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arXiv:1710.11393
Reggiani et al. (2017)
A protoplanet candidate in the transition disk around the Herbig Ae star MWC 758
(ハービッグAe星 MWC 758 まわりの遷移円盤中の原始惑星候補)

概要

遷移円盤 (transitional disk) は,新しく生まれた惑星を探すための非常に良い観測対象であり,また惑星形成の初期段階を調べるための場所でもある.

ここでは,ハービッグ A5 星である MWC 758 を観測した.
観測には Keck II 望遠鏡の近赤外カメラに搭載された L band vector vortex coronagraph と,NIRC2 分光器を使用した.この観測は,この系における惑星天体の存在に制限を与えることによって,円盤に見られるスパイラル構造の性質を明らかにすることを目的としている.


ハイコントラスト撮像観測からは,中心星から射影距離 20 AU の位置に,明るい点状の放射があることが判明した.また,2 つの渦状腕 (spiral arm) の存在を確認した.これらの 2 つの渦状腕は,過去の偏光観測によって既に発見されていたものと同一である.さらに,3 つ目の渦状腕が存在することも発見した.

中心星から 0.6 秒角を超える範囲内には,5 木星質量を超える天体の存在は確認されなかった.

ここでは,今回観測された L バンドでの明るい放射は,円盤内部に存在してガスを降着している原始惑星の存在によって引き起こされているという説を提案する
しかし,円盤の非対称構造による可能性も排除できない.

観測されているスパイラル構造は,おそらくこの原始惑星候補天体とは関連していないと考えられる.ただし,惑星が傾いて離心率が大きい軌道にあり,さらに一つかそれ以上の未検出の惑星質量天体がスパイラル構造の縁か外側にいる場合は別である.

今回発見された点状の光源の真の性質と,その光源と渦状腕との関係性を明らかにするためには,将来的な観測とさらなるシミュレーションが必要である.

MWC 758 について

MWC 758 の概要

MWC 758 は,若い恒星状天体 (young stellar object, YSO) であり,年齢は 3.5 ± 2 Myr (Meeus et al. 2012) と推定されている.距離は 151 pc (Gaia Collaboration 2016) であり,おうし座星形成領域 (Taurus star-forming region) の端に近い位置にある.質量は 2.0 太陽質量である.

これらの質量と年齢の推定は,過去のヒッパルコスによる観測を元にした距離の推定値,200 pc (van den Ancker et al. 1998) および 279 pc (van Leeuwen 2007) にもとづいていた.Gaia による新しい測定による距離に基づくと,これまでの推定よりも年齢は古く,また質量は軽くなる.今回は中心星の質量を 1.5 太陽質量と推定した.

遷移円盤とスパイラル構造の検出

スペクトルエネルギー分布 (spectrum energy distribution, SED) から,この天体は pre-transition disk (遷移円盤に進化する段階の円盤) に分類されている (Grady et al. 2013).

ダストのミリメートル放射からは,この円盤は半径が 55 au 空洞 (cavity) を持っていることが示唆されているが,赤外線での偏光強度観測からは,散乱光中に明確な空洞の証拠は得られなかった (Grady et al. 2013など).

すばる望遠鏡の High Contrast Instrument with Adaptive Optics (HiCIAO) を用いた,Ks バンド (2.15 µm) 直接撮像と H バンド (1.65 µm) の偏光撮像では,2 つの渦状腕が検出され,さらに星から 0”.1 (15 au) に至る偏光を検出した (Grady et al. 2013).

Very Large Telescope (VLT) の Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch (SPHERE) を用いた Y バンド (1.04 µm) の観測でも,少なくとも 14 au の範囲に至る散乱光が確認されている (Benisty et al. 2015).

Isekka et al. (2010) によるミリメートルダストの分布と CO 放射の非対称性から,この円盤は 23 au 以内を公転する低質量の天体によって,重力的に擾乱を受けている可能性が示唆されている.なお 23 au という距離は,この天体までの距離が 151 pc であると仮定した場合の推定である.
また,センチメートルダストの非対称分布も,ミリメートルダストの場所に伴っていることが分かっている (Marino et al. 2015).

流体力学シミュレーションからは,円盤の構造はより大きな距離の ~ 170 au にある重い惑星か褐色矮星によって引き起こされているという可能性も指摘されている (Dong et al. 2015).
その他の観測からは,中心星から 0”.25 の射影距離に 12 木星質量程度の天体が存在する可能性は否定された.また同様に,0”.5 の距離での 5 木星質量,1” の距離での 3 木星質量の存在の可能性も否定された.
※注釈
MWC は "Mount Wilson Catalog" から来ており,Mount Wilson Observatory (ウィルソン山天文台) で観測されカタログにまとめられた,輝線星のカタログを意味している.

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