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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1709.04539
Thorngren & Fortney (2017)
Bayesian Analysis of Hot Jupiter Radius Anomalies: Evidence for Ohmic Dissipation?
(ホットジュピター半径以上のベイズ解析:オーム散逸の証拠?)

概要

平衡温度が 1000 K よりも高い巨大ガス惑星は,理論的な予想よりもずっと大きな半径を持っている.このホットジュピターの半径膨張は未解決問題であり,膨張機構として様々な説が提案されている.

ここではこれらのモデルを個別に検証するのではなく,惑星内部での加熱率を,惑星への入射フラックスの関数 ε(F) として特徴付けをした.その結果を,複数のモデルの理論的予言と比較した.今回は,質量と半径がよく測定されている 300 個の巨大惑星について調べた.

観測されている惑星半径を最も良く再現する内部での加熱率を入射フラックスの関数の形で推定するため,惑星の熱進化モデルとベイジアン統計モデルを適用した.


まず,0.5 木星質量よりも軽い質量を持つ惑星の半径膨張は,より質量が大きい惑星での半径膨張と比べて非常に異なる傾向があることが分かった.これは,惑星からの質量放出か,軽い惑星での非効率的な加熱機構の結果である可能性がある.ひとまずそのようなものとして,ここではこの閾値を下回る惑星を解析から除外した.

次に,ε(F) は惑星の平衡温度の増加に伴って大きくなり,平衡温度 ~ 1500 K で ε(F) ~ 2.5%になるまで増加することが分かった.そして,さらに温度が高くなると今度は ε(F) は低下し,平衡温度が 2500 K の時に ε(F) ~ 0.2%となった.

このような,受け取るフラックスが大きい領域で加熱効率が低下する傾向は,巨大ガス惑星の膨張半径におけるオーム散逸モデルでは予測されているが,他のモデルでは予測されていない.また,熱潮汐モデルについても検証を行い,熱潮汐モデルの場合は観測されているより遥かに大きな半径の変化を予測することが分かった.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1709.04686
Lavie et al. (2017)
The long egress of GJ~436b's giant exosphere
(GJ 436b の巨大な外気圏の長い出現)

概要

M 型矮星 GJ 436 は,大気散逸を起こしているウォームネプチューン (warm Neptune) GJ 436b を持つ.この惑星の過去のトランジット観測では,惑星が持つ巨大な水素の外気圏が中心星を 5 時間以上に渡ってトランジットし,恒星の中性水素のライマンアルファ線の青い (短波長) 側を,最大で 56%吸収していることが分かっている.この巨大な彗星状の外気圏の影響で,散逸する大気による尾の部分の完全なトランジットの観測はできていなかった.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた,ライマンアルファ線での新しいトランジット観測の結果を報告する.この恒星の過去 6 年に渡るライマンアルファ線の強度の安定性から,今回の新しい観測結果を過去のアーカイブデータと合わせて解析する事ができる.これにより,惑星外気圏トランジットのカバー率を大きくすることが出来る.

外気圏雲の尾の部分にある水素原子は,惑星本体のトランジットの後 10 - 25 時間に渡って恒星を隠し続ける.この結果は,過去の 3 次元数値シミュレーションからの予測と整合的なものである.従ってこの結果は,GJ 436b の外気圏の構造は恒星風による輻射ブレーキと電荷交換反応の両方によって形作られているとする解釈を強化するものである.

また,ライマンアルファの赤い (長波長) 側と,電離したケイ素 SiIII のスペクトル線でそれぞれ 15 ± 2%と 47 ± 10%のフラックスの減少を検出した.観測されたいくつかの時間変動性は恒星活動に関連している可能性があるものの,これらの 2 つのシグナルは外気圏トランジットの最中に発生しており,惑星起源のシグナルだと考えられる.

ライマンアルファの赤方偏移成分と SiIII の吸収特性が,惑星外気圏の流出と恒星の磁場の相互作用から来ている可能性を評価するために,さらなるフォローアップ観測が必要である.

結果の要約

1. 紫外線トランジットの egress (食からの出現) を検出し,その長さが 10 - 25 時間であるという制限を与えた.これは外気圏の水素テールのサイズが 5 - 12 million km であることに相当する.この結果は,過去の観測 (Ehrenreich et al. 2015) とその解釈 (Bourrier et al. 2015, 2016) と整合するものである.2. ライマンアルファの red wing 成分の吸収を検出した.これは青方偏移成分 (blue wing 成分) と比較すると遅れている.このシグナルは,惑星起源もしくは恒星活動からも起こりうる.

3. SiIII 線の吸収シグナルを検出した.これはライマンアルファの赤方偏移成分 (および恒星活動) におそらく関連している.恒星起源か惑星起源かを区別するためには,別の位相における更なる観測が必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1709.04118
Sedaghati et al. (2017)
Detection of titanium oxide in the atmosphere of a hot Jupiter
(ホットジュピターの大気からの酸化チタンの検出)

概要

ホットジュピター WASP-19b の大気からの TiO (酸化チタン) の検出を報告する.TiO の存在を 7.7 σ の信頼水準で検出し,さらに強く散乱するヘイズ (7.4 σ),ナトリウム (3.4 σ),水の存在 (7.9 σ) もそれぞれ検出した.

