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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.08362
Wallace et al. (2020)
A Search for Transiting Planets in the Globular Cluster M4 with K2: Candidates and Occurrence Limits
(K2 による球状星団 M4 でのトランジット惑星の探査:候補と存在頻度限界)

概要

球状星団 M4 の,ケプラーの K2 ミッションでの観測によるトランジット惑星の探査結果について報告する.この探査は,より長い周期の惑星 (35 日程度未満) に対して検出感度がある (過去の最も良い観測では感度のある軌道周期は 16 日程度以下である).また,最も短周期の惑星では 0.3 木星半径程度以上の惑星に対して検出感度があり,これは過去のどの球状星団内の惑星探査よりも感度が良い (過去のものは最高で 0.8 木星半径程度以上).

結果として,7 つの惑星候補が検出された.しかし,データ中の系統的なノイズの解析から,これらの候補の大部分は,全てではないもののおそらくは偽陽性であると考えられる.

M4 における惑星の存在頻度を,もっとも惑星である可能性が高かった候補を惑星だと仮定して計算し,また検出無しとした場合の存在頻度の上限値の計算を行った.3σ の存在頻度の上限値は,0.71-2 木星半径で軌道周期 1-36 日のものに対しては 6.1%,0.36-0.71 木星半径で 1-10 日周期のものに対しては 16% という値を与えた.

ケプラー,TESS,および視線速度観測に基づく散在星での惑星の存在頻度は,今回のデータ中に惑星が検出されなかったとした場合と,ホットジュピターが 1 つ発見されたとした場合に計算した存在頻度と整合的である.

過去の球状星団における研究と比較すると,Gilliland et al. (2000) における調査で感度があった半径-周期範囲ではこの報告よりも厳しい制限を与えることはできないが,Weldrake et al. (2008) と Nascimbeni et al. (2012) で感度があったより大きな惑星半径に対しては,より厳しい制約を与えた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.08229
Markwardt et al. (2020)
Search for L5 Earth Trojans with DECam
(DECam による L5 地球トロヤ群の探査)

概要

太陽系の大きな惑星の大部分は,ラグランジュ点の L4 と L5 にトロヤ群として知られる共軌道天体の集団を持つ. 対照的に,地球の共軌道天体はこれまでのところ 1 つしか発見されていない.

ここでは,CTIO の Blanco Telescope に搭載された Dark Energy Camera (DECam) を用いた地球のトロヤ群天体の探査結果について報告する.
この観測では,L5 点における過去のサーベイ観測と比べて広い範囲を探査したにもかかわらず,さらなるトロヤ群天体は発見されなかった.そのためこの結果から,地球のトロヤ群小惑星に対するこれまでで最も厳しい制約が与えられる.

これらの制約は,トロヤ群天体の特性,特に光度分布の傾き (すなわち天体のサイズとアルベドの分布に依存する) の仮定に依存する.一般的な仮定の元での推定値は,L5 周辺に存在する絶対等級 H < 15.5 の天体は 1 個未満,H < 19.7 のものは 60-85 個,H = 20.4 のものは 97 個という制約を (90% の信頼度で) 与えた.H = 20.4 という等級は,天体のアルベドが 0.15 の場合天体サイズが ~300 m のものに対応している.

H = 19.7 では,これらの上限値は過去の L4 における地球のトロヤ群天体に与えられた制約と整合的であり,また L5 におけるトロヤ群天体に対する制約を大きく改善した.

地球のトロヤ群天体について

トロヤ群天体の研究

ラグランジュ点の L4 と L5 は,地球から 60° 先行および後行する位置にある.各惑星のラグランジュ点 L4 と L5 に存在するトロヤ群天体は,金星,火星,木星,天王星,海王星で発見されている.対照的に,地球の場合は 2010 TK7 が WISE によって偶然発見されているのみである (Connors et al. 2011).

地球のトロヤ群は,地球に近い場所に存在しているにも関わらずあまり理解が進んでいない.L4 や L5 にある天体は地球の年齢と同程度にわたって安定である可能性があり,太陽系の歴史においても重要な存在である.このような天体は,原始惑星系円盤の時代からの,摂動を受けていない生き残りの天体である可能性もある.

またトロヤ群は,月への衝突天体の候補として研究されてもきた.月の公転に対する先行半球と後行半球では,クレーターの分布に非対称性がある (Morota & Furumoto 2003).数値シミュレーションを用いて,地球近傍小惑星がこの非対称性の原因になりうるかどうかの調査が行われている.
Gallant et al. (2009) ではシミュレーションと観測データの不定性の範囲内で,地球近傍小惑星の既知の集団が月のクレーターの非対称性を説明可能であるとしている.一方で Ito & Malhotra (2010) は,既知の地球近傍小惑星の集団はクレーターの非対称性に ~50% しか寄与しないとした.さらに,月に対して非常に小さい相対速度を持った,観測されていない地球近傍小惑星の集団,例えば地球との共軌道天体が,この食い違いの解決策になる可能性を示唆した.

