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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.06659
Nucita et al. (2018)
Discovery of a bright microlensing event with planetary features towards the Taurus region: a super Earth planet
(おうし座領域方向の惑星の特徴を伴った明るいマイクロレンズイベントの発見:スーパーアース惑星)

概要

最近,おうし座領域において TCP J05074264+2447555 と名付けられた一時的な増光事象が発見された.これは,すぐに進行中の重力マイクロレンズイベントであると認識された.ソース天体は地球からわずか 700 - 800 pc の距離にあると推定される.

増光が最大になる時期付近で高頻度の観測を行った結果,このマイクロレンズ現象を起こしているレンズ天体は,非常に低質量比の天体を持つ伴星であることが示唆された.この連星レンズ系は地球と類似した惑星を持ち,質量推定のもっともらしい値は 9.2 ± 6.6 地球質量である.
さらに,ソース天体の推定距離と詳細なモンテカルロシミュレーションから,レンズ天体までの距離は 380 pc 程度で質量は 0.25 太陽質量と推定される.

マイクロレンズイベント TCP J05074264+2447555

TCP J05074264+2447555 は,おうし座領域で偶然発見された増光現象である.マイクロレンズのソース天体 (※注釈:視線方向でレンズ天体の背後に存在し,増光を受けている天体) は USNO-A2 であり,分光観測の結果こちらの天体は F5V 主系列星と分類されている (Maehara 2017).

このイベントは,当初は単一のレンズ天体によるマイクロレンズイベントであると解釈されていた (Jayasinghe et al. 2017,Maehara 2017).VSNET (Variable Star Network) による増光を知らせるアラート以降,R.P. Feynman Observatory と,Astronomical Institute of Slovak Academy of Sciences in Stara ́ Lesn ́a,telescope of the Crimea station of the Sternberg Astronomical Institute で観測が継続されていた.
なお R.P. Feynman Observatory は,著者の一人が持つ個人所有の小型天文台であり,南イタリア Gagliano del Capo の都市部に位置し,主に教育的な目的で測光と分光観測のプロジェクトに使用されている.ただし小惑星や系外惑星,変光性の観測に関する小さい研究プログラムのサポートを受けている.

この増光イベントの観測の最中,増光が最大となる周辺で小さく減光を起こす特徴が識別された,これは,単一レンズ天体による Paczyn ́ski model の予測とは異なる振る舞いである.増光最大の近辺で V 字型の光度曲線が得られたため,レンズ天体は単一の天体ではなく,連星である可能性があると見て解析を行った.

背景にあるソース天体までの距離は,700 - 800 pc と推定される.これは星間減光の大きさや,この天体の B-V color などから推定された.また,レンズ天体は 380 pc 程度の距離にある推定され,質量は 0.25 太陽質量,伴星は 9.2 ± 6.6 地球質量と推定される
この惑星は,明確にスーパーアースとされる質量の範囲にある.ここでは R. P. Feynman に敬意を表して,この惑星に Fyynman-01 と愛称を付けた.

今回のマイクロレンズ減少は,これまでのマイクロレンズイベントの中では最も近距離で発生した現象である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.05805
Volk et al. (2018)
OSSOS IX: two objects in Neptune's 9:1 resonance -- implications for resonance sticking in the scattering population
(OSSOS IX:海王星の 9:1 共鳴にある 2 つの天体ー散乱された天体群の共鳴付着への影響)

概要

Outer Solar System Origins Survey (OSSOS) プロジェクトでの,新しい太陽系内天体の検出について報告する.今回発見されたのは,およそ 130 au の軌道長半径を持ち,海王星と 9:1 平均運動共鳴にある 2 つの天体である.

両天体ともに 1000 万年のタイムスケールの共鳴を起こしており,一つは 9:1 共鳴の先行する非対称秤動の島にあり,もう片方は対称かあるいは尾を引く非対称の島のどちらかに位置している.これらの 2 天体は,永年共鳴に分類されることが分かっている中では最も大きな軌道長半径を持つ部類の天体である.

また,注意深く特徴付けられたサーベイによる今回のこれらの天体の検出は,軌道長半径が 100 au をより大きい天体の共鳴の初めての強固な集団推定を可能にする.この 2 天体の検出からは,同様の軌道にある 9:1 共鳴の天体で,等級が Hr < 8.66 (直径 100 km 程度以上に相当) の集団が,1.1 × 104 個 (11000 個) 程度存在することが示唆される.95% 信頼区間では 0.4 - 3 × 104 個 (4000 個〜 30000 個存在) となる.


