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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.01997
Wahl et al. (2017)
Comparing Jupiter interior structure models to Juno gravity measurements and the role of a dilute core
(木星内部構造モデルとジュノーの重力測定の比較と低密度コアの役割)

概要

木星探査機ジュノー (Juno) によって,木星の低次の偶数次の重力モーメント J2 - J8 がこれまでにない精度で測定された.これによって,木星内部の密度分布とコア質量に対して重要な制約を与えることが出来た.

ここでは,水素・ヘリウム混合物の第一原理数値計算を元にした内部モデルの選定について報告する.

ジュノーによる観測と重力モーメント Jn を合わせるためには,木星半径の大部分にまで広がって分布している,淡いコアを持つというモデルが適していることが示された.特に,木星半径の 0.3 - 0.5 倍程度にまでコアが広がっているとするモデルが観測と良く合う

モデルによる予測は,モデルに用いる状態方程式に強く依存するものの,深い金属エンベロープでの重元素の enrichment は,浅い分子エンベロープ中での enrichment よりも大きい.

また我々は,木星のコアは 7 - 25 地球質量の重元素を含んでいると推定した

なお,ジュノーによる重力モーメントの測定値は,J2 = 14696.514 ± 0.272,J4 = -586.623 ± 0.363,J6 = 34.244 ± 0.236,J8 = -2.502 ± 0.311 である (Folkner et al. 2017).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.01518
Lund et al. (2017)
KELT-20b: A giant planet with a period of P~ 3.5 days transiting the V~ 7.6 early A star HD 185603
(KELT-20b:V ~ 7.6 の早期 A 型星 HD 185603 をトランジットする軌道周期 ~ 3.5 日の巨大惑星)

概要

新しい系外惑星 KELT-20b の発見を報告する.この惑星は,V バンド等級 ~ 7.6 の,早期 A 型星を 3.47 日で公転するホットジュピターである.

この惑星のトランジットを,まず KELT-North のサーベイデータの中から同定した.さらに,Gaia の視差データ,視線速度,ドップラートモグラフィーと補償光学を用いた撮像観測のアーカイブデータおよびフォローアップ観測のデータから,このトランジットシグナルが惑星由来であることを確定させ,また系を特徴づけた.

中心星の HD 185603 は高速で自転する恒星で,射影した自転速度は 120 km s-1 である.スペクトル型は A2Vで,有効温度は 8730 K,質量と半径はそれぞれ 1.76 太陽質量,1.561 太陽半径であった,
表面重力は log g = 4.292,年齢は 600 Myr 程度未満である.

惑星 KELT-20b は半径が 1.735 木星半径,軌道長半径が 0.0542 AU である,質量の 3 σ での上限は ~ 3.5 木星質量であった.

ドップラートモグラフィーでの測定から,惑星の軌道は,射影された恒星の自転軸と揃っている事が示唆される (3.4 ± 2.1 度).また,恒星の自転軸の傾斜は 24.4 - 155.6 度の間に制約された.このことから,3 次元的な spin-orbit alignment は 1.3 - 69.8 度の範囲と推定される.

惑星は 8 × 109 erg s-1 cm-2 の日射を受けており,ここから推定される平衡温度は ~ 2250 K である.この温度は,惑星のアルベドが 0 で,また完全な熱の再分配が行われているという仮定での数値である.

恒星の有効温度が高いため,惑星は紫外線 (波長 91.2 nm 以下) のフラックスを 9.1 × 104 erg s-1 cm-2 受けており,これによって惑星の大気は蒸発していると考えられる.

KELT-20 は,WASP-33,ケプラー13A,HAT-P-57,KELT-17,KELT-9 に続く,6 個目のトランジット巨大惑星を持つ A 型星である.またトランジット惑星を持つ恒星の中では V バンド等級で 3 番目に明るい恒星である.この系は KELT-9 系よりわずかに軌道周期が長い類似した惑星系である.

パラメータ

KELT-20
質量:1.76 太陽質量
半径:1.561 太陽半径
光度:12.6 太陽光度
有効温度:8730 K
金属量:[Fe/H] = -0.29
KELT-20b
軌道周期:3.4741085 日
軌道長半径:0.0542 AU
質量:3.518 木星質量未満
半径:1.735 木星半径
平衡温度:2261 K






arXiv:1707.01500
Talens et al. (2017)
MASCARA-2 b: A hot Jupiter transiting a mV=7.6 A-star
(MASCARA-2b:7.6 等の A 型星をトランジットするホットジュピター)

概要

ここでは,新しい惑星 MASCARA-2b の発見を報告する.これは,7.6 等級の A2 型星 HD 185603 をトランジットするホットジュピターである.

