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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1706.06602
Millholland & Laughlin (2017)
Supervised Learning Detection of Sixty Non-Transiting Hot Jupiter Candidates
(60 個のトランジットしないホットジュピター候補の教師あり学習での検出)
ここでは,ケプラーでの測光観測データから,トランジットしない短周期巨大惑星を検出するためのアルゴリズムについて提案する.このプロシージャは,位相曲線そのものを,惑星が存在する証拠として用いる.教師あり学習アルゴリズムを使用し,合成した位相曲線の時間依存した特性を認識し,これらの特性にマッチするシグナルの検出を行う.
まずはこのアルゴリズムの可能性について示した後,142630 個の F・G・K 型 のケプラーで観測された恒星の位相曲線をクラス分けした.これらは,確認された惑星や KOI (Kepler Object of Interest,トランジットシグナルと思われる変動が見られた場合に与えられる番号) を持たないものである.
上記のサンプルそれぞれに対して,トランジットしていない惑星が存在することによって位相曲線の変動が起きている可能性を計算した.ここでは,トランジットしないホットジュピターを持つ可能性が高い候補 60 個を同定した.また,これらの候補において,惑星のアルベドと,位相曲線の極大のオフセットへの制限を与えた.
系外惑星の可視光での位相曲線は,4 つの独立した要素の重ね合わせとして現れる.惑星表面での恒星光の反射,惑星自体の熱放射,惑星の潮汐力によって恒星が楕円形に変形することによる光度の変動 (ellipsoidal variation),ドップラービーミング/ブースト (Faigler & Mazeh 2011) の 4 つである.
Ellipsoidal variation は,恒星の潮汐変形に伴う光度の変化 (Morris 1985) である.また,ドップラービーミングは,惑星の公転運動に伴って恒星が観測者に近づいたり遠ざかったりすることによる相対論的な効果である (Hills & Dale 1974など).
潮汐変形による変動とドップラービーミングによる変動の大きさは,公転する惑星の質量に敏感に依存する.これにより,測光学的に惑星質量へ制約を与えることが出来る (Lillo-Box et al. 2016).
平均的なホットジュピター (軌道周期 3 日,1.3 木星半径,1 木星質量) が太陽型星を公転する場合,惑星表面での反射光の要素は,典型的には他の要素よりも 1 桁程度大きい.
ケプラーによって,多数の可視光での光度曲線が得られている.加えて,惑星の位相曲線と二次食の包括的な探査も行われている.しかし,ケプラーのトランジット惑星で測光的な変動が検出可能なもののサンプル数 (~ 15 例) は,惑星大気の性質を統計的,または集団的に取り扱うには少ない.そのため,このような観測をトランジットしない惑星へも拡張することが望ましい.このような惑星の視線速度の半振幅は大きい値が期待できるため,ドップラー速度測定で惑星の存在を確認できるだろう.
トランジットしない惑星を,測光変動から検出することについては過去に研究がある.その例が,The Beaming, Ellipsoidal, and Reflection/heating (BEER) モデル (Faigler & Mazer 2011) などである.これまでに,BEER モデルはトランジットしない伴星天体の検出に成功し (Faigler et al. 2012),検出可能な位相曲線変動を示すトランジット惑星の特徴づけにも成功している (Faigler et al. 2013など).
これらの手法の主要な困難点は,木星サイズの惑星がある場合,潮汐変形による変光とドップラービーミングの要素は,典型的には反射光よりも小さいことである.そのため測光観測で得られるシグナルは正弦曲線的になり,恒星や機器の変動によるものと区別するのが難しい.
ここでは,トランジットしない惑星の兆候を位相曲線から検出する手法について提案する.既知のトランジットするケプラー惑星の位相曲線の特徴と,合成によって生成されたデータセットを訓練セットとして使用し,教師あり学習を用いてクラス分けするという手法を用いる.
未知のパラメータは,軌道周期,惑星質量,惑星半径,軌道傾斜角,平均幾何学的アルベド,アルベドの共分散振幅,平均の peak offset,offset の共分散振幅,コヒーレンスタイムスケールである.共分散振幅とコヒーレンスタイムスケールは,惑星は表面特徴の時間変化を持ち,その空間依存した反射率が時間によって変化し,観測される位相曲線の形状と振幅に影響を与える可能性を考慮して導入したパラメータである.
arXiv:1706.06602
Millholland & Laughlin (2017)
Supervised Learning Detection of Sixty Non-Transiting Hot Jupiter Candidates
(60 個のトランジットしないホットジュピター候補の教師あり学習での検出)
概要
短周期惑星の可視光での測光観測での変動は,惑星の大気の組成や力学についての情報を与えてくれる.可視光での位相曲線は多くの系外惑星で検出されているが,現在のところ,それらを集合的に取り扱うことが出来るほど多くが観測されているわけではない.そのため,位相曲線の観測をトランジット惑星だけでなく,トランジットしない惑星へも広げるというモチベーションがある.ここでは,ケプラーでの測光観測データから,トランジットしない短周期巨大惑星を検出するためのアルゴリズムについて提案する.このプロシージャは,位相曲線そのものを,惑星が存在する証拠として用いる.教師あり学習アルゴリズムを使用し,合成した位相曲線の時間依存した特性を認識し,これらの特性にマッチするシグナルの検出を行う.
