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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.06477
Bonomo et al. (2017)
A deeper view of the CoRoT-9 planetary system. A small non-zero eccentricity for CoRoT-9b likely generated by planet-planet scattering
(CoRoT-9 惑星系のより詳細な見識.CoRoT-9b の小さいゼロではない離心率は惑星-惑星散乱で生み出されたと思われる)

概要

CoRoT-9b は,軌道周期が長い (95.3 日),かつ質量が判明しているトランジット巨大惑星の希少な例である.ここでは,HARPS による視線速度の 5 年間のモニタリングと,CoRoT とスピッツァー宇宙望遠鏡による宇宙空間からのトランジット観測 3 回を元に新しい解析を行った.

既に報告されている測定結果と新しい結果を合わせることで,この系のパラメータを再決定した.その結果は,過去に得られていた結果とよく一致した.また,CoRoT-9b の,小さいがゼロではない軌道離心率を高い確度で決定.その値は e = 0.133 (+0.042, -0.037) となった.

また,この系内に他の惑星の存在を示す証拠は検出されなかった.

ここで,この惑星の軌道離心率は,50 地球質量程度の惑星一つが系から弾き出される軌道不安定の結果として生み出された事を示すための,惑星-惑星散乱のシミュレーションを行った.この散乱は恒星の自転軸と惑星の公転軌道軸のずれを引き起こさなかっただろうと思われ,そのため現在この惑星は原始惑星系円盤の初期の平面から数度以内の範囲にあることが予測される.

結論として,恒星の大きな自転軸傾斜があった場合は,円盤がはじめから傾いていたことを示唆するだろう.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.06582
Patra et al. (2017)
The Apparently Decaying Orbit of WASP-12
(WASP-12 の崩壊しつつあると思われる軌道)

概要

ホットジュピター WASP-12b の新しいトランジットと掩蔽時刻について報告する.

観測から得られたデータは,一定の周期の微分値 dP/dt = -29 ± 3 ms yr-1 と,P/(dP/dt) = 3.2 Myr と整合的である.しかし,これが惑星軌道の崩壊を見ているのか,14 年の近点歳差周期の一部を見ているのかを判断するのは難しい.

これが軌道の崩壊だと解釈した場合,恒星の潮汐の Q 値は 2 × 105 になる.また,歳差だと解釈した場合,惑星のラブ数は 0.44 ± 0.10 となる.

軌道崩壊モデルは,よりパラメータが少ないモデルである.カイ二乗検定では Δχ2 = 5.5 だが,歳差モデルよりもパラメータが 2 つ少ない.移動崩壊モデルは,WASP-12b の崩壊までの寿命のうち最後の ~ 0.2%の期間の間に発見されたという現実的ではない偶然の一致を要求するが,これは惑星軌道が現在破壊に向かいつつあるという独立した証拠と調和的である.

歳差モデルは前述のような時間的一致性を要求しないが,速い潮汐円軌道化を前にして軌道離心率が ~ 0.002 に維持し続けるための,何らかの不明なメカニズムが必要となり.仮説としては,恒星の対流渦からの重力的擾乱によって軌道離心率が励起されているという Phinney (1992) の理論が存在する.

軌道崩壊と歳差を明確に区別するためには,あと数年のさらなる観測を必要とすると思われる.特に 2019 年かそれ以後の掩蔽のタイミングを測定するのが良い.その時期以降に,軌道崩壊と歳差で予測される周期のズレの予測値に差が生じるためである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.06716
Chen et al. (2017)
The GTC exoplanet transit spectroscopy survey. VII. Detection of sodium in WASP-52b's cloudy atmosphere
(GTC 系外惑星トランジット分光サーベイ VII:WASP-52b の雲の多い大気中のナトリウムの検出)

概要

ホットジュピター WASP-52b の大気中におけるナトリウムの吸収の初めての検出を報告する.観測には,Gran Telescopio Canarias (GTC) の 10.4 m 望遠鏡にある Optical System for Imaging and low-Intermediate Resolution Integrated Spectroscopy (OSIRIS) を用い,低分解能トランジット分光観測を行った.観測波長域は 522 nm - 903 nm である

今回観測した波長の範囲内では,大気透過スペクトルは平坦で特徴に欠けていた.しかし,ナトリウムの doublet の波長では有意な細い吸収の特徴が見られた.この特徴は,1 mbar の高度に雲を持つ,太陽組成の大気によって説明できる.スペクトルより,雲を持たない大気である可能性は強く排除された.

異なる波長ビン幅でのナトリウムの吸収深さの解析から,大気圧力水準が低い方へ向かって (※つまり上空へ向かって) 温度が上昇している事が示唆される.観測範囲内の温度勾配は正の値である 0.88 ± 0.65 K km-1 であった.これは,高層大気加熱と温度逆転層の存在を示唆している可能性がある.

観測の背景

ナトリウムとカリウムは,系外惑星大気の特徴付けにおいて,可視光領域での重要な吸収源である (Seager & Sasselov 2000).これまでに 10 個程度の高温のガス惑星 (960 - 1740 K) の大気中から,ナトリウムやカリウムが検出されている (Charbonneau et al. 2002など).

近年は地上からの観測でも,ナトリウムとカリウムの確実な検出と,暫定的な吸収線の形状の分析も可能である事が示されている.

ここではこれまでの観測例に加え,さらに WASP-52b 大気中からのナトリウムの検出を報告する.この惑星は K2 型矮星を 1.75 日周期で公転しており,トランジット法で検出された惑星である (Hebrard et al. 2013).質量は 0.43 木星質量,半径 1.25 木星半径と低密度の惑星で (Mancini et al. 2017) 大きく膨張した半径を持っている.そのため,大気の透過光分光観測に適した対象である.

