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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.07521
Triaud et al. (2017)
The EBLM Project IV. Spectroscopic orbits of over 100 eclipsing M dwarfs masquerading as transiting hot-Jupiters
(EBLM プロジェクト IV.トランジットするホットジュピターになりすましている食を起こす M 型矮星 100 個以上の分光学的軌道)
これらは,ホットジュピターのトランジットシグナルに似た浅い食を示す.今回の観測では,連星の軌道要素と質量関数の詳細な特徴付けを行った.この特徴付けは,恒星物理と M 型星まわりの系外惑星サーベイの両方に寄与するものである.
特に今回の観測では,0.2 太陽質量未満の伴星を持つ系を 34 個発見した.そのため,よく特徴づけられた質量と半径を持った極めて低質量の恒星の発見個数を,最終的には倍にする可能性がある.
今回の観測をドップラー偏移のデータと組み合わせることで,軌道離心率が 0.001 程度のものまで検出でき,軌道周期も秒未満の精度で決定できる.
今回のサンプル中には,いくつかの例外的な連星系を発見した.例えば,軌道周期が 3 日よりも短いが軌道がゼロではない軌道離心率を持つものや,軌道周期は 10.4 日と比較的長いが円軌道のものである.
今回のサンプルの中で特に目立った特徴を持つ系として J1146-42 がある.この系は,1 AU の範囲内に 3 つの恒星が存在する.EBLM で観測されている連星と,過去に報告されている WASP サーベイでの惑星と褐色矮星のデータから,過去の研究の 2 倍の精度の質量スペクトルを導出した.これによると,褐色矮星欠乏領域はより広いように思われる.惑星の存在頻度が大きく減少するのは ~ 3 木星質量あたりからで,重水素燃焼限界の前まで続く.このことは,重いガス惑星の形成と移動の歴史を解明する手がかりになる可能性がある.
arXiv:1707.07521
Triaud et al. (2017)
The EBLM Project IV. Spectroscopic orbits of over 100 eclipsing M dwarfs masquerading as transiting hot-Jupiters
(EBLM プロジェクト IV.トランジットするホットジュピターになりすましている食を起こす M 型矮星 100 個以上の分光学的軌道)
概要
CORALIE 分光器を用いて,8 年を超える期間に渡って 118 個の単線分光連星 (single-line binary star) の 2271 回の視線速度測定を行った.これらの連星は,主星が F/G/K 型星で,伴星が M 型矮星である.これらの連星は,初めは WASP の系外惑星サーベイ観測で測光学的に発見された.これらは,ホットジュピターのトランジットシグナルに似た浅い食を示す.今回の観測では,連星の軌道要素と質量関数の詳細な特徴付けを行った.この特徴付けは,恒星物理と M 型星まわりの系外惑星サーベイの両方に寄与するものである.
特に今回の観測では,0.2 太陽質量未満の伴星を持つ系を 34 個発見した.そのため,よく特徴づけられた質量と半径を持った極めて低質量の恒星の発見個数を,最終的には倍にする可能性がある.
今回の観測をドップラー偏移のデータと組み合わせることで,軌道離心率が 0.001 程度のものまで検出でき,軌道周期も秒未満の精度で決定できる.
今回のサンプル中には,いくつかの例外的な連星系を発見した.例えば,軌道周期が 3 日よりも短いが軌道がゼロではない軌道離心率を持つものや,軌道周期は 10.4 日と比較的長いが円軌道のものである.
今回のサンプルの中で特に目立った特徴を持つ系として J1146-42 がある.この系は,1 AU の範囲内に 3 つの恒星が存在する.EBLM で観測されている連星と,過去に報告されている WASP サーベイでの惑星と褐色矮星のデータから,過去の研究の 2 倍の精度の質量スペクトルを導出した.これによると,褐色矮星欠乏領域はより広いように思われる.惑星の存在頻度が大きく減少するのは ~ 3 木星質量あたりからで,重水素燃焼限界の前まで続く.このことは,重いガス惑星の形成と移動の歴史を解明する手がかりになる可能性がある.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.07093
Brahm et al. (2017)
HATS-43b, HATS-44b, HATS-45b, and HATS-46b: Four Short Period Transiting Giant Planets in the Neptune-Jupiter Mass Range
(HATS-43b,HATS-44b,HATS-45b と HATS-46b:海王星から木星の質量範囲にある 4 つの短周期トランジット巨大惑星)
惑星の質量は 0.26 - 0.90 木星質量の範囲だが,半径はどれもおおよそ木星半径であり,バルク密度としては広い範囲に分布している.
軌道周期は 2.7 - 4.7 日の範囲であり,そのうち HATS-43b は軌道が円軌道ではない (e = 0.173).
HATS-44 は特筆すべき点として,金属量が多い ([Fe/H] = 0.320).
中心星のスペクトル型は F 型から K 型である.また明るさは V バンド等級で 13.3 - 14.4 と適度に明るい.そのため詳細なフォローアップ観測に適している.
