忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.09230
Palle et al. (2017)
A feature-rich transmission spectrum for WASP-127b
(WASP-127b の特徴に富んだ透過スペクトル)

概要

WASP-127b はこれまで発見されている中でも特に低密度の惑星である.質量は,土星より軽い 0.18 木星質量であり,また半径は木星より大きい 1.37 木星半径である.中心星の WASP-127 は明るい G5 星であり,この中心星は主系列段階を離れようとしている.

この惑星の大気を観測して主要な大気組成の復元を行った,また,この惑星の膨張した半径やその進化史について考察した.

観測には NOT 望遠鏡の ALFOSC 分光器を用い,低スペクトル分解能 (R ~ 330) の観測を行った.


その結果,青い側の短波長で強いレイリースロープを検出した.また,ナトリウムの吸収の兆候を検出した.しかし今回得られたデータの品質からは,ナトリウムを検出したと断定することは出来ない.

赤い側の波長の吸収特性は,惑星大気中の酸化チタン (TiO) と酸化バナジウム (VO) による吸収によって説明できることが分かった.

惑星大気の吸収特性を確実に明らかにするためには,さらなる高いシグナルノイズ比の観測が必要とされる.しかし,この惑星は雲なし大気を持ち,将来的な大気の観測対象として適していると考えられる.

拍手[0回]

PR

乱流のコルモゴロフ則 (Kolmogorov's law) のオーダー評価からの簡単な (雑な) 導出のメモ.

粘性を考慮した非圧縮流体の Navier-Stokes equation (ナビエ・ストークス方程式) は
\begin{align*}
\frac{\partial {\bf v}}{\partial t}+\left({\bf v}\cdot\nabla\right){\bf v}=-\frac{1}{\rho}\nabla p+\nu\nabla^{2}{\bf v}
\end{align*}
で表される.
ただし \({\bf v}\) は流体の速度,\(\rho\) は密度,\(p\) は圧力,\(\nu\) は粘性係数とする.

ここで,波長が \(\lambda\) となるような典型的な速度を \(v_{\lambda}\) とする.レイノルズ数が 1 より大きく,慣性項が優勢な状態ではその他の項は無視できるので,

\begin{align*}
\frac{\partial {\bf v}}{\partial t} \sim \left({\bf v}\cdot\nabla\right)
\end{align*}
となる.

ここでオーダー評価をして,速度に \(v_{\lambda}\),時間微分を \(\displaystyle{\frac{\partial}{\partial t}\sim\frac{1}{t_{\lambda}}}\),空間微分を \(\displaystyle{\nabla}\sim\frac{1}{\lambda}\) をすると,

\begin{align*}
\frac{v_{\lambda}}{t_{\lambda}}\sim\frac{v_{\lambda}^{2}}{\lambda}
\end{align*}
を得る.これより,

\begin{align*}
t_{\lambda}\sim\frac{\lambda}{v_{\lambda}}
\end{align*}
となる.

単位質量あたりの乱流のエネルギーは \(\displaystyle{\frac{1}{2}v_{\lambda}^{2}}\) と書ける.乱流のエネルギー変換率 \(\epsilon\) を見積もると,
\begin{align*}
\epsilon\sim\frac{1}{2}v_{\lambda}^{2}/t_{\lambda}=\frac{1}{2}\frac{v_{\lambda}^{3}}{\lambda}
\end{align*}
となる.

定常状態では,エネルギー変換率は波長 \(\lambda\) によらず一定であるので,\(\epsilon={\rm const.}\) が成り立つ.
つまり
\begin{align*}
\frac{1}{2}\frac{v_{\lambda}^{3}}{\lambda}={\rm const.}
\end{align*}
であるため,
\begin{align*}
v_{\lambda}\propto\lambda^{1/3}
\end{align*}
が得られる.

