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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.07316
Turner et al. (2018)
The search for radio emission from exoplanets using LOFAR beam-formed observations: Jupiter as an exoplanet
(LOFAR ビーム形成観測を用いた系外惑星からの電波放射探査:系外惑星としての木星)
ここでは,LOFAR を用いた低周波ビーム形成観測を用いて,系外惑星からの放射を模擬するようにスケーリングされた木星からの放射を調査した.研究の目的は,木星を系外惑星からの電波放射探査のガイドラインとして使用することができ,LOFAR beam-formed 観測の感度限界を効果的に測定することが出来るような,一連の観測値を定義することである.
上記の目的を達成するため,木星の LOFAR による観測結果をダウンスケールするためのファクターで割り,さらにその観測に “sky background” の beam-formed データを加えることで,”系外惑星としての木星” の観測を模擬した.
次にこの人工的なデータセットを,処理パイプライン・後処理パイプラインを通じて実行し,どのダウンスケールファクターまでデータセット中に木星が検出されているかを判断した.
その結果,系外惑星からの電波バーストは,もし電波のフラックスが木星の電波バーストの活発な放射イベントの最中の典型的な水準 (~ 4 × 105 Jy) より 106 倍強い場合は,5 pc の距離にある系外惑星からの電波放射が検出できる.
同様に,木星のデカメートル波バースト放射のピーク (~ 5 × 106 Jy) の 106 倍の水準の場合を仮定すると,20 pc の範囲の系外惑星からの放射が検出可能と推定される.この距離は,既知の系外惑星である 55 Cnc (かに座 55 番星),Tau Boo (うしかい座タウ星),Ups And (アンドロメダ座ウプシロン星) を含む範囲である.
arXiv:1802.07316
Turner et al. (2018)
The search for radio emission from exoplanets using LOFAR beam-formed observations: Jupiter as an exoplanet
(LOFAR ビーム形成観測を用いた系外惑星からの電波放射探査:系外惑星としての木星)
概要
磁場を持った太陽系の惑星は強い電波の放射源である.理論的研究からは,太陽系近傍の中心星に近接した軌道にある系外惑星からの電波放射は,強度が木星からのメートル波放射の 103 - 106 倍になることが示唆されている.電波領域での系外惑星の検出は新しい研究分野の開拓に繋がるが,これまでに系外惑星の電波の周波数での検出は確認されていない.ここでは,LOFAR を用いた低周波ビーム形成観測を用いて,系外惑星からの放射を模擬するようにスケーリングされた木星からの放射を調査した.研究の目的は,木星を系外惑星からの電波放射探査のガイドラインとして使用することができ,LOFAR beam-formed 観測の感度限界を効果的に測定することが出来るような,一連の観測値を定義することである.
上記の目的を達成するため,木星の LOFAR による観測結果をダウンスケールするためのファクターで割り,さらにその観測に “sky background” の beam-formed データを加えることで,”系外惑星としての木星” の観測を模擬した.
次にこの人工的なデータセットを,処理パイプライン・後処理パイプラインを通じて実行し,どのダウンスケールファクターまでデータセット中に木星が検出されているかを判断した.
その結果,系外惑星からの電波バーストは,もし電波のフラックスが木星の電波バーストの活発な放射イベントの最中の典型的な水準 (~ 4 × 105 Jy) より 106 倍強い場合は,5 pc の距離にある系外惑星からの電波放射が検出できる.
同様に,木星のデカメートル波バースト放射のピーク (~ 5 × 106 Jy) の 106 倍の水準の場合を仮定すると,20 pc の範囲の系外惑星からの放射が検出可能と推定される.この距離は,既知の系外惑星である 55 Cnc (かに座 55 番星),Tau Boo (うしかい座タウ星),Ups And (アンドロメダ座ウプシロン星) を含む範囲である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.07120
Boneberg et al. (2018)
The extremely truncated circumstellar disc of V410 X-ray 1: a precursor to TRAPPIST-1?
(V410 X-ray 1 の極端に切り取られた星周円盤:TRAPPIST-1 の前駆天体か?)
この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectl energy distribution, SED) からは,光学的に厚く,外側が極端に切り取られたダスト円盤の存在が示唆される,円盤のモデル化からは,この円盤の外縁半径がわずか 0.6 au であることが示唆される.
このような円盤の切り取りを起こし得る 2 つのシナリオについて調査し,そのどちらもが観測された SED を再現出来ることを見出した.
