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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.02273
Katz (2018)
Why is Interstellar Object 1I/2017 U1 (`Oumuamua) Rocky, Tumbling and Very Prolate?
(なぜ恒星間天体 1I/2017 U1 (`Oumuamua) は岩石主体で,タンブリングしていて非常に扁長なのか?)

概要

最近発見された初めての恒星間天体 1I/2017 U1 (`Oumuamua) (オウムアムア) は,輝度が 10 倍ほど変化することが分かっている.これは他のどんな太陽系内の小惑星よりも大きな変化幅である.

またオウムアムアのスペクトルの特性は D 型小惑星と近く,揮発性物質も検出されていない.これらの特徴は,太陽系外のオールト雲に起源を持つ天体に期待される特徴とは対照的である.

この天体は,提案されている天体分類 ”Jurads” の初めての発見例である.揮発性物質が枯渇していて,主星の主系列星の進化の最終段階に惑星系から放出されたと考えられるものである.

ここでは,恒星の巨星段階での小天体の加熱が,揮発性物質が散逸した時の前駆体である彗星天体を流動化し,自己重力の非圧縮性液体のヤコビ楕円体の形状を取るようになることを示唆する.
観測からは,この天体がタンブリング運動を起こしていることが示唆される.この運動を引き起こした衝突は,オウムアムアが形成された数千年後に発生したはずであると考えられる.

ヤコビ楕円体は,自転周期,密度,軸比の間に特有の関係性を持つ.観測からは軸比が 5 以上と示唆されており,この値からはオウムアムアの密度の下限値として 1.6 g/cm3 という低い値が示唆される.そのため,大部分が凍結した二酸化炭素でない限り,氷主体の組成である可能性は否定される.

この天体は初めて発見された Jurad 天体であり,白色矮星の大気を汚染し,また軟ガンマ線リピーターを生み出している降着天体と関連している可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.01702
Granados Contreras & Boley (2018)
The Dynamics of Tightly-packed Planetary Systems in the Presence of an Outer Planet: case studies using Kepler-11 and Kepler-90
(外側の惑星が存在する状況下での密集した惑星系の動力学:ケプラー11 とケプラー90 を用いたケーススタディ)

概要

密集した内側惑星系 (systems with tightly-packed inner planets, STIPs) の動力学,観測可能性と安定性に対して,未検出の外側巨大惑星が与える影響についての調査を行った.ここでは,永年理論と合成永年周波数スペクトルを用いた,惑星軌道の直接数値計算を用いた.

STIPs が存在する,ケプラー11 系とケプラー90 系をサンプルとして,発見済みの惑星とほぼ同一平面上にある木星型惑星の擾乱天体を,軌道長半径を 1 - 5.2 au までの範囲で変化させて数値計算を行った.

その結果,外側の擾乱天体は大部分の軌道配置において,歳差周波数の変化を除けば内側の惑星系の進化に対して影響を与えないことが分かった.しかし部分的には,外側の惑星によって永年離心率共鳴を起こして軌道不安定を招くような軌道配置がある.

ケプラー90 系では,外側の擾乱天体が永年相互作用を通じて,ケプラー90b と c の軌道をその他の惑星から ~ 16° 傾けるような軌道距離の範囲があることが分かった.この配置ではケプラー90 系は安定である.従ってこのような永年共鳴は,観測されているトランジット惑星の多重性 (どれだけの個数の惑星がその系内に存在しているか) に影響する可能性がある.

また,合成された近日点歳差と交点歳差の周波数を永年理論と比較し,惑星間の強い相互作用の存在を示す主周波数間のずれを見出した (トランジット時刻変動を示す系と一致する).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.02086
Zhang et al. (2018)
The Near-Infrared Transmission Spectra of TRAPPIST-1 Planets b, c, d, e, f, and g and Stellar Contamination in Multi-Epoch Transit Spectra
(TRAPPIST-1 惑星 b, c, d, e, f, g の近赤外線透過スペクトルと複数期のトランジットスペクトル中の恒星の混入)

概要

TRAPPIST-1 系の地球型惑星の近赤外線透過スペクトル観測について報告する.

ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた,近赤外線でのトランジット分光観測を TRAPPIST-1b, c, d, e, f, g の 6 個の惑星に対して行い,それらのデータの独立のリダクションと解析を行った.物理的に動機づけされた検出器電荷捕獲補正と,専用の宇宙線補正ルーチンを使用して,de Wit et al. (2016) で報告された TRAPPIST-1b と c の透過スペクトルの,一般的な形状を確認した.

今回用いたデータリダクション手法は,使用可能なデータを 25%増加させ,また天体物理学的な光度変動 (恒星フレアなど) と機器の系統の影響とを混同するリスクを低減した.

観測を行ったどの惑星の透過スペクトル中にも,明確な大気成分による吸収の特徴は検出されなかった.一方で,惑星の結合したスペクトルは明確な逆向きの水吸収特徴を示す
スピッツァー宇宙望遠鏡でのトランジット深さの測定結果と合わせて解析し,この特徴は恒星スペクトルの混入の影響と完全に整合することを示す.これは,Rackham et al. (2017) で予測されていた特徴である.

これらのスペクトルは,ハッブル宇宙望遠鏡と将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって得られる,低分解能の系外惑星透過スペクトルの中で,恒星による混入がどのように惑星の吸収特徴に影響を与えるかを実証し,また黒点を持つ高速に自転する恒星まわりの惑星の,複数時期の観測結果を組み合わせて解析する際の課題を強調するものである.

結果のまとめ

1. TRAPPIST-1b, c, d, e, f, g の 6 つの内側惑星のトランジットをそれぞれ検出した.このうち TRAPPIST-1e については 2 回のトランジットを検出した.

2. 各惑星の広バンドでのトランジット深さとトランジット中心時刻の値を改善した.また,TRAPPIST-1f とg のトランジット時刻変動の兆候を発見した.

3. TRAPPIST-1e の 2 回のトランジットからのスペクトルは,不定性を考慮した上で自己無矛盾な結果となり,今回のデータリダクションと解析手順の正しさを確認した.

4. TRAPPIST-1b と c のトランジット光度曲線を,de Wit et al. (2016) で得られていた結果と比較し,この研究における電荷捕獲補正の効果を示した.利点は,軌道位相カバー範囲の向上,観測効率の向上,系統補正の向上,および従来の経験的なデータフィットと比較して天体物理学的なシグナルを機器の系統として誤認するリスクを低減したことである.

5. 今回のデータリダクションで,それぞれの惑星に対して典型的な測光精度は 230 - 340 ppm を達成した.また中心星のマイクロフレア現象と思われるものを取り除いた後は,180 - 210 ppm の精度となった.

6. 複数の短時間の増光イベントが,広帯域での光度曲線中に見られたことを注記する.これは恒星のマイクロフレア現象に起因すると考えられる.マイクロフレアイベントは,トランジット光度曲線のフィッティングを複雑にする可能性があり,従来の経験的なフィッティングを用いた場合は,より高い機器の系統レベルと混同する可能性がある.

7. 6 個の惑星のスペクトル中には,目立った吸収による特徴は見られない

8. 6 惑星のスペクトルを結合した中には,水やその他の物質による吸収の特徴の兆候は見られなかった.

9. 結合した透過スペクトル中に,逆転した水の吸収特徴を同定した.ここでは,周囲の連続成分よりも低い \(r_{p}^{2}/r_{*}^{2}\) の値を示した.惑星大気による吸収ではこの特徴を説明できないが,不均一な恒星光球に由来する恒星光の混入とする説と整合的である

10. 惑星大気のスペクトルは本質的にフラットであると仮定し,中心星に黒点と白斑の存在を考慮した場合,ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果とスピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm のトランジット深さを組み合わせたスペクトルに対して良いフィットを行うことが出来る.フィットの為に合成した中心星の光球は,TRAPPIST-1 のトランジットを起こしていない時のスペクトルと一致し,また観測された光球変動水準から示唆される,黒点と白斑のポピュレーションとも一致する.

11. 恒星混入モデルに必要な白斑と黒点の被覆率は,晩期 M 型星に期待されるものと整合的であり,また可視光・近赤外線での光度変動から期待されるものとも整合的である.トランジット光源効果 (transit light source effect) (Rackham et al. 2017) によるスペクトル中の恒星の混入は,ハッブル宇宙望遠鏡とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による高精度系外惑星トランジット分光観測の解析と解釈において,大きな課題を提起することを示す結果である.

