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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.05749
Hori & Ogihara (2019)
Do the TRAPPIST-1 Planets Have Hydrogen-rich Atmospheres?
(TRAPPIST-1 の惑星は水素豊富な大気を持つか?)

概要

TRAPPIST-1 周りの惑星の大気の透過光分光観測からは,これらの惑星は平坦で特徴に欠けた吸収スペクトルを示すことが明らかになっている.これらの結果は,雲無しの水素主体の大気を持つ可能性を否定する.TRAPPIST-1 を公転する地球サイズの惑星は,水素が欠乏した雲・ヘイズのある大気か,もしくは晴れた大気を持ちうる.

ここでは,提案された形成シナリオが,TRAPPIST-1 の惑星に対して予想される大気組成と整合的かどうかを調査した.
TRAPPIST-1 的な惑星において,原始惑星系円盤が散逸するまでに周囲の円盤から降着した状態での水素豊富なガスの総量を調査した.TRAPPIST-1 周りの惑星は軌道共鳴鎖にとらわれているため,移動する惑星への円盤ガス降着をシミュレーションした.

その結果,降着する水素豊富なガスの総量は,TRAPPIST-1b と c に対しては 10-2 wt% と 0.1 wt%,TRAPPIST-1d は 10-2 wt%,TRAPPIST-1e は 1 wt%,TRAPPIST-1f と g は数 wt%,TRAPPIST-1h は 1 wt% と推定される.

また,円盤散逸後の惑星の長期間の熱進化を計算し,恒星の X 線と紫外線照射に駆動される水素豊富な大気の散逸率を推定した.その結果,降着した全ての水素豊富大気は,ハイドロダイナミックエスケープによって惑星から散逸することを見出した.

そのため,TRAPPIST-1 周りの惑星は水素豊富ガスによる一次大気を持たないが,もし現在大気を持っているのであれば,金星類似のようなものや水蒸気からなる二次大気を持っていると考えられる

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.05318
Yang et al. (2019)
Searching for water ice in the coma of interstellar object 2I/Borisov
(恒星間天体ボリソフ彗星のコマの水氷の探査)

概要

太陽系を通過する恒星間天体は,太陽系外での固体天体と惑星形成における物理的および化学的な過程を探査する機会を与えてくれる.この研究の主目標は,二番目に発見された恒星間天体 2I/2019 Q4 (Borisov,ボリソフ彗星) の近赤外線スペクトル中の水氷による吸収の特徴を探査すること,およびその特徴を太陽系内の氷天体と比較することである.

3 つの別々の期間に合計 21 回の近赤外線観測を行った.最初の観測は 2019 年 9 月 19 日 (UT) に,IRTF 3 m 望遠鏡の SpeX 分光器を用いて行った.また 9 月 24 日には 8 m GEMINI 望遠鏡の GNIRS 分光器,最後の観測は 10 月 9 日に IRTF で行った.

3 夜全てで得られたスペクトルは特徴に欠けたものであり,水氷による吸収の特徴は検出されなかった

スペクトルのモデル化では,もしコマ中に水の粒子が存在するのであれば,それはコマの断面積の 10% は超えないことを示唆する.彗星は赤い D 型小惑星に類似したスペクトルを持ち,スペクトルの傾きは 1000 Å あたり 6% であった.これはオウムアムアのものに似ており,また太陽系内の彗星のものとも似ている.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.05422
Jewitt et al. (2019)
The Nucleus of Interstellar Comet 2I/Borisov
(恒星間彗星ボリソフ彗星の核)

概要

恒星間彗星 2I/Borisov (ボリソフ彗星,仮符号 C/2019 Q4) のハッブル宇宙望遠鏡による高分解能撮像観測の結果について報告する.

彗星からの散乱光は,非等方的に放出された大きな粒子からなるコマによる散乱光が支配的であり,粒子の特徴的なサイズは ~0.1 mm である.

コマの表面輝度分布の畳み込みモデルでは,球形等価核半径は 0.5 km 以下 (幾何学的アルベド 0.04 を仮定した場合) という信頼度の高い制約を与えた.また,核の非重力的加速に基づく独立した制約からは,核のサイズは 0.2 km より大きいと推定される (核の密度として 500 kg m-3 を仮定した場合).

輝度分布からの制約と非重力的な加速に基づく制約は,もし核の密度が 25 kg m-3 以下であった場合は同時に満たすことが出来ない.そのためボリソフ彗星の核は,1I/’Oumuamua (オウムアムア) の核に対して予測されている非常に低密度なフラクタル集合体ではないと考えられる.

脱ガストルクでの自転加速のタイムスケールは,ガスの生成率が測定されている低い値であったとしても,太陽周りの水の揮発領域への滞留時間と同程度かそれより短い.核の自転角運動量は,現在の太陽フライバイの最中に大きく変化する.

最後に,0.5 mm - 100 m サイズの恒星間天体のサイズ分布は,べき乗則の指数が 4 未満であればよく再現できることを見出した.これより,100 m サイズの恒星間天体は百万年から二百万年に一回の頻度で地球に衝突すると予測される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.04286
Sagear et al. (2019)
Upper Limits on Planet Occurrence around Ultracool Dwarfs with K2
(K2 での超低温矮星まわりの惑星存在度の上限)

概要

NASA のケプラーの K2 ミッション中の Guest Observer プログラムでの,827 個の超低温矮星周りでのトランジット惑星の探査結果を報告する.

これらのサンプル中にはトランジット惑星は検出されず,この結果を元に惑星の存在頻度に上限を与えた.