一つ目のシナリオは,円盤内のダストとガスの両方が,おそらくは過去の力学的相互作用か未検出の伴星の存在によって切り取られているというものである.
二つ目のシナリオは,0.6 au という半径が円盤中の水のスノーラインが期待される位置に近いことに起因するものである.
円盤内での効率的なダスト成長,半径方向の移動,そしてそれに引き続くスノーライン内側でのダスト破壊の組み合わせは,光学的に厚く小さいサイズの内側のダスト円盤と,大きく広がった光学的に薄い外側のダスト円盤という構造をもたらす.
これらのシナリオは,一酸化炭素の J = 2-1 遷移での詳細な観測を行って円盤内のガスの広がりを測定することによって,識別することが出来ると考えられる.
今回考慮した多くのモデルでは,0.6 au 以内には少なくとも数地球質量のダストが存在する.このことは,この天体が TRAPPIST-1 のような密集した内側惑星が存在するような惑星系の前駆天体である可能性を示唆している.
スペクトル型は M4 (Andrews et al. 2013),あるいは M2.6 (Herczeg & Hillenbrand 2014) と推定されている.
arXiv:1802.07120
Boneberg et al. (2018)
The extremely truncated circumstellar disc of V410 X-ray 1: a precursor to TRAPPIST-1?
(V410 X-ray 1 の極端に切り取られた星周円盤:TRAPPIST-1 の前駆天体か?)
概要
褐色矮星や非常に低質量の恒星の周りに存在する原始惑星系円盤は,それらの天体のハビタブルゾーン中で地球サイズの惑星が形成するための条件の研究対象として適している.このような目的のもと,今回は非常に低質量な恒星 V410 X-ray 1 まわりの円盤の性質を調査した.この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectl energy distribution, SED) からは,光学的に厚く,外側が極端に切り取られたダスト円盤の存在が示唆される,円盤のモデル化からは,この円盤の外縁半径がわずか 0.6 au であることが示唆される.
このような円盤の切り取りを起こし得る 2 つのシナリオについて調査し,そのどちらもが観測された SED を再現出来ることを見出した.
一つ目のシナリオは,円盤内のダストとガスの両方が,おそらくは過去の力学的相互作用か未検出の伴星の存在によって切り取られているというものである.
二つ目のシナリオは,0.6 au という半径が円盤中の水のスノーラインが期待される位置に近いことに起因するものである.
円盤内での効率的なダスト成長,半径方向の移動,そしてそれに引き続くスノーライン内側でのダスト破壊の組み合わせは,光学的に厚く小さいサイズの内側のダスト円盤と,大きく広がった光学的に薄い外側のダスト円盤という構造をもたらす.
これらのシナリオは,一酸化炭素の J = 2-1 遷移での詳細な観測を行って円盤内のガスの広がりを測定することによって,識別することが出来ると考えられる.
今回考慮した多くのモデルでは,0.6 au 以内には少なくとも数地球質量のダストが存在する.このことは,この天体が TRAPPIST-1 のような密集した内側惑星が存在するような惑星系の前駆天体である可能性を示唆している.
V410 X-ray 1 について
V410 X-ray 1 は,140 pc 程度の距離にあるおうし座星形成領域 L1495 の中にある,非常に低質量の恒星である.スペクトル型は M4 (Andrews et al. 2013),あるいは M2.6 (Herczeg & Hillenbrand 2014) と推定されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.06794
Buchhave et al. (2018)
Jupiter Analogues Orbit Stars with an Average Metallicity Close to that of the Sun
(木星類似惑星は太陽に近い平均金属量をもった恒星を公転する)
ホットジュピタータイプの系外惑星は金属量が高い恒星の周りで形成されやすい一方で,木星と似た質量,軌道,離心率を持つ惑星 (Jupiter analogues,以下ジュピターアナログ) の形成に必要な条件は未知である.
ここでは,分光学的に推定された恒星の金属量を用いて,ジュピターアナログを持っている恒星は,平均金属量が太陽に近いことを示す.これは,ホットジュピターや高軌道離心率の低温な木星型惑星は金属量が高い恒星の周りに多く存在するという傾向とは対照的である.
さらに,ジュピターアナログの軌道離心率は,中心星の金属量が大きいほど高くなる傾向があることも判明した.このことは,惑星-惑星散乱による高軌道離心率の低温木星型惑星 (eccentric cool Jupiters) の形成が,金属量が豊富な環境ではより一般的な過程であることを示唆している.