この惑星は,Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) によって発見された 2 つ目の惑星である.このサーベイは,明るい恒星まわりでのトランジット惑星系を発見することを目的とし,2015 年前半から観測を行ってきた.
その結果,トランジットを 3.474135 日毎に,1.4%の深さで起こしているシグナルを検出した,さらに,他の測光観測からトランジットの存在を確定させた.

SONG 望遠鏡を用いて分光観測を行い,主星のパラメータの特徴付けを行った.また,惑星による視線速度の変動の測定も行った.さらに,惑星の軌道傾斜角を測定するため,トランジット分光観測を 2 回行った.

惑星半径は 2.2 (+0.5, -0.3) 木星半径,惑星質量は 99%の上限値で < 15 木星質量と推定される.

早期型星をトランジットするその他のホットジュピターとは対照的に,この惑星の射影された公転軸と恒星の自転軸は揃っているようにみえる.

パラメータ

MASCARA-2
質量:2.0 太陽質量
半径:1.9 太陽半径
有効温度:8981 K
射影された自転速度:114 km s-1
金属量:[Fe/H] = -0.05
MASCARA-2b
半径:2.2 (+0.5, -0.3) 木星半径
質量:15 木星質量未満
平衡温度:2230 K
軌道周期:3.474135 日
軌道長半径:0.067 AU
射影された軌道傾斜角:0.6 ± 4度







それぞれ KELT-20b と MASCARA-2b と異なる名前で呼ばれている惑星ですが,観測プロジェクトが異なるため呼び方が異なるだけで,中心星 HD 185603 は同じ天体であり,全く同じ惑星の別グループによる同時の発見報告になっています.

なお同じ惑星を検出・解析していたことはどちらも事前に知っていたようで,前者の Lund et al. (2017) の論文中には
Note: During the preparation of this paper, our team became aware of another paper by The Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) collaboration (Talens et al. 2017) reporting the discovery of a planetary companion to the host star discussed here, HD 185603 (Talens et al. submitted). While we assume this planetary companion is indeed KELT-20b, no information about the analysis procedure or any results were shared between our groups prior to the submission of both papers. We would like the thank the MASCARA collaboration for their collegiality and willingness to work with the KELT collaboration to coordinate our announcements of these discoveries simultaneously.
という注記がされています.
これによると,この論文の準備中に,MASCARA チームによる同じ恒星の周りの惑星天体についての動きがあることに気がついた.その惑星天体はここで報告しているものと同一だと思われるが,解析やその結果については MASCARA チームとは情報を共有していない,とのことです.また発表を同時に行うことに同意した MASCARA チームへの感謝も記されています.

また後者の Talens et al. (2017) の論文中にも,
During the preparation of this paper, our team became aware of another paper reporting the discovery of a planet orbiting HD 185603 (Lund et al. 2017, Submitted). There was no information about any results or analysis shared between the groups prior to the submission of both papers.
とあり,この論文の準備中に別のグループも同じ恒星周りの惑星の報告をしようとしていることに気が付いたが,お互いに情報は交換していないとの旨が書かれています.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.01534
Piskorz et al. (2017)
Detection of Water Vapor in the Thermal Spectrum of the Non-Transiting Hot Jupiter upsilon Andromedae b
(トランジットしないホットジュピターアンドロメダ座ウプシロン星b の熱放射スペクトル中の水蒸気の検出)

概要

アンドロメダ座ウプシロン星 (upsilon Andromedae, ups And) は,主系列星の周りに複数の系外惑星が存在することが初めて確認された系である.ここでは,最も内側の非トランジット惑星アンドロメダ座ウプシロン星b (ups And b) の大気から,水蒸気を検出をしたことを報告する.

検出のために,中心星と惑星系を分光連星とみなし,地上からの高分散分光観測を行った.その結果,惑星の公転運動によるシグナルを分解した.また,観測結果の解析から,この非トランジット惑星の質量と軌道傾斜角の縮退を解いた.

合計して,Keck NIRSPEC L バンドで 7 回,Keck NIRSPEC 短波長 K バンドで 3 回,Keck NIRSPEC 長波長 K バンド観測を 3 回行った.観測結果と大気モデルを合わせ,全てのデータセットの複数観測回の相互相関を調べた.

