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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.05815
Wolf (2017)
Assessing the Habitability of the TRAPPIST-1 System Using a 3D Climate Model
(三次元気候モデルを用いた TRAPPIST-1 系の生命存在可能性の評価)

概要

TRAPPIST-1 系は,複数地球型系外惑星系と,それらの惑星の大気を研究する非常に良い対象である.ここでは,National Center for Atmospheric Research Community Atmosphere Model の ver.4 を用いて,TRAPPIST-1 系の惑星の有り得る気候と生命存在可能性について調査した.

惑星が海に覆われた環境を仮定し,大気組成は窒素,二酸化炭素,水蒸気を仮定した.また,惑星の軌道と地球物理的な特性は,観測から得られている情報を使用した.

モデル計算の結果は,内側の 3 惑星 TRAPPIST-1b, c, d については,現在は一般的な液体の水のハビタブルゾーンの内縁よりも内側に存在することを示唆する.そのため,もし過去に 3 惑星に水が存在した場合,暴走温室効果を起こして宇宙空間へ水は散逸し,現在は乾燥した環境だろうと考えられる.

反対に,外側の 3 惑星 TRAPPIST-1f, g, h は,二酸化炭素の最大温室効果によるハビタブルゾーンの外縁よりも外にあるという結果となった.そのためこれらの外側の惑星は,30 bar 程度の二酸化炭素大気がある場合を除けば十分に温かい環境にはなれず,かわりに全球凍結状態になるだろうと考えられる.

中間の惑星 TRAPPIST-1e は,現在も海に覆われたハビタブル惑星である可能性がある.TRAPPIST-1e は,背景ガスの窒素の量に依存して,0 - 2 bar の二酸化炭素があれば,少なくとも一定のハビタブルな表面を持つことが出来る.海に覆われた惑星 TRAPPIST-1e が最近の地球の表面温度を保つためには,1 bar の窒素 + 0.4 bar の二酸化炭素の混合大気か,1.3 bar の純粋な二酸化炭素大気を持つかのどちらかが必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.06136
Masuda & Winn (2017)
Reassessment of the Null Result of the HST Search for Planets in 47 Tucanae
(きょしちょう座47 でのハッブル宇宙望遠鏡での惑星探査における否定的な結果の再評価)

概要

球状星団 47 Tucanae (きょしちょう座47) を対象にした,ハッブル宇宙望遠鏡によるトランジット惑星探査観測における否定的な結果についての再評価を行った.再評価に際しては,ケプラーミッションによる最新の系外惑星の存在頻度についての知識を考慮した.

Gilliland et al. (2000) によると,きょしちょう座47 中には短周期ガス惑星が 17 個発見されると期待された.この推定は,きょしちょう座47 の恒星たちが,近傍の恒星で 1999 年までの系外惑星サーベイ結果を元にした,惑星の存在頻度および存在する惑星と同じ特性を持つという仮定の元に算出されていた.
ここではこの結果を,きょしちょう座47 の恒星とケプラーで観測された恒星は同じ惑星の population を持つと仮定してアップデートした.

その結果,きょしちょう座47 を観測した時に期待されるトランジット系外惑星の検出個数の改善された値は,4.0 (+1.7, -1.4) 個となった.また,ケプラーで検出された系外惑星のサンプルを,きょしちょう座47 で観測されたものと同じ恒星の質量範囲に限定して解析した場合は,期待される検出数は更に減って 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,ハッブル宇宙望遠鏡での否定的な結果は,これまで思われていたよりも統計的に有意ではない.きょしちょう座47 とケプラーで観測された恒星が同じ惑星の population を持つという極端な仮説も,2 - 3 σ より大きな有意性で排除できない.

この結果は,球状星団と散在星の惑星の population の比較をするには,より慎重な探査が必要であることを示す.