結果

スペクトルの解析の結果,大部分の波長域では特徴に欠けた平坦なスペクトルであった.しかしナトリウムのスペクトル部分は有意に大きな吸収が検出された.この特徴は,太陽組成で,1 mbar の高度に雲を持つ大気であると考えると解釈可能である.

また,スペクトル線の形状から大気の温度構造を推定した.その結果,上空へ向かって温度が上昇しており,温度勾配は 0.88 ± 0.65 K km-1 と推定された.これは HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2011) や HD 189733b (Huitson et al. 2012など),WASP-49b (Wyttenbach et al. 2017) で見られている構造と似た傾向である.この結果は,高層大気加熱と大気散逸過程を示唆するかもしれない (Lammer et al. 2003など).
またこれは,WASP-52b は蒸発している惑星の候補である可能性も示唆している (Vidal-Madjar et al. 2003など).

しかし Huitson et al. (2012) で指摘されているように,ラインの分布は,分解されていないスペクトル線の周りでバンド幅を増加させる場合の希釈効果によって損なわれる可能性がある.そのためさらなる高分解能の将来観測が,この結果を確認するために必要であると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.05887
Chung et al. (2017)
OGLE-2015-BLG-1482L: the first isolated low-mass microlens in the Galactic bulge
(OGLE-2015-BLG-1482L:銀河バルジ中の初めての孤立した低質量マイクロレンズ)

概要

単一の重力マイクロレンズイベント OGLE-2015-BLG-1482 の解析結果を報告する.このイベントは 2 つの地上望遠鏡およびスピッツァー宇宙望遠鏡で同時に観測された.

スピッツァー宇宙望遠鏡の観測データ中には,スピッツァー宇宙望遠鏡から見てレンズ天体がソース星のすぐ近く,もしくは直接その上を通過したことによる有限ソース効果 (finite source effect) が見られた.このような有限ソース効果からは,一般的にアインシュタイン角半径の測定が得られる.この結果と,地上観測とスピッツァー宇宙望遠鏡の光度曲線の比較から得られるマイクロレンズの視差と組み合わせた場合,レンズ天体の質量,レンズ天体とソース天体の相対視差を得ることが出来る.

この解析から,OGLE-2015-BLG-1482 のレンズ天体は,非常に低質量の恒星 (0.10 太陽質量) か,褐色矮星 (55 木星質量) であり,レンズ天体とソース天体の距離は,それぞれ 0.80 kpc か 0.54 kpc である.そのためこの天体は,確実に銀河バルジの中に存在することが判明した初めての孤立した低質量のマイクロレンズイベントである

この 2 つの解の縮退は非常に厳しい.この縮退の根本的な理由は,有限ソース効果がスピッツァー宇宙望遠鏡による単一のデータ点でしか見られていないことである.またこの単一のデータ点は,アインシュタインリングの角半径で規格化したソース天体の角サイズ ρ に,縮退した 2 つの解を引き起こす.この ρ の縮退は,光度曲線の極大周辺での比較的高頻度な観測によってのみ解くことが出来る.
スピッツァー宇宙望遠鏡の観測頻度は典型的には 1 日あたり 1 回程度と低頻度である.そのため有限ソース効果がスピッツァー宇宙望遠鏡のデータでしか見られていない場合には,このような ρ の縮退がしばしば発生すると考えられる.

OGLE-2015-BLG-1482 の場合,レンズ天体とソース天体の相対固有運動は,低質量星の解の場合は 9.0 mas yr-1,褐色矮星の解の場合は 5.5 mas yr-1 である.そのため,次世代の装置による高空間分解能でのレンズ天体の直接撮像観測から,10 年程度以内にこの縮退が解ける可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.05762
Imara & Di Stefano (2017)
Searching for Exoplanets Around X-Ray Binaries with Accreting White Dwarfs, Neutron Stars, and Black Holes
(降着する白色矮星,中性子星,ブラックホールを伴う X 線連星のまわりでの系外惑星探査)

概要

連星周りの系外惑星探査の対象を,降着星が白色矮星,中性子星,ブラックホールである X 線連星にまで拡張すべきと提案する.ここでは,このような質量輸送を行っている連星に束縛されている系外惑星を検出するアイデアを提案し.これらの連星の X 線光度曲線をトランジット惑星のシグナル探査の対象とするよう提案する.

X 線トランジットは,いくつかの系では惑星を検出するための唯一の手段であるかもしれないが,その他の系での可視光や電波 (あるいはその両方) の補完的なアプローチとなる.

X 線連星に伴っている惑星は安定軌道にある必要がある.そのため安定に存在しうる軌道距離を考慮し,その軌道周期は数時間からそれより長い時間になり得ることを指摘する,またトランジット継続時間は,地球半径で非常に近接した軌道を持つ惑星の場合は一分程度より長くなり,木星半径惑星が遠方の軌道にある場合は数時間になる.

質量輸送連星周りの惑星探査は,これらの系の X 線観測結果からすぐに行うことが出来る.もし X 線連星まわりで惑星が発見されたときは,惑星のサイズと質量はすぐに測定され,またその大気中での X 線の透過と吸収を探ることも出来るだろう.


最後に,この提案の特筆すべき応用としては,この技術は地球外文明からのシグナルを探査するのに応用できることが挙げられる.もし進化した系外文明が,エネルギーを得るためにダイソン球やそれに類似した構造物を X 線連星の降着星の周りの軌道に配置していた場合,そのような人工的な構造物は X 線光度曲線中に検出可能なトランジットを起こすだろう.

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