不安定な地球のトロヤ群天体 2010 TK7

地球のトロヤ群は観測するのが非常に難しい.L4 と L5 は地球から見て常に太陽から小さい離角しか持たない.これは,トロヤ群天体はまだ空が比較的明るい日没後か夜明け前にしか観測できないことを意味する.さらに軌道の配置のため,トロヤ群天体が衝となる位置からは決して観測できず,位相角が大きいため暗くなり検出が難しくなる.

これらの観測の困難さのため,これまでに発見されている地球のトロヤ群天体は 2010 TK7 の 1 つのみに留まっている.しかしこの天体は,L4 か L5 の付近を長期間にわたって安定に秤動することが期待される始原的なトロヤ群の軌道を持っていない.特に,この天体は振幅が大きい tadpole 軌道を持ち,L4 付近にずっと留まっているのではなく,地球と L3 (太陽の背後にあるラグランジュ点) の間を秤動している (Connors et al. 2011,Dvorak et al. 2012),

このような軌道は始原的なトロヤ群とは異なるものと考えられるが,これらの軌道は数百万年のオーダーでは安定である可能性もある (Marzari & Scholl 2013).数値シミュレーションでは,この天体は非常にカオス的で短寿命の軌道を持つことが示唆されている.推定されている軌道の寿命には幅があり,7000 年程度 (Connors et al. 2011) から,25 万年程度まで (Dvorak et al. 2012) の推定値の開きがある.また,ヤルコフスキー効果を考慮すると,この天体は長期間安定な軌道を持つには小さすぎるとの指摘もある (Zhou et al. 2018).

結果として,2010 TK7 は始原的な地球のトロヤ群天体ではなく,一時的に地球の共軌道天体として捕らえられている可能性が非常に高い.

過去の地球のトロヤ群天体の捜索

地球のトロヤ群の捜索はこれまでに複数回行われてきた.
最も最近の捜索は,L5 のトロヤ群天体の地上からの捜索である (Whiteley & Tholen 1998).また,OSIRIS-REx が小惑星ベンヌへ向かう途中で L4 付近を通過した際にも天体の捜索が行われた (Cambioni et al. 2018),さらに,はやぶさ2 がリュウグウへ向かう途中の L5 通過における探索も行われた (Yoshikawa et al. 2018).これらのサーベイでは,トロヤ群天体は発見されていない.

はやぶさ2 の結果を元にしたトロヤ群天体の個数の上限値はまだ公開されていない.
地上からの観測である Whiteley & Tholen (1998) は,等級 R = 22.8 の天体に関しては,単位平方度あたりの存在個数の上限値として 3 個という値を与えている.
Cambioni et al. (2018) では,直径 ~210 m の S 型小惑星から ~470 m の C 型小惑星までの天体の存在個数の上限値として,73 ± 22 個と推定している.またその研究では Whiteley & Tholen (1998) のサーベイに対して同じ手法を用い,OSIRIS-REx の観測限界等級での上限値は 194 ± 116 個とした.これらの上限は,未発見のトロヤ群天体が数千個存在しうることを示唆するものである.

Whiteley & Tholen (1998) では L5 周辺のわずか 0.35 平方度の範囲の探査しか行われていない.個数の上限値が大きく,サーベイでのカバー範囲が限られていることから,地球のトロヤ群天体は十分に特徴付けられているとは言えないことを意味している.

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arXiv:2001.06558
Lee et al. (2020)
Simplified 3D GCM modelling of the irradiated brown dwarf WD0137-349B
(輻射を受ける褐色矮星 WD 0137-349B の単純化した 3D モデリング)

概要

白色矮星と褐色矮星の短周期連星 (軌道周期 2 時間以下) は,最も極端に輻射を受ける大気環境のひとつである.これらは,典型的なホットジュピター系とは異なる輻射を受ける大気の,理論的・モデル化の探査の良い対象である.

ここでは褐色矮星 WD 0137-349B の3 次元大気構造と力学的特徴についての調査を行った.3 次元 GCM モデルの Exo-FMS を使用し,2 バンド灰色輻射輸送スキームを用い,褐色矮星の大気をモデル化した.また GCM モデルの計算結果は,3 次元モンテカルロ輻射輸送モデルの CMCRT で事後処理を行った.