研究背景

球状星団きょしちょう座47 (Tucanae 47, NGC 104) の恒星に対するハッブル宇宙望遠鏡によるトランジットサーベイ (Gilliland et al. 2000) は,系外惑星検出の歴史の中のマイルストーンである.このサーベイは系外惑星の初めての宇宙空間からのサーベイであると同時に,球状星団の中での惑星の population の初めての探査でもある.

このサーベイでは,連続 8.3 日間で計 34000 個の恒星の観測が行われた.トランジットする巨大惑星を検出するための十分な精度がある観測であったにも関わらず,一つも惑星は発見されなかった.そのため Gilliland et al. (2000) では,きょしちょう座47 でのホットジュピターは,太陽近傍星よりも少なくとも一桁は稀少であると結論付けた.

彼らの観測当時考えられていた系外惑星頻度や inject-and-recover テストと惑星頻度の推定に基づけば,もしきょしちょう座47 の恒星と散在星 (field stars) が同じ頻度でホットジュピターを持っているのであれば,このサーベイでは 17 個の惑星を検出しているはずだった.

今日では,この結果は驚くべきことではないとみなされるようになっている.球状星団内の恒星がホットジュピターを持つ確率は,星団外の近傍の恒星よりも低いだろうと考えるに足る多数の理由がある.
最も明確な理由は恒星の金属量である.太陽近傍星では,短周期巨大惑星の存在頻度は中心星の高い金属量と強く関連していることが分かっている (Santos et al. 2001, Fischer & Valenti 2005).また,きょしちょう座47 の恒星は金属量が [Fe/H] = -0.7 と低いこともこれを支持する (McWilliam & Bernstein 2008).

金属量の他にも考えられる理由はある.例えば,近傍の重い恒星からの輻射がある環境では,巨大惑星の形成と移動は阻害されるという仮説 (Armitage 2000など) や,球状星団内での惑星は恒星遭遇によって失われるというもの (Sigurdsson 1992など),その星団が,ホットジュピターが潮汐軌道崩壊を起こすには十分なほど年老いているというもの (Debes & Jackson 2010),または潮汐加熱と膨張により大気のロッシュローブオーバーフローを起こす (Gu et al. 2003) というものである.

これらの仮説は説得力があるものの,必ずしも正しいとは限らない.
例えば,恒星の金属量とホットジュピターの存在頻度の因果関係はまだ立証されていない.金属量それ自体は重要ではなく,近傍星での高い金属量と関連した別の要素が重要であるが,きょしちょう座47 の環境ではそうではない,ということも考えられる.

同様に,惑星が少ないことの全てを星団内での恒星遭遇の結果と考えるのも難しい.確かに恒星遭遇はいくつかの惑星系を破壊するが,高軌道離心率での軌道移動を介して,逆にホットジュピターの生成率を上げるかもしれない.
また,もしホットジュピターがその場形成するのであれば (Batygin et al. 2016),星団内での恒星遭遇は重要ではない.さらに,ホットジュピターの形成モードは球状星団に特有なものである可能性もある.

要するに,ホットジュピターの形成も球状星団の形成も十分には理解されていないため,明らかに見える仮説であっても観測的検証を行う必要がある.

Gilliland et al. (2000) による先進的なハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイが行われていた時点では,トランジット惑星として知られていたのは HD 209458b のみである (Charbonneau et al. 2000, Henry et al. 2000).当然,観測で得られた否定的な結果を解釈する際は,Gilliland et al. (2000) ではこの惑星に似たホットジュピターを,近傍星のドップラーサーベイ結果から参照していた.15 年以上が経過し,当時よりも惑星の分布や存在確率に関する理解は進んでいる.そこで,過去の結果が正しいかどうかの検証を行った.

結果

ケプラーデータからの結果

解析手法の検証のため,サーベイで期待されるホットジュピターの検出個数 を過去の Gilliland et al. (2000) と同じ仮定を用いて算出した場合は 16.5 (+3.2, -3.1) 個であり,これは彼らの結果と概ね同じであった.