HATS-43b と 46b は予想される惑星大気の透過光シグナルが 2350 ppm と 1500 ppm と比較的大きく,透過光分光観測を通じて大気の特徴付けをするのに適している.
金属量:[Fe/H] = 0.050
質量:0.837 太陽質量
半径:0.812 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:8.6 Gyr
距離:341 pc
質量:0.261 木星質量
半径:1.180 木星半径
平均密度:0.191 g cm-3
軌道長半径:0.04944 AU
平衡温度:1003 K
軌道離心率:0.173
やや軌道離心率の大きな軌道にあり,中心の K 型星の光度が小さいため幾分か温暖な平衡温度を持つ.この平衡温度は,惑星の半径が恒星の輻射に強く影響される閾値として Kovacs et al. (2010) で提案されている値である 1000 K に近い.
この惑星の半径は,似た特性を持つ他の系と比べると特に大きいものである.
似た惑星質量を持ち,同程度の輻射を受けている系としては,他に 4 つの系がある.HAT-P-19b (Hartman et al. 2011),WASP-29b (Hellier et al. 2010),WASP-69b (Anderson et al. 2014),HATS-5b (Zhou rt al. 2014) である.HATS-43b は,これらのサンプルの中で最も大きい半径を持つ.
また,中心星の金属量がこれらの中で最も低く,これは惑星が固体の中心核を持たず,大きな半径を持ちうることを示唆する.しかし Fortney et al. (2007) の惑星内部構造のモデルによると,この惑星が理論的に持ちうる半径は,観測された半径より 2 σ 小さい.
一方で,この惑星は今回発見された惑星の中で軌道離心率が 0.1 を超える唯一の惑星である.大きな離心率を持つということは,大きな潮汐加熱率を持つことを意味する (Jackson et al. 2008).これが大きな半径を持つ事の原因であるかもしれない.
この惑星は低密度であるため,大気の研究に適している.
期待される惑星大気の透過光のシグナルは 2350 ppm であり,これは発見されているトランジットの系の中でも最も大きい部類になる.類似したパラメータを持つ惑星 WASP-39b (Faedi et al. 2011) はこれまでに多数の観測が行われており,雲なしの大気を持ち,レイリースロープとナトリウム・カリウムの吸収線が検出されている (Kammer et al. 2015など).
金属量:[Fe/H] = 0.320
質量:0.860 太陽質量
半径:0.847 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:9.7 Gyr
距離:463 pc
質量:0.56 木星質量
半径:1.067 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.03649 AU
平衡温度:1161 K
この惑星と似たパラメータを持つ系に WASP-24 系がある (Smalley et al. 2011).この惑星はやや大きな 1.22 木星半径を持ち,惑星半径と中心星の金属量の間には逆相関があるという仮説と整合的である.Fortney et al. (2007) のモデルによると,惑星が固体コアを持たない場合は,観測された半径が説明できる.
この惑星の透過光のシグナルの予測値は 860 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に大気透過光の観測例は存在する.
金属量:[Fe/H] = 0.020
質量:1.272 太陽質量
半径:1.315 太陽半径
光度:2.66 太陽光度
年齢:1.52 Gyr
距離:818 pc
質量:0.70 木星質量
半径:1.286 木星半径
平均密度:0.41 g cm-3
軌道長半径:0.05511 AU
平衡温度:1518 K
この惑星は,理論モデルが予測する半径よりも大きい半径を持つ.これは,中心星からの輻射が強いことから期待される傾向であり,膨張半径を起こす原因として提案されているいくつかの機構が働いているのだろう.
この惑星の大気の透過光のシグナルの予測値は 660 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に観測例はある.
また中心星の射影した自転速度は 9.90 km s-1 であり,ロシター効果を通じて spin-orbit axis が測定できる可能性がある.
金属量:[Fe/H] = -0.060
質量:0.917 太陽質量
半径:0.853 太陽半径
光度:0.589 太陽光度
年齢:3.0 Gyr
距離:448 pc
質量:0.173 木星質量
半径:0.903 木星半径
平均密度:0.28 g cm-3
軌道長半径:0.05367 AU
平衡温度:1054 K
この惑星は,トランジット惑星のパラメータ分布で見ると存在個数が少ない領域にある,海王星から土星質量の間に位置する惑星である.
質量としては,巨大氷惑星と巨大ガス惑星の中間に相当する.惑星半径が大きいことから,この惑星はおそらくは低質量の巨大ガス惑星であり,質量の大きい氷惑星では無いことが示唆される.
Fortney et al. (2007) の理論モデルでは,コア質量として 12 ± 8 地球質量が,観測された質量と半径を説明するために必要である.このことから,80% が H/He の組成であることが示唆される.
