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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.05747
Daemgen et al. (2017)
High signal-to-noise spectral characterization of the planetary-mass object HD 106906 b
(惑星質量天体 HD 106906b の高シグナルノイズ比のスペクトル特徴付け)
ここでは,HD 106906b の大気を分光学的に特徴付けした.この天体は若い低質量の天体で,重水素燃焼の臨界質量に近い質量を持つ.中心星から 8.1” と離れた位置にあるため,高いシグナルノイズ比と高分散分光観測の対象に適している.
この観測から,HD 106906b のスペクトル型,有効温度と光度に新しく制限を与えることを目標とした.1.1 - 2.5 µm の波長帯での分光観測を,VLT/SINFONI を用いて行った.スペクトル分解能は 2000 - 4000 である.
観測の結果,HD 106906b のスペクトル中にはいくつかの吸収線が発見された.これは低質量の天体に見られるものである.観測からのスペクトル型の推定は L1.5 ± 1.0 で,これは過去の推定よりも 1 サブクラスだけ早期型の推定となった.
その他の若い低質量天体との比較より,光度は log(L/Lsun) = -3.65 で,有効温度は 1820 K であった.新しい質量の推定値は,形成の初期条件として hot start を仮定した場合は 11.9 木星質量,cold start を仮定した場合は 14.0 木星質量となった.
この質量推定には,有限の形成時間を考慮に入れている.つまり,HD 106906b は 中心星より 0 - 3 Myr 遅く形成された可能性を考慮している.
HD 106906b への質量降着については,4.8 × 10-10 木星質量/年 より大きい降着は無いと結論付けた.これは,水素輝線 (Paschen β,Brackerr-γ) が検出されなかったことに基づく推定である.この事は,周惑星ガスは存在しないか,あっても僅かである事を示唆する.
今回の観測で,HD 106906b は最も高いシグナルノイズ比のスペクトルが得られている惑星質量天体の一つとなった.
この恒星は 500 AU 以上の距離まで広がった星周円盤を持ち,その円盤の内側には大きな穴が開いている.また,固有運動を共有する低質量の伴星が,投影距離 7”.1 の距離 (~ 730 AU) に存在している (Chen et al. 2005など).
過去に行われた,低分解能の 1 - 2.5 µm での分光観測と 0.6 - 3.5 µm での測光観測では,この伴星は有効温度が 1800 K,質量は 11 ± 2 木星質量であり,惑星質量の範囲に入っている.
過去の観測では,H バンドの分光観測を用いてスペクトル型を L2,K バンドの分光観測では L3 と推定していたが (Bailey et al. 2014),今回の結果は L1.5 ± 1.0 であった.
天体の進化モデルと,測定された有効温度と光度を比較することでこの天体の質量を推定した.形成が hot start (初期に多くのエントロピーを持ち込む形成過程) である場合,質量は 12.3 (+0.8, -0.7) 木星質量であり,cold start (初期に持ち込むエントロピーが少ない形成過程) である場合は 14.0 (+0.2, -0.5) 木星質量となった.ただしこれは天体の形成時間をゼロとした場合の推定である.
この天体の形成のタイムスケールが 3 Myr (300 万年) と仮定すると質量の推定値はやや低くなり,それぞれ 11.9 (+2.5, -0.9) 木星質量,14.0 (+0.2, -0.4) 木星質量となる.
中心の連星 HD 106906A, B の質量はそれぞれ 1.37 太陽質量と 1.34 太陽質量であり (Lagrange et al. 2017),中心星 (HD 106906A + HD 106906B)と惑星 (HD 106906b) の質量比は 0.004 である.これは,この惑星は原始惑星系円盤の中での ”惑星的” な形成過程によって形成されたことを示唆する質量比である (Pepe et al. 2014など).
しかし,コア降着を介した形成では,軌道長半径は現在の > 700 AU よりももっと中心星に近い必要がある.例えば Dodson-Robinson et al. (2009) のシミュレーションでは,中心星から 35 AU 程度より近い範囲にいる必要があるとされる.