ケプラーによって得られている全てのデータを用いた場合は,きょしちょう座47 中にサーベイで検出されることが期待されるホットジュピターの個数は 4.0 (+1.7, -1.4) 個となった,また,ケプラーでの低質量の恒星をピックアップして計算した場合は,さらに低く 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった

過去の推定と結果が異なる理由は,ケプラーの観測から算出されているホットジュピターの存在頻度が,過去の仮定より小さいことである.また,恒星質量の範囲を限定した場合は更に存在頻度が小さくなる.
その他の重要な要素は,系外惑星の検出可能性の典型的な値が,過去の研究での仮定より半分程度小さい値であることである.

視線速度サーベイデータからの結果

更に,視線速度法でのサーベイ (Wright et al. 2012) でのサンプルを使ったシミュレーションも行った.視線速度法による検出では,惑星の半径は不明な上に真の質量も不明である.そのため,惑星の軌道分布は一様と仮定し,Weiss et al. (2013) による惑星質量・半径・日射量の関係を用いた.

その解析の結果,期待される検出個数は 15.2 (+7.1, -5.9) となった.これは,上記のケプラーによるデータに基づいた結果より大きい値である.また Gilliland et al. (2000) の値と近い.これは,視線速度サーベイでのホットジュピター存在頻度が高いことが主な原因である.また,いくらか高い検出効率からの寄与も小さいながらある.

視線速度サーベイをベースにした結果は,ケプラーデータをベースにした結果よりも統計的不確実性が大きい.

また,ケプラーデータをベースにした結果に重きを置くべきいくつかの理由がある.
例えば,視線速度での系外惑星サンプルは,もともと対象として選択された恒星から,外部に公開されていない理由での事後評価に基づいた恒星サンプルで構成されている.Mayor et al. (2011) は同様の恒星に対する視線速度観測をベースにした独立した解析を行い,822 の恒星中に 5 個のホットジュピターを発見している.これにより,惑星の存在頻度として 0.6 (+0.3, -0.2)%という値を与えた.これは Wright et al. (2012) で報告されている値の半分であり,またケプラーに基づいた結果の 1 σ 以内に入る.Mayor et al. (2011) の表 1 では,より高い値である 0.89%を報告しているが,これは 0.16 木星質量よりも小さい質量の惑星を個数に含んでおり,また惑星の軌道周期が 10 日ではなく 11 日未満のものを個数に含んでいる.ここで恣意的に軌道周期 11 日が選ばれた理由は不明であり,事後評価のサンプルの解析を難しくしている要因である.

金属量との関連性

観測から,ホットジュピターの存在頻度と恒星の金属量は強く関係していることが示されている.しかし,今回参照可能なデータでは金属量については議論できない.

きょしちょう座47 の恒星の金属量は [Fe/H] = -0.7 程度である,ケプラーで観測した恒星サンプルでは,金属量は平均で [Fe/H] = 0 である (Dong et al. 2004など).ケプラーデータ中には信頼できる金属量データがあるサンプル数が少ないことと,またケプラーのサンプルには低金属量の恒星をあまり含まないことから,ケプラーサンプルから低金属量の恒星を抽出するのは難しい.


金属量と惑星存在頻度の関連性から簡単な議論を行う.
検出が期待できる惑星の個数が 2.2 個という値は,ゼロとはわずかに非整合であるにすぎない.低い金属量は,期待される検出個数を更に減らす.たとえば Johnson et al. (2010) では巨大惑星の存在頻度を 101.2[Fe/H] とスケーリングした.この場合,平均の期待される検出個数は [Fe/H] = -0.29 の時に 1 個を下回る.
また,Schlaufman (2014) ではさらに強い依存性を主張しており,102.3[Fe/H] とした.この関係性を用いれば, [Fe/H] = -0.15 程度で 1 個を下回る.

なお,恒星の進化モデルは結果の比較のために過去研究と同じものを用いたが,最新のモデルを用いても結果に大きな影響は無かった.また,惑星の検出効率の外挿の方法の違いにも敏感ではなかった.

