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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.08647
Carrera et al. (2017)
Toward an initial mass function for giant planets
(巨大惑星の初期質量関数に向けて)

概要

系外惑星の質量の分布は始原的なものではない.
惑星形成の初期段階が終わった後,惑星同士の重力的相互作用は 2 つの惑星の物理的な衝突を引き起こし,また 1 個やそれ以上の惑星を系から弾き出す.このような現象が起きる時,残された惑星は典型的にはより大きな軌道離心率を持った軌道になる.

ここでは,観測されている系外惑星の現在の軌道離心率を用い,力学的不安定が起きる前の系外惑星の初期質量関数の再現を試みた.N 体シミュレーションのデータと現在の観測を組み合わせる Bayesian framework を発展させ,過去に弾き出されたか衝突した惑星の確率分布を計算した.系外惑星の population にわたって計算することで,系外惑星の初期質量関数の推定を得た.

その結果,系から弾き出される惑星は主にサブサターン型の惑星であると推定された.現在の系外惑星の質量分布は二峰性を持ち,1 木星質量程度と 20 地球質量程度に極大を持つが,この二峰性は始原的なものではないと考えられる.代わりに,60 地球質量程度の惑星は力学的不安定によって優先的に系から弾き出されて減少した可能性がある.

従って,population synthesis コードを用いて系外惑星の population を再現しようとする試みを行う場合は,現在の惑星の population は中間質量の惑星が減少しているという点について留意すべきである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.07790
Mills & Mazeh (2017)
The Planetary Mass-Radius Relation and its Dependence on Orbital Period as Measured by Transit Timing Variations and Radial Velocities
(トランジット時刻変動と視線速度で測定した惑星の質量-半径関係とその軌道周期への依存性)

概要

惑星の質量を測定するための 2 つの最も一般的な手法である,視線速度 (radial velocity) とトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) は,同じ半径を持つ惑星の質量について,系統的に異なる値を観測から得てきた.ここでは,Steffen (2016) に続き,2 つの手法の間のこの差異を引き起こしうる観測バイアスの効果について考える.

短い軌道周期 (< 11 日) では,2 つの手法は統計的に同じ結果をもたらす.その一方で,長周期 (< 11 日) では,視線速度で得られた質量は TTV で得られた質量よりも系統的に大きいことが分かっている.ここでは,この違いは長周期惑星に対する視線速度での検出感度バイアスと整合的であると指摘する.

その一方で,両方の手法で質量が得られている短周期と長周期惑星の間の間に,明確な違いを発見した.これは,べき乗則としてパラメータ化された質量-半径関係が,長周期のものに比べて短周期のほうがより急な指数を持っているというものである.


またここでは,2 つの手法の間に存在が予想されていた更に異なる観測バイアスの存在を指摘する.それは,視線速度で質量が推定されている複数惑星系は,TTV で質量が測定されている系よりも大きな軌道周期比を持つというものである.

この差異は,軌道が小さくまとまった系の方が TTV での質量測定に有利であるというバイアスに起因する.特にこれは複数の惑星が平均運動共鳴に入っているケースで顕著である.一方で,視線速度による質量検出の場合は,似たような周期を持つ別の惑星の存在は,正確な質量検出の障害となりうる.
そのため視線速度と比べた場合,TTV での測定は狭い範囲に分布している惑星系にバイアスがかかっている.2 つのサンプル間のコルモゴロフ・スミルノフ検定 (Kolmogorov-Smirnoff test) の結果,α = 4 × 10-6 となった.これは二つの分布の間に統計的に明確な違いがあることを示唆するものである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.07895
Carrera et al. (2017)
Planetesimal formation by the streaming instability in a photoevaporating disk
(光蒸発している円盤中でのストリーミング不安定による微惑星形成)

概要

原始惑星系円盤中で微惑星を形成する候補メカニズムとして,streaming instability (ストリーミング不安定性,流動不安定性) が注目を集めてきた.しかしこれらの先行研究では,小さいスケールのシミュレーションに限られてきた.

ここでは,流動不安定性による微惑星形成を含んだ全体的な原始惑星系円盤の進化を,粘性降着,極端紫外線・遠紫外線・X 線光子による光蒸発,ダスト進化,水のスノーライン,成層乱流を含めて計算した結果を紹介する.

このシミュレーションでは,100 AU 以遠の領域に重い (合計質量 60 - 130 地球質量) 微惑星ベルトと,中間領域 (3 - 100 AU) に最大で合計質量 ~ 20 地球質量の微惑星が形成される.もっとも包括的なモデルにおいては,3 AU 以内に合計 8 地球質量の微惑星が形成される.この領域は地球型惑星を形成する領域である.

