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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.07605
Komacek & Youdin (2017)
Structure and Evolution of Internally Heated Hot Jupiters
(内部加熱を受けているホットジュピターの構造と進化)

概要

ホットジュピターは強い恒星の輻射を受け,表面の平衡温度は 1000 - 2500 K と高くなる.入射する輻射は惑星の薄い外層,気圧にすると 0.1 bar 程度の深さまでを直接加熱する.輻射を受けているホットジュピターの標準的な進化モデルでは,予測されるトランジット半径は実際の観測よりもかなり小さいことが分かっている.

過去の研究では,大気の深い位置での加熱によって観測される半径を説明できるとしてきた.この場合,必要な加熱率は,惑星が中心星の輻射から受けている加熱率のうち小さい割合で良いとされる,

ここでは,HD 209458b の進化モデルの一式を提案する.このモデルでは,惑星大気内部での加熱の深さと強度の両方を,現状では不明確である加熱機構を特定はせず,系統的に変化させた.このモデルは,高温で高エントロピーの惑星の状態からスタートさせ,対流する内部が冷えるに連れて半径が小さくなる.この時,惑星内部で与えた加熱が,この惑星の冷却を抑制する.

その結果,圧力が 1 - 10 bar の領域の非常に薄い範囲での加熱は,合計の加熱率が恒星の入射エネルギーの 10%程度より大きい場合を除いては,冷却を大きく抑制出来ないことが判明した.また,100 bar のより深い場所での加熱があった場合は,冷却開始から 5 Gyr 経過した後に,観測されているトランジット半径である 1.4 木星半径という値を説明するために必要なエネルギーは,恒星輻射の 1%でよいことも分かった.

一般的には,深い位置でより大きい加熱がある場合は,より大きなホットジュピターの半径を説明できる.驚くべきことに,104 bar の深さにエネルギーが注入される場合 (これは惑星の質量で言うと,中心から外側までの 99%の質量に該当),惑星の中心に加熱源がある場合と同じくらい効率的に冷却を抑制することが出来る.

結論として,多くのホットジュピターの半径を説明するためには,比較的浅い領域での加熱が必要であることを発見した.ただしこれは,この加熱が惑星進化の初期の段階から発生しており,その進化期間を通じて存在し続ける場合の話である.

研究背景

発見されているホットジュピターの中には,高エントロピーの初期状態から冷却のみを考慮した進化をした場合に期待される半径よりも大きいものが多数発見されている.おおよそ半数程度のホットジュピターが,進化モデルから期待されるものよりも大きな半径を持つことが分かっている.

中心星からの輻射を考慮することによって,惑星内部の輻射層が深くなり,これが放射対流境界 (radiative-convective boundary, RCB) を高圧の内部へ押し下げる効果がある.そのため惑星の冷却率を下げる方向に働くが,これは惑星半径に 20%以下の影響しか与えない (Guillot et al. 1996など).

また惑星の半径は,惑星の平衡温度の上昇に伴って大きくなるという傾向も見られている (Laughlin et al. 2011).その後の解析では,惑星の平衡温度が 1000 K 以下の場合は,冷却のみを考慮した進化モデルと一致することが分かっている (Demory & Seager 2011など).

さらに,再膨張したホットジュピターの存在が,恒星の輻射が半径の膨張を駆動している証拠になるという説が提案されている (Lopez & Fortney 2016).主系列段階を過ぎた恒星を公転する,膨張半径を持つホットジュピターの検出も増えている (Grunblatt et al. 2016など).そのため,大きな半径を持つホットジュピターの原因となる機構は,入射する恒星のフラックスといくらかの相関があると考えられる.


ホットジュピターの半径の異常を説明するための説には,大きく分けて 3 つのクラスがある.潮汐的機構,ホットジュピターの微細物理の理解の改善,および入射する恒星のフラックス駆動によるものである (Weiss et al. 2013など).

潮汐散逸は,多くのホットジュピターが持つ大きな半径を説明する機構として最初に提案されたものである (Bodenheimer et al. 2001).しかし,潮汐散逸が有効に働くためには,惑星の離心率が外部の伴星によって上昇させられている必要がある.これは,潮汐散逸は惑星の離心率を減衰させるからである.

Arraas & Socrates (2010) は,惑星自身の大気中の熱潮汐が惑星を同期回転状態から外し,惑星の内部が恒星の潮汐力と結合して潮汐散逸を可能にするというモデルを提案し,潮汐散逸機構の適用可能性を大きくした.