これらの金属量に関する傾向を説明する仮説について調査するため,観測結果を数値シミュレーションと比較した.
シミュレーションでは,金属量豊富な恒星は典型的には複数の木星型惑星を形成可能であり,それにより惑星-惑星相互作用を起こして軌道が不安定化し,高軌道離心率軌道にある低温な木星型惑星か,円軌道化された軌道を持つホットジュピターのどちらかが形成される.
今回分析に用いたサンプル数は小さく,中心星の金属量にはばらつきがある.しかし金属量以外の多くの過程が惑星系の形成に影響をおよぼすことを示唆する.
現在我々の手元にあるデータ中には,ジュピターアナログと地球サイズの惑星は,平均の金属量が太陽に近い恒星の周りで形成されやすく,一方で高金属量の系では高軌道離心率の低温な木星型惑星かホットジュピターを持つという傾向が見られる.
そのため金属量が多い系は,太陽系に類似した惑星系の形成には適さない可能性を示唆している.
しかし巨大ガス惑星についての研究は,これまでは短周期の惑星に限られていた,例えば周期 4 年未満の巨大惑星と中心星の金属量の相関についての研究である (Fischer & Valenti 2005).そのため,より長周期のジュピターアナログの形成環境については,今のところあまり理解が進んでいない.
\[
S_{\rm eff}=\frac{T_{\rm eff}}{5778\,{\rm K}}\left(\frac{R_{*}}{R_{\odot}}\right)^{2}\left(\frac{a}{1\,{\rm AU}}\right)^{-2}\frac{1}{\sqrt{1-e^{2}}} < 0.25 S_{\bigoplus}\]
で評価する.
惑星の軌道離心率が小さい値であることは,その惑星系が強い力学的不安定の時期を経験している可能性が低いことを示唆している.また日射量についての制約は,太陽系の場合は軌道長半径が 2 AU より大きいことに対応している.これは,数百万年進化した原始惑星系円盤のスノーラインよりも遠方に相当する (Bitsch et al. 2015).
系外惑星のデータは exoplanet.org (http://exoplanets.org) から取得した.上記の条件から,合計で 20 個のジュピターアナログを同定した.また比較対象として,軌道離心率が 0.25 より大きく,低温な高軌道離心率の木星型惑星をさらに 17 個同定した.
これらの抽出したサンプルに対して,1889 セットの高分散スペクトルデータを収集した.これらは,新しく観測を行って得られたものと,過去の観測のアーカイブデータとして入手可能なものの両方を使用した.
また,集めたサンプルから 4 つの惑星系を除外した.
一つ目は,中心星が太陽型の主系列星 (> 4500 K,log g > 4.0) であるという条件での選別を行った.これにより 2 個の系を,中心星の表面重力が小さいとして除外した.これは,恒星のパラメータを決定するためのツール Stellar Parameter Classification (SPC,Buchhave et al. 2012, 2014) は,太陽型星に適用するためのものである事が理由である.
二つ目は,観測可能な時間内に十分なデータが得られなかった 2 つの系を除外した.
ホットジュピターとジュピターアナログについてコルモゴロフ・スミルノフ検定を行い,同一のグループである可能性を 99.996% で棄却した.
ここでのホットジュピターを持つ恒星の金属量の平均値は,視線速度法で検出されたホットジュピターの中心星の金属量の平均値である 0.23 ± 0.03 と近い値である (Fischer & Valenti 2005),また,ケプラーで発見された巨大ガス惑星を持つ中心星の金属量の平均値 0.18 ± 0.02 とも近い (Buchhave et al. 2014).
ジュピターアナログのうち軌道離心率が円に近いものの中で,その惑星系の中でただひとつの惑星のみが発見されている場合は,中心星の金属量は太陽の値に近いものが多い.複数の惑星が見つかっている惑星系も含め,さらにそれらのそれぞれの軌道離心率を全て比較した場合,中心星の金属量の範囲は広くなる.
ホットジュピターはスノーラインよりも遠方で形成され,その後内側の中心星近傍に移動してくると考えられている.しかし,その移動が惑星と円盤の相互作用による disk migration なのか (Baruteau et al. 2014),あるいは力学的な惑星-惑星散乱の結果まず高軌道離心率の軌道になり,その後円軌道化されたか (Chatterjee et al. 2008) については決着が付いていない.
