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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.08163
Feng et al. (2018)
Detection of the closest Jovian exoplanet in the Epsilon Indi triple system
(インディアン座イプシロン三重星系中の最も近い木星型系外惑星の検出)
解析から,惑星インディアン座イプシロン星Ab (Epsilon Indi Ab) は低温な木星型惑星であると推定される.最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au で,ほぼ円軌道である.また軌道周期は 52.62 (+27.70, -4.12) 年である.
さらに視線速度データ中にはこの惑星によるものとは別の顕著なシグナルが複数見られた.様々なスペクトル診断の調査を行い,これらのシグナルは恒星活動によって誘起される視線速度変動であると解釈される.特に,周期が 2500 日と 278 日のシグナルは,恒星の磁気活動周期によるものであると考えられる.
17.8 日周期のシグナルはさらなる惑星に起因する可能性があるが,この 17.8 日周期のシグナルと 11 日周期のシグナルは,およそ 35 日周期の恒星の自転に伴うものであるとすると最も簡単に解釈できる.
解析から,従来の恒星活動指標には多くの感度が存在する事を発見した.特に,スペクトル中のナトリウムのラインとカルシウムの HK 線の指標は,全ての活動誘起シグナルに対して感度がある.スペクトル線の二等分線測定は恒星の自転シグナルに対して感度があるが,Hα 線は二次的磁気周期に感度がある.
一般に,それぞれの感度が異なるため,これらの活動指標はノイズモデルに含まれる場合に余分なノイズを引き起こすが,差分視線速度は波長依存性のノイズを効率的に除去する確実な代替手段を与える.
これらの解析に基づき,ここでは高精度視線速度データ中から低振幅のシグナルを検出するための,活動診断手法を提案する.
この系は,少なくともインディアン座イプシロン星A,インディアン座イプシロン星Ab と,長周期の褐色矮星連星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb からなる系である.そのためこの系は,巨大ガス惑星と褐色矮星の形成における我々の理解の基準となる可能性がある.
インディアン座イプシロン星A から 1459 au 離れた位置に,連星褐色矮星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb のペアをがあることが分かっている (Scholz et al. 2003).インディアン座イプシロン星A の視線速度データに見られる変動の傾向は,この連星褐色矮星によって引き起こされるものよりもずっと大きいため,30 年より長い周期を持つ別の伴星が存在する可能性が指摘されていた (Endl et al. 2002,Zechmeister et al. 2013).
軌道周期は 19205.51 (+10111.37, -1502.23) 日,もしくは 52.62 (+27.70, -4.12) 年であり,最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au である.軌道離心率は 0.01 (+0.12, -0.01) とほぼ円軌道である.
インディアン座イプシロン星Ab は,視線速度法とトランジット法でこれまでに発見された系外惑星の中では,最も周期が長い惑星である.
278 日周期の視線速度変動は,恒星活動の指標となるシグナルにおいて強く現れるため,恒星活動に起因する可能性が高い.
また 2500 日程度の周期を持つシグナルも明確に検出されたが,これも恒星活動由来であると思われる.これは恒星の磁気周期による変動で,278 日周期の変動はこの磁気変動の二次的サイクルによるものだと思われる.
17.8 日周期と,その倍の 35.6 日周期の強いシグナルも検出された.恒星活動に由来する指標と相関を取った後も,17.8 日周期シグナルは残る.そのため,恒星の自転の非線形効果に伴うものか,あるいは恒星の自転周期の半分に近い軌道周期を持つ惑星が存在することによるシグナルか,どちらかである可能性がある.
11 日周期のシグナルは,2500 日と 17.8 日周期のシグナルを差し引いた後に明確に現れるという独特の特徴を持っている.そのため,このシグナルは恒星活動に起因するものか,活動に誘起されたシグナルのエイリアスである可能性がある.
最終的な結論としては,2500 日周期シグナルは恒星の主要な磁気周期に由来するもの,278 日周期シグナルは二次的な磁気周期に由来するものであると考えられる.
恒星の自転周期はおよそ 35 日である.その半分の値である 17.8 日周期のシグナルは,この自転周期よりも顕著に視線速度中に現れる.これは,他の恒星でも見られる現象で (HD 147379,Feng et al. 2018など),恒星表面にある黒点等によって引き起こされることがある.
また,1/(1/35 + 1/17.8) = 11.8 となるため,11 日周期シグナルも恒星の自転によって引き起こされうる.
arXiv:1803.08163
Feng et al. (2018)
Detection of the closest Jovian exoplanet in the Epsilon Indi triple system
(インディアン座イプシロン三重星系中の最も近い木星型系外惑星の検出)
概要
インディアン座イプシロン星A (Epsilon Indi A) の視線速度データ中に,長周期の惑星質量天体の存在を示唆する傾向があることを確認した.視線速度の観測は HAPRS を用いて行った.解析から,惑星インディアン座イプシロン星Ab (Epsilon Indi Ab) は低温な木星型惑星であると推定される.最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au で,ほぼ円軌道である.また軌道周期は 52.62 (+27.70, -4.12) 年である.
さらに視線速度データ中にはこの惑星によるものとは別の顕著なシグナルが複数見られた.様々なスペクトル診断の調査を行い,これらのシグナルは恒星活動によって誘起される視線速度変動であると解釈される.特に,周期が 2500 日と 278 日のシグナルは,恒星の磁気活動周期によるものであると考えられる.