内側円盤において形成される微惑星の全質量は,高エネルギー光子によって円盤に形成される内側の穴が出来るタイミングに大きく依存する.


この結果は,光蒸発と流動不安定性の組み合わせが,原始惑星系円盤の固体要素を微惑星に効率的に変換出来ることを示すものである.しかしこのモデルでは,ガス惑星や,ガスエンベロープを持ったスーパーアースを形成できるような十分な量の初期の微惑星を,円盤の内側や中間領域に形成することができない.粒子のパイルアップや MHD 風で駆動される質量損失などの別の過程が,原始惑星系円盤の惑星形成領域での初期の微惑星生成に必要だろう.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.07917
Suetsugu & Ohtsuki (2017)
Distribution of captured planetesimals in circumplanetary gas disks and implications for accretion of regular satellites
(周惑星ガス円盤中の捕獲された微惑星の分布と規則衛星の降着への影響)

概要

巨大惑星の規則衛星 (regular satellite) は,周惑星円盤 (circumplanetary disk) 内の固体天体の降着によって形成される.

微惑星が太陽中心軌道を動いていて,なおかつ原始惑星系ガス円盤の流れとの結合が外れる程度に十分サイズが大きい場合は,周惑星円盤中でのガスの摩擦によって惑星の周りに捕獲され得る.ここでは,周惑星円盤中に捕獲された微惑星の分布について,軌道積分から研究を行った.

その結果,捕獲された微惑星の数は平衡状態に近付くことを発見した.この平衡は,微惑星がガス抵抗を受けて惑星に向かって落下していくことと,微惑星が継続して捕獲されることがバランスすることによって実現される平衡状態である.

また,逆行する微惑星は順行する微惑星よりも数が少ないという結果となった.これは,逆行する微惑星は強い向かい風を受けて惑星へ速く落下していくからである.


現在の規則衛星が存在する位置における,捕獲された微惑星の個数面密度は,ガス摩擦による捕獲によって大きく増加する.これは原始惑星系円盤中での微惑星の速度分散と,原始惑星系円盤に惑星によって開けられたギャップの幅に依存する.

単純なモデルを用いて,周惑星円盤中でのダストの面密度と,捕獲された微惑星の面密度の比を計算した.その結果,現在の規則衛星が存在する場所での固体物質は,微惑星の速度分散がいくらか小さく,また原始惑星系円盤に広いギャップが形成されていない場合は,捕獲された微惑星が支配的になることを発見した.
このような場合,その領域で捕獲された微惑星は相互衝突によって惑星に落下する前に成長でき,規則衛星の成長に寄与する可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.07585
Yan et al. (2017)
The effect of the stellar absorption line centre-to-limb variation on exoplanet transmission spectrum observations
(系外惑星透過光スペクトル観測における恒星吸収線の中心-外縁変化の影響)

概要

トランジット分光観測は,系外惑星の大気の特徴付けのために使われる最も一般的な技術である.この技術は,恒星のスペクトル線を,惑星のトランジット中とトランジット外で観測して比較することによって,系外惑星大気中におけるイオンや中性粒子を検出するのに使われてきた.

一方,恒星のスペクトル線の center-to-limb variation (CLV) は,透過光分光観測に重要な影響を及ぼす.CLV は恒星の周辺減光 (limb darkening) が原因である.惑星が恒星の円盤面の異なる部分をトランジットする事によって,観測される恒星のスペクトル線の深さが変化するため,透過光分光観測に対して影響がある.

ここでは,HD 189733b の HARPS 分光器によって得られたトランジットデータの再解析を行い,トランジット中の CLV 効果について調べた.その結果,ナトリウムの D 線の透過光光度曲線からは,CLV 効果の明確な痕跡が検出された.

ここで,1 次元の非局所熱力学平衡の恒星スペクトルモデルを用いて,CLV 効果を再現した.補正を適用した後,HD 189733b の大気中におけるナトリウムの吸収の測定はよく再現された.
また,HD 189733b での CLV 効果を,HD 209458b での効果と比較した.その結果,CLV 効果はこれらの惑星系でそれぞれ異なった.これは,恒星の有効温度の違いと,トランジットのインパクトパラメータの違いによるものである.

さらに,一般的な CLV 効果の系外惑星トランジットへの影響を調べた.標準的には,恒星の有効温度が低い場合は CLV 効果は大きくなり,また CLV の特徴は比較的広い波長領域に広がる.また,ここでは CLV 効果の振る舞いを異なるインパクトパラメータ b の関数として記述するための b-diagram を導入した.

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