その結果,WD 0137-349B では昼夜間エネルギー輸送は非効率であり,大きな昼夜間の温度差があることが示唆された.大気中には複数の流れのパターンが存在し,それらの帯状の向きと緯度によって,東向きか西向きの非対称なエネルギーのずれが見られる.ハドレー循環的な混合の領域が西側の昼夜境界に生成された.今回の計算結果は,WD 0137-349 系において観測されている 1.95 µm 以上での近赤外線の特徴を再現可能である.

今回のモデルは,この系で観測されている赤外線の位相曲線フラックスを 1-3 倍過剰に予測するが,全体としては位相曲線の形状によく適合する結果を導く.

今回の研究は,白色矮星・褐色矮星の短周期連星の大気を 3 次元の設定で初めてシミュレーションした試みである.褐色矮星大気の中でのエネルギーバランスをより正確に捉えるためには,紫外線放射による輻射加熱と光化学加熱のさらなる研究が必要である.褐色矮星の放射スペクトルを再現するためには,雲形成も重要な役割を担う可能性がある.

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arXiv:2001.06836
Szabó et al. (2020)
Rotational properties of Hilda asteroids observed by the K2 mission
(K2 ミッションで観測されたヒルダ群小惑星の自転特性)

概要

ヒルダ群小惑星は小惑星帯のメインベルトの外縁,あるいはすぐ外を公転しており,木星との 2:3 平均運動共鳴にある.この群は複数の異なる分類があることで知られており,これはヒルダ群の起源が複合的であることを示唆している.すなわち,メインベルト外側やトロヤ群から現在の位置まで移動してきたと考えられる.

しかしヒルダ群についての詳細を理解するための包括的な研究を行う観測は依然として少ない.ここではケプラーの K2 ミッションで観測されたヒルダ群小惑星の 125 個の光度曲線を同定した.

その結果,ヒルダ群には複合した分類があるにも関わらず,自転周期とその振幅の分布において,木星のトロヤ群小惑星と非常に似た特徴を示すことを見出した.また LR グループ (大部分が C 型か X 型小惑星) のヒルダ群天体もこのルールに従う.

メインベルトの小惑星とは対照的に,ヒルダ群小惑星には非常に高速自転する天体が少ないという特徴がある.100 時間以上の周期の非常に遅い自転をするものの割合は 18% と驚くべき数値であり,これは太陽系内で独特の特徴である.

複数の自転周期の特徴を示すものの割合 (4%) と,光度曲線中に 3 回の極大を示すもの (5%) の存在頻度からは,連星になっている小惑星が多いことを示しており,ここではヒルダ群天体のうち 25% が連星になっていると推定した.

ヒルダ群について

ヒルダ群は,小惑星帯のメインベルトの外部から木星のトロヤ群小惑星の間の領域に存在しており,木星と 3:2 平均運動共鳴の状態にある.力学的な安定性のため,この群は固有要素空間において良く定義され,また 2 つの衝突族であるヒルダ族 (Hilda family) とシューバルト族 (Schubart family) が,平均軌道傾斜角がそれぞれ 3 度と 9 度の周囲に存在することが確認されている.

最近の推定では,サイズが 2 km より大きいヒルダ群小惑星は 1 万個以上存在し,サイズ分布の指数は α=0.38 と推定されている (Terai & Yoshida 2018).このべき乗則分布をサイズが 1 km の範囲にまで外挿すると,1 km より大きいヒルダ群小惑星は 105 個のオーダーで存在すると推定され,これはメインベルトに存在することが予想される 200 万個の小惑星の数%に相当する.またトロヤ群で 1 km より大きいものの推定個数である 100-200 万個の数%に相当する.
そのため,ヒルダ群小惑星の数はトロヤ群天体やメインベルト全体よりも 1-1.5 桁少ないものの,依然として太陽系小天体の多くを占める天体グループであり,メインベルトとトロヤ群の間を繋ぐ存在である.

ヒルダ群は木星との 3:2 平均運動共鳴により摂動を受け,これらの接触軌道要素は大きな変動を示す.ヒルダ群という名称は,小惑星 153 ヒルダに由来しており,これはこの群として初めて発見された天体である.

木星を基準とした回転座標系から見ると,典型的なヒルダ群小惑星の軌道は「ヒルダの三角形」を形成し,ループを描き,遠日点の三軸秤動点の周辺にかなりの時間にわたって滞在するが,近日点近くでは連続した秤動点にずっと速く移行する.このためヒルダ群の軌道に沿って 3 ヶ所の密度波が形成され,これらのうち 2 つは木星の実際の経度の 60° 先行した位置と後方の位置にある.