そのため,形成後の惑星移動が必要である.しかし,内側の惑星や中心の連星による散乱が起きた証拠は見つかっていない.恒星のフライバイによる惑星の放出もありそうにない (Rodet et al. 2017).
厳密には可能性は排除されないものの,円盤不安定を介した遠方でのその場形成も起きにくいと思われる.これは,700 AU を越える大きな円盤は,形成途中の恒星の周りで見つかることは稀だからである.
HD 106906b の形成は恒星的な過程を介したものであった,つまり母体となる分子雲コアの直接崩壊から HD 106906AB+b の三重星系が形成されたというシナリオは,可能性としては残る.
arXiv:1708.05747
Daemgen et al. (2017)
High signal-to-noise spectral characterization of the planetary-mass object HD 106906 b
(惑星質量天体 HD 106906b の高シグナルノイズ比のスペクトル特徴付け)
概要
直接撮像された惑星は,惑星大気の分光学的特徴付けに適した観測候補である.しかし,これらの惑星は中心星との角距離が小さいことが多く,観測される光度比やシグナルノイズ比を下げてしまう.ここでは,HD 106906b の大気を分光学的に特徴付けした.この天体は若い低質量の天体で,重水素燃焼の臨界質量に近い質量を持つ.中心星から 8.1” と離れた位置にあるため,高いシグナルノイズ比と高分散分光観測の対象に適している.
この観測から,HD 106906b のスペクトル型,有効温度と光度に新しく制限を与えることを目標とした.1.1 - 2.5 µm の波長帯での分光観測を,VLT/SINFONI を用いて行った.スペクトル分解能は 2000 - 4000 である.
観測の結果,HD 106906b のスペクトル中にはいくつかの吸収線が発見された.これは低質量の天体に見られるものである.観測からのスペクトル型の推定は L1.5 ± 1.0 で,これは過去の推定よりも 1 サブクラスだけ早期型の推定となった.
その他の若い低質量天体との比較より,光度は log(L/Lsun) = -3.65 で,有効温度は 1820 K であった.新しい質量の推定値は,形成の初期条件として hot start を仮定した場合は 11.9 木星質量,cold start を仮定した場合は 14.0 木星質量となった.
この質量推定には,有限の形成時間を考慮に入れている.つまり,HD 106906b は 中心星より 0 - 3 Myr 遅く形成された可能性を考慮している.
HD 106906b への質量降着については,4.8 × 10-10 木星質量/年 より大きい降着は無いと結論付けた.これは,水素輝線 (Paschen β,Brackerr-γ) が検出されなかったことに基づく推定である.この事は,周惑星ガスは存在しないか,あっても僅かである事を示唆する.
今回の観測で,HD 106906b は最も高いシグナルノイズ比のスペクトルが得られている惑星質量天体の一つとなった.
HD 106906 系について
HD 106906 系 の過去の観測
HD 106906 は,102.8 pc (Gaia Collaboration et al. 2016) の距離にある,近接連星である (Lagrange et al. 2017).この系は,Lower Centaurus Crux アソシエーションの一員であり.このアソシエーションの年齡は 13 ± 2 Myr (~ 1300 万年) である (Pecaut et al. 2012).この恒星は 500 AU 以上の距離まで広がった星周円盤を持ち,その円盤の内側には大きな穴が開いている.また,固有運動を共有する低質量の伴星が,投影距離 7”.1 の距離 (~ 730 AU) に存在している (Chen et al. 2005など).
過去に行われた,低分解能の 1 - 2.5 µm での分光観測と 0.6 - 3.5 µm での測光観測では,この伴星は有効温度が 1800 K,質量は 11 ± 2 木星質量であり,惑星質量の範囲に入っている.