結論

ケプラーで観測した恒星と,きょしちょう座47 中の恒星が同じ惑星の population を持っている (巨大惑星の存在頻度,半径と周期の分布において) という仮説を検証した.その結果,きょしちょう座47 で検出されているべきトランジット惑星の個数は 4.0 (+1.7, -1.4) 個となった.従って,この仮説は ~ 3 σ の水準においてしか否定されない.

またケプラーのサンプルから,きょしちょう座47 中の恒星質量と同じ質量範囲を持つものを抽出して解析した結果,期待される個数はわずか 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,サーベイで惑星が一個も発見されない可能性は ~ 15%の確率で有り得る.

どちらの数値も,球状星団とケプラーデータ中における惑星の population が異なるという主張について,これまで考えられていたよりも信頼度が低いということを示している

Gilliland et al (2000) による否定的な結果は,これまでに得られている球状星団での惑星存在頻度への制約において,現在でも最も良いものである.また,きょしちょう座47 での巨大惑星は散在星に比べて稀少であることを示唆する結果であるが,この統計的有意性は低い.
我々は球状星団内での惑星形成の理解からは遠く,何が星団外の恒星での population から異なるものにしている可能性があるのかの理解からも遠い.より慎重な球状星団中での惑星探査が必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.05338
Meru et al. (2017)
On the origin of the spiral morphology in the Elias 2-27 circumstellar disc
(Elias 2-27 星周円盤の渦構造の起源について)

概要

若い恒星 Elias 2-27 は,周囲に重い星周円盤を持っており,さらに 2 つの卓越した大規模渦状腕を持っていることが観測から分かっている.

ここでは,3 次元 smoothed particle hydrodynamics シミュレーション,輻射輸送のモデリング,ALMA での模擬観測,およびアンシャープマスキングを行った.これにより,観測されている円盤の特徴の起源として考えられる 3 つの可能性,1. 渦状腕の内側の天体,2. 渦状腕の外側の天体,3. 自己重力円盤 について検証した.

その結果,重力的に不安定な円盤である場合と,外側に天体が存在した場合の 2 つのケースは,観測と整合的な形状を再現できることが分かった.さらに,後者のケースにおいては,伴星は比較的重い惑星質量天体 (≦ 10 - 13 木星質量) であり,中心星から離れた位置 (300 - 700 AU の間) にあるとすると構造を再現出来ることが分かった.

そのため,Elias 2-27 は,現在重力不安定が進行中の円盤の初めての検出例の一つか,近い過去に分裂して重い伴星を形成した円盤の初めての検出例の一つであることが示唆される.

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arXiv:1703.05322
Vigan et al. (2017)
The VLT/NaCo large program to probe the occurrence of exoplanets and brown dwarfs at wide orbits. IV. Gravitational instability rarely forms wide, giant planets
(遠方軌道での系外惑星と褐色矮星の存在頻度探査のための VLT/NaCo 大型プログラム iV:重力不安定では遠方の巨大惑星をあまり形成しない)

概要

中心星から離れた軌道 (5 AU 以上) の巨大惑星 (1 木星質量以上) の形成と進化を理解することは,直接撮像観測の目標の一つである.

過去 15 年以上にわたるサーベイ観測によって,遠方の巨大惑星の存在頻度に強い制限が与えられてきた.この制限は主に惑星の非検出という結果に基づくものだが,このうち少数のいくつかには惑星形成理論との結びつけを試みた研究もあった.

ここでは,これまでに発表してきた 100 pc 以内の 199 個の FGK 型星に対する VLT/NaCo 撮像プログラムの結果を合わせて報告する.このサンプル中には,準恒星伴星を伴うものが 3 つ含まれる.

モンテカルロ計算を用い,また質量と軌道長半径の分布に線形でフラットな分布を仮定して存在頻度を推定した.その結果,軌道長半径が 20 - 300 AU の範囲にある 0.5- 75 木星質量を持つ準恒星天体の存在頻度は,68%の確度で 0.75 - 5.70%の範囲にあると推定される.この値は,これまでに報告されている結果と一致する.


