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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.02489
Arcangeli et al. (2018)
H- Opacity and Water Dissociation in the Dayside Atmosphere of the Very Hot Gas Giant WASP-18 b
(非常に高温な巨大ガス惑星 WASP-18b の昼側大気における H- 不透明度と水の解離)

概要

ホットジュピター WASP-18b の,これまでで最も精密な惑星からの放射スペクトルを取得した.この惑星は温度が極めて高いタイプのホットジュピターである.WASP-18b は 0.94 日という超短周期で F6 型星を公転しており,平衡温度は 2700 K と高温になっている.
ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用い,1.1 - 1.7 µm の波長で 5 回の二次食を観測した.スペクトルのシグナルノイズ比は S/N = 50 で,分解能は R ~ 40 である,

得られた惑星昼側からの放射スペクトル中には,明確に特定できる分子の特徴は見られなかった,しかし,黒体放射のスペクトルとは一致しないものであった.

得られたデータを,過去に観測され公開されているスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC による観測結果とあわせて補完した,整合的な 1 次元フォワードモデルを用いてスペクトルのモデリングを行い,大気組成とエネルギー収支を変化させて,この組み合わせたスペクトルの解釈を行った.

その結果,この惑星の昼側のような非常に高温な環境では,大気の不透明度 (opacity) に対して,熱解離による主要な分子の減少 (水分子を含む),金属の熱電離,H- イオン (水素負イオン) からの寄与が重要であることを見出した.これらが不透明度に与える影響は過去の非常に高温なガス惑星の研究では無視されてきたが,観測されたスペクトルを適切に解釈するためには,考慮する必要があることを指摘する.

今回の解析結果から,この惑星の金属量と C/O 比に対して新しい値が与えられた,その結果は,太陽組成と概ね整合的なものであった ([M/H = -0.01 ± 0.35],C/O < 0.85,3 σ の確度),これは過去の研究での推定値とは一致しないが,巨大惑星に対して期待される典型的な値とは合致するものである.

観測結果のフィッティングによって大気の鉛直方向の温度圧力分布が復元され,この惑星は温度逆転層を持つことが示唆された.この温度逆転層は,過去のスピッツァー宇宙望遠鏡の測光観測で見られた,4.5 µm での CO 放射の特徴を再現することが出来る.

背景

非常に高温なホットジュピター

近年,非常に高温なホットジュピターの発見数が増加している.これらの惑星は,昼側の温度が 2500 - 4600 K に達し,最も高温なものは K 型矮星の光球面に相当する温度になっている (KELT-9b,Gaudi et al. 2017).このような極端な惑星は,地上からの,明るく重い恒星のトランジットサーベイ観測から発見されている.例えば,KELT,MASCARA,WASP といったサーベイプログラムである.

超高温ホットジュピターの大気構造と金属量

Hubeny et al. (2003) は,巨大惑星大気の熱的構造が二分化する可能性を提案した.大気中に効率的な可視光の吸収体 (気相の TiO や VO) があり,中心星から強く輻射を受けている惑星の大気は,温度圧力分布に逆転した構造を形成することが示唆されている (Fortney et al. 2006など).

極端な高温惑星の最近の観測では,大気中の温度逆転の存在が明らかになっている.温度逆転の存在は,WASP-33b (Haynes et al. 2015),WASP-121b (Evans et al. 2017),WASP-18b (Sheppard et al. 2017) で報告されている.しかし,これらの研究のすべてにおいて,観測結果から復元された惑星大気の金属量と元素の存在度は,太陽組成から予想される値よりもずっと高い.例えば WASP-121b の場合,VO (酸化バナジウム) の存在度は太陽組成の 1000 倍程度と推定されており,WASP-18b の場合は金属量が太陽組成の 300 倍程度,酸素に対する炭素の存在比は C/O ~ 1 と推定されている.

このような非常に高い金属量は驚くべき結果である.惑星形成過程を考えると,重い惑星の金属量は中心星と同程度の金属量になることが期待されるからである.より低温な惑星の場合は,中心星と同程度の金属量になるという傾向が見られている.

超高温ホットジュピター大気モデルの再検討

ここでは,過去の研究では,恒星物理の分野では正しく扱われている高温環境での化学過程と不透明度への寄与が無視されている可能性について議論する.

特に,惑星の昼側における不透明度の主要な分子種のいくらかは,高い温度では熱的に解離する.これはスペクトル中に分子の特徴が欠如していることの説明になる可能性がある.