金属量との相関に関する今回の結果は,惑星の移動を担うメカニズムは,太陽的な金属量の環境よりも高金属量の環境の方がより効果的であることを示唆している.また,軌道離心率と金属量の関係からは,ジュピターアナログの軌道離心率は中心星の金属量と相関,つまり原始惑星系円盤の初期の金属量と相関しており,惑星惑星散乱による高軌道離心率のジュピターアナログは,金属量豊富な環境ではより一般的な存在であることを示唆している.
arXiv:1802.06794
Buchhave et al. (2018)
Jupiter Analogues Orbit Stars with an Average Metallicity Close to that of the Sun
(木星類似惑星は太陽に近い平均金属量をもった恒星を公転する)
概要
木星は,太陽系の構造と軌道配置の決定に関して重要な役割を果たしている.ホットジュピタータイプの系外惑星は金属量が高い恒星の周りで形成されやすい一方で,木星と似た質量,軌道,離心率を持つ惑星 (Jupiter analogues,以下ジュピターアナログ) の形成に必要な条件は未知である.
ここでは,分光学的に推定された恒星の金属量を用いて,ジュピターアナログを持っている恒星は,平均金属量が太陽に近いことを示す.これは,ホットジュピターや高軌道離心率の低温な木星型惑星は金属量が高い恒星の周りに多く存在するという傾向とは対照的である.
さらに,ジュピターアナログの軌道離心率は,中心星の金属量が大きいほど高くなる傾向があることも判明した.このことは,惑星-惑星散乱による高軌道離心率の低温木星型惑星 (eccentric cool Jupiters) の形成が,金属量が豊富な環境ではより一般的な過程であることを示唆している.
これらの金属量に関する傾向を説明する仮説について調査するため,観測結果を数値シミュレーションと比較した.
シミュレーションでは,金属量豊富な恒星は典型的には複数の木星型惑星を形成可能であり,それにより惑星-惑星相互作用を起こして軌道が不安定化し,高軌道離心率軌道にある低温な木星型惑星か,円軌道化された軌道を持つホットジュピターのどちらかが形成される.
今回分析に用いたサンプル数は小さく,中心星の金属量にはばらつきがある.しかし金属量以外の多くの過程が惑星系の形成に影響をおよぼすことを示唆する.
現在我々の手元にあるデータ中には,ジュピターアナログと地球サイズの惑星は,平均の金属量が太陽に近い恒星の周りで形成されやすく,一方で高金属量の系では高軌道離心率の低温な木星型惑星かホットジュピターを持つという傾向が見られる.
そのため金属量が多い系は,太陽系に類似した惑星系の形成には適さない可能性を示唆している.
惑星の存在頻度と中心星の金属量
惑星とその中心星の金属量の相関についての研究は,まずホットジュピター型の巨大ガス惑星に対して行われた (Santos et al. 2004,Fischer & Valenti 2005).その後同様の研究が,サブネプチューンサイズの惑星に対しても行われた (Sousa et al. 2011,Buchhave et al. 2012, 2014).しかし巨大ガス惑星についての研究は,これまでは短周期の惑星に限られていた,例えば周期 4 年未満の巨大惑星と中心星の金属量の相関についての研究である (Fischer & Valenti 2005).そのため,より長周期のジュピターアナログの形成環境については,今のところあまり理解が進んでいない.
サンプル選定と観測
ここでは,惑星質量が 0.3 - 3.0 木星質量の範囲にあり,軌道離心率が 0.25 より小さく,地球の 4 分の 1 未満の日射を受けている惑星をジュピターアナログと定義する.日射量については\[
S_{\rm eff}=\frac{T_{\rm eff}}{5778\,{\rm K}}\left(\frac{R_{*}}{R_{\odot}}\right)^{2}\left(\frac{a}{1\,{\rm AU}}\right)^{-2}\frac{1}{\sqrt{1-e^{2}}} < 0.25 S_{\bigoplus}\]
で評価する.
惑星の軌道離心率が小さい値であることは,その惑星系が強い力学的不安定の時期を経験している可能性が低いことを示唆している.また日射量についての制約は,太陽系の場合は軌道長半径が 2 AU より大きいことに対応している.これは,数百万年進化した原始惑星系円盤のスノーラインよりも遠方に相当する (Bitsch et al. 2015).
