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arXiv:1709.07006
Kaib et al. (2017)
Simulations of the Fomalhaut System Within Its Local Galactic Environment
(局所銀河環境におけるフォーマルハウト系のシミュレーション)

概要

フォーマルハウトA は最もよく研究されている近傍の恒星の一つである.この恒星の周りには,惑星と思われる天体フォーマルハウトb が発見されており,さらに離心率を持った形状のダストの帯も持つ.

離心軌道にあるダストベルトはしばしば,1 個かそれ以上の,直接検出されていない惑星の力学的特徴であると解釈される.しかしこの系は,フォーマルハウトA から ~ 105 AU 離れた場所に 2 つの恒星の伴星を持っている.

ここでは.フォーマルハウトの伴星の力学的な進化とあわせて,フォーマルハウトA の惑星ダストベルトの進化をモデル化した,これらの伴星が,ダストベルトの分布の形状を再現する可能性があるかどうかを判断するための,新しいシンプレクティック積分を開発した.

数値シミュレーションを用いた結果,フォーマルハウトA と フォーマルハウトB の近接遭遇が発生しうることを見出した.発生しうる近接遭遇のうち ~ 25%の確率で,2 つの恒星はお互いの 400 AU の距離を通過する.このような遭遇の結果として起こる帰結には非常に多様性があるが,これらの近接遭遇はほとんど常にフォーマルハウトA のダストベルトの軌道離心率を励起し,それらのうちいくらかは観測されているダストベルトの形状に非常に似た状態を作り出す場合もある.

これらの結果を元に,フォーマルハウトA の伴星との近接遭遇は,離心軌道を持つダストベルトの起源として考慮されるべきであるという点について議論する.特に,観測されているダストベルトの形状を形作れような惑星が検出されない場合,伴星の遭遇によってダストベルト形状が歪められたという可能性を考慮すべきである.

より一般的な結果としては,非常に遠距離にある伴星の恒星は,しばしば中心星が持つデブリ円盤に非対称性を生じさせ得るということが,今回の研究から結論付けられる.

フォーマルハウト系について

ダストベルトの発見

主星のフォーマルハウトA は 1980 年代に,スペクトルに赤外超過 (infrared excess) を持つことが観測され,星周ダストを持つことが示唆されている (Gillett 1986, Aumann 1985など).

その後の 10 年でのサブミリ波を用いた電波観測では,この恒星のダスト円盤は,内側に半径 ~ 100 AU の大きな空洞を持つ,帯状の分布をしている事が示唆された (Holland et al. 1998など).しかし,より新しい観測では別の軽いダスト源が 8 - 15 AU の距離に存在していることが示されている (Stapelfeldt et al. 2004など).

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた外側のダストベルトの可視光観測では,外側のダストベルトははっきりとした内縁を持ち,またダストベルトの中心はフォーマルハウトA の位置とはずれていることが判明した.そのため,ダストベルトの形状は円形ではなく,離心軌道にあることが分かった (Kalas et al. 2005).

その後の,ミリ波,サブミリ波,赤外線,可視光での観測でもダストベルトの形状が確認され,軌道離心率は 0.12 ± 0.01 (Ricci et al. 2012など) と推定されている.

惑星候補天体の検出とダストベルト

外側のダストベルトの内縁が鋭いことと,分布が円軌道ではないことから,フォーマルハウトA はダストベルトの形状を重力的に形作るための少なくとも 1 つの惑星を持つ可能性が指摘された.ダストベルトの内側を公転する惑星が存在した場合,観測されているベルトの形状を説明できると考えられた (Wyatt et al. 1999など).

その後,Kalas et al. (2008) は小さな可視光の点源フォーマルハウトb がダストベルトの内側を公転していることを報告し,惑星と思われるこの天体がダストベルトの形状の原因であると予想された.しかしその後の赤外線の観測ではこの天体を検出することができず,最初の観測で推定された惑星の質量や,あるいはそもそも惑星かどうかという点については現在でも議論がある (Marengo et al. 2009など).

さらなるハッブル宇宙望遠鏡の観測では,この惑星候補天体は大きな軌道離心率を持ち,ダストベルトの形状を再現できない可能性があることが指摘されている (Kalas et al. 2013, Beust et al. 2014).さらに,そのような軌道にある重い惑星は,ベルトのコヒーレント形状をすぐに壊してしまうことも指摘されている (Kalas et al. 2013など).

これらの研究から,フォーマルハウトb は巨大なリング系を伴った低質量の惑星であるとするもの (Kalas et al. 2008),不規則衛星のダスト雲を伴った低質量の惑星であるとするもの (Kennedy & Wyatt 2011, Tamayo 2014),惑星同士の衝突後のダスト雲であるとするもの (Kalas et al. 2013, Tamayo 2014, Lawler et al. 2015),あるいは無関係の背景の中性子星とする意見まである (Neuha ̈user et al. 2015).

そのためフォーマルハウトA の近くに発見されている点源は,ダストベルトの形状を形作る原因ではない可能性もある.そのため,未発見の惑星 1 つあるいは複数がダストベルトの形状の原因となり,さらに検出されている天体 (フォーマルハウトb) を特異な軌道に散乱したという説が提案されている (Chiang et al. 2009など).

他の可能性としては,羊飼い惑星のセットがダストベルトの両側を公転しており,コヒーレントな楕円形状を形成しているという説 (Boley et al. 2012) も提案されている.このような惑星は数地球質量程度の質量で十分であり,検出限界のため検出されていないことは十分に考えられる.

フォーマルハウト系の伴星

主星,ダストベルト,惑星候補天体の他に,フォーマルハウト系は他のメンバーも持つ.

1938 年には,K4V 星である TW PsA (みなみのうお座TW星) はフォーマルハウトA の伴星ではないかと疑われた (Luyten 1938).より最近の,TW PsA の位置,運動学,特性の解析から,この 2 つの天体が無関係の恒星である可能性は非常に低いことが示されている (Mamajek 2012).

この 2 つは 5.74 × 104 AU 離れた,重力的に束縛されたペアであると推定されている (Barrado y Navascues et al. 1997など).

さらに最近,フォーマルハウトA と TW PsA の近くに,似た運動を行う天体として,三番目の天体 LP 876-10 が同定された,この天体が偶然近くにいるだけの背景星である確率はわずか ~ 10-5 と推定されている (Mamajek et al. 2013).

三番目の恒星は M 型星で,フォーマルハウトA から 1.58 × 105 AU,TW PsA からは 2.03 × 105 AU 離れている.ハーシェルによる LP 876-10 の観測からは,この天体もデブリ円盤を持つことが示唆されている.デブリ円盤を持っていることが分かっている M 型星の頻度は比較的まれである (Kennedy et al. 2014).

ここでは,TW PsA と LP 876-10 を,それぞれフォーマルハウトB,C と呼称している.

計算モデル

ここでは,フォーマルハウト系の三重星系に,局所銀河環境による擾乱の効果を入れて過去 500 Myr の運動を計算した.

シミュレーションの結果から,現在のフォーマルハウトA, B, C の間隔は ~ 500 Myr の間に渡って維持されることが示された.

Shannon et al. (2014) では,フォーマルハウトC は現在フォーマルハウト系から弾き出されている最中の遷移状態に位置していることが示唆されていた.しかし今回の計算では,~ 7%で間隔は観測値を保つ.この割合は SHannon et al. (2014) が示したものより有意に高い.
また,系における恒星の間隔と階層構造は系の寿命の間大きく変化しない事が示唆された.

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