12. 高速で自転する晩期型の中心星を公転する惑星の,複数時期のトランジットスペクトルを合成して同時解析する手法は,急速に変化する恒星光の混入によって複雑になることを指摘する.例えば TRAPPIST-1 の場合,混入は単一のトランジット観測の期間に変化することすらある.

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arXiv:1802.01335
Hoang et al. (2018)
Spinup and Disruption of Interstellar Asteroids by Mechanical Torques, and Implications for 1I/2017 U1 (`Oumuamua)
(Mechanical torque による恒星間小惑星の自転角速度増大と破壊と,1I/2017 U1 (`Oumuamua) への示唆)

概要

ここでは,恒星間小惑星の自転動力学についての研究を行った.特に,星間ガス中を運動する不規則形状の天体に着目した.

今回の研究では,不規則形状な天体へのガス流の衝撃に起因する mechanical torque が,恒星間小惑星の力学および破壊にとって重要になりうることを見出した.

Mechanical torque は恒星間小惑星の自転を加速し,天体が物質強度で決まる臨界値を超える自転速度になった時に,元々の恒星間小惑星からさらに小さい連星小惑星に分解される.恒星間小惑星が非常に不規則な形状をしており,引張強度が弱い場合は,破壊までのタイムスケールは短い.

この結果を,初めて観測された恒星間小惑星である 1I/2017 U1 (`Oumuamua) (オウムアムア) に適用した.その結果,この天体の非常に細長い形状は,星間物質中を移動する間に,連星の破片が再集積した結果であることが示唆される.オウムアムアのタンブリング運動は,mechanical torque による回転破壊によって引き起こされた可能性がある.

最後に,銀河中心のブラックホールによる惑星系の潮汐破壊によって形成されると思われる,高速の小惑星の生存可能性について議論する.非常に不規則な形状の小惑星は,銀河中心付近から地球に到達する前に破壊される可能性が高い.しかし,対称性の高い高速の小惑星は到達可能である.







"Mechanical torque" は「機械的トルク」で良いんでしょうか…?

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.00999
Fossati et al. (2018)
Suppressed Far-UV Stellar Activity and Low Planetary Mass Loss in the WASP-18 System
(WASP-18 での抑制された遠紫外線の恒星活動と低い惑星の質量損失)

概要

WASP-18 は,非常に近接した軌道に重い木星型の惑星 WASP-18b を持っている.
中心星は 10 億歳未満という若い年齢だが,異常に活動度が低いことが分かっている.測定された \(\log R\prime_{\rm HK}\) の活動度指数は,基礎レベルより僅かに低い値であり,指数には目立った時間変動性は見られない,また,X 線も非検出である.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡の COS を用いたこの天体の遠紫外線の観測を行った.
得られた恒星のスペクトルエネルギー分布から,WASP-18 と地球の間の星間物質の柱密度とイオンの個数を推定した.その結果,活動度に見られる異常の原因は,星間物質の吸収が起源ではないことが分かった.


C II,C III,C IV,Si IV のそれぞれの放射スペクトルでのフラックスを測定した.C II/C IV のフラックス比を,年齢が分かっている近傍の恒星のスペクトルから導出した値と比較した.

その結果,WASP-18 の遠紫外線スペクトルは,50 億歳以上の高齢で不活発な恒星に似た特徴を示すことが分かった.これは WASP-18 の実際の年齢が若いこととは全く対照的な結果である.そのため,WASP-18 は本質的に活動度が低いと考えられる.この原因としては,先行研究で指摘されているように,恒星-惑星間の相互作用によるものである可能性がある.

太陽の輻射を参考に,Si IV 線での放射が合うようにスケーリングを行うと,XUV の積分フラックスは WASP-18b の軌道で 10.2 erg s-1 cm-2 と推定される.この値を元に熱的散逸を考慮すると,10 億年あたり 10-20 木星質量という散逸率が得られる.このような高質量の惑星では,熱的散逸はエネルギー律速ではなく,ジーンズ散逸によって発生する.

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