解析の結果,視線方向に射影したケプラー回転速度,アンドロメダ座ウプシロン星b の真の質量 (1.7 木星質量),軌道傾斜角 (24度) が測定できた.また,惑星大気の不透明度の構造は,今回観測に用いた波長帯においては,水蒸気が主要な寄与をしていると判断した

この観測から得られた軌道要素を用いてアンドロメダ座ウプシロン星系の惑星の力学的シミュレーションを行った結果,長期間に渡って安定な軌道配置 (~ 100 Myr) がある事が分かった.

アンドロメダ座ウプシロン星系について

アンドロメダ座ウプシロン星の周りに系外惑星が発見されたのは 1997 年で,視線速度法によって検出された (Butler et al. 1997).その後の 2 年間のさらなる観測で,さらに 2 つの惑星が発見され,アンドロメダ座ウプシロン星は,主系列星の周りに初めて複数惑星が発見された系になった (Butler et al. 1999).

中心星のアンドロメダ座ウプシロン星A (ups And A) は F 型星である.またアンドロメダ座ウプシロン星b (ups And b) は,最小質量が 0.71 木星質量,軌道周期 4.617 日のホットジュピター,アンドロメダ座ウプシロン星c (ups And c) は,最小質量が 2.11 木星質量,軌道周期 241.2 日,軌道離心率が 0.18 の巨大ガス惑星,アンドロメダ座ウプシロン星d (ups And d) は最小質量 4.61 木星質量,軌道周期 1266.6 日,軌道離心率 0.41 の同じく巨大ガス惑星である.

さらに 2002 年には,赤色矮星の伴星アンドロメダ座ウプシロン星B (ups And B) が,アンドロメダ座ウプシロン星A からの射影距離 750 AU の位置に発見された.なおこの伴星は,発見済みの惑星の視線速度変動には無視できるほどの影響しか無いことも示されている (Lowrance et al. 2002).

この独特な系の起源や安定性についてはいろいろな議論がある.Adams & Laughlin (2006) は,アンドロメダ座ウプシロン星b の短い軌道周期と小さい軌道離心率を説明するためには,一般相対論の効果を考慮する必要があると指摘した.もし一般相対論効果が無ければ,アンドロメダ座ウプシロン星b はゆっくりと歳差運動をし,軌道離心率は外側の重い惑星によって上昇させられる.

この系内の惑星の相互軌道離心率によっては,アンドロメダ座ウプシロン星b の軌道周期が短い原因として Kozai-Lidov 機構が働いた可能性があるが (Nagasawa et al. 2008),一方で Lissaeur & Rivera (2001) は現在の アンドロメダ座ウプシロン星b の運動は,外側の 2 惑星とは分離されていることを示唆した.


この系に関する情報が不足しているため,上記の議論の多くは,視線速度で得られた各惑星の最小質量を真の質量とみなして考えていた.しかし実際の系の起源と安定性を解釈するためには,これらの惑星の真の質量と軌道傾斜角の決定が必要である.

スピッツァー宇宙望遠鏡による 24 µm 波長での 5 回に渡る アンドロメダ座ウプシロン星b の観測では,この惑星の軌道傾斜角は 30°より大きいとことが示唆されている (Harrington et al. 2006).Crossfield et al. (2010) では,同じ波長でのさらなるスピッツァーの観測から,軌道傾斜角は 28°よりも大きい値であると推定した.またこの観測では,アンドロメダ座ウプシロン星b のフラックスの最大が惑星の衝よりも前に発生し,この観測結果は大気循環モデルと整合しないことも報告された.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.01413
Chauvin et al. (2017)
Discovery of a warm, dusty giant planet around HIP65426
(HIP 65426 まわりの温暖なダストの多い巨大惑星の発見)

概要

SHINE プログラムは,600 個の若い近傍星を近赤外線でハイコントラストな観測を行うサーベイプログラムである.このプログラムの目的は,VLT/SPHERE のハイコントラスト・高角度分解能撮像能力を生かして,惑星系を探査し特徴づける事である.また,中心星から離れた軌道にある巨大惑星の軌道特性や存在頻度への統計的な制限を,中心星の質量と年齢の関数として与え,惑星形成理論の検証を行うことも目的である.