過去の観測では,H バンドの分光観測を用いてスペクトル型を L2,K バンドの分光観測では L3 と推定していたが (Bailey et al. 2014),今回の結果は L1.5 ± 1.0 であった.
質量の推定
距離の推定は新しい Gaia での測定に基づいており,102.8 ± 2.5 pc である.これは過去のヒッパルコス衛星での測定値よりも ~10%大きい.距離の情報が更新されたことにより,この天体の光度と有効温度の値も更新された.天体の進化モデルと,測定された有効温度と光度を比較することでこの天体の質量を推定した.形成が hot start (初期に多くのエントロピーを持ち込む形成過程) である場合,質量は 12.3 (+0.8, -0.7) 木星質量であり,cold start (初期に持ち込むエントロピーが少ない形成過程) である場合は 14.0 (+0.2, -0.5) 木星質量となった.ただしこれは天体の形成時間をゼロとした場合の推定である.
この天体の形成のタイムスケールが 3 Myr (300 万年) と仮定すると質量の推定値はやや低くなり,それぞれ 11.9 (+2.5, -0.9) 木星質量,14.0 (+0.2, -0.4) 木星質量となる.
HD 106906 系 の形成過程
HD 106906b の形成と初期進化は不明確である.中心の連星 HD 106906A, B の質量はそれぞれ 1.37 太陽質量と 1.34 太陽質量であり (Lagrange et al. 2017),中心星 (HD 106906A + HD 106906B)と惑星 (HD 106906b) の質量比は 0.004 である.これは,この惑星は原始惑星系円盤の中での ”惑星的” な形成過程によって形成されたことを示唆する質量比である (Pepe et al. 2014など).
しかし,コア降着を介した形成では,軌道長半径は現在の > 700 AU よりももっと中心星に近い必要がある.例えば Dodson-Robinson et al. (2009) のシミュレーションでは,中心星から 35 AU 程度より近い範囲にいる必要があるとされる.
そのため,形成後の惑星移動が必要である.しかし,内側の惑星や中心の連星による散乱が起きた証拠は見つかっていない.恒星のフライバイによる惑星の放出もありそうにない (Rodet et al. 2017).
厳密には可能性は排除されないものの,円盤不安定を介した遠方でのその場形成も起きにくいと思われる.これは,700 AU を越える大きな円盤は,形成途中の恒星の周りで見つかることは稀だからである.
HD 106906b の形成は恒星的な過程を介したものであった,つまり母体となる分子雲コアの直接崩壊から HD 106906AB+b の三重星系が形成されたというシナリオは,可能性としては残る.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.06069
Rappaport et al. (2017)
Likely Transiting Exocomets Detected by Kepler
(ケプラーで検出されたトランジット系外彗星候補)
問題になっているケプラー星は KIC 3542116 である.この恒星はスペクトル型 F2V で非常に明るい恒星であり,Kp = 10.
検出されたトランジットは明確に非対称な形状をしており,鋭い食への入り (ingress) と,ゆっくりとした食の終わり (egress) を示す.これは恒星面を通過する,ダストの尾を引いている天体によって引き起こされていると解釈できる.
およそ 1 日間継続する,深さが ~ 0.1%の 3 つの深いトランジットがあり,その他の 3 つは何倍か浅く短い継続時間を持つ.
ケプラーの測光データセット全体を,網羅的に視覚的に調べることによって,これらのトランジットが発見された.ここでは彗星のトランジットを示すケプラーデータを確認するために用いた手法について紹介し,またそのシグナル源として機器の影響である可能性を否定した.
シンプルなダスト尾モデルを用いてトランジットをフィッティングし,彗星の横方向の速度として ~ 35 - 50 km s-1 を得た.
また最大のトランジット深さを示す曲線に対し,尾の部分に存在するダストの最小質量を 1016 g と推定した.ダストの補充時間が ~ 10 日で,彗星の寿命が ~ 300 日の場合,これは合計の彗星質量が 3 × 1017 g 以上であることを意味合する,つまり,ハレー彗星程度の質量に相当する.