これらの天体の軌道をフィットし,その不定性の範囲内から選んだ初期軌道要素のアンサンブルを 40 億年にわたって積分を行い,軌道の特徴について調査した.その結果,これらの天体は共鳴状態を専有するタイムスケールは ~ 10 億年と判明した.これらのタイムスケールは,これら 2 つの天体は散乱された天体が起源であるが,太陽系進化の最後の ~ 10 億年 の間に海王星との 9:1 共鳴に一時的に捕獲されたという仮説と整合的である.

現在の散乱天体群モデルのシミュレーションに基づき,海王星と 9:1 共鳴に入っていることが期待される天体の数は,等級が Hr < 8.66 の天体に限ると 1000 - 5000 個と推定される.これは,OSSOS の観測に基づく 9:1 共鳴の天体の推定とやや整合的である.

結論としては,resonance sticking が,発見されている 9:1 共鳴天体の起源としてもっともらしい説明であるが,太陽系形成初期から 9:1 の共鳴に入っている天体群が存在する可能性についても議論を行った.これはカイパーベルト天体の力学的歴史への興味深い示唆を与える.

パラメータ

o5m72
軌道長半径:129.80 au
軌道離心率:0.6600
近日点距離:44.13 au
軌道傾斜角:38.361°
o4h39
軌道長半径:129.93 au
軌道離心率:0.6952
近日点距離:39.60 au
軌道傾斜角:26.468°

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.06044
Wise & Dodson-Robinson (2018)
No Giant Planet Pileup Near 1 AU
(1 AU 付近の巨大惑星のパイルアップは存在しない)

概要

対数スケールで見た時の系外惑星の軌道長半径の分布には,分布の pileup (パイルアップ,集積) が存在する,あるいは 1 AU 付近に分布の特徴が存在するという指摘がある (Udry & Santos 2007,Wright et al. 2009,Hasegawa & Pudritz 2012など).ここでは,このパイルアップや分布の特徴は統計的に有意ではないことを指摘する

個々の系外惑星の視線速度サーベイの複雑なサンプリングと選択バイアスに関する知見がないため,適切な統計的有意性をパイルアップに対して適用することは出来ない.その代わり,公開されているデータを用いて,以下の方法で系外惑星の軌道長半径分布にパイルアップが存在するかどうかを判定する.

まず,視線速度法を用いて検出された巨大惑星の,質量-軌道長半径分布をプロットする.これは,対数スケールで図示したものと,均等目盛りで図示したものの両方を用いる.後者に関しては,長周期惑星に対する観測バイアスの影響 (※注釈:長周期のものは検出しづらい) を避けるため,軌道長半径 2.5 AU を上限として切り取った.

これらの分布からは,巨大惑星の軌道長半径分布は対数スケールで見た場合には明らかに均一ではないことが分かり,これは軌道長半径分布にパイルアップが存在するという仮説が提案される一因となっている.


しかしここでは,期待される系外惑星の軌道長半径分布は,そもそも対数スケールで均一にはならないということを指摘する.単純な議論としては以下の通りである.

\(\log a\) (\(a\) は軌道長半径) の分布における非一様な特徴を探す時,帰無仮説は巨大惑星の頻度は \(1/a\) でスケールされる.なぜなら,軌道長半径の各 AU ごとに割り当てられたプロット間隔は \(1/a\) になるからである.

Armitage (2007),Bitsch & Kley (2011),Coleman & Nelson (2014) によると,5 AU 以内の巨大惑星は形成後に大きく内側への軌道移動を経験した可能性がある.もし惑星が局所的な粘性タイムスケール \(r^{2}/\nu\) で移動し,\(\nu\!\left(r\right)\sim r\) の場合 (Hartmann et al. 1998),これらの惑星は大きな軌道長半径の時はゆっくりと軌道移動をする.そのため ~ 1 AU あたりの巨大惑星の存在頻度は,軌道長半径の増加に伴って増加する.


ここでは,Bayesian Blocks algorithm (Scargle et al. 2013) を用いて巨大惑星の軌道長半径の分布を評価した.均等スケールでのプロットを用い,一様な分布からのずれを評価した.

まず,報告されている観測不定性を用いて,系外惑星の質量-軌道長半径の分布の再サンプリングを行った.ここでは,最小質量が 0.5 木星質量以上のものを抽出し,その軌道長半径の分布を評価した.

次に Bayesian Blocks algorithm を使用した.ブロック数 (ヒストグラムのビン) に対する geometric prior を \(P\!\left(N_{\rm blocks}\right)=P_{0}\gamma^{N_{\rm blocks}}\) と設定し,変化点の正しい検出の閾値確率として 0.95 を選択した.\({\rm N_{\rm A}}\) 個の惑星を含む個々の再サンプリングされた軌道長半径分布 \(\rm A\) に対して,ランダムなデータセット \({\rm R_{\rm N_{\rm A}}}\) (全て \(\rm N_{\rm A}\) 個の惑星を含む) を用いて \(\gamma\) を計算.