惑星大気の透過光シグナルは 1500 ppm 程度が期待され,大気の研究に適している.
arXiv:1707.07093
Brahm et al. (2017)
HATS-43b, HATS-44b, HATS-45b, and HATS-46b: Four Short Period Transiting Giant Planets in the Neptune-Jupiter Mass Range
(HATS-43b,HATS-44b,HATS-45b と HATS-46b:海王星から木星の質量範囲にある 4 つの短周期トランジット巨大惑星)
概要
4 つの短周期系外惑星の発見を報告する,これらは適度に明るい恒星をトランジットしており,HATSouth の測光観測および,追加の分光・測光フォローアップ観測で検出された.惑星の質量は 0.26 - 0.90 木星質量の範囲だが,半径はどれもおおよそ木星半径であり,バルク密度としては広い範囲に分布している.
軌道周期は 2.7 - 4.7 日の範囲であり,そのうち HATS-43b は軌道が円軌道ではない (e = 0.173).
HATS-44 は特筆すべき点として,金属量が多い ([Fe/H] = 0.320).
中心星のスペクトル型は F 型から K 型である.また明るさは V バンド等級で 13.3 - 14.4 と適度に明るい.そのため詳細なフォローアップ観測に適している.
HATS-43b と 46b は予想される惑星大気の透過光シグナルが 2350 ppm と 1500 ppm と比較的大きく,透過光分光観測を通じて大気の特徴付けをするのに適している.
パラメータ
HATS-43 系
HATS-43
有効温度:5099 K金属量:[Fe/H] = 0.050
質量:0.837 太陽質量
半径:0.812 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:8.6 Gyr
距離:341 pc
HATS-43b
軌道周期:4.3888497 日質量:0.261 木星質量
半径:1.180 木星半径
平均密度:0.191 g cm-3
軌道長半径:0.04944 AU
平衡温度:1003 K
軌道離心率:0.173
HATS-43 系について
HATS-43b は土星程度の質量,木星程度の半径を持つ惑星である.やや軌道離心率の大きな軌道にあり,中心の K 型星の光度が小さいため幾分か温暖な平衡温度を持つ.この平衡温度は,惑星の半径が恒星の輻射に強く影響される閾値として Kovacs et al. (2010) で提案されている値である 1000 K に近い.
この惑星の半径は,似た特性を持つ他の系と比べると特に大きいものである.
似た惑星質量を持ち,同程度の輻射を受けている系としては,他に 4 つの系がある.HAT-P-19b (Hartman et al. 2011),WASP-29b (Hellier et al. 2010),WASP-69b (Anderson et al. 2014),HATS-5b (Zhou rt al. 2014) である.HATS-43b は,これらのサンプルの中で最も大きい半径を持つ.
また,中心星の金属量がこれらの中で最も低く,これは惑星が固体の中心核を持たず,大きな半径を持ちうることを示唆する.しかし Fortney et al. (2007) の惑星内部構造のモデルによると,この惑星が理論的に持ちうる半径は,観測された半径より 2 σ 小さい.
一方で,この惑星は今回発見された惑星の中で軌道離心率が 0.1 を超える唯一の惑星である.大きな離心率を持つということは,大きな潮汐加熱率を持つことを意味する (Jackson et al. 2008).これが大きな半径を持つ事の原因であるかもしれない.
この惑星は低密度であるため,大気の研究に適している.
期待される惑星大気の透過光のシグナルは 2350 ppm であり,これは発見されているトランジットの系の中でも最も大きい部類になる.類似したパラメータを持つ惑星 WASP-39b (Faedi et al. 2011) はこれまでに多数の観測が行われており,雲なしの大気を持ち,レイリースロープとナトリウム・カリウムの吸収線が検出されている (Kammer et al. 2015など).
HATS-44 系
HATS-44
平衡温度:5080 K金属量:[Fe/H] = 0.320
質量:0.860 太陽質量
半径:0.847 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:9.7 Gyr
距離:463 pc
HATS-44b
軌道周期:2.7439004 日質量:0.56 木星質量
半径:1.067 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.03649 AU
平衡温度:1161 K
HATS-44 系について
HATS-44b は木星より小さい質量を持ち,半径は木星程度である.中心星の光度は HATS-43 と似ているが,こちらのほうが軌道長半径が小さいために惑星の平衡温度は高い.この惑星と似たパラメータを持つ系に WASP-24 系がある (Smalley et al. 2011).この惑星はやや大きな 1.22 木星半径を持ち,惑星半径と中心星の金属量の間には逆相関があるという仮説と整合的である.Fortney et al. (2007) のモデルによると,惑星が固体コアを持たない場合は,観測された半径が説明できる.
この惑星の透過光のシグナルの予測値は 860 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に大気透過光の観測例は存在する.