また,ケプラーの 4 年間の観測で検出された 6 回のトランジットを説明するための,彗星の個数と軌道配置について議論.
最後に,KIC 11084727 における単一の彗星形状のトランジットの発見についても報告する.この恒星でのトランジットと中心星の特性は,KIC 3542116 で検出されたものと非常に似ている.
arXiv:1708.06069
Rappaport et al. (2017)
Likely Transiting Exocomets Detected by Kepler
(ケプラーで検出されたトランジット系外彗星候補)
概要
ケプラーによるの連続光データから,主星をトランジットする系外衛星の初めての良い証拠について報告する.問題になっているケプラー星は KIC 3542116 である.この恒星はスペクトル型 F2V で非常に明るい恒星であり,Kp = 10.
検出されたトランジットは明確に非対称な形状をしており,鋭い食への入り (ingress) と,ゆっくりとした食の終わり (egress) を示す.これは恒星面を通過する,ダストの尾を引いている天体によって引き起こされていると解釈できる.
およそ 1 日間継続する,深さが ~ 0.1%の 3 つの深いトランジットがあり,その他の 3 つは何倍か浅く短い継続時間を持つ.
ケプラーの測光データセット全体を,網羅的に視覚的に調べることによって,これらのトランジットが発見された.ここでは彗星のトランジットを示すケプラーデータを確認するために用いた手法について紹介し,またそのシグナル源として機器の影響である可能性を否定した.
シンプルなダスト尾モデルを用いてトランジットをフィッティングし,彗星の横方向の速度として ~ 35 - 50 km s-1 を得た.
また最大のトランジット深さを示す曲線に対し,尾の部分に存在するダストの最小質量を 1016 g と推定した.ダストの補充時間が ~ 10 日で,彗星の寿命が ~ 300 日の場合,これは合計の彗星質量が 3 × 1017 g 以上であることを意味合する,つまり,ハレー彗星程度の質量に相当する.
また,ケプラーの 4 年間の観測で検出された 6 回のトランジットを説明するための,彗星の個数と軌道配置について議論.
最後に,KIC 11084727 における単一の彗星形状のトランジットの発見についても報告する.この恒星でのトランジットと中心星の特性は,KIC 3542116 で検出されたものと非常に似ている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.05391
Veras et al. (2017)
The critical binary star separation for a planetary system origin of white dwarf pollution
(白色矮星汚染の惑星系起源のための臨界伴星間隔)
ここでは,小さい惑星を持つ単独の白色矮星および連星系中の白色矮星が汚染されるための,大きな惑星の必要性もしくは欠如について議論する.また,降着源が惑星系からであるための臨界伴星距離を決定した.これによって,伴星距離,双方の星の質量・半径,伴星の星風,白色矮星への降着率に関連した使いやすい関数を得た.
既知の連星系にある白色矮星の大部分においては,もし汚染が検出された場合,その汚染は惑星物質が起源であることを発見した.
白色矮星の大気中に見られるヘリウムより重い元素の存在は,言い換えれば白色矮星が “汚染” されている事を意味する.これは白色矮星への外部からの降着の存在を示すものである.実際に,単独で存在する汚染された白色矮星は 100 年前から知られている (van Maanen 1917, 1919).
単独の白色矮星の 25 - 50%は,惑星物質の降着によって光球に重元素を持つ (汚染されている).
これまでに,汚染された白色矮星の数は 1000 個を超える.この汚染された白色矮星の集団は,しばしば観測的特徴として,可視光でのカルシウム,紫外線でのケイ素の特徴を示す.しかし多くのケースで,さらに多くの元素が検出されている.合計では,20 種の異なる重元素が白色矮星大気中に検出されている (Klein et al. 2010など).
