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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.08684
Sairam et al. (2018)
Atmospheric mass loss of extrasolar planets orbiting magnetically active host stars
(磁気的に活発な主星を公転する系外惑星の大気質量放出)

概要

系外惑星を持っている恒星での磁気的活動は,恒星のすぐ近くに位置している系外惑星を照らす高エネルギーの放射を生み出す可能性がある.この放射は惑星の高層大気で吸収され,加熱を引き起こして大気を蒸発させ,輻射誘起の惑星大気の質量損失を引き起こす可能性がある.

ここでは,XMM-Newton の新しい観測データに基づき,惑星を持つ恒星ケプラー63,ケプラー210,WASP-19,HAT-P-11 の 4 つの磁気的に活発な恒星の,高エネルギー放射について研究を行った

その結果,これらの恒星の X 線光度は,活動的磁気の太陽の水準よりも数桁大きいことを見出した.惑星が受ける合計の XUV 輻射は,これまでによく調べられているホットジュピターよりも強いことが期待される.

惑星大気へのエネルギーインプットとしての推定 XUV 光度を用いて,これらのホットジュピターの合計の質量放出率の上限値を推定した.

系外惑星の大気散逸

惑星からの質量散逸は,大部分はジーンズ散逸 (Jeans escape) によって発生すると考えられてきた.しかし HD 209458b の大気散逸の観測からは,ジーンズ散逸では実際の質量損失を大きく過小評価することが指摘されている (Vidal-Madjar et al. 2003).

Lammer et al. (2003) では,系外惑星は大気をジーンズ散逸とは異なる機構で散逸しているという仮説を提唱した.これはもともと Watson et al. (1981) によって提案されていた流体力学的な質量散逸モデルであり,これによりジーンズ散逸よりも数桁大きい質量放出率が実現される.
このモデルでは,惑星大気の上層で吸収された高エネルギー放射が,高層大気を 10000 K 程度にまで加熱し,古典的な太陽風のパーカーモデルと類似した大気流出が発生すると考えている.

観測対象

ケプラー63
この恒星は若い太陽型星であり,年齢は 2.1 億歳 (Sanchis-Ojeda et al. 2013,Estrela & Valio 2016).距離は 200 pc である.質量は 0.98 太陽質量,有効温度 5576 K (Sanchis-Ojeda et al. 2013).自転周期は 5.4 日である (Estrela & Valio 2016).

Ca II H&K 線の観測からは,恒星の彩層活動度が高いことが示唆されている.また,恒星黒点に伴うと思われる光度の変動が検出されている.ケプラーによる観測データに基づくと,恒星の磁気活動サイクルは 1.27 年周期であることが示唆される.

この恒星は 6.1 地球半径のホットジュピターケプラー63b を持つ.この惑星の軌道は,大きく傾いた極軌道で,軌道周期 9.434 日,軌道長半径は 0.08 AU である (Sanchis-Ojeda et al. 2013).

なお惑星の質量は現状では不明である.これは,中心星の活動度の影響で視線速度の観測精度がよくないためである.視線速度の半振幅の値からは,惑星質量に対して 120 地球質量という上限が与えられている.これを元にすると,惑星の平均密度の上限は 3.0 g cm-3 である.
ケプラー210
この恒星は若い活発な K 型矮星であり,自転周期は 12.33 日,年齢は 3.5 億歳と推定されている (Ioannidis et al. 2014).
ケプラーの光度曲線中の大きな変動によって,恒星活動の存在が確認されている.

この恒星は,少なくとも 2 つの海王星サイズ惑星を持つ.ケプラー210b は,3.75 地球半径,軌道周期 2.453 日,軌道長半径 0.014 AU であり,ケプラー210c は 4.78 地球半径,軌道周期 7.972 日,軌道長半径 0.037 AU である.

この天体の視線速度データは得られていないため,各惑星の質量は不明である.Lissauer et al. (2011) による,惑星質量と惑星半径の間のシンプルな関係式を用いると,半径から質量を推定することができる.
\[
M_{\rm p}=\left(\frac{R_{\rm p}}{R_{\oplus}}\right)^{2.06}M_{\oplus}
\]
これは,土星より小さいサイズの惑星に対してよく成り立つ関係式である.これを用いると,ケプラー210b, c の各質量の推定値は,15.92 地球質量と 26.27 地球質量となり,平均密度は 1.66 g cm-3 と 1.32 g cm-3 となる.
WASP-19
この恒星は活発な G8V 星であり (Knutson et al. 2010),0.96 太陽質量,0.94 太陽半径である.また,10.5 日周期の強い変動が検出されている.