またこの結果を,重力不安定による惑星形成シナリオ (Forgan & Rice 2013) に基づいた最新の population synthesis モデルによる予測と比較した.ここでは,population synthesis モデルとして,惑星の散乱を考慮したものと考慮していないものの両方を比較した.

その結果,散乱されたものと散乱を受けていないものどちらの分布においても,95%の確度で 1 - 75 木星質量の範囲にある伴星は 30%以上検出できると推定された.今回のサンプル中における準恒星天体の検出を元に,重力不安定によって作られた惑星系を持つ恒星の割合を,95%の確度で 1.0 - 8.6%と推定した.また,重力不安定による形成がが一般的でなかったとしても,コア降着シナリオが予言する遠方軌道の惑星の質量分布よりも,重力不安定シナリオが予言する分布のほうが,観測されている結果に近いと結論付けた.

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arXiv:1703.05386
Astudillo-Defru et al. (2017)
The HARPS search for southern extra-solar planets XLI. A dozen planets around the M dwarfs GJ 3138, GJ 3323, GJ 273, GJ 628, and GJ 3293
(HARPS の南天系外惑星探査 XLI:M 型矮星 GJ 3138, GJ 3323, GJ 273, GJ 628, GJ 3293 のまわりの 12 個の惑星)

概要

低質量の恒星は,ハビタブルゾーン内にある岩石惑星を探すための最も良いターゲットである.これまでの 13 年の間に,HARPS 分光器での詳細な視線速度測定によって,M 型矮星の周りに多数のスーパーアースと地球質量惑星 (最小質量 10 地球質量以下) が発見されてきた.これらの低質量惑星のうちのいくつかは中心星のハビタブルゾーンの中にあり,将来的な大気のバイオマーカーの調査のターゲットとなっている.

この惑星のサンプル数を大きくすることを目的とし,低質量でより長周期の惑星を検出するための,高頻度で長期にわたる M 型星の視線速度のモニタリングを行ってきた.
ここでは HARPS によって,M 型星 GJ 3138,GJ 3323,GJ 273,GJ 628,GJ 3293 の視線速度と分光学的活動度を測定した.これらの変動性,周期性,ケプラー運動による変動と相関を調査した,また,惑星と恒星活動による視線速度変動の影響について調査した.

その結果,計 12 個の惑星を検出し,そのうちの 9 個は新しく発見されたものであった.新しく発見された 9 個の惑星の質量は 1.17 - 10.5 地球質量の範囲にある.これらの惑星は,軌道周期が 217.6 日と 257.8 日の長周期の 2 惑星を除けば,比較的短周期である (40 日未満).

これらの系の中で,GJ 273 は地球と似た質量の惑星を 2 つ持つ.この系は太陽系からの距離がわずか 3.8 パーセクであり,GJ 273 はハビタブルゾーン内に惑星を持つ,プロキシマ・ケンタウリに次いで二番目に近い惑星系である

パラメータ

GJ 3138 系

GJ 3138
スペクトル型:M0
等級:V = 10.98
質量:0.681 太陽質量
半径:0.50 太陽半径
有効温度:3717 K
金属量:[Fe/H] = -0.30
自転周期:34 日 (過去の観測結果) あるいは 42.5 日 (今回の活動度測定より)
GJ 3138b
軌道周期:1.22003 日
軌道離心率:0.19
最小質量:1.78 地球質量
軌道長半径:0.0197 AU
日射量:地球の日射量の 118.1 倍
トランジット確率:10.5%
GJ 3138c
軌道周期:5.974 日
軌道離心率:0.11
最小質量:4.18地球質量
軌道長半径:0.057 AU
日射量:地球の日射量の 13.9 倍
トランジット確率:3.7%
GJ 3138d
軌道周期:257.8 日
軌道離心率:0.32
最小質量:10.5地球質量
軌道長半径:0.698 AU
日射量:地球の日射量の 0.1 倍
トランジット確率:0.3%
GJ 3138 系について
この系では 199 の視線速度データを取得した.