しかし,白色矮星-主系列星連星のおよそ 3/4 は,コモンエンベロープフェーズ (白色矮星になる前の巨星段階で,主星と伴星が外層を共有するフェーズ) を回避するのに十分な連星間距離があるにも関わらず,白色矮星における惑星科学は単独の白色矮星にフォーカスされている.この原因は,伴星が存在する場合は白色矮星の汚染が惑星起源とする考えが不明瞭になるからである.
伴星からの星風の降着は,白色矮星の大気汚染のその他の可能性である (Debes 2006).
惑星物質が起源とする説は,白色矮星を公転するデブリ円盤の発見により補強されている.デブリ円盤を持つ白色矮星の数は 40 個を超える.発見されている全ての円盤はダストを含むが,いくつかはガスも含む.
観測では,円盤が存在するのは 0.6 - 1.2 太陽半径の範囲である.このことから,円盤は,恒星進化の主系列星や巨星分枝の段階では形成できず,白色矮星になった後に形成されたことを示す.円盤を持つ白色矮星は重元素の汚染があることからも,惑星物質が汚染の起源であることの証拠となる.
arXiv:1708.05391
Veras et al. (2017)
The critical binary star separation for a planetary system origin of white dwarf pollution
(白色矮星汚染の惑星系起源のための臨界伴星間隔)
概要
銀河系内で観測されている単独の白色矮星の 1/4 から 1/2 の大気は,惑星デブリによる重元素の汚染が見られる.しかし,連星系にある白色矮星での汚染は明確ではない.これは,伴星からの星風は白色矮星に降着する物質の流れを生み,伴星起源の汚染が発生するからである.ここでは,小さい惑星を持つ単独の白色矮星および連星系中の白色矮星が汚染されるための,大きな惑星の必要性もしくは欠如について議論する.また,降着源が惑星系からであるための臨界伴星距離を決定した.これによって,伴星距離,双方の星の質量・半径,伴星の星風,白色矮星への降着率に関連した使いやすい関数を得た.
既知の連星系にある白色矮星の大部分においては,もし汚染が検出された場合,その汚染は惑星物質が起源であることを発見した.
白色矮星の汚染について
白色矮星の密度は非常に高く,地球のおよそ 105 倍である.この高密度のため,大気の化学元素は急速に成層化される,これはしばしば数日から数週間のタイムスケールで起きる.その結果として,上層にある水素とヘリウムのみが白色矮星では観測されるべきである.白色矮星の大気中に見られるヘリウムより重い元素の存在は,言い換えれば白色矮星が “汚染” されている事を意味する.これは白色矮星への外部からの降着の存在を示すものである.実際に,単独で存在する汚染された白色矮星は 100 年前から知られている (van Maanen 1917, 1919).
単独の白色矮星の 25 - 50%は,惑星物質の降着によって光球に重元素を持つ (汚染されている).
これまでに,汚染された白色矮星の数は 1000 個を超える.この汚染された白色矮星の集団は,しばしば観測的特徴として,可視光でのカルシウム,紫外線でのケイ素の特徴を示す.しかし多くのケースで,さらに多くの元素が検出されている.合計では,20 種の異なる重元素が白色矮星大気中に検出されている (Klein et al. 2010など).
しかし,白色矮星-主系列星連星のおよそ 3/4 は,コモンエンベロープフェーズ (白色矮星になる前の巨星段階で,主星と伴星が外層を共有するフェーズ) を回避するのに十分な連星間距離があるにも関わらず,白色矮星における惑星科学は単独の白色矮星にフォーカスされている.この原因は,伴星が存在する場合は白色矮星の汚染が惑星起源とする考えが不明瞭になるからである.
伴星からの星風の降着は,白色矮星の大気汚染のその他の可能性である (Debes 2006).
白色矮星の汚染の原因
白色矮星に星間物質が降着することも汚染源になりうるが,星間物質のみが起源とする考えは,化学的・運動学的な観点から否定されている (Aannestad et al. 1993など).惑星物質が起源とする説は,白色矮星を公転するデブリ円盤の発見により補強されている.デブリ円盤を持つ白色矮星の数は 40 個を超える.発見されている全ての円盤はダストを含むが,いくつかはガスも含む.
