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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.09696
Lin et al. (2018)
Evidence for Color Dichotomy in the Primordial Neptunian Trojan Population
(始原的な海王星トロヤ群における色の二分性の兆候)

概要

現在の初期太陽系進化のモデルでは,木星と海王星のトロヤ群小惑星の安定なグループは,巨大惑星が外側に移動する最中に原始微惑星円盤から惑星との共鳴に捕獲されたとされている.その結果,木星と海王星のトロヤ群天体の両方は,生き残りが太陽系外縁天体 (trans-Neptunian objects, TNOs) の一員となっている,太陽系の始原的な天体と共通の起源を有していると考えられる.

力学的に冷たい (軌道傾斜角が低く,軌道離心率が小さい) 古典的な太陽系外縁天体は表面が非常に赤っぽいという特徴がある.一方で,力学的に励起されていて熱い (軌道傾斜角が高く,軌道離心率が大きい) 太陽系外縁天体の集団は,表面が赤っぽいものと青っぽいものの両方を含んでいる.

太陽系外縁天体とは対照的に,木星と海王星のトロヤ群天体は青っぽい色を示すことが観測から分かっている.
木星のトロヤ群天体に非常に赤い表面を持つ天体が存在しないことは,太陽から 5 AU の距離での太陽輻射によって,天体表面から揮発性物質が揮発したと考えることで容易に説明できる.一方で,海王星のトロヤ群天体に赤っぽい天体が存在していないことは謎であり,これらの天体形成モデルに疑問を投げかけている.

ここでは Dark Energy Survey (DES) による,海王星のラグランジュ点 L4 に存在し力学的に安定な軌道を持つ,新しい 2 つのトロヤ群小惑星の発見を報告する.

発見されたのは,2013 VX302014 UU240 である.どちらも,軌道傾斜角は 30° より大きく,これまでに知られている安定な海王星トロヤ群小惑星の中では,最も軌道傾斜角が大きい.

さらに,これら 2 天体の表面の色を測定した.加えて,これまでに DES によって観測されている,力学的に安定なその他の海王星トロヤ群小惑星 3 つも観測した.

観測の結果,2013 VX30 は非常に赤い色をしていることが判明した海王星トロヤ群天体としては,赤っぽい色をしているものが発見されるのは初めてである.そのためこの天体は,海王星トロヤ群天体と太陽系外縁天体の間の “ミッシングリンク” である可能性がある.

また,DES での太陽系外縁天体の検出効率のシミュレーションを用いて,海王星の L4 ラグランジュ点には,絶対等級 Hr < 10 の天体が 162 ± 73 個存在すると推定した.さらに,表面が青っぽいものと赤っぽいものの個数比は,5:1 より高いと推定した.
この結果に基づき,赤い海王星トロヤ群小惑星のあり得る起源について,またそれらの形成史への応用について議論を行った.

パラメータ

2013 VX30
軌道長半径:30.08760 AU
軌道離心率:0.083744
軌道傾斜角:31.258593°
直径:~ 140 km
2014 UU240
軌道長半径:30.05716 AU
軌道離心率:0.048448
軌道傾斜角:35.744341°
直径:~ 150 km

(2 天体とも,直径の推定時にはアルベド 0.05 を仮定)

議論

今回,赤い海王星トロヤ群小惑星が発見されたことは,これらが太陽系外縁天体と共通の起源を持っているという仮説と整合的であるが,それでも問題は残っている.

海王星トロヤ群天体における,青い天体と赤い天体の個数比は 5:1 かそれ以上であると推定され,赤い天体の個数が非常に低い.母体となったとされる太陽系外縁天体では,青い天体と赤い天体はほぼ同じ数が存在する.

ここでは,海王星トロヤ群天体ではなぜ青い天体が多いのかについての考察を行う.

一つの可能性は,海王星トロヤ群小惑星と冥王星族天体 (海王星と 3:2 平均運動共鳴に入っている天体) の衝突に原因があるとする説である (Almeida et al. 2009).この説は,冥王星族の天体のサイズ-軌道傾斜角の依存性と,色-軌道傾斜角の依存性を説明できる.

海王星トロヤ群天体と冥王星族天体の遭遇は,トロヤ群天体同士の遭遇や,冥王星族天体同士の遭遇よりも発生しやすい可能性があり,軌道傾斜角が小さい冥王星族天体は,軌道傾斜角が大きな冥王星族天体よりも海王星トロヤ群天体と衝突しやすい.
また低軌道傾斜角の海王星トロヤ群天体は冥王星族天体と衝突しやすいと予想でき,衝突を経験したこれらの天体は,初期に持っていた非常に赤い色を衝突に酔って失う傾向がある.

この場合,初期の非常に赤い表面は,いくつかの高軌道傾斜角の海王星トロヤ群天体の表面に残っている可能性がある.特に,小さいトロヤ群天体は傾斜角分布が冥王星族天体よりも大きいため,小さい天体は衝突率が低い可能性がある.

実際に,今回新しく発見された赤い天体 2013 VX30 は,既知の海王星トロヤ群天体の中で 2 番目に軌道傾斜角が大きい.そのため,この天体は冥王星族天体との衝突を起こさず,初期の非常に赤い表面を現在まで保っている天体である可能性がある.

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