系外惑星のデータは exoplanet.org (http://exoplanets.org) から取得した.上記の条件から,合計で 20 個のジュピターアナログを同定した.また比較対象として,軌道離心率が 0.25 より大きく,低温な高軌道離心率の木星型惑星をさらに 17 個同定した.
これらの抽出したサンプルに対して,1889 セットの高分散スペクトルデータを収集した.これらは,新しく観測を行って得られたものと,過去の観測のアーカイブデータとして入手可能なものの両方を使用した.
また,集めたサンプルから 4 つの惑星系を除外した.
一つ目は,中心星が太陽型の主系列星 (> 4500 K,log g > 4.0) であるという条件での選別を行った.これにより 2 個の系を,中心星の表面重力が小さいとして除外した.これは,恒星のパラメータを決定するためのツール Stellar Parameter Classification (SPC,Buchhave et al. 2012, 2014) は,太陽型星に適用するためのものである事が理由である.
二つ目は,観測可能な時間内に十分なデータが得られなかった 2 つの系を除外した.
結果
金属量との相関
ジュピターアナログを持つ中心星の金属量は [m/H] = -0.07 ± 0.05 (± 0.21),ホットジュピターを持つ中心星の金属量は 0.25 ± 0.03 (± 0.16),高軌道離心率の低温木星型惑星を持つ中心星の金属量は 0.23 ± 0.04 (±0.14) であった.誤差は一つ目が標準誤差で,括弧内は標準偏差を意味する.ホットジュピターとジュピターアナログについてコルモゴロフ・スミルノフ検定を行い,同一のグループである可能性を 99.996% で棄却した.
ここでのホットジュピターを持つ恒星の金属量の平均値は,視線速度法で検出されたホットジュピターの中心星の金属量の平均値である 0.23 ± 0.03 と近い値である (Fischer & Valenti 2005),また,ケプラーで発見された巨大ガス惑星を持つ中心星の金属量の平均値 0.18 ± 0.02 とも近い (Buchhave et al. 2014).
軌道離心率と金属量の関係
低温で高軌道離心率の木星型惑星を持つ中心星は,金属量が豊富な傾向を示す.ジュピターアナログのうち軌道離心率が円に近いものの中で,その惑星系の中でただひとつの惑星のみが発見されている場合は,中心星の金属量は太陽の値に近いものが多い.複数の惑星が見つかっている惑星系も含め,さらにそれらのそれぞれの軌道離心率を全て比較した場合,中心星の金属量の範囲は広くなる.
結果の解釈と惑星移動機構への示唆
結果として,ジュピターアナログは平均的には太陽金属量の恒星の周りに発見される傾向があり,金属量豊富な恒星周りに多く存在するホットジュピターとは対照的な結果となった.そのため,ホットジュピターに対しては広く受け入れられている金属量との相関は,長周期で軌道離心率が小さい惑星を持つ系に対しては延長して適用出来ないと考えられる.ホットジュピターはスノーラインよりも遠方で形成され,その後内側の中心星近傍に移動してくると考えられている.しかし,その移動が惑星と円盤の相互作用による disk migration なのか (Baruteau et al. 2014),あるいは力学的な惑星-惑星散乱の結果まず高軌道離心率の軌道になり,その後円軌道化されたか (Chatterjee et al. 2008) については決着が付いていない.
金属量との相関に関する今回の結果は,惑星の移動を担うメカニズムは,太陽的な金属量の環境よりも高金属量の環境の方がより効果的であることを示唆している.また,軌道離心率と金属量の関係からは,ジュピターアナログの軌道離心率は中心星の金属量と相関,つまり原始惑星系円盤の初期の金属量と相関しており,惑星惑星散乱による高軌道離心率のジュピターアナログは,金属量豊富な環境ではより一般的な存在であることを示唆している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.06795
Shvartzvald et al. (2018)
UKIRT-2017-BLG-001Lb: A giant planet detected through the dust
(UKIRT-2017-BLG-001Lb:ダストを通して検出された巨大惑星)
レンズ天体系の惑星と中心星の質量比は 1.50 × 10-3 で,これは木星/太陽質量比のおよそ 1.5 倍である.
このマイクロレンズイベントは銀河中心から 0.35° の位置にあり,ダストによる光の大きな減衰の影響を受けている.減光の度合いは \(A_{K}=1.68\) である.そのため,この現象は近赤外線サーベイでしか検出することが出来ない.