HATS-45 系
HATS-45
平衡温度:6450 K金属量:[Fe/H] = 0.020
質量:1.272 太陽質量
半径:1.315 太陽半径
光度:2.66 太陽光度
年齢:1.52 Gyr
距離:818 pc
HATS-45b
軌道周期:4.1876244 日質量:0.70 木星質量
半径:1.286 木星半径
平均密度:0.41 g cm-3
軌道長半径:0.05511 AU
平衡温度:1518 K
HATS-45 系について
こちらも木星より小さい質量を持ち,膨張した半径を持つ.F 型の中心星からのやや強い輻射を受け,平衡温度は高い.この系に似た系として HAT-P-9b (Shporer et al. 2009) がある.こちらは大きい半径を持つが HATS-45b と整合的である.この惑星は,理論モデルが予測する半径よりも大きい半径を持つ.これは,中心星からの輻射が強いことから期待される傾向であり,膨張半径を起こす原因として提案されているいくつかの機構が働いているのだろう.
この惑星の大気の透過光のシグナルの予測値は 660 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に観測例はある.
また中心星の射影した自転速度は 9.90 km s-1 であり,ロシター効果を通じて spin-orbit axis が測定できる可能性がある.
HATS-46 系
HATS-46
有効温度:5495 K金属量:[Fe/H] = -0.060
質量:0.917 太陽質量
半径:0.853 太陽半径
光度:0.589 太陽光度
年齢:3.0 Gyr
距離:448 pc
HATS-46b
軌道周期:4.7423729 日質量:0.173 木星質量
半径:0.903 木星半径
平均密度:0.28 g cm-3
軌道長半径:0.05367 AU
平衡温度:1054 K
HATS-46 系について
この惑星は海王星と土星の間の質量を持つ.中心星の光度が小さいため,平衡温度は比較的低い.この惑星は,トランジット惑星のパラメータ分布で見ると存在個数が少ない領域にある,海王星から土星質量の間に位置する惑星である.
質量としては,巨大氷惑星と巨大ガス惑星の中間に相当する.惑星半径が大きいことから,この惑星はおそらくは低質量の巨大ガス惑星であり,質量の大きい氷惑星では無いことが示唆される.
Fortney et al. (2007) の理論モデルでは,コア質量として 12 ± 8 地球質量が,観測された質量と半径を説明するために必要である.このことから,80% が H/He の組成であることが示唆される.
惑星大気の透過光シグナルは 1500 ppm 程度が期待され,大気の研究に適している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.07634
Mroz et al. (2017)
No large population of unbound or wide-orbit Jupiter-mass planets
(束縛されていないか大きな軌道にある木星質量惑星の大きなポピュレーションは存在しない)
これまでに,広視野のサーベイだけではなく,若い星団と星形成領域における赤外線サーベイ観測によって,少数の自由浮遊惑星質量天体 (free-floating planetary-mass objects,恒星の周りを公転しない惑星程度の質量の天体) が発見されているが,これらのサーベイは 5 木星質量を下回る天体に対しては不完全である.
重力マイクロレンズ法は,火星質量程度の小さな質量を持つ自由浮遊惑星までを検出することが出来る唯一の手法である.これは,マイクロレンズのシグナルはレンズ天体の明るさに依存しないことから来ている.
レンズ天体の質量が小さい場合,継続時間が短いマイクロレンズイベントとして検出される.
過去の 474 例のマイクロレンズイベントの解析からは,非常に短いイベント (タイムスケールが 1 - 2 日) のが多く存在する事が報告され,これは通常の恒星の個数から示唆されるイベント数よりも多かった.このことから,恒星に重力的に束縛されていないか,恒星から遠く離れた軌道にある木星質量の惑星が大量に存在している事が示唆された.この解析では,これらの天体は主系列星の 2 倍程度の個数存在すると推定されていた.
しかしこの結果は惑星形成理論からの予言とは一致せず,また若い星団での低質量天体のサーベイ結果とも対立するものであった.
ここでは,先行研究での解析よりも 6 倍多いマイクロレンズイベントの解析を行った.これらのイベントは,2010 - 2015 年の間に検出されたものである.このサーベイは,短いタイムスケール (1 - 2 日) のマイクロレンズイベントに対して高い感度 (検出効率) を持つ.
解析の結果,このタイムスケールの範囲におけるイベント数の超過は発見されなかった.95%の上限値として,木星質量の自由浮遊惑星もしくは遠方軌道の惑星の存在頻度は,主系列星の個数に対して 0.25倍程度という値を与えた.
また,いくつかの極めて短いタイムスケールのイベント (0.5 日より短い程度) シグナルと思われるものを検出.これは,惑星形成理論で予言されている,地球質量やスーパーアース質量の自由浮遊惑星の存在を示すものである可能性がある..
その結果,過去に報告されていたような,タイムスケールが 1 - 2 日のマイクロレンズイベントの超過は見られなかった.
先行研究との違いの一部は,過去の研究では解析に用いたイベント数が比較的少なかったことで説明できる.また,イベントのタイムスケールの測定が系統的な影響を受けていた可能性もある.