ここでは,コロナグラフを用いた,若い A2 型星 HIP 65426 の近赤外の差分画像とスペクトルを取得した.この恒星は,年齢が ~ 17 Myr の,古い Lower Centaurus-Crux アソシエーションの一員である.

観測の結果,恒星から 830 mas (ミリ秒) の位置,天球面上に射影した距離に直すと 92 AU の位置に,暗く赤い色を示す伴星を検出した.異なる時期に行った観測から,この天体は HIP 65426 と固有運動を共有していることを確認した.

分光測光観測から,この伴星天体は温暖でダストに富んだ大気を持ち,表面重力の小さい L5 - L7 矮星と示唆される.ホットスタートの進化モデル (※形成時に持ち込んだエントロピーが大きいとするモデル) に基づくと,この天体の質量が 6 - 12 木星質量,有効温度 1300 - 1600 K で,1.5 木星半径の巨大ガス惑星とすると,観測で得られた光度と整合することが分かった.

また,Exo-REM と PHOENIX BT-Settl の大気モデルとの比較を行ったところ,有効温度は整合的であったものの,より小さい半径 (1.0 - 1.3 木星半径) で,僅かに表面重力が大きいという解を得た.

物理的な特性およびスペクトル特性に注目すると.HIP 65426b は年齢・質量・スペクトル型の観点で,既知の直接撮像惑星の中で独特のものである.

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都道府県名を英語にするとカッコいい,みたいな記事を結構前に見た気がする.

例えばこういうのである.
都道府県を英訳すると「カッコいい」とネットで話題に!全リストはこちら|面白ニュース 秒刊SUNDAY

検索をかけると似たようなのが続々と出てくるので,発想自体はたぶんずっと昔からあるものなんだろうと思う.「静岡」を英訳すると "サイレントヒル" (silent hill) なんてのは有名なネタだし. ただ,それに載っている英訳が個人的にイマイチ納得がいかないものがあるので,個人的な試案として各都道府県の英訳を考えてみたい.


…と言っても,漢字表記をそのまま直訳するのか,何らかの意訳を挟むのか,都道府県名の原義も考慮するのか,いろいろ悩ましい.なので,表記直訳寄りの英訳試案,原義にまで立ち入った英訳試案など複数考えてみたい.

都道府県名英訳試案

北海道
直訳寄り英訳試案は

ノースシーロード (North Sea Road)

こちらは漢字の直訳.
特にこれと言ってコメントすることは無さそう.異論もない.


なお「北海道」の由来は,東海道や東山道のような五畿七道の名前から取られている (五畿七道には北海道は含まれていない).
では「道」はそのまま道路を意味するのかという点だが,これは元々は昔の中国の行政区分の名称から来ているらしい.そして,この中国の行政区分としての「道」に対応する英語は "circuit" である.

というわけで,原義寄り英訳試案としては

ノースシーサーキット (North Sea Circuit)

を提案したい.


ちなみに,「北海」の部分は "north sea" ではなく "northern sea" でも良さそうな気もする.しかし実在する海域の名前としての「北海」は,"the North Sea" であるため,north sea の方を採用したい.

それから,「海」の訳語として sea を採るか ocean を採るかという可能性もある.ただし一般に ocean は大洋と呼べるような広い海に対して使うため,地域区分としての海は sea のほうがふさわしいのではないかと判断した (こんなことにいちいちこだわっているとこの話は終わらなそう).
青森県
直訳寄り英訳試案は

ブルーフォレスト (Blue Forest)

これも漢字の直訳である.これ以外には無い!と言えるくらいの直訳で,おそらく (直訳としては) 異論を挟む人はいないだろうと思われる.


青森という地名の由来は,そのものズバリ「青い森」があったから,とのことである.
その名のとおり、”青い森”があったからと言われています。青森という地名は、江戸時代前期の1624(寛永元年)年、弘前(ひろさき)藩が現在の青森市に港町の建設を始めたときに名付けたものです。当時、現在の青森市本町附近に青い森があり、港に入る船の目印になっていたと言われています(残念ながら、今は残っていません)。
参考リンク

今は既に由来となった森は存在しないらしい.実に残念.

というわけで,由来も同じく「青い森」なので,原義寄りでもブルーフォレストで良さそうな気がする.
が,しかし待てよ,「青い」という表現は微妙ではないか?森は青いだろうか?確かに植物が青々と茂っているなどというように,植物の様子を青という色で表現することはよくある.しかしこれは日本語での話であって,実際に色として近いのは緑の方だ.『青信号は緑色なのになぜ青信号なのか』問題に通じるものがある.実際に,「青々と」に対応する英語は "green" である.英語で "blue" と言えば青空の青である.