最も強いシグナルは 6 日周期で,その他に 48.2 日,1.2 日,257 日周期のシグナルを検出した.これまでの自転周期の推定値は 34 日であり,これは 1.2, 6.0, 257 日の周期とは遠いが,48 日とは近い.恒星活動度の推定から,48 日周期の変動は自転周期によるものと推定される.

この系の惑星はスーパーアースからミニネプチューンの質量範囲にある.

各惑星が受けている日射量から,アルベドの範囲が 0.75 - 0.0 とすると,平衡温度はそれぞれ 640 - 900 K,375 - 530 K,107 - 150 K となる.

GJ 3323 系

GJ 3323
スペクトル型:M4
等級:V = 12.22
質量:0.164 太陽質量
半径:0.119 太陽半径
平衡温度:3159 K
金属量:[Fe/H] = -0.27
自転周期;33 日
GJ 3323b
軌道周期:5.3636 日
軌道離心率:0.23
最小質量:2.02 地球質量
軌道長半径:0.03282 AU
日射量:地球の日射量の 2.58 倍
トランジット確率:2.1%
(GJ 3323c)
軌道周期:40.54 日
軌道離心率:0.17
最小質量:2.31 地球質量
軌道長半径:0.1264 AU
日射量:地球の日射量の 0.17倍
トランジット確率:0.5%
GJ 3323 系について
この系では 157 の視線速度データセットを取得した.

GJ 3323b のシグナルは,中心星の自転周期によるシグナルより十分短い.黒点による変動は恒星の自転周期の 2 分の 1 や 3 分の 1 の周期の変動を生み出すこともある (Boisse et al. 2011).しかし 5.4 日のシグナルは,恒星の自転周期のどの倍音でもないため惑星起源であると考えられる.

GJ 3323c に関しては,確実に惑星起源のシグナルであると断言はできないが,惑星候補シグナルである.

GJ 3323 は,視線速度で惑星が発見された恒星の中では最も低質量なものの一つである.惑星 (と惑星候補シグナル) の平衡温度はそれぞれ 420 - 595 K と 214 - 303 K の間である.

GJ 273 系

GJ 273
スペクトル型:M3.5
等級:V = 9.872
質量:0.29 太陽質量
半径:0.293 太陽半径
平衡温度:3382 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
自転周期:99 日
GJ 273b
軌道周期:18.6498 日
軌道離心率:0.10
最小質量:2.89地球質量
軌道長半径:0.091101 AU
日射量:地球の日射量の 1.06 倍
トランジット確率:1.6%
GJ 273c
軌道周期:4.7234 日
軌道離心率:0.17
最小質量:1.18 地球質量
軌道長半径:0.036467 AU
日射量:地球の日射量の 6.66 倍
トランジット確率:4.3%
GJ 273 系について
この系では集中的に 280 の視線速度データ取得した.

GJ 273b はスーパーアースであり,保守的なハビタブルゾーン (Kopparapu et al. 2013) の内縁をかすめるような軌道を持つ.ただし地球の 1.06 倍という日射量の大きさは,この惑星が大気に覆われていると考えた場合,また GCM での大気計算 (Kopparapu et al. 2016) の結果を考慮すると,ハビタブルゾーンの中にあると言える.アルベドが 0.75 - 0.0 の範囲だと仮定すると,この惑星の平衡温度の範囲は 206 - 293 K となる.

GJ 273c は,視線速度で検出された系外惑星の中では最も低質量の部類である.同様にアルベドを仮定すると平衡温度は 327 - 462 K の範囲となり,これはハビタブルゾーンよりもずっと恒星に近い.