また,検出されたマイクロレンズイベントのタイムスケールについて,回数分布のモデリングを行った.ベストフィットモデルでは,褐色矮星の質量範囲 (0.01 - 0.08 太陽質量) ではイベントの回数分布は -0.8 の冪,低質量星の質量範囲 (0.08 - 0.5 太陽質量) では -1.3 の冪,0.5 太陽質量以上では -2.0 の冪の冪乗則で,初期質量関数 (initial mass function, IMF) が近似できることが判明した.
ベストフィットモデルは,観測されたタイムスケールの回数分布をよく説明するが,タイムスケールが 0.5 - 1 日の範囲で小さな超過と思われる振る舞いがある.これを木星質量のレンズ天体からの寄与だと考えると,最大尤度モデルでは,木星質量の天体 (いわゆる自由浮遊惑星) の存在頻度は,主系列星 1 個あたり 0.05 個であることに対応する.また,95%信頼限界の上限値としては,主系列星 1 個に対して 0.25 個の木星質量惑星が存在するという結果になった.
この結果は,直接撮像サーベイから示唆されている木星質量惑星の個数分布の上限値と整合的なものであった.また,これは 0.5 - 1 日のタイムスケールのイベントと思われるもののほとんど全ては,(自由浮遊惑星ではなく) 大きな軌道にある惑星からの寄与であることを示唆する結果である.
しかし,これらのイベントは非常に短く,光度曲線はイベントの全てをカバーできていないため,これらのイベントのうちいくつかはフレア星によるものである可能性は排除できない.
これらのイベントのタイムスケールは 0.1 - 0.4 日である.これらの天体が,褐色矮星,恒星やその残骸 (白色矮星など) のレンズ天体と同様の運動をしているとみなした場合,レンズ天体の質量は地球やスーパーアース質量に相当する.これらは,どの恒星にも重力的に束縛されていないか,あるいは恒星から非常に離れた軌道にあると考えられる (少なくとも,中心星から数 AU 離れている).これは,これらのイベントの光度曲線中には連星 (中心星 + 惑星のペアになっている状態) である兆候が見当たらないためである.
これらの極めて短いタイムスケールのイベントは,非常に小さく性質も不明であるため,質量関数のフィッティングには含めていない.しかしこのわずかな検出は,地球質量のレンズ天体は銀河系内では非常にありふれたものであることを意味している可能性がある.
もし 5 地球質量の惑星が主系列星より 5 倍多く存在すると仮定した場合,非常に短いマイクロレンズイベントの期待される検出個数は 2.2 回になる.より現実的な質量関数として,地球質量の惑星が主系列星の 5 倍多いとした場合は,期待される検出個数はそれより 25%小さくなる.
惑星形成理論によると,多くの地球質量・スーパーアース質量の惑星は,比較的小さい軌道間隔 (< 10 AU) で形成される.地球質量を持ち,中心星から離れた軌道を持つ惑星,あるいは自由浮遊惑星のもっともらしい起源は,若い複数惑星系での力学的相互作用である.また,それ以外の機構 (多重連星系からの放出,恒星の近接遭遇,星団中の相互作用,主星の主系列段階後の進化を含む) も提案されている.これらのプロセスでは,木星質量の自由浮遊惑星の大きなポピュレーションは形成しそうにないが,地球質量の惑星の場合はより効率的に散乱され,放出され得る.
重力マイクロレンズを用いた,自由浮遊惑星の個数の推定に関する報告です.
過去の研究では,重力マイクロレンズの観測結果の解析から,木星質量の自由浮遊惑星は銀河系内に大量に存在し,主系列星の 2 倍は存在すると推定されていました.しかしここでは重力マイクロレンズのサンプル数を 6 倍に増やして同様の解析を行った結果,そのような傾向は見られず,木星質量の自由浮遊惑星の数は多くても主系列星の個数の 4 分の 1 程度に留まると結論付けています.
arXiv:1707.07634
Mroz et al. (2017)
No large population of unbound or wide-orbit Jupiter-mass planets
(束縛されていないか大きな軌道にある木星質量惑星の大きなポピュレーションは存在しない)
概要
惑星形成理論では,いくつかの惑星は力学的相互作用やその他の過程の結果として,元々いた惑星系から弾き出される場合があることを予言する.また,恒星に重力的に束縛されていない惑星は,恒星が形成するのと同様の方法によって,分子雲の重力崩壊を経由して形成される可能性もある.これまでに,広視野のサーベイだけではなく,若い星団と星形成領域における赤外線サーベイ観測によって,少数の自由浮遊惑星質量天体 (free-floating planetary-mass objects,恒星の周りを公転しない惑星程度の質量の天体) が発見されているが,これらのサーベイは 5 木星質量を下回る天体に対しては不完全である.
重力マイクロレンズ法は,火星質量程度の小さな質量を持つ自由浮遊惑星までを検出することが出来る唯一の手法である.これは,マイクロレンズのシグナルはレンズ天体の明るさに依存しないことから来ている.
レンズ天体の質量が小さい場合,継続時間が短いマイクロレンズイベントとして検出される.