というわけで,原義寄り英訳試案としては,

グリーンフォレスト (Green Forest)

を提案したい.
岩手県
直訳寄り英訳試案は

ロックハンド (Rock Hand)

ロックハンド,これもブルーフォレスト並に異論の無さそうな直訳である.映画『アルマゲドン』に出てくる天才変態地質学者ロックハウンド (Rockhound) では無い.


岩手の地名の由来は,羅刹鬼という鬼が岩に残した手形から来ているとのこと.
ビックリ仰天した羅刹鬼は「もう二度と悪さはしません。二度とこの里にも姿を見せませんからどうぞお許しください」というので、三ツ石の神様は「二度と悪さをしないというシルシをたてるなら」といわれ、羅刹鬼は三ツ石にペタンペタンと手形を押して南昌山の彼方に逃げ去った」。そこでこの地を岩に手形・・・岩手と呼ぶようになったという。
参考リンク

なので,「岩手」の原義は「岩の手形」ということになる.「手形」の英訳を引いてみると draft や bill や circulation が出て来るが,これは「為替手形」のような手形であり,手の型を取った本来の手形は "handprint" である.

なので,「岩の手形」は "handprints on a rock" と言えそうである.地名っぽくするとロックハンドプリント (Rock Handprint) あたりだろうか.しかしこれだとあまりに原義に寄り過ぎているような気がするので,原義寄り英訳試案としては,直訳寄りと同じく

ロックハンド (Rock Hand)

を提案したい.適当な気がするがもともと適当な気分で試案を考えているので仕方がない.
秋田県
直訳寄り英訳試案は

オータムライスフィールド (Autumn Rice Field)
もしくは
フォールライスフィールド (Fall Rice Field)

秋 (autumn/fall) と,田 (rice field) の直訳である.英語に触れてから長いこと疑問に思っている人が多いであろう,『秋って autumn と fall どっちなの?』という問題により訳が二つに分かれ得る.秋については,大雑把には autumn はイギリス英語,fall はアメリカ英語であるらしく,どちらでも「秋」として通じるので,どちらでも良いことになる.個人的には,イギリス英語の autumn の方が好きなので,オータムライスフィールドの方を推したい.


秋田の由来については諸説あるが,この地がかつての地形から「齶田」(あぎた) と呼ばれていたことに由来するという説が有力らしい.「齶」は顎と同じで,アゴのような地形だったからということのようだ.さらに「田」は田んぼではなく,場所を意味する接尾語「た」であるとのこと.
参考リンク

要するに,「アゴ状の土地」が由来であるというのが有力な説と言える.
アゴ,つまり "jaw" である.映画 JAWS の jaw である.というわけで,原義寄りの英訳試案としては,

ジョープレイス (Jaw Place)

を提案したい.秋田という字面からは掛け離れた英訳試案になってしまったし,さっき岩手で「原義に寄り過ぎている」とか言っていた割に,めちゃくちゃ原義に寄った試案になってしまった.まあこれくらい思い切ってしまったほうがネタ的には面白いかもしれない.ジョープレイス,カッコいいし.雰囲気で選んでいるので許してほしい.
宮城県
直訳寄り英訳試案は

パレスキャッスル (Palace Castle)

直訳の場合,「城」が "castle" になるのは良いとして,問題は「宮」である.巷でよく見る試案としては「宮殿,宮廷」と解釈して "palace" を当てるものであり,上の試案もそれに倣っている.

しかし「宮」は「神社」と解釈することも出来る.お宮さんの宮である.こちらを採用した場合は,シュラインキャッスル (Shrine Castle) という試案でも良いかもしれない.


宮城の由来には諸説あるようだ.
「宮城」の由来には,様々な説があります。宮なる城の所在地,つまり「遠(とお)の朝廷(みかど)」(宮)といわれた多賀 城(城)が置かれたことから宮城とする説。宮(奥州(おうしゅう)一の宮,塩竃(しおがま)神社や陸奥国分寺)と城(多賀 城)が置かれたことから宮城とする説。「屯倉(みやけ)」(建造物などを含めた朝廷の耕作地)が「みやき」となり,これを宮 城とする説などです。
参考リンク

「宮なる城の所在地」説を採用した場合は,パレスキャッスル (Palace Castle) が良いように思える.一方で「神社と城」説の場合はシュラインキャッスル (Shrine Castle) が良さそうだ.どちらも直訳寄り英訳試案と同じである.