ヒルダ群とトロヤ群は存在領域が大きく重複しているが,これらの群は異なる安定性を持つため,群を互いに行き来した天体の頻度に関しては議論がある (Terai & Yoshida 2018).またヒルダ群とメインベルト外部の天体の間にも相互作用がある.そのため,位置と運動から,メインベルト小惑星とトロヤ群小惑星はどちらもヒルダ群の一員に寄与していると考えられる.

天体のサイズ分布のべき乗則の指数 α は,メインベルトの中では徐々に減少していることが知られており,明るい側では 0.76-0.56,暗い側では 0.46-0.40 となり,明白なパターンが見られない (Parker et al. 2008).ヒルダ群の指数である 0.38 程度という値は,メインベルト天体の指数の分布に適合する (Terai & Yoshida 2018).しかしトロヤ群はより急なサイズ分布を持, α=0.44 で,分布に明確な分断点が見られない (Szabó et al. 2007).このことは,トロヤ群の集団とメインベルトは異なる力学的進化を経由していることを反映している.

トロヤ群とメインベルト外部の小惑星は異なる分類にあることが示唆されている.メインベルト外部にある天体は,ほとんどがスペクトル型が C型 と X 型であるが,トロヤ群は D 型か P 型である.力学的な位置付けと同じく,ヒルダ群には D, P 型のトロヤ群小惑星と,C, X 型のメインベルト外部小惑星が観測されている.Wong et al. (2014) では,Red Hildas (R) と Less Red Hildas (LR) という名称を提案している.また Demeo & Carry (2013) では選択基準を gri slope と i-z のパラメータ空間内で定義した.これによると,C, X 型は LR グループ,P, D 型は R グループに属する.

観測

ケプラーの K2 ミッションで,ヒルダ群天体が観測された.K2 ミッションの Campaign 6-18 の間に 103 個のヒルダ群天体が検出された.このうち 22 個の複数回の検出があり,観測数の合計としては 125 回となる.

まとめ

  • ヒルダ群小惑星の周期-振幅分布は,トロヤ群天体のものと非常に類似している.実際,ヒルダ群とトロヤ群の自転特性は統計的には区別しづらい.
  • ヒルダ群の自転パラメータは,メインベルト小惑星のものとは明確に異なる.ヒルダ群には高速自転天体はわずかしか存在しない.しかし木星のトロヤ群の場合はこの割合はさらに低くなる.これは,メインベルトが起源であると考えられているにも関わらず,LR グループのヒルダ群でも同様の傾向が見られる.
  • ヒルダ群の下位グループのうち,トロヤ群的 (R グループ,D と P 型) とメインベルト的 (LR グループ,C と X 型) の分類は非常に似た自転特性を持っている.
  • K2 で検出されたヒルダ群小惑星の自転周期の中間値は 20.7 時間,平均は 54.8 時間である.どちらの値も既知のメインベルト小惑星のものを著しく超える.100 時間以上の非常に遅い自転をするものは,18% とこれまでになく高い割合である.
  • 二重周期を持った小惑星を 4 つ発見し,うち 2 例は連星であると考えるのがもっともらしい説明である.残りの 2 例は,連星もしくはタンブリング自転のどちらでも説明可能である.
  • 光度曲線に 3 つの極大を持つ天体を 5 個同定した.
  • ヒルダ群の連星の割合は小惑星帯の中では最も高く,おそらくトロヤ群の値も超える.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.06836
Bourrier et al. (2020)
Hot Exoplanet Atmospheres Resolved with Transit Spectroscopy (HEARTS) III. Atmospheric structure of the misaligned ultra-hot Jupiter WASP-121b
(トランジット分光で分解する高温系外惑星大気 (HEARTS) III.軸のずれたウルトラホットジュピター WASP-121b の大気構造)

概要

トランジットするウルトラホットジュピター WASP-121b の可視光の分光観測の解析について報告する.

まず軌道要素を更新し,中心星が大きく差動回転している可能性は否定される.
その後,reloaded Rossiter-McLaughlin 手法を用いて,惑星の大気からの寄与と,トランジットの弦に沿った恒星の表面のスペクトルの影響を分離した.その結果,大気中の金属に起因する吸収の特徴が,惑星の大気の縁領域にあることが判明した.これは鉄原子によるものである可能性が高い.

検出されたシグナルの速度幅は,潮汐固定された惑星の自転によって説明可能である.そのスペクトル線の青方偏移は,昼側から夜側への強い風をトレースしているか,あるいは惑星の熱圏の非等方的な膨張を見ている可能性がある.

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