過去の 474 例のマイクロレンズイベントの解析からは,非常に短いイベント (タイムスケールが 1 - 2 日) のが多く存在する事が報告され,これは通常の恒星の個数から示唆されるイベント数よりも多かった.このことから,恒星に重力的に束縛されていないか,恒星から遠く離れた軌道にある木星質量の惑星が大量に存在している事が示唆された.この解析では,これらの天体は主系列星の 2 倍程度の個数存在すると推定されていた.
しかしこの結果は惑星形成理論からの予言とは一致せず,また若い星団での低質量天体のサーベイ結果とも対立するものであった.
ここでは,先行研究での解析よりも 6 倍多いマイクロレンズイベントの解析を行った.これらのイベントは,2010 - 2015 年の間に検出されたものである.このサーベイは,短いタイムスケール (1 - 2 日) のマイクロレンズイベントに対して高い感度 (検出効率) を持つ.
解析の結果,このタイムスケールの範囲におけるイベント数の超過は発見されなかった.95%の上限値として,木星質量の自由浮遊惑星もしくは遠方軌道の惑星の存在頻度は,主系列星の個数に対して 0.25倍程度という値を与えた.
また,いくつかの極めて短いタイムスケールのイベント (0.5 日より短い程度) シグナルと思われるものを検出.これは,惑星形成理論で予言されている,地球質量やスーパーアース質量の自由浮遊惑星の存在を示すものである可能性がある..
解析について
この解析では,2010 - 2015 年の間の Optical Gravitational Lensing Experiment の第 4 フェーズ (OGLE-IV) での 2617 例のマイクロレンズイベントを解析した.その結果,過去に報告されていたような,タイムスケールが 1 - 2 日のマイクロレンズイベントの超過は見られなかった.
先行研究との違いの一部は,過去の研究では解析に用いたイベント数が比較的少なかったことで説明できる.また,イベントのタイムスケールの測定が系統的な影響を受けていた可能性もある.
また,検出されたマイクロレンズイベントのタイムスケールについて,回数分布のモデリングを行った.ベストフィットモデルでは,褐色矮星の質量範囲 (0.01 - 0.08 太陽質量) ではイベントの回数分布は -0.8 の冪,低質量星の質量範囲 (0.08 - 0.5 太陽質量) では -1.3 の冪,0.5 太陽質量以上では -2.0 の冪の冪乗則で,初期質量関数 (initial mass function, IMF) が近似できることが判明した.
ベストフィットモデルは,観測されたタイムスケールの回数分布をよく説明するが,タイムスケールが 0.5 - 1 日の範囲で小さな超過と思われる振る舞いがある.これを木星質量のレンズ天体からの寄与だと考えると,最大尤度モデルでは,木星質量の天体 (いわゆる自由浮遊惑星) の存在頻度は,主系列星 1 個あたり 0.05 個であることに対応する.また,95%信頼限界の上限値としては,主系列星 1 個に対して 0.25 個の木星質量惑星が存在するという結果になった.
この結果は,直接撮像サーベイから示唆されている木星質量惑星の個数分布の上限値と整合的なものであった.また,これは 0.5 - 1 日のタイムスケールのイベントと思われるもののほとんど全ては,(自由浮遊惑星ではなく) 大きな軌道にある惑星からの寄与であることを示唆する結果である.
より低質量の惑星質量天体の可能性
データの中には,マイクロレンズイベントとしての基準を満たしていて,かつタイムスケールが 0.5 日より短いものが 6 イベントあった.これらについては注意深く確認を行い,測光の技術的な影響や,小惑星によるシグナルである可能性を排除した.また,これらのシグナルが何らかのアウトバースト現象であることは確認されなかった.しかし,これらのイベントは非常に短く,光度曲線はイベントの全てをカバーできていないため,これらのイベントのうちいくつかはフレア星によるものである可能性は排除できない.
これらのイベントのタイムスケールは 0.1 - 0.4 日である.これらの天体が,褐色矮星,恒星やその残骸 (白色矮星など) のレンズ天体と同様の運動をしているとみなした場合,レンズ天体の質量は地球やスーパーアース質量に相当する.これらは,どの恒星にも重力的に束縛されていないか,あるいは恒星から非常に離れた軌道にあると考えられる (少なくとも,中心星から数 AU 離れている).これは,これらのイベントの光度曲線中には連星 (中心星 + 惑星のペアになっている状態) である兆候が見当たらないためである.
これらの極めて短いタイムスケールのイベントは,非常に小さく性質も不明であるため,質量関数のフィッティングには含めていない.しかしこのわずかな検出は,地球質量のレンズ天体は銀河系内では非常にありふれたものであることを意味している可能性がある.
もし 5 地球質量の惑星が主系列星より 5 倍多く存在すると仮定した場合,非常に短いマイクロレンズイベントの期待される検出個数は 2.2 回になる.より現実的な質量関数として,地球質量の惑星が主系列星の 5 倍多いとした場合は,期待される検出個数はそれより 25%小さくなる.