まずはこのアルゴリズムの可能性について示した後,142630 個の F・G・K 型 のケプラーで観測された恒星の位相曲線をクラス分けした.これらは,確認された惑星や KOI (Kepler Object of Interest,トランジットシグナルと思われる変動が見られた場合に与えられる番号) を持たないものである.
上記のサンプルそれぞれに対して,トランジットしていない惑星が存在することによって位相曲線の変動が起きている可能性を計算した.ここでは,トランジットしないホットジュピターを持つ可能性が高い候補 60 個を同定した.また,これらの候補において,惑星のアルベドと,位相曲線の極大のオフセットへの制限を与えた.
研究背景
恒星-惑星系の位相曲線
可視光での位相曲線は,赤外線での位相曲線とともに,惑星大気に関する空間積分された時間依存性のある情報を与える.位相曲線からは,惑星大気の組成 (Rowe et al. 2006など),昼夜間の温度差と熱の再分配 (Knutson et al. 2007など),雲の存在と反射率 (Demory et al. 2013など),大気の天候の変動 (Armstrong et al. 2016),磁場強度 (Rogers 2017) などの情報を得ることが出来る.系外惑星の可視光での位相曲線は,4 つの独立した要素の重ね合わせとして現れる.惑星表面での恒星光の反射,惑星自体の熱放射,惑星の潮汐力によって恒星が楕円形に変形することによる光度の変動 (ellipsoidal variation),ドップラービーミング/ブースト (Faigler & Mazeh 2011) の 4 つである.
Ellipsoidal variation は,恒星の潮汐変形に伴う光度の変化 (Morris 1985) である.また,ドップラービーミングは,惑星の公転運動に伴って恒星が観測者に近づいたり遠ざかったりすることによる相対論的な効果である (Hills & Dale 1974など).
潮汐変形による変動とドップラービーミングによる変動の大きさは,公転する惑星の質量に敏感に依存する.これにより,測光学的に惑星質量へ制約を与えることが出来る (Lillo-Box et al. 2016).
平均的なホットジュピター (軌道周期 3 日,1.3 木星半径,1 木星質量) が太陽型星を公転する場合,惑星表面での反射光の要素は,典型的には他の要素よりも 1 桁程度大きい.
ケプラーによって,多数の可視光での光度曲線が得られている.加えて,惑星の位相曲線と二次食の包括的な探査も行われている.しかし,ケプラーのトランジット惑星で測光的な変動が検出可能なもののサンプル数 (~ 15 例) は,惑星大気の性質を統計的,または集団的に取り扱うには少ない.そのため,このような観測をトランジットしない惑星へも拡張することが望ましい.このような惑星の視線速度の半振幅は大きい値が期待できるため,ドップラー速度測定で惑星の存在を確認できるだろう.
トランジットしない惑星を,測光変動から検出することについては過去に研究がある.その例が,The Beaming, Ellipsoidal, and Reflection/heating (BEER) モデル (Faigler & Mazer 2011) などである.これまでに,BEER モデルはトランジットしない伴星天体の検出に成功し (Faigler et al. 2012),検出可能な位相曲線変動を示すトランジット惑星の特徴づけにも成功している (Faigler et al. 2013など).
BEER モデルの機械学習による検出
Placek et al. (2014) では,光度曲線中での反射光,熱放射,潮汐変形による変光,ドップラービーミングの位相曲線成分の存在を調べるためのベイズモデルを提案した.さらに Milliholland et al. (2016) では,ケプラーの光度曲線中における,トランジットしないホットジュピターの検出可能性について考察している.これらの手法の主要な困難点は,木星サイズの惑星がある場合,潮汐変形による変光とドップラービーミングの要素は,典型的には反射光よりも小さいことである.そのため測光観測で得られるシグナルは正弦曲線的になり,恒星や機器の変動によるものと区別するのが難しい.
ここでは,トランジットしない惑星の兆候を位相曲線から検出する手法について提案する.既知のトランジットするケプラー惑星の位相曲線の特徴と,合成によって生成されたデータセットを訓練セットとして使用し,教師あり学習を用いてクラス分けするという手法を用いる.
未知のパラメータは,軌道周期,惑星質量,惑星半径,軌道傾斜角,平均幾何学的アルベド,アルベドの共分散振幅,平均の peak offset,offset の共分散振幅,コヒーレンスタイムスケールである.共分散振幅とコヒーレンスタイムスケールは,惑星は表面特徴の時間変化を持ち,その空間依存した反射率が時間によって変化し,観測される位相曲線の形状と振幅に影響を与える可能性を考慮して導入したパラメータである.
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