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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.00902
Kammer et al. (2015)
Spitzer Secondary Eclipse Observations of Five Cool Gas Giant Planets and Empirical Trends in Cool Planet Emission Spectra
(5つの低温ガス惑星のスピッツァーによる二次食の観測と、低温惑星の発光スペクトルの経験的傾向)

概要

スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6 μmと 4.5 μmで複数の低温のトランジット惑星の二次食 (secondary eclipse)を観測した。ここでいう"低温"とは、表面温度が 1200 K未満の惑星を指す。
観測したのは、HAT-P-19b, WASP-6b, WASP-10b, WASP-39b, WASP-67bの5つである。
惑星大気モデルや先行観測の結果と、この二次食の食の深さを比較して、大気構造への制限を与えることが目的である。

観測と解析の結果、昼側のスペクトルからは、木星質量より軽い低温のガス惑星は昼側から夜側への効率的な大気循環による熱の輸送が行われているか、高いアルベドを持つ (どちらか、もしくは両方)ということが示唆される。
逆に木星よりも重い低温のガス惑星は、大気循環が効率的ではなく、低いアルベドを持つとするモデルとよく一致した。

今回の惑星のような低温環境では、CH4/COの存在比は、金属量の関数であると考えられる。そのため、存在比は金属量への制限として使えるはずである。
重いガス惑星については、太陽の金属量とよく合う昼側のスペクトルを持つ。
しかし今回のサンプルでは、軽い惑星については良い制限は得られなかった。

興味深いことに、これらの低温惑星の3.6 μmと 4.5 μmでの輝度温度の比は、惑星の温度とは独立である。
その代わりに、輝度温度の比は惑星質量と相関があるように思われる。
もしこの傾向が確認された場合は、これらの惑星の放射スペクトルの形状は質量に依存する事を示唆している。
これは、軽い惑星は金属量の多い大気を持つ傾向にあるという仮説と整合的である。

研究の背景

惑星の熱放射からは、惑星大気の組成やP-T profile (圧力-温度構造)についての情報が得られる。

スピッツァー宇宙望遠鏡で二次食が見えているトランジット惑星は 100個程度あり、大部分は木星型惑星で、表面温度が 1500 - 2500 Kのものである。
小さい惑星や、より低温な惑星の二次食の観測は難しい。

大気の化学平衡モデルによると、1000 - 1200 Kあたりで、炭素のresovoirはCOからCH4に変わると予測されている。これは褐色矮星における傾向と類似していると示唆されている(Kirkpatrick 2005)。
しかしこの傾向は、温度だけではなく組成にも依存する、つまり金属量に依存すると考えられる。

CH4がドミナントとなることが予想される温度であっても、Hの存在量が低い場合はCH4の存在量が下がり、COが増えることが考えられる。
この仮説は、GJ 436bからの放射スペクトルを説明するために提案されたものである。
GJ 436bは比較的低温なのにも関わらず、CO-richでCH4-poorな大気を持つことが示唆されている。

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