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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.01909
Winter et al. (2018)
Particles co-orbital to Janus and Epimetheus: a firefly planetary ring
(ヤヌスとエピメテウスと共軌道の粒子:ホタル的な惑星の環)

概要

土星探査機カッシーニによる観測によって,土星の共軌道衛星 (co-orbital satellite) であるヤヌスとエピメテウスと軌道を共有している,ユニークな環が発見された.画像解析から,これは連続したリングであることが分かった.リングの幅は過去に報告されていたより 30 - 50%大きい.

またこのリングは,ホタルのように振る舞うことも確認された.
リングは時々しか観測することができず,カッシーニ・リング・太陽の三者が非常に大きな位相角で特定の幾何学的配置にあるときのみ観測することが出来る.それ以外の場合は,カッシーニのカメラでは見えない ‘in the dark’ の状態にある.

数値シミュレーションからは,この環の粒子の寿命 (環に留まっていられる時間) は非常に短く,数十年に満たないことが示された.したがって環の粒子は絶えず供給されている必要がある.ここでは,ヤヌスとエピメテウスの表面への微小隕石衝突による粒子生成モデルを用いて,環の存在と,その ‘ホタル’ のような挙動の再現を試みた.

カッシーニによる環の発見

カッシーニの観測によって,ヤヌスとエピメテウスの軌道の領域を占めているリングが発見された (Porco et al. 2006).ヤヌスとエピメテウスは,同程度の質量を持った太陽系内で唯一の共軌道系であることが知られている (Dermott & Murray 1981; Harrington & Seidelmann 1981; Synnott et al.1981; Yoder et al. 1983; Treffenst ̈adt et al. 2015).この 2 つの衛星は,馬蹄状軌道 (horseshoe orbit) で同じ平均軌道を共有している.これらとさらに同じ軌道を共有している環の発見により,これらの系はより複雑であることが判明した.

この環の性質についてはこれまで疑問点が存在した.これは完全な環なのか,あるいは部分的なアーク状構造なのか?環はどの程度のサイズなのか?環の半径方向の分布は?
これらの疑問点について,ここではヤヌスとエピメテウスの重力,および太陽放射圧を考慮して数値シミュレーションを行い,環の粒子の寿命について研究した.

結果

環の構造

カッシーニの画像の測光解析から,画像のほとんどにおいて環は経度方向に大きく広がっていることが判明した.これらの画像のうち 3 枚を組み合わせることで,ほぼ完全な環でありアーク構造のセットではないことが分かった.

また,経度方向に輝度の大きな変化は見られなかった.そのため環は連続的で滑らかな構造をしていると結論付けた.
環の幅は,過去の報告よりおよそ 50%大きいものになった (Porco et al. 2006).

環の粒子シミュレーションと粒子の寿命

カッシーニの画像では,環が観測できていたのは位相角が大きいときのみであった.このことは,環は主にミクロンサイズの粒子で構成されていることを示唆している.

この環の粒子の寿命のシミュレーションを行った.その結果,わずか数十年の間に,粒子はヤヌスかエピメテウスに衝突してしまう事が分かった.そのため環の粒子の寿命は非常に短く,環の粒子は継続的に供給されている必要があることが示唆される.

ここでは環への粒子の供給源として,ヤヌスとエピメテウスへの微小隕石の衝突を考慮した.衝突で生成される粒子は,サイズが大きくなるに連れて,生成率がべき乗則に従って減少する.しかしその一方で粒子の平均寿命はサイズに大きく依存せず 15 年程度で一定である.
この 2 つによって,環の定常状態の質量が推定できる.この定常状態の環の光学的深さは,主に半径が 1 - 4 µm の粒子からの寄与によると判明した.

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