二番目の検討事項は,大気成分の熱電離の効果である.熱電離により自由電子が供給され,水素原子との束縛-自由相互作用,自由-自由相互作用を起こす.これが,H- による不透明度を生み出すもととなる.

結果と議論

WFC3 での観測で得られたこの惑星の昼側からの放射スペクトルは,今回観測した波長帯で期待される分子 (例えば水や TiO (酸化チタン) など) のスペクトルの特徴を示さなかった.この結果を,スピッツァー宇宙望遠鏡でのデータ (Nymeyer et al. 2011, Maxted et al. 2013) と合わせて解析した.

黒体放射とのフィッティング

観測で探査した圧力領域が等温になっている場合は,スペクトルが黒体のスペクトルと近くなる.得られたスペクトルを,黒体のスペクトルとフィッティングをしたところ,温度は 2890 ± 47 K となった.
しかしこのフィッティングは比較的悪く,\(\chi^{2}\) は 2.9 であり,5.4 σ で棄却される.そのため等温大気シナリオは棄却される.

スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.5, 5.8, 8.0 µm での測光結果は,黒体スペクトルよりやや大きい.しかし 4.5 µm は,黒体スペクトルより 2 σ も大きい値であり,この波長周辺での放射が存在することを示唆している.

4.5 µm 波長での主要な不透明度源は CO であり,大気の温度-圧力分布が強く逆転している場合 (高度が上がるに従って温度が上昇する場合) のみ,スペクトル中に放射として観測される.従ってここからも,大気は等温ではないことが確認された.

しかし 1.4 µm で水分子の特徴が存在しないことは,この結果と合わない.

過去の研究は,水分子の特徴が見られないことを,高い C/O 比で説明していた.C/O 比が高い場合,非等温大気を保ったまま,スペクトルの特徴から水を除去するために大気中の気相の水を減らすことが出来る (Sheppard et al. 2017).
しかしここでは,高い C/O 比とは異なる説明を提唱する.

超高温ガス惑星大気中での不透明度源

高温環境での分子の解離
ホットジュピター大気の近赤外線での主要な不透明度源は,水,一酸化炭素,金属水素化物,金属酸化物である.しかし,非常に高温のホットジュピター (2500 K 以上) では,水分子の大部分は高い光球温度と低い圧力の影響で熱的に解離してしまう (Parmentier & Crossdield 2017).

同程度の有効温度を持つ低温な恒星の光球は,表面重力が大きいため光球面の圧力が増加し,水分子の解離が妨げられる.そのため低温な恒星のスペクトル中には水分子による大きな吸収特徴が検出される.

ホットジュピターの場合,表面重力が小さいため光球の圧力は低くなり (0.1 bar 程度) 水分子は解離してしまうためスペクトルは 2700 K 以上では欠如する (Parmentier & Crossdield 2017).一方で一酸化炭素は熱解離しにくいため, 4000 K 未満まで存在することが出来る.そのため WASP-18b では一酸化炭素のスペクトルの兆候があることが期待される.

重要なこととして,高い温度では水の絶対的な断面積が増加する一方で,スペクトル線のコントラストは非常に弱くなる (Burrows et al. 1997など).従って,高温環境での水のスペクトル特性を同定する事は本質的に困難である.
金属の熱電離と水素負イオンの寄与
水素負イオン H- による不透明度は,温度が 2500 - 8000 K の範囲で重要になる.これは,H- が生成されるためには水素の大部分は中性である必要があり (< 8000 K),しかし水素原子が存在しつつ金属の電離による自由電子が存在する程度には温度が高い必要があるからである (> 2500 K).
そのため H- の不透明度への寄与は,主系列星か,非常に強い輻射を受けている惑星で最も重要になる.

H- の束縛-自由遷移による不透明度は,可視光の波長帯から 1.3 µm (近赤外線) の範囲で主要になる.しかし,さらに長波長の 1.64 µm での H- イオン化の閾値までは不透明度は減少する.

電子と水素原子の自由-自由相互作用はすべての波長で起きるが,より高温の環境で最も不透明度に寄与する (Pannekoek 1931,Wildt 1939,Chandrasekhar 1945).水素原子はこの高温下では水素分子の熱解離で自然に生成され,同時に金属の電離による自由電子の供給も自然に発生する.そのため非常に高温のガス惑星の昼側では,H- イオンが大気の不透明度へ重要な寄与をすると考えられる.

大気モデリング

水素負イオンによる不透明度
H- の不透明度と分子の解離を考慮しない場合,スペクトル中に水の特徴が欠如していることを説明するためには,C/O 比は高い値である必要がある,これはこれまでの研究で見られた傾向である (Sheppard et al. 2017など).