惑星形成理論によると,多くの地球質量・スーパーアース質量の惑星は,比較的小さい軌道間隔 (< 10 AU) で形成される.地球質量を持ち,中心星から離れた軌道を持つ惑星,あるいは自由浮遊惑星のもっともらしい起源は,若い複数惑星系での力学的相互作用である.また,それ以外の機構 (多重連星系からの放出,恒星の近接遭遇,星団中の相互作用,主星の主系列段階後の進化を含む) も提案されている.これらのプロセスでは,木星質量の自由浮遊惑星の大きなポピュレーションは形成しそうにないが,地球質量の惑星の場合はより効率的に散乱され,放出され得る.
重力マイクロレンズを用いた,自由浮遊惑星の個数の推定に関する報告です.
過去の研究では,重力マイクロレンズの観測結果の解析から,木星質量の自由浮遊惑星は銀河系内に大量に存在し,主系列星の 2 倍は存在すると推定されていました.しかしここでは重力マイクロレンズのサンプル数を 6 倍に増やして同様の解析を行った結果,そのような傾向は見られず,木星質量の自由浮遊惑星の数は多くても主系列星の個数の 4 分の 1 程度に留まると結論付けています.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.06238
Bonavita et al. (2017)
Orbiting a binary: SPHERE characterisation of the HD 284149 system
(連星周りを公転する:HD 284149 系の SPHERE による特徴付け)
撮像観測モードと分光観測の両方で観測を行った.
撮像観測からは,これまで未発見であった,低質量 (0.16 太陽質量) の伴星 HD 294149 B が,中心星 HD 294149A から ~ 0.1” の位置に検出された.これは過去に観測されていた視線速度の変化の報告と整合する結果であり,また Gaia と Tycho-2 による固有運動の違いとも合致する結果であった.
また,既に存在が判明している褐色矮星の伴星 HD 284149b は,撮像観測データ中にも明確に捉えられた.これにより,この褐色矮星の測光観測データと位置天文学データの両方を改善した.スペクトルデータからは,温度とスペクトル型の推定を改善した.
また系の年齢と距離の再評価も行い,各天体の質量と軌道長半径のより精密な値を導出した.
今回の研究の結果,HD 284149 ABb は,大きな軌道半径を持って連星の周りを公転する軌道にある褐色矮星の,(少ない) 一覧に新しく加わる事となった.今回の結果は,このような配置にある天体の存在頻度は,単一の恒星の周りを離れた軌道で公転する天体と同程度の存在頻度であるという最近の主張を支持する新しい証拠である.
今回の観測の結果,HD 284149b はスペクトル型は M9 で,有効温度 2300 K と推定された.
また Gaia による年周視差と固有運動から,この系までの距離は 113.50 pc と測定され,年齢は 35 Myr と推定された.HD 284149b の軌道長半径は 432.1 AU で,質量は 26 ± 3 木星質量と推定される.
また,今回の観測では,HD 284149A に近接した,低質量の恒星質量伴星 HD 284149B を検出した.これは中心星から ~ 0.1” の位置に検出され,質量は ~ 0.16 太陽質量であった.これは Bonavita et al. (2014) で報告されている視線速度の変動と合致する結果であった.また今回の結果は,遠方の週連星軌道にある褐色矮星の存在頻度は,単一の恒星の周りの褐色矮星の存在頻度と類似しているという主張 (Bonabita et al. 2016) を支持する結果.
arXiv:1707.06238
Bonavita et al. (2017)
Orbiting a binary: SPHERE characterisation of the HD 284149 system
(連星周りを公転する:HD 284149 系の SPHERE による特徴付け)
概要
SPHERE を用いた HD 284149 系の赤外線での観測結果について報告する.この観測では,主星と,伴星の褐色矮星のより詳細な特徴付けを行った.撮像観測モードと分光観測の両方で観測を行った.
撮像観測からは,これまで未発見であった,低質量 (0.16 太陽質量) の伴星 HD 294149 B が,中心星 HD 294149A から ~ 0.1” の位置に検出された.これは過去に観測されていた視線速度の変化の報告と整合する結果であり,また Gaia と Tycho-2 による固有運動の違いとも合致する結果であった.
また,既に存在が判明している褐色矮星の伴星 HD 284149b は,撮像観測データ中にも明確に捉えられた.これにより,この褐色矮星の測光観測データと位置天文学データの両方を改善した.スペクトルデータからは,温度とスペクトル型の推定を改善した.
また系の年齢と距離の再評価も行い,各天体の質量と軌道長半径のより精密な値を導出した.
今回の研究の結果,HD 284149 ABb は,大きな軌道半径を持って連星の周りを公転する軌道にある褐色矮星の,(少ない) 一覧に新しく加わる事となった.今回の結果は,このような配置にある天体の存在頻度は,単一の恒星の周りを離れた軌道で公転する天体と同程度の存在頻度であるという最近の主張を支持する新しい証拠である.