難しいのは「屯倉 (みやけ)」説の場合である.ヤマト王権の支配体制の呼称が由来であり,さらに由来を辿ると,ミ (敬称) + ヤケ (家屋,倉庫) という意味になるらしい.王朝 (dynasty) の直轄の倉庫 (barn) ということで,ダイナスティーズバーン (Dynasty's Barn) なんてのはどうだろうか.
山形県
直訳寄り英訳試案は

マウンテンシェイプ (Mountain Shape)

「山」が "mountain" なのはまあ良いだろうと思われる.「形」は,この手のネタでは "shape" が採用されているのをよく見るし,「形」の英訳として真っ先に出て来るのはおそらく shape だろう.

「形」の英訳として "figure" を採用して,マウンテンフィギュア (Mountain Figure) というのも良いかもしれない.あるいはマウンテンフォーム (Mountain Form) というのもありかもしれない.マウンテンシェイプよりはこれらの方が響きが良い気がしてきた.


なお,紋章などでの「山形」を表す単語としては,シェブロン (chevron) というものがある.山の形と言うよりは逆 V 字型と言ったほうが,シェブロンの形状をイメージしやすいかもしれない.


山形の由来は,「山方」,つまり山の方とのことである.なぜ山方と呼ばれるようになったかは不明らしい.
山形県の「山形」は、平安初期の資料「和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)」に今の山形市の南側を「山方(やまがた)郷」と言ったことに由来があると言われています。なぜここを山方と言ったかは不明ですが、今の山形市より見て南のほうには、山岳信仰で知られた蔵王、瀧山(りゅうざん)の山々があります。
参考リンク

由来は不明瞭ながら,「山の方」が原義なのだろう.
「〜の方へ」を意味する英語の接尾辞として "-ward (-wards)" というものがある.例えば「海の方へ」なら "seaward" だし,「太陽方向の」なら "sunward" である.他にも inward や outward や eastward などいろいろある.

これを参考にして,原義寄り英訳試案として

マウンテンワード (Mountainward)

を提案したい.

ちなみにこの "mountainward" は辞書には載っていなかったので,seaward や sunward を参考にして今勝手に作った造語である.ただし,"mountainward" で完全一致検索をかけてみると「山の方向へ」という意味で使われている用例がかなり見られるので,辞書には載っていないものの単語として意味は取ってもらえるだろうと思われる.
福島県
直訳寄り英訳試案は

ラッキーアイランド (Lucky Island)

これはおそらくいろいろ意見がありそうな試案である.
「島」が "island" なのはおそらく異論は出ないと思われるが,問題は「福」である.イマイチしっくり来る英単語が無い.福の訳として "lucky" はなんだか安直な気がするし,そもそも訳語として適切なのか判然としない.そもそも福とは一体何なのかという深遠な問いに到達してしまう.

広辞苑で「福」を引くと,「さいわい。しあわせ。幸運。」と出て来るので,lucky は悪い訳ではなさそうだ.ただし意味合いとしては lucky 以外にも "fortune" も合いそうなので,フォーチュンアイランド (Fortune Island) という訳でも良さそうに思える.ラッキーアイランドよりは安直さが減ったように思える,ような気がする.


福島の由来については,「よく分からない」のが現状らしい.
なお、詳細な由来は不明とされています。
参考リンク
福島県の公式サイトの記述をしてこれである.まあ由来が諸説あって不明なものを,県の公式な見解としてどれか一つを断定的に書くことは出来ないだろうから仕方がない.

福島県の公式サイトの記述を参考にすると,福にあやかって福島と名付けた説と,吾妻おろしが吹き付けていた島を吹島と呼んだ説があるということになる (他にもいろいろあるらしい).

前者ならそのままラッキーアイランド (Lucky Island) で良さそうに思える.福にあやかったのは良いとして,島はどこから来たのだろうか.
一方で後者なら,風が吹き付ける島という意味になる.いろいろ訳はありそうだけど,シンプルにウィンディアイランド (Windy Island) で良い気がする.

福島の由来がこんなに分からないことだらけだったとは,都道府県名をいろんなパターンで英訳してみようなんてアホな事を思い付かなければ知ることもなかったかもしれない.

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