H- の不透明度と分子の解離を考慮した場合は,大気の金属量は太陽の金属量と整合的な値である [M/H] = -0.01 ± 0.35 となった.また高い C/O 比は棄却され,3 σ で C/O < 0.85 と推定された.これも太陽の値と整合的である.
熱再分配効率
また,熱の再分配効率に相当するパラメータ f について考慮する.このパラメータは,f = 1 の時は昼夜間の完全な熱の再分配が起きている状態に相当し,f = 2 の時は熱は昼側のみに留まり夜側には全く分配されていない状態に相当する.

この値の推定値は 2.03 ± 0.08 となり,昼夜間の熱の再分配が極小であるという状態に相当する.このような高温の惑星では,昼夜間の熱の再分配が非常に小さくなることが予想されており (Perez-Becker & Showman 2013,Komacek et al. 2017),また Maxted et al. (2013) で実際に測定されている.

WASP-18b の大気金属量,組成と熱的構造

惑星質量と金属量
惑星の質量と金属量の関係を図示すると,惑星質量が大きくなるほど金属量は減少するという傾向が見られる.太陽系の場合は [CH4/H2] からの測定で金属量が得られており,系外惑星の場合は [H2O/H2] からの測定で得られている.

惑星質量が比較的軽い場合は質量と金属量が log-linear に乗るが (対数グラフで直線になる),最も重い部類の惑星の場合は log-linear から外れて中心星の金属量に近づくことが期待される.今回得られた結果はそれと合致する.
金属量と水素負イオン
スペクトル分解された分子の特徴が存在しないにも関わらず,この惑星の金属量の制約への誤差が小さくなっているのは,部分的には大気中の金属の割合に対する H- の依存性から生じている.

金属のイオン化は自由電子の主要な源であり,電離によって生じた自由電子が大気中での H- による不透明度を生み出す.そのため H- の水準と金属の存在度は直接的に関係している.特に,大気中での自由電子の主要な源となる金属である Na,K と Ca の存在度は重要である (Longstaff et al. 2017).

しかし,化学的性質と温度構造の間の複雑な関係,およびそれらのスペクトルへの複合的な影響は,推定された金属量とスペクトルの H- 連続成分と結びつけるのを難しくする.
TiO/VO による温度逆転層の形成
観測結果をモデリングを元に再現された大気の温度-圧力構造からは,圧力が 0.1 - 0.01 bar の間で高度上昇に伴って温度が上昇する,温度逆転層が存在することが示される.この温度逆転層は,過去にスピッツァー宇宙望遠鏡で観測されている,4.5 µm での放射スペクトルの特徴を説明するために必要である.

このモデル内では,温度逆転層は大気の高高度における TiO と VO による可視光の吸収によるものとして説明される.

鉛直方向の TiO の cold trap (低温領域で TiO が凝縮して沈降する効果) はホットジュピター大気からこの分子種を除去するが (Desert et al. 2008),平衡温度が ~ 1900 K 以上である場合は鉛直方向の cold trap は発生しない (Parmentier et al. 2016).水平方向の cold trap は依然として高い表面重力のガス惑星で温度逆転を無くす可能性があるが (Parmentier 2013,Beatty et al. 2017),WASP-18b に対する今回のモデルではその影響は見られなかった.

比較のため,TiO と VO の不透明度を取り除いた場合の大気構造の復元も行った.この場合,C/O < 0.8 で温度逆転層が消失した.C/O が大きい場合は TiO/VO の存在度が非常に低くなるため,これらの分子種は温度逆転層の原因になることが出来ない.
Bayesian Information Criterion (BIC) からは,TiO と VO を含むモデルが観測結果を再現するのには好ましい (BIC = 6.5) という事が示された.

TiO と VO は今回のモデルに含まれているものの,WFC3 で取得したスペクトルにはこれらの分子による特徴は見えていない.これは H- の連続成分によって特徴が弱められてしまっているためだと考えられる.
熱解離による水分子の欠乏とスペクトルへの影響
水の存在度は,熱解離によって部分的に欠乏することが期待される.熱解離がない場合は,水が最も大きな不透明度を持つ波長である 1.4 µm での寄与関数は,周囲の波長 (例えば 1.3 µm) より大きくなり,水の放射特徴がスペクトル中に現れることが期待される.