観測では,円盤が存在するのは 0.6 - 1.2 太陽半径の範囲である.このことから,円盤は,恒星進化の主系列星や巨星分枝の段階では形成できず,白色矮星になった後に形成されたことを示す.円盤を持つ白色矮星は重元素の汚染があることからも,惑星物質が汚染の起源であることの証拠となる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.05392
Brouwers et al. (2017)
How cores grow by pebble accretion
(ペブル集積でコアはどう成長するか)
従来のコア降着モデルとの主な違いの一つは,ペブルが受ける熱剥離の増加である.これは惑星エンベロープの初期の増加をもたらし,その後に起きるエンベロープの進化に影響を与え,惑星のコア成長の過程を変える.
ここでは,ペブル降着モデルでのコアの成長を記述し計算した.また,ペブル降着によって形成されるコアの質量と組成を予測し,微惑星降着によってコアが形成される場合と比較した.
原始惑星の初期の成長を自己無撞着に解くための,衝突と惑星進化モデル両方を含むコードを作成した.高い金属量の物質が蒸気で存在できる領域 (今回のケースでは SiO2) は,温度依存の蒸気圧によって決まる.エンベロープの平均分子量を局所的に調整することで,分子量の増加の影響を取り入れ,惑星の直接コア成長がいつ終了するか決定した.
その結果,ペブル降着によるコア成長には 3 つのフェーズが存在することを発見した.
最初のフェーズ (コア質量 0.23 - 0.39 地球質量) では,ペブルは大きな溶発を受けずにコアに衝突する.
2 番目のフェーズ (コア質量 0.5 地球質量未満) の間は,溶発の影響はますます厳しくなる.金属量の高い蒸気の層がコアの周囲に形成され始め,ペブルから溶発された質量のごく一部を吸収する.残りの物質はコアに落下するか,代わりに外側に混合するかであり,これによってコア成長はゆっくりになる.
3 番目のフェーズ (0.5 地球質量以上) では,金属量の高い内側領域が外側に拡大し,ペブルから溶発された物質のより多くの割合を蒸気として吸収する.ペブルのコアへの落下は,コア質量が 0.6 地球質量になる前に終了し,直接的なコア成長が終了する.
今回の結果は,ペブル降着モデルでは岩石コアは最大で 0.6 地球質量のものしか形成しないことを示唆する.また,氷のコアを形成する事はできない.この結果は従来のコア降着モデルとは対照をなすものである.コア降着モデルでは岩石組成と氷組成の両方の重いコアを直接形成出来るからである.
このフェーズの後に起きるコア成長は,コアの周りの高い金属量の物質を保持する事が出来れば,惑星が冷える時に間接的に起きうる.
arXiv:1708.05392
Brouwers et al. (2017)
How cores grow by pebble accretion
(ペブル集積でコアはどう成長するか)
概要
ペブル (pebble,礫) 降着による惑星形成は,標準的なコア降着説に代わる説である.このシナリオでは,惑星は km サイズの微惑星の代わりに cm - m サイズのペブルを降着して成長する.従来のコア降着モデルとの主な違いの一つは,ペブルが受ける熱剥離の増加である.これは惑星エンベロープの初期の増加をもたらし,その後に起きるエンベロープの進化に影響を与え,惑星のコア成長の過程を変える.
ここでは,ペブル降着モデルでのコアの成長を記述し計算した.また,ペブル降着によって形成されるコアの質量と組成を予測し,微惑星降着によってコアが形成される場合と比較した.