一方で,波数が \(k\) 〜 \(k+dk\) の範囲にあるエネルギー \(E\!\left(k\right)dk\) は,
\begin{align*}
E\!\left(k\right)dk=\frac{1}{2}v_{\bar{k}}^{2}
\end{align*}
と書ける.\(v_{\bar{k}}\) はその範囲の \(k\) で平均を取った値に相当.

オーダー評価のため \(dk\) を \(k\) とみなすと,
\begin{align*}
E\!\left(k\right)k\approx v_{\bar k}^{2}\propto\lambda^{2/3}\propto k^{-2/3}
\end{align*}
となる.

そのため
\begin{align*}
E\!\left(k\right)\propto k^{-5/3}
\end{align*}
となり,乱流のエネルギースペクトルが \(k\) の -5/3 乗に比例するというコルモゴロフ則が得られた.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.08427
Ballesteros et al. (2017)
KIC 8462852: Will the Trojans return in 2021?
(KIC 8462852:トロヤ群は 2021 に回帰するか?)

概要

KIC 8462852 はケプラーカタログ中の 100000 個を超える恒星の中でも際立っており,奇妙な特徴を持った光度曲線を示すことが知られている.この天体で検出されたのは,広く非対称な光度曲線を示す減光で,恒星の光の 15%の減光に相当する.
減光の周期は複数あり,細い減光が主要な減光のおよそ 700 日後に発生している.

この異常な振る舞いを説明するための複数のモデルが提案されている.これらのモデルの多くは,非現実的な要因か,ファインチューニングされたタイミングのどちらかを必要とする.

ここでは,比較的自然なモデルを提案する.ここで提案するモデルは,過去に観測例がある現象だが,その現象のより大きく重い天体でのケースである.

このモデルでは,大きく,環を持った天体が最初の減光を引き起こしていると考える.さらに,その天体と軌道を共有しているトロヤ群天体の群れが,二番目の複数の減光を引き起こしているとするものである.天体の軌道周期は ~ 12 年,軌道長半径は 6 AU と考えられる.この文脈では,最近観測された小さい減光は,環を持った天体の二次食で説明可能である.

このモデルからは 2 つの予言を行うことが出来る.次のトロヤ群天体の群れが恒星の手前を通過するのは 2021 年の前半になるだろう.また,メインの天体のトランジットは 2023 年の前半に発生するだろう.


メインのトランジットを起こしている惑星は,中心星の 0.3 倍の半径で,幅が中心星の直径の 5 倍の大きな環を持ち,その傾きは 5°とする.また,この惑星と同じ軌道上で,60°先行した位置と後ろの位置に,トロヤ群天体の群れが存在すると仮定する.
2009 年 5 月 1 日の不規則な変動は,先行するトロヤ群による減光の一部を観測したもの,2011 年 3 月 4 日の減光は,惑星本体と環による単一で深いトランジット,また 2013 年 2 - 5 月までの不規則な減光は,後続するトロヤ群天体の群れによるトランジットと仮定する.

また 2017 年 5 月 19 日に見られる小さい減光は,惑星が恒星の背後に隠れた二次食による減光と考えることが出来る.これによると,先行するトロヤ群が再びトランジットをするのは 2021 年初頭と予測される.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.07688
Patruno & Kama (2017)
Neutron Star Planets: Atmospheric processes and habitability
(中性子星惑星:大気過程と生命存在可能性)

概要

これまでに 3000 個あまりの中性子星の存在が知られているが,準恒星質量の伴星を持つのはごく一部である.これらの例で最も有名なのは,ミリ秒パルサー B1257+12 のまわりの低質量の惑星である.最近では,多くの中性子星の周りにある多様な惑星系は,観測バイアスによって検出されていないことも示唆されている.

ここでは中性子星周りの惑星の環境と物理過程について研究を行った.特に,中性子星からの X 線放射と相対論的パルサー風が,惑星大気に与える影響についてを調べた.

惑星大気の生存時間と,惑星表面環境を異なるクラスの中性子星周りで議論した.また,中性子星のまわりのハビタブルゾーンを定義した.あまりよく制限されていないパルサー風の性質に依存するが,B1275+12 まわりのスーパーアースは,どちらも中性子星まわりのハビタブルゾーン内に位置する可能性がある.