しかし 0.1 bar 以下の領域では水分子は大部分が解離しているため,1.4 µm での寄与関数は大気の深い場所に押し下げられ,1.3 µm と同程度となる.従って,あたかも等温大気のような特徴を示すことになる.そのため,これらの観測で探査した範囲の圧力で水が大きく解離していなかった場合でも,より低い圧力領域での水分子の解離によって特徴の欠如を引き起こす.その結果として 1.1 - 1.7 µm の範囲における最終的なスペクトルは,1.4 µm での部分的に欠乏した水の放射の広い放射と,1.1 - 1.4 µm の範囲の H- の束縛-自由遷移による不透明度 (この領域で支配的な連続不透明度) の合計であり,特徴に欠けているように見える.

さらに,低圧領域での水の解離は,この圧力領域の大気を冷却する能力を低下させる効果がある.そのため,このモデルで温度逆転を引き起こしているのは,TiO/VO といった可視光での強い吸収体による大気加熱の増加と,赤外線を放射する水分子が解離して赤外線による冷却が減少することの組み合わせである.

非常に高温な巨大系外惑星のグループへの影響

今回の研究からは,WASP-18b のような非常に高温な部類の惑星では,観測結果を解釈する際に低温な惑星からの外挿を行うと間違った結果を招く可能性があることが判明した.

今回の結果では,金属のイオン化から形成される H- による不透明度と,熱解離による分子種の存在度の減少が不透明度に与える影響の両方は無視できない事を発見した.H- の不透明度を含んだ場合,WASP-18b の金属量と C/O 比は太陽の値を大きく超えることはなく,むしろ太陽と同程度の値になるということが証拠である.そのため,この他の高い金属量が報告されている非常に高温なガス惑星でも,H-の 不透明度を考慮した場合は太陽程度の金属量に落ち着く可能性が示唆される.

興味深いことに,これまでに観測された非常に高温なガス惑星のほとんど全てでは,スペクトルは温度逆転層が存在する場合にうまく説明できる.これらの惑星での温度逆転の存在の有無の主要な診断法は,4.5 µm でのフラックスの超過である (Knutson et al. 2010).このことは,最も高温な部類の系外惑星は,TiO/VO といった可視光での吸収体に起因する,共通の特徴を持つ温度構造を持つ可能性を示唆している.

今回のモデリングでは,WFC3 での観測は準等温である対流圏界面付近を探査しており,水の解離と H- の不透明度の複合効果である黒体状のスペクトルを生成するよう見えるということが示唆される.そのため,ホットジュピターのクラス分けの境界は,表面温度が 2500 K 付近 (これより低温では H- の不透明度が主要でなくなる) と,1800 K 付近 (これより低温では TiO と VO が凝縮する) で起きると予想される.

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PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.02554
Delrez et al. (2018)
Early 2017 observations of TRAPPIST-1 with Spitzer
(スピッツァーでの TRAPPIST-1 の 2017 年前半の観測)

概要

TRAPPSIT-1 系の惑星の組成,エネルギー収支,力学を理解するため,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて,トランジットの集中的な測光モニタリングキャンペーンを行った.このキャンペーンでは,2017 年 2 - 3 月の間に 60 回の新しいトランジットを観測した.

今回得られたデータを,過去のデータと合わせて解析した.これにより,トランジットのパラメータを更新し,惑星の物理パラメータの値を改定した.特に,アップデートした恒星の特性の値を用いて,TRAPPIST-1 系の惑星の半径についての情報を更新した.

これに加え,惑星質量を決定するためのトランジット時刻変動の精密な観測も行った.

中心星の TRAPPIST-1 は,スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC 4.5 µm バンドでの非常に低い水準の低周波数変動を示した.測光の二乗平均平方根は 123 秒の cadence でわずか 0.11%であった.また,恒星の自転に伴う周期的・準周期的な変動は検出されなかった.

トランジット光度曲線を独立に解析し,恒星活動に伴う惑星のトランジットパラメータの変動を調べた結果,惑星のパラメータは恒星変動に影響を受けないことが示された.

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arXiv:1801.01223
Ricci et al. (2018)
Investigating the early evolution of planetary systems with ALMA and the Next Generation Very Large Array
(ALMA と Next Generation Very Large Array での惑星系の初期進化の調査)

概要

Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA,アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)Next Generation Very Large Array (ngVLA) によって,中心星に近い惑星と円盤物質の間の重力相互作用によって形成される,若い近傍の円盤中のサブ構造を観測する可能性について調べた.