HD 284149 系について
スペクトル型 F8 の恒星 HD 284149 から ~ 3.6” の位置にある褐色矮星伴星 HD 284149b は,Bonabita et al. (2014) によって直接撮像で発見された.この時,質量は 32 (+18, -14) 木星質量と推定され,測光観測データからは,褐色矮星のスペクトル型は M8 - L1 の間と推定された,また,有効温度は 2537 K とされた.しかし褐色矮星の分光観測は行われておらず,スペクトル型などの推定には不定性が残っていた.今回の観測の結果,HD 284149b はスペクトル型は M9 で,有効温度 2300 K と推定された.
また Gaia による年周視差と固有運動から,この系までの距離は 113.50 pc と測定され,年齢は 35 Myr と推定された.HD 284149b の軌道長半径は 432.1 AU で,質量は 26 ± 3 木星質量と推定される.
また,今回の観測では,HD 284149A に近接した,低質量の恒星質量伴星 HD 284149B を検出した.これは中心星から ~ 0.1” の位置に検出され,質量は ~ 0.16 太陽質量であった.これは Bonavita et al. (2014) で報告されている視線速度の変動と合致する結果であった.また今回の結果は,遠方の週連星軌道にある褐色矮星の存在頻度は,単一の恒星の周りの褐色矮星の存在頻度と類似しているという主張 (Bonabita et al. 2016) を支持する結果.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.06278
Rauscher (2017)
Models of Warm Jupiter Atmospheres: Observable Signatures of Obliquity
(ウォームジュピター大気のモデル:自転軸傾斜角の観測可能な特徴)
ここでは,太陽型星を公転する軌道周期が 10 日の木星質量惑星をモデリングした.このタイプの惑星は,潮汐力によって自転軸と公転の軸が揃う (自転軸傾斜角が 0°になる) かどうかの境界に位置していると期待される.また,潮汐によって軸が揃うのに必要なタイムスケールが,系外惑星系の典型的な年齢より長い.今後の観測の進展に伴って,軌道周期が 10 日程度と比較的長い軌道周期の惑星の大気の特徴付けが出来ることが期待される.
ここではトランジットするウォームジュピターの自転軸傾斜角の,観測可能な特徴を計算した.惑星大気からの熱放射による軌道位相曲線と,二次食時の観測で測定されることが期待される,惑星半球のフラックス分布の傾斜について調べた.
これらの特徴について,どのようなシグナルが観測されるかは,惑星の自転軸の配置に対して我々がどのような位置関係から観測しているかに大きく依存する.またそれらの影響の縮退について考慮した.
これらの観測され得るシグナルを,現在と将来の装置での感度と比較した.その結果,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測の場合は,ウォームジュピターの自転軸傾斜角が小さい値であること (10°未満) への制限を与えることが出来る.あるいは,もし 0°から大きく外れた (30°以上) 値を持つ場合は,その影響が直接測定出来る.これは二次食時の eclipse mapping を用いて測定可能である.
観測対象が明るい天体である場合,観測精度が photon-limited であると仮定した場合,これは一回の二次食の観測で達成できる.
arXiv:1707.06278
Rauscher (2017)
Models of Warm Jupiter Atmospheres: Observable Signatures of Obliquity
(ウォームジュピター大気のモデル:自転軸傾斜角の観測可能な特徴)
概要
3 次元の大気循環モデルを用いて,”warm Jupiter” (ウォームジュピター) とよばれる惑星の大気計算を,惑星の自転軸傾斜角が 0 - 90°の範囲で行った.ここでは,太陽型星を公転する軌道周期が 10 日の木星質量惑星をモデリングした.このタイプの惑星は,潮汐力によって自転軸と公転の軸が揃う (自転軸傾斜角が 0°になる) かどうかの境界に位置していると期待される.また,潮汐によって軸が揃うのに必要なタイムスケールが,系外惑星系の典型的な年齢より長い.今後の観測の進展に伴って,軌道周期が 10 日程度と比較的長い軌道周期の惑星の大気の特徴付けが出来ることが期待される.
ここではトランジットするウォームジュピターの自転軸傾斜角の,観測可能な特徴を計算した.惑星大気からの熱放射による軌道位相曲線と,二次食時の観測で測定されることが期待される,惑星半球のフラックス分布の傾斜について調べた.
これらの特徴について,どのようなシグナルが観測されるかは,惑星の自転軸の配置に対して我々がどのような位置関係から観測しているかに大きく依存する.またそれらの影響の縮退について考慮した.
これらの観測され得るシグナルを,現在と将来の装置での感度と比較した.その結果,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測の場合は,ウォームジュピターの自転軸傾斜角が小さい値であること (10°未満) への制限を与えることが出来る.あるいは,もし 0°から大きく外れた (30°以上) 値を持つ場合は,その影響が直接測定出来る.これは二次食時の eclipse mapping を用いて測定可能である.
観測対象が明るい天体である場合,観測精度が photon-limited であると仮定した場合,これは一回の二次食の観測で達成できる.