またこの領域は,空間的に大きな差異のある減衰の影響があり,このためマイクロレンズのアインシュタイン角半径を導出するのに必要な,ソース天体の特性の推定が難しい.
しかし,ソース天体はおそらく銀河系の far disk に位置しているであろうということを示す.もしこの推定が正しければ,これは far disk に属するものとして識別されたマイクロレンズイベントとしては最小のソース天体である.
ベイズ解析を用いてレンズ天体の質量と距離を推定した結果,惑星は 1.47 木星質量,中心星は 0.93 太陽質量,惑星と中心星の射影距離は 4.5 AU と推定される.この系はおよそ 6.6 kpc の距離にあり,おそらくは銀河バルジに属する天体である.
さらに,この領域での標準的でない減光曲線も発見した.これは,銀河中心付近の高減衰領域についての過去の結果と一致するものである
この一環として,低銀緯領域でのマイクロレンズイベントを発見した.これらは可視光のサーベイでは発見されなかった.おそらく可視光ではダストによる減光が大きいためであると考えられる.
今回の惑星は UKIRT サーベイ単独で検出された初めての惑星である.
なお,UKIRT (United Kingdom Infrared Telescope) はハワイ・マウナケアの 3.8 m 望遠鏡である.今回の観測ではこの望遠鏡の,Wide-field NIR camera (WFCAM) を用いている.
arXiv:1802.06795
Shvartzvald et al. (2018)
UKIRT-2017-BLG-001Lb: A giant planet detected through the dust
(UKIRT-2017-BLG-001Lb:ダストを通して検出された巨大惑星)
概要
UKIRT マイクロレンズサーベイで検出された重力マイクロレンズイベント UKIRT-2017-BLG-001 の解析から,巨大惑星の発見について報告する.レンズ天体系の惑星と中心星の質量比は 1.50 × 10-3 で,これは木星/太陽質量比のおよそ 1.5 倍である.
このマイクロレンズイベントは銀河中心から 0.35° の位置にあり,ダストによる光の大きな減衰の影響を受けている.減光の度合いは \(A_{K}=1.68\) である.そのため,この現象は近赤外線サーベイでしか検出することが出来ない.
またこの領域は,空間的に大きな差異のある減衰の影響があり,このためマイクロレンズのアインシュタイン角半径を導出するのに必要な,ソース天体の特性の推定が難しい.
しかし,ソース天体はおそらく銀河系の far disk に位置しているであろうということを示す.もしこの推定が正しければ,これは far disk に属するものとして識別されたマイクロレンズイベントとしては最小のソース天体である.
ベイズ解析を用いてレンズ天体の質量と距離を推定した結果,惑星は 1.47 木星質量,中心星は 0.93 太陽質量,惑星と中心星の射影距離は 4.5 AU と推定される.この系はおよそ 6.6 kpc の距離にあり,おそらくは銀河バルジに属する天体である.
さらに,この領域での標準的でない減光曲線も発見した.これは,銀河中心付近の高減衰領域についての過去の結果と一致するものである
UKIRT でのマイクロレンズサーベイ
2015 - 2016 年にかけて,UKIRT を用いた近赤外線でのマイクロレンズサーベイが行われた.これは,スピッツァー宇宙望遠鏡とケプラーでのマイクロレンズキャンペーンのサポートとして行われた観測プログラムである.この一環として,低銀緯領域でのマイクロレンズイベントを発見した.これらは可視光のサーベイでは発見されなかった.おそらく可視光ではダストによる減光が大きいためであると考えられる.
今回の惑星は UKIRT サーベイ単独で検出された初めての惑星である.
なお,UKIRT (United Kingdom Infrared Telescope) はハワイ・マウナケアの 3.8 m 望遠鏡である.今回の観測ではこの望遠鏡の,Wide-field NIR camera (WFCAM) を用いている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.06241
Gao et al. (2018)
Sedimentation Efficiency of Condensation Clouds in Substellar Atmospheres
(準恒星大気中の凝縮雲の沈殿効率)
そのようなモデルの一つは Ackerman & Marley (2001) の渦拡散-沈降モデルであり,そこでは沈降効率パラメータ \(f_{\rm sed}\) に依存して大気中の鉛直方向の雲の広がりが決まる.しかし,これらの天体の大気中の雲の鉛直構造を左右する物理プロセスはよく分かっていない.
