその惑星が受けている紫外線輻射の水準からは,大気は主星の寿命の間に大きく蒸発することは考えにくい.


ここでは,明るい恒星 HD 195689 (KELT-9) の観測結果について報告する.
この恒星は軌道周期 1.48 日のトランジット惑星 KELT-9b を持っていることが判明した.中心星 KELT-9 の有効温度は 10170 K であり,スペクトル型では A 型と B 型の境界線付近に位置する.

また,惑星の昼側の温度は 4600 K (~ 4300℃) と測定された.これは K4 主系列星と同程度の温度である.K 型星では分子はほとんど解離されるため,KELT-9b の昼側大気の主要なオパシティ源は原子状金属と考えられる.

さらに,KELT-9b は WASP-33b よりも 700 倍大きな極端紫外線 (91.2 nm より短波長の輻射) を受けている,そのため,予測される質量放出率の取りうる範囲は,中心星が主系列の間に惑星のエンベロープを大きく失う程度の大きさになる.

A 型星周りでの系外惑星探査

初めてのトランジット惑星は,低温な太陽型星の周りで発見された.
高温の恒星はスペクトル線が少なく,自転も高速なため,ドップラー法による惑星の確認が困難になる.

有効温度が高い早期 F 型や A 型星の周りで惑星が発見されはじめたのはこの数年である.例えば WASP-33b などがその一例である.WASP-33b の発見によって,高速自転する高温星のまわりのトランジット惑星を,比較的低分散の視線速度観測とドップラートモグラフィー (Doppler tomography) によって検出できることが示された.しかし,惑星を持つ恒星で最も高温だったものでも,有効温度は 7500 K であった.


重い恒星は進化に伴って冷えて自転が遅くなるため,詳細なドップラー観測が可能になる (※冷えることによってスペクトル線が増え,自転が遅くなることでスペクトル線の広がりが狭くなるため).そのため重い恒星周りでの惑星探査は,いわゆる ’retied A-star’,準巨星か巨星に進化した恒星の周りで行われた.

このような恒星の周りでは,太陽型の主系列星に比べて短周期惑星が欠乏していることが知られている.この欠乏の一つの解釈は,重い恒星の周りの惑星の分布は進化していない太陽型星と同じだが,その後の主星の進化の段階で惑星が主星に飲み込まれるか,主星がまだ高温の段階での強い輻射によって蒸発するかして消滅するというものである.
別の解釈は,これらの恒星は実際には太陽と似た質量を持っており,太陽型星は惑星を蒸発させるほどの強い紫外線放射を出さないため,retired A star まわりでの短周期惑星の欠乏はまさに惑星の飲み込みによるものである,とするものである.

そのため,確実に質量が大きいことが分かっている恒星がまだ主系列段階にいる間の短周期惑星の分布を知ることが重要である.これまでには,2 太陽質量よりも重い恒星の周りでのトランジット惑星は知られていなかった.

パラメータ

KELT-9
質量:2.52 太陽質量
半径:2.362 太陽半径
光度:53 太陽光度
有効温度:10170 K
金属量:[Fe/H] = -0.03
射影した自転速度:111.4 km s-1
KELT-9b
軌道周期:1.4811235 日
軌道長半径:0.03462 AU
質量:2.88 木星質量
半径:1.891 木星半径
平均密度:0.53 g cm-3
平衡温度:4050 K (アルベド 0,効率的な熱循環仮定した推定値)
入射フラックス:6.11 × 1010 erg s-1 cm-2
spin-orbit alignment:-84.8 度

詳細な結果

高温な恒星周りのトランジット惑星

中心星の KELT-9 は有効温度 10170 K と非常に高温で,2.5 太陽質量と重い恒星である.スペクトル型は B9.5 〜 A0 である,また,年齢は 300 Myr (3 億年) である.この年齢の推定値は,この質量の恒星の主系列段階の寿命である 500 Myr より十分若い.そのためこの恒星は retied A-star に進化し始めるより十分前の段階である.

この恒星は,トランジット惑星を持つ事が知られている A 型星としては 7 番目である.また,トランジットする巨大惑星を持っている恒星としては最も高温で,最も重く,最も光度が大きい.さらに,トランジットするホットジュピターを持つ恒星としては最も明るい V バンド等級を持ち,この等級は HD 209458 より僅かに明るい.

