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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.11620
Grunblatt et al. (2018)
Do close-in giant planets orbiting evolved stars prefer eccentric orbits?
(進化した恒星を公転する近接巨大惑星は離心軌道になりやすいか?)

概要

NASA のケプラーのメインミッションとその後の K2 ミッションでは,やや進化した,光度が低い赤色巨星分枝星を公転するトランジット巨大惑星という分類が存在することが明らかになった.ここではこのような系のうち 3 つの視線速度を測定し,惑星の軌道離心率が明確にゼロではないことを発見した.

これらの系を既知の惑星のポピュレーションと比較した結果,進化した恒星を公転する近接巨大惑星は,主系列星を公転する近接巨大惑星もより離心軌道にあることが示唆された.これらの惑星の軌道は,進化した中心星に引き起こされる潮汐によって円軌道化するよりも速く軌道長半径が収縮するため,やや離心率の高い一時的な状態を推移していることを示す暫定的な証拠と解釈することができる.

これまでに発見されている系のさらなる視線速度測定と,最近打ち上げられた NASA の TESS によるサーベイミッションによって新しく発見される惑星系の研究によって,この軌道進化過程のタイムスケールと質量依存性に制約が与えられるだろうと期待される.

観測

今回の観測対象は,K2-97,K2-132,およびケプラー643 である.
前者 2 つは K2 ミッションで発見されている (Grunblatt et al. 2016,2017).ケプラー643 はケプラーのメインミッション期間中の観測で検出された惑星系である (Huber et al. 2013,Morton et al. 2016).マウナケアにある Keck-I 望遠鏡の High Resolution Echelle Spectrometer (HIRES) を使用して視線速度観測を行った.その結果,K2-97b,K2-132b,ケプラー643b の軌道離心率はそれぞれ 0.22,0.36,0.37 と推定される.

議論

近接巨大惑星の形成メカニズム

近接巨大惑星の形成に関しては,3 つの異なる仮説が提唱されている.その場形成仮説,円盤移動仮説,潮汐移動仮説である (Dawson & Johnson 2018).

エキセントリックプラネット (軌道離心率が非常に大きい惑星) の集団は,一般には潮汐進化が起きた証拠だとみなされる.これは,このような惑星は他の 2 つの有力なメカニズムでは説明できないためである.

エキセントリックプラネットの存在は,近接巨大惑星の形成メカニズムとして潮汐移動仮説を支持するものである.しかし矮星 (主系列星) 周りでのエキセントリックプラネットとは違って,進化した恒星周りの近接巨大惑星は,中心星の後期段階の進化によって誘起される潮汐進化を活発に行なっているというのがここでの主張である.

中心星の進化と惑星の軌道進化

惑星軌道の力学的進化は,中心星の進化から大きな影響を受ける,

Villaver et al. (2014) によると,惑星の軌道離心率の進化は,中心星が主系列段階にいる間は円軌道化を駆動する惑星の潮汐が支配的であり,その後の赤色巨星分枝段階では惑星の潮汐落下を駆動する恒星潮汐が支配的である.

例えば,太陽の平衡潮汐および一般的な潮汐の Q 値を仮定すると,K2-97b の軌道の円軌道化のタイムスケールは 40 億年程度となるが,一方で潮汐落下のタイムスケールは 20 億年未満である.従って惑星の軌道崩壊は,恒星半径が増加するにつれて軌道離心率の進化よりも急速に駆動されることになる.その結果,進化した恒星周りの近接軌道では,やや偏心した軌道を一時的に持っている惑星のポピュレーションを生成する.

さらに Villaver et al. (2014) は,より重い系では進化は急速になり,軌道離心率と軌道長半径はともに小さくなることを示唆している.これも観測からは暫定的に支持されており,最も重い部類の中心星の周りでは,惑星の軌道離心率は小さい傾向にある.しかしこの傾向を確定させるためには,現在のところ観測のサンプル数が不足している.

膨張半径との関連

潮汐相互作用と惑星の軌道移動は,巨大ガス惑星の半径膨張を引き起こすと考えられてきた (Bodenheimer et al. 2001など).また,恒星進化による輻射の増加は惑星を加熱するための熱源となる (Lopez & Fortney 2014).K2-97b と K2-132b は,主系列の恒星を公転する同程度の惑星と比べると,大きく膨張した半径を持っている.

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