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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1709.03502
Keating & Cowan (2017)
Revisiting the Energy Budget of WASP-43b: Enhanced day-night heat transport
(WASP-43b のエネルギー収支の再検討:増幅された昼夜熱輸送)

概要

Stevenson et al. (2014, 2017) では WASP-43b の昼夜間の大きな温度差の存在が報告されたが,この原因についてはこれまで説明が存在しなかった.ここでは,この惑星のエネルギー収支について,惑星の昼側の観測における反射光の影響を考慮して再検討を行った.また,示唆されている夜側の温度の物性についても再検討を行った.

過去の赤外線波長の二次食 (※注釈:恒星の裏側に惑星が隠れることで,惑星表面での反射光・熱放射が遮られる現象) の解析では,惑星表面での反射光は非常に小さく,無視できると仮定されていた.ここでは,惑星表面での反射光,熱放射,大気中の水蒸気の吸収を含めた現象論的な二次食のモデル化を行い,公開されているハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の食のデータのフィッティングに用いた.

解析からは近赤外線での惑星の幾何学的アルベドは 27%であることが示唆され,昼側の表面温度として,過去の報告より低い 1527 ± 10 K という値が推定された.

さらに,過去の観測で得られている光度曲線を従来の手法で解析した場合,惑星の夜側における非物理的な負のフラックスが観測の再現に必要であることを発見した.惑星の全ての経度において,輝度が負の値にならないように非物理的な要素を修正した結果,惑星の夜側の有効温度は過去の報告よりも高温な 1076 ± 11 K となった.

ここで得られた,過去の報告より低温な昼側温度と高温な夜側の温度からは,この惑星大気中での熱の再分配効率は 47%であると推定され,これは HD 209458b と本質的に同じである.また,その他のホットジュピターとも近い値である.
従って今回の解析では,低い輻射温度を持つ惑星は,より効率的な昼夜間熱輸送を持つという傾向がある事を再確認した.

さらに,
(1) 多くのホットジュピターの近赤外線での二次食の測定の際には,惑星表面での反射光は重要であること
(2) 得られた位相曲線は,非物理的でない経度方向の輝度分布でフィットする必要がある

という点を指摘する.特に後者は,単に「惑星の円盤面で積分した光度曲線が負の値にならない」という要請だけでは不十分である.

WASP-43b について

WASP-43b は Hellier et al. (2011) によって検出された惑星である.半径は 1.036 木星半径,質量は 2.034 木星質量,軌道周期は 0.81 日である (Gillon et al. 2012).
惑星の特徴は他のホットジュピターと類似しているが,中心星は比較的低温の K7V 星である.

複数の測光バンドで,この惑星の二次食が検出されている (Wang et al. 2013など).また,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の観測による,完全な軌道位相曲線が赤外線で得られている (Stevenson et al. 2014, 2017).放射スペクトルと透過スペクトルの測定からは,この惑星大気中の水の精密な存在度が決定されている (Kreidberg et al. 2014).またトランジット時刻の観測から,軌道が潮汐力によって崩壊しているという証拠は検出されなかった (Hoyer et al. 2016).

過去の解析では,ホットジュピターに典型的な,東向きのホットスポットのずれの存在が報告されている (※注釈:最も高温な点が,恒星の直下よりも東にずれている),また,惑星の昼側から夜側への熱の輸送がほとんど存在しない事が示唆されていた (Stevenson et al. 2014, 2017など).

Kataria et al. (2015) による3 次元大気循環モデルはこの観測結果をよく再現し,またホットスポットのずれは,赤道上でのスーパーローテーションの存在を示すものである.しかし,そのモデルから予測される惑星の夜側の特性は,観測されている夜側からの低いフラックスと比較すると明るすぎる (=高温すぎる) ことが指摘されている.この違いの原因として,夜側大気中にある雲による赤外線放射の吸収が提案されている (Kataria et al. 2015, Stevenson et al. 2017).

原因が雲であろうとなかろうと,過去の観測結果を額面通り受け取ると,この惑星は昼側から夜側への熱の輸送が非常に弱いことを示している.これは,理論的な予測とも経験的な傾向とも全く逆である.理論的にも観測からの経験則でも,惑星が受ける輻射が大きくなるほど昼夜間の温度差が大きくなると考えられている.

二次食観測における反射光と熱放射

過去の解析では,惑星表面での反射光は惑星からの熱放射に比べると無視できると仮定している.López-Morales & Seager (2007) では,ボンドアルベドが低く,熱の再分配が非効率的で,恒星から強い輻射を受けているホットジュピターの場合は,惑星からの熱放射は反射光を上回ることが示されている.

過去の研究からは,大部分のホットジュピターは可視光の波長で非常に低い幾何学的アルベドを持つことが示されている (Rowe et al. 2008, Dai et al. 2017など).そのため,近赤外線での反射光も無視できると考えられてきた.しかし López-Morales & Seager (2007) では,効率的な熱の再分配がありボンドアルベドが 50%の惑星では,近赤外線領域では反射光が熱放射を上回る場合があることも示している.

Schwartz & Cowan (2015) は,熱的位相変動から示唆されるボンドアルベドと,可視光の測定から得られる幾何学的アルベドの間には,系統的なずれが存在することを発見した.この結果は,ホットジュピターが 30 - 50%の近赤外線放射を反射し得ることを示唆する.もしホットジュピターがある波長の光を反射すると,その波長での二次食の深さは大きくなる.これにより,反射光の影響が無視されていた場合,昼側の温度を過大評価してしまうことになる.惑星の合計のボロメトリックフラックスは温度の 4 乗に比例するため,温度の小さな誤差は大きなボロメトリックフラックスの誤差に繋がる.

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