非常に高温な惑星

中心星が非常に明るく,さらに惑星は恒星に近いため,惑星の平衡温度は非常高くなる.惑星のアルベドをゼロと仮定し,惑星中での完全な熱の再分配を仮定すると,平衡温度は 4050 K となる.これは晩期 K 型星と同程度の温度である.

また,z’-band での二次食では食の深さ 0.1% を検出しているが,この結果から大きな熱放射シグナルを検出できた.この二次食の観測からは,昼側の温度は 4600 K と測定された.これは先ほどの平衡温度の推定値よりも高く,昼側から夜側への熱の再分配の効率が悪いことを示唆している.また昼側の表面温度は中期 K 型星に相当する.

KELT-9b は理論モデルよりも大きい半径を持ち,1.9 木星半径である.中心星からの熱の非効率的な再分配と惑星半径の膨張 (どちらも WASP-33b でも見られている) は,中心星からの強力な日射に関係していると考えられるが,確かな物理過程は未だに不明である.


これまでも A 型星まわりに惑星は発見されていて,そのうちのいくつか (WASP-33b など) は表面温度が低質量の恒星程度であることが確認されているが,KELT-9b の表面温度は過去の観測例よりも 1000 K も高温である.またこれまでのトランジット惑星を持つ A 型星と比べると,KELT-9 の有効温度は 2500 K も高温である.

惑星の表面温度が非常に高いため,昼側の吸収源は K 型星のように原子だろうと考えられる.対照的に,他のすべてのトランジット惑星は昼側の温度が < 3850 K であり,分子種が存在するためには十分な低温である.

KELT-9 系の今後の進化

KELT-9 系の将来的な進化は不確実であるが興味深い,KELT-9b が受けている高い紫外線フラックスからは,大気は蒸発していることが示唆される.

紫外線フラックスから大気散逸率を推定すると,1010 - 1013 g s-1 となった,この値の上限値からは,惑星は 600 Myr の間にその外側エンベロープを失うと見積もられる (600 Myr は,この恒星が主系列を離れて赤色巨星分枝へ移るまでのおおむねの時間である).

これらの見積もりは,惑星の蒸発の物理は極めて複雑で,特に恒星の活動度が不明であることにより非常に不確定である.いずれにせよ,質量放出率の最も低い側の見積もりであったとしても,散逸する大気はハッブル宇宙望遠鏡での観測で測定できるだろう.


一方で,KELT-9 は 200 Myr のうちにコアでの水素を使い果たし,現在の 2.4 太陽半径から,5 太陽半径へ進化する.同時に,有効温度は 8000 K まで低下する.その後恒星は準巨星分枝へ進化し,有効温度は 5000 K まで低下,半径は 8 太陽半径へ拡大する.

赤色巨星分枝に到達する段階で,KELT-9 の半径は KELT-9b の公転軌道を超える.

恒星と惑星がどうなるかは現段階では全く不明である.
質量放出率が先ほどの見積もりより小さい場合,惑星はガス惑星のままであり,惑星は膨張してきた中心星に飲み込まれる.これは一時的な発光現象を引き起こす.また飲み込みの結果として,惑星の残骸によって供給された,リチウム過剰で異常に高速で自転する赤色巨星となる.

一方で,もし惑星が岩石コアを持っており,この段階で外層が完全に蒸発していた場合は,準巨星の周りを公転するスーパーアースとなる.KELT-9b に類似した,重い高温の恒星を周回する短周期巨大惑星が稀少な存在でないのであれば,準巨星を公転する近接スーパーアース残骸が存在する可能性を示唆する.この予測は今後の Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) ミッションで確かめられるだろう.

データの偽陽性解析

KELT-9 の観測では,最初のトランジット時の分光観測では,非常に弱い Rossiter-McLaughlin (RM) シグナルが得られた.これは非常にノイズが多いデータであった.観測されているトランジット深さと恒星の射影した自転速度の大きさから考えると,この RM シグナルの欠乏は驚くべきことであった.そのため初めはこの系は偽陽性であると考えていた.

しかしドップラートモグラフィーでの観測を行うことで,恒星の自転軸の方向と一致する惑星の影を暫定的に検出した.恒星の自転軸と惑星の公転軸がこのような位置関係になっていた場合,小さい RM シグナルを説明できる.

さらなるデータ処理と 2 回の追加のドップラートモグラフィー測定から,惑星が実際に恒星の自転軸にほぼ沿った方向にトランジットをしていることを確認することが出来た.

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