ここでは,渦拡散係数 \(K_{zz}\),重力,物質の特性,雲形成過程の広い範囲に渡る \(f_{\rm sed}\) の傾向について,より詳細な雲の微細物理モデルを用いて計算した雲の分布をフィッティングすることで導出を試みた.その結果,\(f_{\rm sed}\) は \(K_{zz}\) に依存するが,\(K_{zz}\) が一定に保たれている時は重力には依存しないことを見出した.
\(f_{\rm sed}\) は雲粒子の核生成効率に最も敏感で,これは表面エネルギーや分子量などの物質特性によって決まる.表面エネルギーの高い物質は,数が少なく大きな雲粒子を形成し,\(f_{\rm sed}\) は大きくなる (> 1).表面エネルギーが小さい物質に対してはその逆の傾向がある.
不均一な核生成を介した雲形成の場合,\(f_{\rm sed}\) は凝結核フラックスと天体半径に敏感で,準恒星天体大気中の雲形成と,天体の形成環境とその他の大気エアロゾルとを結びつけている.
今回得られたこれらの考察は,準恒星天体の大気をよりよく理解するための,改良された雲モデルに繋がる可能性がある.例えば,\(f_{\rm sed}\) は大気中の雲底深さの増加に伴って大きくなる可能性が指摘され,褐色矮星のスペクトル型の L/T 遷移の性質へのヒントとなる可能性がある.
arXiv:1802.06241
Gao et al. (2018)
Sedimentation Efficiency of Condensation Clouds in Substellar Atmospheres
(準恒星大気中の凝縮雲の沈殿効率)
概要
準恒星天体 (substellar object,褐色矮星やガス惑星など) の大気中の凝縮雲の存在は,スペクトルや測光変動の観測から広く示唆されている.現在までに,水平方向に平均化された雲の鉛直方向の分布と平均粒子サイズは,モデルを用いて大まかに特徴付けられている.そのようなモデルの一つは Ackerman & Marley (2001) の渦拡散-沈降モデルであり,そこでは沈降効率パラメータ \(f_{\rm sed}\) に依存して大気中の鉛直方向の雲の広がりが決まる.しかし,これらの天体の大気中の雲の鉛直構造を左右する物理プロセスはよく分かっていない.
ここでは,渦拡散係数 \(K_{zz}\),重力,物質の特性,雲形成過程の広い範囲に渡る \(f_{\rm sed}\) の傾向について,より詳細な雲の微細物理モデルを用いて計算した雲の分布をフィッティングすることで導出を試みた.その結果,\(f_{\rm sed}\) は \(K_{zz}\) に依存するが,\(K_{zz}\) が一定に保たれている時は重力には依存しないことを見出した.
\(f_{\rm sed}\) は雲粒子の核生成効率に最も敏感で,これは表面エネルギーや分子量などの物質特性によって決まる.表面エネルギーの高い物質は,数が少なく大きな雲粒子を形成し,\(f_{\rm sed}\) は大きくなる (> 1).表面エネルギーが小さい物質に対してはその逆の傾向がある.
不均一な核生成を介した雲形成の場合,\(f_{\rm sed}\) は凝結核フラックスと天体半径に敏感で,準恒星天体大気中の雲形成と,天体の形成環境とその他の大気エアロゾルとを結びつけている.
今回得られたこれらの考察は,準恒星天体の大気をよりよく理解するための,改良された雲モデルに繋がる可能性がある.例えば,\(f_{\rm sed}\) は大気中の雲底深さの増加に伴って大きくなる可能性が指摘され,褐色矮星のスペクトル型の L/T 遷移の性質へのヒントとなる可能性がある.
この天体のカタログ名は,Strom & Strom (1994) の観測でのカタログに由来している.
有名な weak line T Tauri star (WTTS,弱輝線おうし座T型星) である V410 Tau は,L1495 星雲 の中心部に存在する.Strom & Strom (1994) では,この V410 Tau 周辺の一部の領域を ROSAT を用いて X 線で探査している.この中での表中の呼称が天体名の由来である.
V410 X-ray 1 の他に,V410 X-ray 2, 3, 4, 5a, 5b, 6, 7, 8a, 8b, 8c, 8d, 8e, 8f が存在する.また同論文では多波長での観測も行っており,可視光.近赤外線でのサーベイで “anonymous stars” を 27 個同定している.これらは V410 anon NN (例:V410 anon 1) とナンバリングされている.