GJ 628 系

GJ 628
スペクトル型:M3.5
等級:V = 10.03
質量:0.294 太陽質量
半径:0.307 太陽半径
平衡温度:3342 K
金属量:[Fe/H] = -0.09
自転周期:93 日 (過去の観測結果) あるいは 95 日 (今回の活動度測定より)
GJ 628b
軌道周期:4.8869 日
軌道離心率:0.15
最小質量:1.91 地球質量
軌道長半径:0.0375 AU
日射量:地球の日射量の 7.34 倍
トランジット確率:3.3%
GJ 628c
軌道周期:18.8719 日
軌道離心率:0.11
最小質量:3.41 地球質量
軌道長半径:0.0890 AU
日射量:地球の日射量の 1.30 倍
トランジット確率:1.4%
GJ 628d
軌道周期:217.21 日
軌道離心率:0.55
最小質量:7.70 地球質量
軌道長半径:0.470 AU
日射量:地球の日射量の 0.06 倍
トランジット確率:0.2%
GJ 628 系について
この系では 190 の視線速度データを取得した.このうち,148 データは既に Wright et al. (2016) で解析済みである.

過去の解析と比較して,短い方の 2 つの周期は確認出来たが,長い方については結果は異なった.また,より長い周期の検出と,恒星の活動サイクルの同定を行った.

GJ 3293 系

GJ 3293
スペクトル型:M2.5
等級:V = 11.962
質量:0.42 太陽質量
半径:0.404 太陽半径
平衡温度:3466 K
金属量:[Fe/H] = 0.02
自転周期:50 日 (過去の観測結果) あるいは 41 日 (今回の活動度測定より)
GJ 3293e
軌道周期:13.2543 日
軌道離心率:0.21
最小質量:3.28 地球質量
軌道長半径:0.08208 AU
日射量:地球の日射量の 3.34 倍
トランジット確率:2.3%
GJ 3293b
軌道周期:30.5987 日
軌道離心率:0.06
最小質量:23.54 地球質量
軌道長半径:0.14330 AU
日射量:地球の日射量の 1.07 倍
トランジット確率:1.3%
GJ 3293d
軌道周期:48.1345 日
軌道離心率:0.12
最小質量:7.60 地球質量
軌道長半径:0.19394 AU
日射量:地球の日射量の 0.59 倍
トランジット確率:1.0%
GJ 3293c
軌道周期:122.6196 日
軌道離心率:0.11
最小質量:21.09 地球質量
軌道長半径:0.36175 AU
日射量:地球の日射量の 0.17 倍
トランジット確率:0.5%
GJ 3293 系について
Astudillo-Defru et al. (2015) では,2 つの海王星的な天体 (軌道周期 30.6, 124 日) を検出していた,また,48.1 日周期のスーパーアースと思しき惑星候補シグナルを検出していた.ここでは 61 の視線速度データを取得した.

その結果,2 つのスーパーアース (軌道周期 13.3, 48.1 日) と 2 つの海王星質量惑星 (軌道周期 30.6, 122.6 日) の存在を確認した.

海王星質量の GJ 3293b とスーパーアース GJ 3293d はハビタブルゾーン内の惑星である.

その他の特徴

GJ 273 はハビタブルゾーン内に惑星 GJ 273b を持つ.ハビタブルゾーン内に惑星を持つ系としては,プロキシマ・ケンタウリ (Anglada-Escude ́ et al. 2016) に次いで 2 番目に近い (3.8 pc)

活発なフレア活動のあるプロキシマ・ケンタウリと比べ,GJ 273 は活動が静穏であることは注目すべき特徴である.そのため大気の侵食が小さく,プロキシマ・ケンタウリb と比較してハビタビリティの観点からはより好ましい環境であると考えられる.


GJ 628 は少なくとも 3 個の惑星を持つ.今回の観測により,太陽的な磁気的サイクルと恒星の自転による 128 日のシグナルを検出した.これにより,67 日周期の視線速度シグナルは,Wright et al. で報告されていたような惑星起源ではなく,恒星の活動によるものと考えられる.

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