Barnes (2007) の gyrochronology 関係によると,この系は比較的若く ~ 6 億歳と推定されている.
一方で,等時線 (isochrone) フィッティングと,惑星の軌道離心率がゼロであると仮定したモデルからは, 55 億 (+90 億, -45 億) 歳と推定されている (Hebb et al. 2010).これは恒星が年老いていることを示す値だが,推定の誤差は非常に大きい.

惑星 WASP-19b は今回のサンプルの中では最も大きく,15.21 地球半径,371 地球質量であり,木星より大きい.軌道周期は 0.7888 日と短周期で,軌道長半径 0.0162 AU と非常に近距離を公転する惑星である.

惑星の平均密度は 0.58 g cm-3 である.しかし面白いことに,この惑星の平均密度は木星の半分程度であり,この惑星はその質量に対してやや膨張した半径を持っていることが示唆される.この惑星の大きな半径は,中心星からの高エネルギー輻射か,あるいは惑星内部での潮汐エネルギー散逸の結果だと解釈できる.
HAT-P-11
この恒星は,活発な金属量豊富な K4 矮星である.金属量は [Fe/H] = 0.31 で,距離は 38 pc である.測光観測と分光観測から,Bakos et al. (2010) は 0.81 太陽質量,0.75 太陽半径,有効温度 4780 K と推定した.また年齢は 65 億歳と推定されている.

ケプラーの測光データから,黒点に由来すると思われる変動が検出されている (Samchis-Ojeda & Winn 2011,Deming et al. 2011).また強い彩層放射が検出されており.これもこの恒星が活発であることを示唆している.

この恒星はスーパーネプチューン惑星 HAT-P-11b を持っている.惑星は 4.96 地球半径,25.74 地球質量であり,平均密度は 1.33 g cm-3 である.軌道長半径は 0.053 AU,軌道周期は 4.887 日である.

Fortney et al. (2007) の惑星内部モデルと比較すると,この惑星の半径は,同じ質量で 50% 氷・岩石コア + 50% 水素・ヘリウムエンベロープを持つ場合よりも小さく,純粋な氷・岩石コアのみで水素・ヘリウムのガスエンベロープを持たない場合よりは大きいことが指摘されている (Bakos et al. 2010).
そのため,惑星が受ける輻射や重元素の分布,年齢などのいくつかのパラメータに基づいた議論から,この惑星は 10% 水素ヘリウムガスエンベロープを持つだろうと推定されている.

質量放出率の推定値

Watson et al. (1981),Lammer et al. (2003),Sanz-Forcada et al. (2010) および Erkaev et al. (2007) に基づく流体力学的な質量散逸モデルでは,質量放出率は
\[
\dot{M}=\frac{3\pi\beta^{2}\epsilon F_{\rm XUV}}{4GK\rho_{\rm p}}
\]
で表される.
ここで \(\rho_{\rm p}\) は惑星の密度,\(F_{\rm XUV}\) は入射する X 線と極端紫外線のフラックス,\(G\) は重力定数である.また \(\beta=R_{\rm XUV}/R_{\rm p}\) であり,これは惑星半径と XUV 吸収半径の補正のための係数である.

ここでは加熱効率は \(\epsilon=0.4\) を使用している.これは強く輻射を受けているホットジュピターと岩石惑星に対して示唆されている値である (Valencia et al. 2010).なお,他の研究ではこれより小さい値を示唆しているものもある (Owen & Jackson 2012,Shematovich et al. 2014).

また \(K\) はロッシュローブオーバーフローを介した質量放出の効果を表す係数で,惑星質量.恒星質量,軌道長半径,惑星半径で決まる値である.

この関係式と観測から推定した各恒星の XUV 光度を用いて質量放出率の上限値の推定を行った.その結果,ケプラー63b は 7.41 × 1011 g s-1,ケプラー210b, c はそれぞれ 2.318 × 1012 g s-1,4.27 × 1011 g s-1,WASP-19b は 6.317 × 1012 g s-1,HAT-P-11b は 6.5 × 1010 g s-1 となった.

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