研究背景

中性子星について

中性子星は超新星爆発で形成され,その周りには 0.1 - 0.2 太陽質量の円盤が形成される.円盤の金属量は銀河平均と同じ程度かそれより多く,そのためダストに富んだ円盤である.

若い孤立した中性子星周りでの中間赤外スペクトルの超過を説明するモデルとして,10 地球質量のダストに富んだ円盤の存在が提案されている (Wang et al. 2006).また,中間赤外線での対応天体がマグネター 1E 2259+286 の周りに発見されている (Kaplan & van Kerkwijk 2009).

中性子星は大きく分けて 4 つのカテゴリに分類される.これは放射の主要な機構の違いによる分類である.

1. 若い電波パルサー (young PSRs.2200 個程度が知られている).エネルギー源は自身の回転エネルギーである.

2. ミリ秒電波パルサー (MSPs,400 個程度).伴星からの質量降着がある中性子星である.

3. 熱的に放射する dim isolated neutron starss (DINSs).7 個が知られている.熱冷却と星間物質の降着がエネルギー源である.

4. 降着する中性子星 (accreting neutron stars, ANSs),数百個が知られている.伴星からのガスの降着がエネルギー源である.

上記の 4 つで,自転する電波トランジェント天体やマグネター,中心コンパクト天体などの希少な例外を除けば,ほとんどの中性子星をカバーする.

中性子星まわりの惑星

初めて発見された系外惑星は,B1257+12 のまわりの 3 つの低質量天体である (Wolszczan & Frail 1992).
この他には,PSR J1718-1438 というミリ秒パルサーのまわりに木星サイズの伴星が検出されている (Bailes et al. 2011).これは中性子星の伴星が質量を失った結果として形成されたものである.
また,ミリ秒パルサーと白色矮星の連星の周りを木星サイズの惑星が 40 年周期で公転している系 PSR B1620-26 も発見されている (Thorsett et al. 1993).これは球状星団 NGC 6121 (M4) の中にあり,形成はおそらく星団内での力学的相互作用に起因すると考えられている (Sigurdsson et al. 2003).

また,ミリ秒パルサー PSR J1937+21 での確率的なタイミング変動は,小惑星帯の存在と関係があるとの示唆もある (Shannon et al. 2013).似たような説は PSR J0738-4042 (Brook et al. 2014) でも提案されている.

中性子星の周りの惑星は,第一世代・第二世代・第三世代のどの形成過程でも形成され得る.
第一世代の惑星は,通常の方法で形成された惑星である.これは,星形成過程の副産物として形成されるものである.第一世代の惑星は,恒星の死とともに質量を失ったり,重力的に束縛されなくなったりする.
第二世代は,新しく形成された中性子星の周りに出来る,超新星の fallback 円盤中で形成されると思われる惑星である.
第三世代は,破壊された伴星から形成される円盤での惑星形成で作られた惑星である.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.07810
Matsumoto & Kokubo (2017)
Formation of Close-in Super-Earths by Giant Impacts: Effects of Initial Eccentricities and Inclinations of Protoplanets
(巨大衝突による近接スーパーアースの形成:原始惑星の初期離心率と傾斜角の影響)

概要

最近の観測では,近接スーパーアースの軌道離心率と軌道傾斜角の分布が明らかになっている.これらの分布は,スーパーアースの形成過程に制約を与える可能性を持っている.

近接スーパーアースが現在の位置で形成されたとする,その場形成シナリオ (in-situ formation) では,現在の惑星の軌道離心率と軌道傾斜角は,巨大衝突段階における原始惑星同士の重力的散乱と衝突によって決まる.ここでは,近接スーパーアースの形成に関して,原始惑星の初期の軌道離心率と軌道傾斜角の影響について調べた.