様々な軌道周期と惑星サイズで,サンプルの恒星を公転する惑星を模擬した.中心星をトランジットする模擬惑星のトランジット光度曲線を作成し,それを実際の K2 の光度曲線に注入し,そのシグナルから注入された惑星の復元を試みた.与えられた惑星の存在頻度について,惑星を検出しない確率を計算し,それを使用して惑星の存在頻度を惑星半径と軌道周期の関数として上限値を与えた.

短周期のミニネプチューンと木星サイズの惑星は超低温矮星の周りでは希少な存在であり,これは早期・晩期 M 型矮星周りでの結果と整合的である.ここでは,軌道周期が 1-26.3 日,惑星半径が 0.5-10 地球半径の惑星について,超低温矮星周りでの惑星の存在頻度への制約を与えた.

議論

今回の結果は,原始惑星系円盤内での惑星形成から予想される存在頻度への制約と整合的である.

Rilinger et al. (2019) による,2 つの M7 型褐色矮星の原始惑星系円盤の質量と半径の測定では,一方の円盤は地球質量の惑星やそれより小さいものを形成できるだけの物質しか含んでおらず,もう一方は惑星形成に十分な物質を含んでいないことが分かっている.このことは,褐色矮星の周りでは 1 地球質量より重い惑星は希少であることを示唆している.

Payne & Lodato (2007) では,コア降着モデルによる惑星形成では,0.05 太陽質量の褐色矮星周りでは形成される惑星質量の最大値は 5 地球質量と推定されている.

He et al. (2017) は,L3-T8 型の 44 個の褐色矮星周りでスピッツァー宇宙望遠鏡を用いて惑星を探査し,今回と同じく発見された惑星は無かった.この結果からは,軌道周期が 1.28 日未満で 0.75-3.25 地球半径を持つ惑星の存在頻度は,そのサンプル中で 67% 未満と結論付けられている.また 0.75-1.25 地球半径を持つ惑星の存在頻度は,上限値が 87% と推定されている.

今回の結果では,同じ質量範囲,軌道周期 1-1.58 日の範囲で,存在頻度の上限値はそれぞれ 21% と 7% と推定されており,この値は惑星質量の区切り方に依存する.

今回の観測では超低温矮星のサンプルサイズが 827 個と大きく,He et al. (2017) で得られているよりも厳しい制約を与えた.ただし He et al. (2017) はスピッツァー宇宙望遠鏡の観測データであるため,より晩期のスペクトル型の天体が含まれている.

Demory et al. (2016) は,中期-晩期 M 型星回りでの「膨張した」 TRAPPIST-1b 的な惑星の検出効率を測定した.つまり,軌道周期が 3 日程度未満の短周期の惑星で,最大 0.25 木星半径 (ミニネプチューンサイズ) の惑星の検出効率を測定した.その結果,K2 ミッションはミニネプチューンに感度が高く,もしトランジットしていれば 71% が検出可能とした.しかし惑星の探査の結果としては検出は無かった,そのため,中期-晩期 M 型矮星のまわりでは,早期-中期 M 型周りと同様,高温のミニネプチューンは希少であると結論付けている.

今回の結果でも,M 型から K 型矮星まわりでの高温のミニネプチューンは希少であることを見出した.ミニネプチューンのトランジットの検出効率は 60% であることが期待されるが,一つも発見されなかった.そのため,ミニネプチューンの存在頻度の上限値は 54% から 10% と推定される,
M 型星周りと同様に,超低温矮星周りではこのタイプの惑星は希少である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.04651
GRAVITY Collaboration et al. (2019)
Peering into the formation history of beta Pictoris b with VLTI/GRAVITY long baseline interferometry
(VLTI/GRAVITY 長基線干渉計でがか座ベータ星b の形成史を覗き込む)

概要

がか座ベータ星は太陽系外の惑星系で最も研究された対象のひとつである.
30 年程度にわたる観測から,複雑な構造を持った星周円盤.環,帯,巨大惑星がか座ベータ星b を持つことが分かっている.しかし,この系がどのようにして現在の姿になったのかは分かっていない.

ここでの目的は,高精度の位置天文観測から惑星大気の C/O 比を推定し,惑星の力学的質量を推定すること,そして軌道パラメータを更新することである.

8.2 m Very Large Telescope の GRAVITY 装置を用いて,惑星の K バンド波長での分光干渉データを取得した.K バンドの中間分解能 (R=500) のスペクトルと高精度の位置天文データを差し引き.2 つの異なる手法で惑星の C/O 比を推定した.

大気組成の復元に関しては,フォワードモデルと制約なしの復元の 2 通りを用いた.また異なる形成過程 (重力崩壊とコア降着) のどちらが測定された C/O 比を最も説明できるかについての調査も行った.

その結果,がか座ベータ星b の軌道離心率は e = 0.15 で,円軌道であることは否定される

過去の観測結果とヒッパルコス,ガイアの測定を合わせると,惑星質量は 12.7 木星質量と推定される.この値は,スペクトルデータのみを用いた制約なしの復元モデルで導出したものと整合的である.フォワードモデルと復元モデルからは,どちらも非常に似た結果が導かれた.特に C/O 比に関しては 2 つのコードは同一の結果を返した (0.43 ± 0.05 と 0.43 (+0.04, -0.03)).

もしがか座ベータ星の C/O 比が太陽と同じ値である場合,惑星の質量が大きいことと惑星の C/O 比が小さいことは,この惑星は微惑星が非常に多い環境でコア降着過程で形成されたことを示唆している.

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