LA-COMPASS 流体力学コードを用いて,円盤内のガスとダストの力学のシミュレーションを行った.その結果を元に,サブミリメートルからセンチメートル波長でのダスト連続波放射の合成画像を作成し,ALMA と ngVLA で観測した場合の模擬データを作成した.また,これらの観測装置で観測が可能な円盤と惑星の特性について,パラメータサーチを行った.

その結果,ngVLA の角度分解能 5 ミリ秒角 (波長 3 mm での観測の場合) で,最も太陽系近傍の星形成領域にある太陽類似星から 1 - 5 au の距離にある,最小で 5 地球質量程度の惑星を持つ円盤に形成されたギャップと方位角方向の非対称性を発見し,特徴づけることが出来ると推測される.

ALMA での観測の場合は,中心星から 5 au の位置で,最小で 20 地球質量程度の惑星によるギャップを検出できる.

5 - 10 地球質量程度のスーパーアース惑星によって円盤中に開けられるギャップは,円盤の粘性が α ~ 10-5 と小さく,圧力スケールハイトが低い (5 au で円盤の圧力スケールハイトが ~ 0.025 au) の場合,ngVLA で検出可能であると考えられる.
ngVLA は,円盤と惑星の相互作用によって形成される,円盤の方位角方向の非対称構造の固有運動を測定することが出来る.また,恒星から 1 - 5 au の距離の惑星周りに周惑星円盤が存在する場合,一週間から数週間程度のタイムスケールの観測で測定できる可能性がある.







現在稼働中の大型電波干渉計に Very Large Array (VLA) がありますが,その次世代版として計画されているものが Next Generation Very Large Array (ngVLA) です.日本語の定訳はありませんが,直訳すると「次世代超大型干渉系」あたりでしょうか.

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arXiv:1801.01567
Hedman et al. (2018)
Spatial Variations in the Dust-to-Gas Ratio of Enceladus' Plume
(エンケラドゥスのプルームのダスト・ガス比における空間変動)

概要

2010 年の 138 日目の日に,土星の衛星 Enceladus (エンケラドゥス) の南極大地から噴出しているダストとガスのプルーム (plume,噴出物) が,太陽と土星探査機カッシーニの間を通過した.この際のカッシーニから見たプルームによる太陽の掩蔽を,カッシーニの Ultraviolet Imaging Spectrograph (UVIS) と Visual and Infrared MappingSpectrometer (VIMS) を用いて観測した.この観測によって,同じ視線方向のプルームのガスとダストの構成を同時測定することができた.

UVIS での測定の結果は,Hansen et al. (2011) にて報告されている,
ここでは VIMS のデータの解析と,そこから分かるプルームの粒子の内容について報告する.

また,VIMS と UVIS 両方測定から,Baghdad と Damascus sulci (溝状の構造) 上空のプルーム物質は,Alexandria と Cairo sulci 上空の物質よりも,ダスト・ガス比 (ガスに対するダストの量) がおおむね 1 桁大きいことが判明した.

プルームのダスト・ガス比における類似の傾向は,カッシーニが 2009 年にプルーム内を通過して,Ion and Neutral Mass Spectrometer (INMS), Radio and Plasma WaveScience instrument (RPWS) と Cosmic Dust Analyzer (CDA) を用いてダストとガスの密度を直接測定したときにも見られた (Dong et al. 2015).

今回の結果と,過去に報告されている,異なる場所から噴出している物質に見られる系統的な違いは,エンケラドゥスの南極大地における表面下の環境の違いを反映している可能性がある.

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arXiv:1801.00720
Deeg et al. (2018)
Non-grey dimming events of KIC 8462852 from GTC spectrophotometry
(GTC 分光観測による KIC 8462852 の非灰色減光イベント)

概要

KIC 8462852 の地上からの分光測光観測の結果について報告する.

KIC 8462852 の減光は明確なスペクトルの特徴を示し,赤い色よりも可視光のの青い色での減光の方が深かった.フラックス損失の波長依存性は,オングストローム吸収係数 2.19 で記述でき,これは光学的に薄いダストによる吸収と合う.

推定されるダスト粒子のサイズは 0.0015 - 0.15 µm である.これらの粒子は,恒星に近い時に放射圧による吹き飛ばしに対抗するのに必要なサイズよりも小さいと考えられる.そのため,減光イベントの最中,これらの粒子は数日のタイムスケールで補充される必要がある.

この天体の減光イベントの原因がダストによる掩蔽によるものだとすると,より深い減光を起こしている最中の減光のスペクトル的な特徴は,より中性的な色になることが期待される.これは,深い減光を起こすような光学的に厚い物質による掩蔽の場合,波長依存性が弱くなるからである.

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