ガス無し円盤での原始惑星の N 体シミュレーションを行い,初期の軌道離心率と軌道傾斜角を系統的に変更してその影響を調べた.その結果,原始惑星の進化の過程で軌道離心率はよく緩和されるが,軌道傾斜角はそうではないことが判明した

初期の軌道傾斜角が小さい場合,重力散乱があまり効果的でなく,原始惑星の衝突は軌道交差の後にすぐ発生するため,軌道傾斜角はあまり上昇しない.それに対して,初期の傾斜角が大きい場合は,衝突減衰が効果的ではないため軌道傾斜角は大きい値のまま保たれる傾向にある.

最終的に形成される惑星の軌道傾斜角だけではなく,それらの数・軌道離心率・角運動量欠損 (angular momentun deficit) と軌道間隔も,初期の原始惑星の軌道傾斜角に影響される.

研究背景

ここでの "スーパーアース" とは,30 地球質量程度以下,または 6 地球半径程度以下のものを指す.

大部分のスーパーアースは 0.3 AU 以内に分布している.これらの軌道の配置について,1 次の尽数関係となっている軌道長半径周辺にはいくらかの超過は見られるものの,多くのスーパーアースは通常は平均運動共鳴に入っていないことが分かっている (Lussauer et al. 2011など).

視線速度で観測されているスーパーアースは,軌道離心率が e ≦ 0.4 である.ケプラーミッションで発見されたスーパーアースの軌道離心率は小さく,0.01 - 0.1 (Fabrycky et al. 2014など) である.

惑星系が複数のトランジット惑星を持っている場合は,各惑星の相互軌道傾斜角が推定できる.ケプラーで検出されているトランジット系での相互軌道傾斜角は,0.017 rad < 0.039 rad (Favrycky et al. 2014) である.


これまでの,軌道要素の分布について多くの理論的研究が行われてきた.しかし離心率と傾斜角が力学的にどのように決定されるのかは未解決の問題である.巨大衝突段階では,原始惑星の軌道離心率は,ガスがない環境における重力散乱と原始惑星同士の衝突で進化する.

衝突による離心率進化は Matsumoto et al. (2015) によって調べられた.近接原始惑星は,軌道交差が起きた後すぐに衝突を起こす.この時の軌道離心率は,軌道交差に必要な程度の大きさで,衝突する原始惑星の近星点はお互いに反対の方向である.この近接接近によって接触離心率は escape eccentricity (脱出速度/ケプラー速度) 程度にまで上昇する.これらの軌道離心率は衝突の結果減衰される.これはランダム速度 (中心平面での円軌道との相対速度,~ √(e2+i2))vK) が,近星点が反対であることによって打ち消されることが要因である.

最終的な惑星は,表面脱出速度よりも小さいランダム速度を持つ.また,軌道離心率の減衰率は初期の原始惑星の軌道離心率に依存する.これは,最終的な惑星のランダム速度も初期の原始惑星のランダム速度に影響を受けることを示唆している.

Kokubo & Ida (2007) や Dawson et al. (2016) では,巨大衝突で形成される惑星の基本的な性質が,初期の原始惑星の離心率と傾斜角から受ける影響を調べた.
Kokubo & Ida (2007) では,離心率と傾斜角に分散 0.01 のレイリー分布を与えてシミュレーションを行っている.この初期条件の範囲内では,離心率と傾斜角は巨大衝突段階でよく緩和されるため惑星の基本的な性質にはわずかしか影響しないと結論づけている.しかしこの研究では,初期の離心率と傾斜角の範囲が限定的であり,かつ軌道長半径は 1 AU 周辺についての研究であった.

初期の離心率と傾斜角が形成される惑星への影響は研究されているが,重力散乱と衝突による軌道進化の基本的な過程は明らかではない.また傾斜角の減衰率は離心率の減衰率とは異なる.これは,衝突は軌道離心率が 0.5Δa/a (Δa は軌道間隔) よりも大きい時に起き,傾斜角とは独立であることが理由である.

拍手[0回]