17.8 日周期のシグナルはさらなる惑星に起因する可能性があるが,この 17.8 日周期のシグナルと 11 日周期のシグナルは,およそ 35 日周期の恒星の自転に伴うものであるとすると最も簡単に解釈できる.
解析から,従来の恒星活動指標には多くの感度が存在する事を発見した.特に,スペクトル中のナトリウムのラインとカルシウムの HK 線の指標は,全ての活動誘起シグナルに対して感度がある.スペクトル線の二等分線測定は恒星の自転シグナルに対して感度があるが,Hα 線は二次的磁気周期に感度がある.
一般に,それぞれの感度が異なるため,これらの活動指標はノイズモデルに含まれる場合に余分なノイズを引き起こすが,差分視線速度は波長依存性のノイズを効率的に除去する確実な代替手段を与える.
これらの解析に基づき,ここでは高精度視線速度データ中から低振幅のシグナルを検出するための,活動診断手法を提案する.
この系は,少なくともインディアン座イプシロン星A,インディアン座イプシロン星Ab と,長周期の褐色矮星連星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb からなる系である.そのためこの系は,巨大ガス惑星と褐色矮星の形成における我々の理解の基準となる可能性がある.
インディアン座イプシロン星系について
インディアン座イプシロン星A (Epsilon Indi A, 別名:HIP 108870, HR 8387, HD 209100, GJ845) は,太陽系近傍の若い K2V 星である.年齢は 14 億歳 (Bonfanti et al. 2015).距離は 3.62 pc (van Leeuwen 2007) である.また,質量は 0.762 太陽質量 (Demory et al. 2009),光度は 0.22 太陽光度である.インディアン座イプシロン星A から 1459 au 離れた位置に,連星褐色矮星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb のペアをがあることが分かっている (Scholz et al. 2003).インディアン座イプシロン星A の視線速度データに見られる変動の傾向は,この連星褐色矮星によって引き起こされるものよりもずっと大きいため,30 年より長い周期を持つ別の伴星が存在する可能性が指摘されていた (Endl et al. 2002,Zechmeister et al. 2013).
主な結果
木星型惑星インディアン座イプシロン星Ab の検出
インディアン座イプシロン星A の視線速度データを解析した結果,低温の木星型惑星を検出した.軌道周期は 19205.51 (+10111.37, -1502.23) 日,もしくは 52.62 (+27.70, -4.12) 年であり,最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au である.軌道離心率は 0.01 (+0.12, -0.01) とほぼ円軌道である.
インディアン座イプシロン星Ab は,視線速度法とトランジット法でこれまでに発見された系外惑星の中では,最も周期が長い惑星である.
※注釈
NASA Exoplanet Archive では,現時点では視線速度法で検出された HIP 70849b の軌道周期 17337.5±15512.5 日が最長だが精度が悪い.2 番手でもう少し精度良く周期が推定されているおおぐま座47番星b (47 UMa b) は軌道周期が 14002 (+4018, -5095) 日である.トランジット法での検出の場合は,最大でも軌道周期は 1000 日程度である.直接撮像で発見された惑星には,さらに長周期のものが複数存在する (直接撮像は遠方の巨大惑星に感度があるため).
NASA Exoplanet Archive では,現時点では視線速度法で検出された HIP 70849b の軌道周期 17337.5±15512.5 日が最長だが精度が悪い.2 番手でもう少し精度良く周期が推定されているおおぐま座47番星b (47 UMa b) は軌道周期が 14002 (+4018, -5095) 日である.トランジット法での検出の場合は,最大でも軌道周期は 1000 日程度である.直接撮像で発見された惑星には,さらに長周期のものが複数存在する (直接撮像は遠方の巨大惑星に感度があるため).
恒星活動に起因するシグナルの検出
惑星に起因するシグナル以外には,11, 17.8, 278 日周期の変動が検出された.278 日周期の視線速度変動は,恒星活動の指標となるシグナルにおいて強く現れるため,恒星活動に起因する可能性が高い.
また 2500 日程度の周期を持つシグナルも明確に検出されたが,これも恒星活動由来であると思われる.これは恒星の磁気周期による変動で,278 日周期の変動はこの磁気変動の二次的サイクルによるものだと思われる.
17.8 日周期と,その倍の 35.6 日周期の強いシグナルも検出された.恒星活動に由来する指標と相関を取った後も,17.8 日周期シグナルは残る.そのため,恒星の自転の非線形効果に伴うものか,あるいは恒星の自転周期の半分に近い軌道周期を持つ惑星が存在することによるシグナルか,どちらかである可能性がある.
11 日周期のシグナルは,2500 日と 17.8 日周期のシグナルを差し引いた後に明確に現れるという独特の特徴を持っている.そのため,このシグナルは恒星活動に起因するものか,活動に誘起されたシグナルのエイリアスである可能性がある.
最終的な結論としては,2500 日周期シグナルは恒星の主要な磁気周期に由来するもの,278 日周期シグナルは二次的な磁気周期に由来するものであると考えられる.
恒星の自転周期はおよそ 35 日である.その半分の値である 17.8 日周期のシグナルは,この自転周期よりも顕著に視線速度中に現れる.これは,他の恒星でも見られる現象で (HD 147379,Feng et al. 2018など),恒星表面にある黒点等によって引き起こされることがある.
また,1/(1/35 + 1/17.8) = 11.8 となるため,11 日周期シグナルも恒星の自転によって引き起こされうる.
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