統計解析の結果,再サンプリングされたもののうち 78% が,1 - 1.5 AU 中に高い惑星頻度を持つ特徴を示した.この特徴は,変化点が 2 つ存在する可能性を示唆しており,一つは惑星頻度が増加に向かう変化点,もう一つは減少に向かう変化点である.
ただしこの特徴は再サンプリングされた軌道長半径分布の 78% にしか現れておらず,そのため 1 AU でのパイルアップの証拠は統計的に有意ではないことが示唆される

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arXiv:1802.06064
Tuomi et al. (2018)
AD Leonis: Radial velocity signal of stellar rotation or spin-orbit resonance?
(しし座 AD 星:恒星の自転もしくは自転-軌道共鳴による視線速度シグナルか?)

概要

AD Leonis (しし座 AD 星) は,太陽系近傍にある磁気的に活発な M 型矮星である.この恒星の観測を行ったところ,測光観測での光度の変動だけではなく,2.23 日周期の視線速度の変動も発見した.発見されたのは 2 種類のシグナルで,(1) かなりの変動を示すが,視線速度シグナルに類似した短周期のシグナル,(2) 4070 日程度の長周期の活動サイクルである.

(1) の短周期の測光シグナルを,過去の ASAS と MOST での測光観測結果と比較した,その結果,そのシグナルは一貫して存在しておらず,時間の変数として大きく変化することを発見した.このシグナルは,中央値で 3.38 日 に分割されたMOST データセットの第一と第二の半分を考慮すると,およそ 0.8 ラジアンの位相変化を示す.

測光観測結果とは対照的に,視線速度のドップラーシグナルは,HAPRS と HIRES による 4700 日にわたる視線速度観測において安定して存在しており,振幅,位相,周期,あるいは抽出された波長の関数として,時間的な変動を示す様子は見られなかった.

変動の原因として,恒星にある黒点による変動に起因するというシナリオについて考察した,その結果,測光シグナルの速い変化と,恒星表面上で共回転している黒点による安定な視線速度シグナルを,同時に説明することは困難という結論に至った.
このことは,視線速度のドップラー周期性の起源は,自転と公転が共鳴した状態で公転している惑星による,重力的な影響であることを示唆している.

このようなシナリオで自転と公転のずれが存在する場合,測定された自転速度の射影速度 \(v \sin \)i は,傾斜角が 15.5 ± 2.5° であることを示唆する.また惑星と思われる伴星の質量は 0.237 ± 0.047 木星質量であることを示唆する.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.05277
Mayo et al. (2018)
275 Candidates and 149 Validated Planets Orbiting Bright Stars in K2 Campaigns 0-10
(K2 キャンペーン 0 - 10 の明るい恒星を公転する 275 個の候補と 149 の確定した惑星)

概要

2014 年以降,NASA のケプラー K2 ミッションでは,トランジット惑星を探査するために黄道面の領域の大部分を観測し,何百もの惑星候補天体を検出してきた.この観測は少なくとも 2018 年前半まで計画されており,K2 ミッションはさらに多くの惑星候補天体を引き続き検出する予定である.

ここでは,K2 ミッションの Campaign 0 - 10 の間に検出された 275 個の惑星候補天体について報告する.これらは,ケプラーバンドで 13 等級よりも明るい恒星で,なおかつ高分散 (R = 44000) の分光観測が得られている惑星候補天体である.

これらの候補を,vespa パッケージを用いて解析し (Morton 2012, 2015),偽陽性確率 (false positive propability, FPP,得られたシグナルが惑星由来ではない確率) を計算した.
その結果,149 個の候補天体で FPP が 0.1%未満となり,これらは惑星によるトランジットシグナルであると確定した.これらのうち 39 個は,これまでに解析されていたが未確定のまま惑星候補天体として扱われていたものであり,また 56 個はこれまでに検出されていなかったものである.従って,今回新しく惑星だと確定したのは 95 個である


ここでは,データリダクション,候補天体の識別,統計的検証のプロセスについて記述し,また惑星候補天体および新しく確定した惑星の統計についても調査を行った.

解析したサンプル中には,惑星半径分布に存在するギャップについての暫定的な兆候が見られる.Fulton et al. (2017) による,ケプラー候補サンプルについての同様の調査と比較を行った結果,K2 ミッションでの惑星候補や確定した惑星の分布中に存在するギャップを定量的に確定するためには,さらなる惑星の発見が必要であると結論付けた.


今回の研究は,確認された K2 惑星の数をおよそ 50% 増加させ,今後のフォローアップ観測のための新たなターゲットを提供することに繋がる.また,今後の K2 キャンペーンや,2018 年に打ち上げ予定の Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) で得られることが期待される,惑星候補天体を検証するためのフレームワークとしても役立つ.

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