2 番目のクラスの機構は,内部加熱源を必要としないものである.これには,enhanced opacities (大きな大気不透明度) を含むもの (Burrows et al. 2007),そして惑星内部の熱輸送が二重拡散対流によって低下すると考えるものである (Chabrier & Baraffe 2007).

ガス惑星の内部構造の理解はたしかに重要であるが,これらの半径を大きくする微細物理の機構が,入射フラックスと相関するかどうかは不明確である.

3 番目のクラスは,中心星の輻射を受けている高エントロピーの領域から,惑星の内部へ熱を輸送し,そこで散逸を起こすことで内部のエントロピーを変化させるというものである.このクラスに分類される仮説は全て,ホットジュピターの大気中の強い大気循環と関連している.この大気循環は,大気の大きな昼夜間の温度差によって ~ km/s の東西風が駆動されるというものである (Showman & Guillot 2002など).

このクラスは,さらに 2 つのクラスに分割することが出来る.流体力学的なものと,磁気流体力学的なものである.後者はオーム散逸として知られており,惑星の双極子磁場中で部分的に電離した大気によって駆動される電流が加熱源となるものである.この電流が,惑星内部で非理想的な散逸を起こす.この機構は Batygin & Stevenson (2010) で提案された.

その後多くの研究が行われ,それらの中にはオーム散逸仮説を支持するものもあれば,否定するものもある.

よりシンプルな流体力学的な散逸機構であっても,詳細は未だによく理解されていない.このクラスに属する機構で最初に提案されたのは,大気中での下向きの運動エネルギーの輸送 (Guillot & Showman 2002など) である.これは,ホットジュピター大気中での ~ 10 - 100 m/s の垂直方向の風が,エネルギーを大気下部へ輸送するというものでえある.大気株へ輸送されたエネルギーはその後,RCB 付近のシア層で,例えばケルビン・ヘルムホルツ不安定性などで散逸する.

その他の有り得る機構としては “Mechanical Greenhouse” (Youfdin & Mitchell 2010) がある.これは惑星の外部放射領域での強制された乱流混合によって,熱を下部に輸送するというものである.このモデルを踏まえ,Tremblin et al. (2017) は 2 次元の定常状態力学モデルを用い,大きいスケールの循環そのものによって下向きのエントロピー輸送を生み出すことができ,HD 209458b の半径を説明しうることを示した.

しかし,散逸が内部エントロピーに強く影響するような深さでの,3 次元大気循環を定量的に評価するようなホットジュピターの時間依存シミュレーションはこれまでに存在しない.



ホットジュピターの半径異常を説明するために,これまでにたくさんの機構が提案されているが,ホットジュピターのサンプル全体を説明出来るような議論は存在しない.そのため,ここでは特定の機構に注目することはせず,どんな強さ,どんな場所での内部加熱が,ホットジュピターの進化と構造に影響を与えるかに注目した.

Spiegel & Burrows (2013) では,ホットジュピター大気へのエネルギーの注入は,深い場所であるほど半径の膨張に対して効果的であることを示した.また,トランジット半径と散逸の聞いている圧力には明確に非線形の関係がある.さらに,惑星の中心部での加熱は半径が平衡に落ち着くまでのタイムスケールを長くする事ができると指摘し,これは加熱が大気のみに適用された場合は不可能であることも指摘した.
しかし彼らの研究は,ホットジュピターの構造進化に対する一定の圧力での加熱の影響については調べていなかった,これは,彼らの数値モデルでは放射的な大気の進化と惑星の対流的な内部は結びつけていなかったからである.

Ginzburg & Sari (2015) の自己相似解析モデルで示されているように,強い加熱によって大気の外側で対流領域が発生することは可能である.彼らの解析的なモデルによると,外側での対流領域の有無は,注入される熱の強さおよび深さの組み合わせと,入射する恒星のフラックスによって決まる.
この解析モデルでは加熱強度と深さにおける遷移の存在も予言している.これは,外側の対流領域における加熱が,トランジット半径への影響に大きな効果を及ぼすようになるかどうかという遷移である.

ここでは,この予言について,詳細な数値的進化モデルを用いて検証を行った.ここで用いたのは,恒星と惑星の構造のコード MESA (Paxton et al. 2011, 2013, 2015) である.またこのモデルでは,加熱が内側の放射対流境界よりも深いところで起きるようなレジームについて考慮することも可能にした.このレジームは Ginzburg & Sari (2015) では直接考慮されていなかった.
新たに考慮したその他の可能性としては,惑星内部のある構造的な場所,例えば時間によって一定の圧力領域に固定されていない,輻射対流境界における散逸の効果である.

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