WASP-19b はこれまで発見されているホットジュピターの中で最も短い軌道周期を持ち,大きく膨張した半径を持つ.惑星の有効温度は,二次食の観測に基づく推定では 2000 K を超える.このような高い大気温度からは,TiO のような金属酸化物が大気中に存在することが示唆される.しかし広範囲に渡る研究にも関わらず,系外惑星大気中の金属酸化物の明確な検出は困難を伴うことが分かっている.

ここでは欧州南天天文台 (European Southern Observatory, ESO) の Very Large Telescope (VLT) の 8.2 m 望遠鏡で WASP-19b を観測した.VLT の FORS2 分光器を用いて,トランジット分光観測を行った.

その結果,TiO の存在を 7.7 σ の信頼水準で,強く散乱するヘイズの存在を 7.4 σ で,ナトリウムの存在を 3.4 σ で,水の存在を 7.9 σ でそれぞれ検出した.この観測から,各成分の体積混合率への制約とヘイズ特性への制限を与えた,水の存在度は 18 - 1300 ppm,ナトリウム は 0.028 - 140 ppm と弱い制限となった.

今回の WASP-19b 大気からの TiO の検出は,2000 K 以上の高温の大気を持つ惑星大気中から検出できるだろうとされてきたこれまでの予想と整合的である.

追記
WASP-19b からの TiO 検出に関しては,別の観測結果を元にした反証あり.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1709.03560
Feng & Jones (2017)
Was Proxima captured by alpha Centauri A and B?
(プロキシマはケンタウルス座アルファ星 A と B に捕獲されたか?)

概要

太陽系から最も近い恒星系はケンタウルス座アルファ星系であり,この系はプロキシマケンタウルス座アルファ星Aケンタウルス座アルファ星B と,少なくとも一つの惑星プロキシマb からなる.

プロキシマb の居住可能性は,ケンタウルス座アルファ星系の軌道進化に大きく影響されると考えられる.系の力学進化を調べるために,プロキシマとケンタウルス座アルファ星A, B の運動を数値計算した.モンテカルロ法を用い,銀河潮汐からの擾乱と,他の恒星の近接遭遇の影響を考慮した.

100 セットの計算のうち74%のケースでは,プロキシマの軌道はケンタウルス座アルファ星に重力的に束縛されているが,17%は過去 5 億年の間,9%は将来 5 億年の間に重力的に束縛されなくなる.軌道不安定な計算例は,シミュレーションの時間スケールと,系への恒星の遭遇率が大きくなるほど増える.
プロキシマの力学的な歴史は,恒星遭遇のモデルの不定性だけではなく,位置天文学データの不定性にも敏感である.

今回の結果は,現在のケンタウルス座アルファ星の三重星系の形成における,捕獲説を支持するものである.
過去の分光観測からは,ケンタウルス座アルファ星A, B は太陽よりも金属量が多いことが示されているが,プロキシマは太陽と同程度の金属量である.このことは,両者の起源が異なり,プロキシマは捕獲された恒星であるという仮説を補強する可能性がある.

とは言え,ケンタウルス座アルファ星系の歴史と,それがプロキシマb の居住可能性に与える影響を正しく評価するためには,現在のデータとモデルの更なる改善が必要である.

議論

プロキシマは現在ケンタウルス座アルファ星に重力的に束縛されているが,捕獲されたという可能性もある.また,ケンタウルス座アルファ星とプロキシマは金属量が異なるという点も,捕獲説を示唆する.

ケンタウルス座アルファ星A, B は太陽より明白に高い金属量を示し,それぞれ [Fe/H] = 0.26, 0.22 である (Jofre et al. 2015).一方でプロキシマの金属量は太陽と概ね同じである.プロキシマやその他の晩期 M 型星の金属量はあまり分かっていないが,これらの金属量の違いは,ケンタウルス座アルファ星A, B とプロキシマは異なる形成史を持ち,捕獲説を支持するものである.

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arXiv:1709.03502
Keating & Cowan (2017)
Revisiting the Energy Budget of WASP-43b: Enhanced day-night heat transport
(WASP-43b のエネルギー収支の再検討:増幅された昼夜熱輸送)

概要

Stevenson et al. (2014, 2017) では WASP-43b の昼夜間の大きな温度差の存在が報告されたが,この原因についてはこれまで説明が存在しなかった.ここでは,この惑星のエネルギー収支について,惑星の昼側の観測における反射光の影響を考慮して再検討を行った.また,示唆されている夜側の温度の物性についても再検討を行った.

