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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.09451
Hall et al. (2018)
Is the spiral morphology of the Elias 2-27 circumstellar disc due to gravitational instability?
(Elias 2-27 星周円盤の渦状構造は重力不安定によるものか?)

概要

ALMA の観測では,Elias 2-27 の周りの星周円盤中に 2 本の渦状腕構造が 300 au 程度まで広がっていることが確認されている.中心星 Elias 2-27 を囲む原始星円盤は非常に重く,この系が重力的に不安定である可能性が指摘されている.

最近の研究では,この系で観測された構造は円盤の自己重力の影響で説明することが出来るという事が示されている.そのためここでは,円盤の自己重力によって発生する渦状波が,検出されている構造を再現するために必要な,円盤の物理的特性について調査した.

3 次元 smoothed particle hydrodynamics (SPH) 計算を輻射輸送と ALMA 合成画像と合わせて検証した結果,観測されている渦状構造は,この円盤が低い不透明度を持っており,そのために冷却が効率的である場合のみ自己重力によって形成されうることが分かった.

観測されたような渦状腕構造を円盤の自己重力によって形成することは出来るものの,形成可能なパラメータ領域は非常に狭い.そのため,渦状構造が円盤の自己重力に起因する可能性はあるが,外部からの擾乱などのような,その他の説明が好ましいだろうという事を示唆する結果となった.

主な結果

観測を再現できる円盤のパラメータ

合計で 17 セットの SPH シミュレーションを実施した.そのうちの 6 セットの計算のみが,自己重力によって円盤中に渦状腕構造を生成した.その他の計算セットでは,円盤はスムーズな構造になるか,あるいは分裂を起こした.

得られたシミュレーション結果を元に,輻射輸送計算を用いて ALMA での模擬観測画像を生成した.その結果,観測と近い模擬観測画像が得られたものは,円盤の金属量が太陽の金属量の 0.25 倍 (従って,金属量と不透明度が 1:1 の関係であることを仮定した場合,不透明度も 0.25 倍低い) で,円盤と恒星の質量比が 0.325,外部輻射場からの影響が小さい場合 (外部の温度が 5 K) のケースのみであった.

系の金属量 (不透明度) が太陽組成と同じであった場合,円盤の冷却が非効率的過ぎるため,検出可能な強度の渦状腕を形成することが出来ない.

また,円盤質量を大きくした場合は渦状構造の強度が強くなるが,この場合は円盤が分裂を起こさないために,外部からの輻射を大きくする必要がある.その結果として円盤の冷却率は低くなり,渦状腕の強度を検出可能な水準より低くしてしまう.

ダスト捕獲による渦状腕の増幅・外部輻射の影響

渦状腕へのダスト捕獲の模擬として渦状腕構造を増幅させた場合は,渦状腕を検出可能なパラメータ空間の領域が大きく広がる.この場合,外部の最小温度が 5 K を満たす場合,円盤と中心星の質量比が 0.325,金属量が太陽金属量の 0.25 - 1.0 倍の範囲で,渦状腕構造が検出可能な水準になる.

しかしこのシナリオには問題がある.原始星円盤を含む領域の周辺温度は非常に高く,場所によっては 10 - 30 K となる (Hayashi & Nakano 1965など).本研究では周辺温度が 5 K の場合は渦状腕が検出可能という結果を得たが,そのような低温領域は Elias 2-27 のような系の近くには滅多に存在しないと考えられる.

周辺温度が 10 K の時,円盤-中心星質量比が 0.4 程度以上の場合,検出可能な渦状腕が形成される.しかし Elias 2-27 の質量比は ~ 0.24 と推定されている (Andrews et al. 2009),この推定値は,円盤中のガスとダストの質量比が 100:1 であることを仮定している.この仮定は確実なものではなく,若い原始星の周りの円盤質量は過小評価されている可能性があるという理論的な証拠も存在する (Hartmann 2008).
この観点からは,Elias 2-27 でも 0.25 以上の質量比であるという可能性はある.しかしこの不定性は単一指向ではなく,ダスト測定から推定した場合に円盤質量を過大評価することも有り得る.

結論

渦状腕の増幅がない場合,つまりダスト捕獲がない場合,この系の構造が重力不安定のみで説明出来るのは,不透明度が太陽組成の ~ 0.25 倍,円盤-中心星の質量比が 0.325,外部からの輻射が ~ 5 K と低温の場合のみである.

先述の通り,この系の周辺の温度が 10 K を下回るの可能性はおそらく低い.そのため,重力不安定による渦状腕を観測するためには,渦状腕へのダスト捕獲が重要であると考えられる.ダスト捕獲による渦状腕の増幅があった場合は,観測を再現できるパラメータ空間は広くなる.


結論としては,Elias 2-27 の円盤構造を重力不安定によるものだとする場合,検出できるだけの振幅の大きな渦状腕を形成できるほどに円盤の冷却が効率的で,しかし円盤が分裂するほどは冷却率が大きくは無く,さらに円盤の分裂を防ぐが渦状腕構造を大きく抑制するほどではない一定水準の外部輻射が存在するという,パラメータ空間中の “スイートスポット” にいる必要がある.

そのため,この円盤の構造の形成原因としては,別の恒星の近接遭遇やフライバイといった別の機構が,円盤の自己重力不安定よりも好ましい事が示唆される.

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