原始惑星の初期の成長を自己無撞着に解くための,衝突と惑星進化モデル両方を含むコードを作成した.高い金属量の物質が蒸気で存在できる領域 (今回のケースでは SiO2) は,温度依存の蒸気圧によって決まる.エンベロープの平均分子量を局所的に調整することで,分子量の増加の影響を取り入れ,惑星の直接コア成長がいつ終了するか決定した.
その結果,ペブル降着によるコア成長には 3 つのフェーズが存在することを発見した.
最初のフェーズ (コア質量 0.23 - 0.39 地球質量) では,ペブルは大きな溶発を受けずにコアに衝突する.
2 番目のフェーズ (コア質量 0.5 地球質量未満) の間は,溶発の影響はますます厳しくなる.金属量の高い蒸気の層がコアの周囲に形成され始め,ペブルから溶発された質量のごく一部を吸収する.残りの物質はコアに落下するか,代わりに外側に混合するかであり,これによってコア成長はゆっくりになる.
3 番目のフェーズ (0.5 地球質量以上) では,金属量の高い内側領域が外側に拡大し,ペブルから溶発された物質のより多くの割合を蒸気として吸収する.ペブルのコアへの落下は,コア質量が 0.6 地球質量になる前に終了し,直接的なコア成長が終了する.
今回の結果は,ペブル降着モデルでは岩石コアは最大で 0.6 地球質量のものしか形成しないことを示唆する.また,氷のコアを形成する事はできない.この結果は従来のコア降着モデルとは対照をなすものである.コア降着モデルでは岩石組成と氷組成の両方の重いコアを直接形成出来るからである.
このフェーズの後に起きるコア成長は,コアの周りの高い金属量の物質を保持する事が出来れば,惑星が冷える時に間接的に起きうる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.05700
Moyano et al. (2017)
Multi-band characterization of the hot Jupiters: WASP-5b, WASP-44b and WASP-46b
(ホットジュピターの多バンドでの特徴付け:WASP-5b,WASP-44b と WASP-46b)
WASP-5b と WASP-44b の新しい軌道要素と物理特性は,過去の推定と整合的であった.
WASP-46b については,過去の結果との不一致があった.
また,トランジット時刻変動について,今回の結果を含めて解析した.その結果,WASP-5b と WASP-44b では明確な変動は見られなかった.
WASP-46b は他の天体の存在を示唆する変動の兆候が発見されたが,統計的な解析からは,新しい惑星によるものではなく,サンプリングによるシグナルだと思われる.
最後に,これらの系の半径比を波長の関数として調べた.WASP-5b と WASP-44b の広帯域スペクトルはほとんど平坦であった.WASP-46b は波長依存の傾向が見られたが (短波長側で惑星半径が大きい),これを確認するためにはさらなる測定が必要である.
arXiv:1708.05700
Moyano et al. (2017)
Multi-band characterization of the hot Jupiters: WASP-5b, WASP-44b and WASP-46b
(ホットジュピターの多バンドでの特徴付け:WASP-5b,WASP-44b と WASP-46b)
概要
ブラジルの Observat ́orio do Pico Dos Dias での多波長測光観測から,ホットジュピター WASP-5b, WASP-44b, WASP-46b の特徴付けを行った.観測結果から,これらの惑星の物理特性と,新しいトランジット暦を決定した.WASP-5b と WASP-44b の新しい軌道要素と物理特性は,過去の推定と整合的であった.
WASP-46b については,過去の結果との不一致があった.
また,トランジット時刻変動について,今回の結果を含めて解析した.その結果,WASP-5b と WASP-44b では明確な変動は見られなかった.
WASP-46b は他の天体の存在を示唆する変動の兆候が発見されたが,統計的な解析からは,新しい惑星によるものではなく,サンプリングによるシグナルだと思われる.
最後に,これらの系の半径比を波長の関数として調べた.WASP-5b と WASP-44b の広帯域スペクトルはほとんど平坦であった.WASP-46b は波長依存の傾向が見られたが (短波長側で惑星半径が大きい),これを確認するためにはさらなる測定が必要である.