過去の赤外線波長の二次食 (※注釈:恒星の裏側に惑星が隠れることで,惑星表面での反射光・熱放射が遮られる現象) の解析では,惑星表面での反射光は非常に小さく,無視できると仮定されていた.ここでは,惑星表面での反射光,熱放射,大気中の水蒸気の吸収を含めた現象論的な二次食のモデル化を行い,公開されているハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の食のデータのフィッティングに用いた.

解析からは近赤外線での惑星の幾何学的アルベドは 27%であることが示唆され,昼側の表面温度として,過去の報告より低い 1527 ± 10 K という値が推定された.

さらに,過去の観測で得られている光度曲線を従来の手法で解析した場合,惑星の夜側における非物理的な負のフラックスが観測の再現に必要であることを発見した.惑星の全ての経度において,輝度が負の値にならないように非物理的な要素を修正した結果,惑星の夜側の有効温度は過去の報告よりも高温な 1076 ± 11 K となった.

ここで得られた,過去の報告より低温な昼側温度と高温な夜側の温度からは,この惑星大気中での熱の再分配効率は 47%であると推定され,これは HD 209458b と本質的に同じである.また,その他のホットジュピターとも近い値である.
従って今回の解析では,低い輻射温度を持つ惑星は,より効率的な昼夜間熱輸送を持つという傾向がある事を再確認した.

さらに,
(1) 多くのホットジュピターの近赤外線での二次食の測定の際には,惑星表面での反射光は重要であること
(2) 得られた位相曲線は,非物理的でない経度方向の輝度分布でフィットする必要がある

という点を指摘する.特に後者は,単に「惑星の円盤面で積分した光度曲線が負の値にならない」という要請だけでは不十分である.

WASP-43b について

WASP-43b は Hellier et al. (2011) によって検出された惑星である.半径は 1.036 木星半径,質量は 2.034 木星質量,軌道周期は 0.81 日である (Gillon et al. 2012).
惑星の特徴は他のホットジュピターと類似しているが,中心星は比較的低温の K7V 星である.

複数の測光バンドで,この惑星の二次食が検出されている (Wang et al. 2013など).また,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の観測による,完全な軌道位相曲線が赤外線で得られている (Stevenson et al. 2014, 2017).放射スペクトルと透過スペクトルの測定からは,この惑星大気中の水の精密な存在度が決定されている (Kreidberg et al. 2014).またトランジット時刻の観測から,軌道が潮汐力によって崩壊しているという証拠は検出されなかった (Hoyer et al. 2016).

過去の解析では,ホットジュピターに典型的な,東向きのホットスポットのずれの存在が報告されている (※注釈:最も高温な点が,恒星の直下よりも東にずれている),また,惑星の昼側から夜側への熱の輸送がほとんど存在しない事が示唆されていた (Stevenson et al. 2014, 2017など).

Kataria et al. (2015) による3 次元大気循環モデルはこの観測結果をよく再現し,またホットスポットのずれは,赤道上でのスーパーローテーションの存在を示すものである.しかし,そのモデルから予測される惑星の夜側の特性は,観測されている夜側からの低いフラックスと比較すると明るすぎる (=高温すぎる) ことが指摘されている.この違いの原因として,夜側大気中にある雲による赤外線放射の吸収が提案されている (Kataria et al. 2015, Stevenson et al. 2017).

原因が雲であろうとなかろうと,過去の観測結果を額面通り受け取ると,この惑星は昼側から夜側への熱の輸送が非常に弱いことを示している.これは,理論的な予測とも経験的な傾向とも全く逆である.理論的にも観測からの経験則でも,惑星が受ける輻射が大きくなるほど昼夜間の温度差が大きくなると考えられている.

二次食観測における反射光と熱放射

過去の解析では,惑星表面での反射光は惑星からの熱放射に比べると無視できると仮定している.López-Morales & Seager (2007) では,ボンドアルベドが低く,熱の再分配が非効率的で,恒星から強い輻射を受けているホットジュピターの場合は,惑星からの熱放射は反射光を上回ることが示されている.

過去の研究からは,大部分のホットジュピターは可視光の波長で非常に低い幾何学的アルベドを持つことが示されている (Rowe et al. 2008, Dai et al. 2017など).そのため,近赤外線での反射光も無視できると考えられてきた.しかし López-Morales & Seager (2007) では,効率的な熱の再分配がありボンドアルベドが 50%の惑星では,近赤外線領域では反射光が熱放射を上回る場合があることも示している.

Schwartz & Cowan (2015) は,熱的位相変動から示唆されるボンドアルベドと,可視光の測定から得られる幾何学的アルベドの間には,系統的なずれが存在することを発見した.この結果は,ホットジュピターが 30 - 50%の近赤外線放射を反射し得ることを示唆する.もしホットジュピターがある波長の光を反射すると,その波長での二次食の深さは大きくなる.これにより,反射光の影響が無視されていた場合,昼側の温度を過大評価してしまうことになる.惑星の合計のボロメトリックフラックスは温度の 4 乗に比例するため,温度の小さな誤差は大きなボロメトリックフラックスの誤差に繋がる.

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