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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05576
McKinnon et al. (2020)
The solar nebula origin of (486958) Arrokoth, a primordial contact binary in the Kuiper belt
(カイパーベルトの始原的な接触連星アロコスは太陽系星雲起源である)
ここでは,アロコスの形成過程についての研究を行い,この天体は太陽系初期での穏やかな低速度の衝突合体によって形成された天体であることを示す.
アロコスが 2 つのレンズ状のローブからなることは,重力的に収縮する固体粒子の雲の中で,多数の小さい微惑星の低速度の集積によって形成されたことを示唆する.ローブの幾何学的な配置からは,ローブは共軌道連星であり,角運動量の減衰を経て合体したと考えられる.これはおそらくは力学的摩擦と,雲中での衝突もしくは後のガス摩擦が原因.
アロコスの接触連星としての形状は,冷たい古典的カイパーベルトの力学的および衝突的に穏やかな環境の中で保持されたと考えられ,初期多様系の中で発生した降着過程の情報を与えてくれる.
CCKB 天体は,力学的に熱い天体,および海王星と共鳴に入っているカイパーベルト天体に比べると,サイズ分布が急で,連星の割合が大きく,アルベドが大きく,可視光で赤いという傾向がある.そのため異なる形成機構か進化過程,もしくはその両方を経験していると考えられる.
CCKB 天体は現在の場所で形成され,太陽系の巨大惑星の移動によって軌道を大きく乱されてはいないと考えられ,かつての原始惑星系円盤の擾乱を受けていない残骸天体であるとみなされる.
アロコスへの接近観測では,この天体が二葉形状であることが明らかになった.それぞれの球相当径は 15.9 km と 12.9 km であり,”neck” と呼ばれる細い接触領域で接続している.
arXiv:2003.05576
McKinnon et al. (2020)
The solar nebula origin of (486958) Arrokoth, a primordial contact binary in the Kuiper belt
(カイパーベルトの始原的な接触連星アロコスは太陽系星雲起源である)
概要
冥王星探査機ニューホライズンズが,冷たい古典的カイパーベルト天体の (486958) Arrokoth (アロコス,仮符号 2014 MU69,非公式に Ultima Thule とも呼称) に接近して観測を行った結果,この天体が接触連星の微惑星であることが明らかになった.ここでは,アロコスの形成過程についての研究を行い,この天体は太陽系初期での穏やかな低速度の衝突合体によって形成された天体であることを示す.
アロコスが 2 つのレンズ状のローブからなることは,重力的に収縮する固体粒子の雲の中で,多数の小さい微惑星の低速度の集積によって形成されたことを示唆する.ローブの幾何学的な配置からは,ローブは共軌道連星であり,角運動量の減衰を経て合体したと考えられる.これはおそらくは力学的摩擦と,雲中での衝突もしくは後のガス摩擦が原因.
アロコスの接触連星としての形状は,冷たい古典的カイパーベルトの力学的および衝突的に穏やかな環境の中で保持されたと考えられ,初期多様系の中で発生した降着過程の情報を与えてくれる.
アロコスについて
アロコスは,軌道長半径が 44.2 au,軌道離心率は 0.037,軌道傾斜角は 2.54度であり,冷たい古典的カイパーベルト (cold classical Kuiper belt, CCKB) 天体に属する.冷たい古典的カイパーベルト天体とは,力学的に冷たい軌道にある小天体の集合体のことを指し,離心率と傾斜角が小さいか中程度 (典型的には i<5°) の外縁天体である.CCKB 天体は,力学的に熱い天体,および海王星と共鳴に入っているカイパーベルト天体に比べると,サイズ分布が急で,連星の割合が大きく,アルベドが大きく,可視光で赤いという傾向がある.そのため異なる形成機構か進化過程,もしくはその両方を経験していると考えられる.
CCKB 天体は現在の場所で形成され,太陽系の巨大惑星の移動によって軌道を大きく乱されてはいないと考えられ,かつての原始惑星系円盤の擾乱を受けていない残骸天体であるとみなされる.
アロコスへの接近観測では,この天体が二葉形状であることが明らかになった.それぞれの球相当径は 15.9 km と 12.9 km であり,”neck” と呼ばれる細い接触領域で接続している.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05932
Nielsen et al. (2020)
Three Short Period Jupiters from TESS
(TESS による 3 つの短周期木星型惑星)
等級:V = 11.13
質量:0.781 太陽質量
半径:0.7242 太陽半径
光度:0.2099 太陽光度
有効温度:4590 K
金属量:[Fe/H] = 0.18
年齢:41 億歳
距離:61.89 pc
自転周期:12.3 日
質量:3.213 木星質量
軌道周期:0.9809734 日
軌道長半径:0.01782 AU
平衡温度:1411 K
有効温度:3861 K
質量:0.30 太陽質量
スペクトル型:M 型星
TESS のデータから,全位相曲線の解析を実行した,反射光と潮汐力による楕円変形による変光,およびドップラーブーストによる変光を検出した.
中心星の HIP 65A は連星系の片方であり,伴星の HIP 65B は 269 AU 離れた位置を公転している.
惑星の半径は grazing transit のため弱い制約しか与えることができず,2.03 (+0.61, -0.49) 木星半径と推定される.惑星半径は非常に大きいが,トランジットがかすめる配置であるため半径が過大評価されている可能性がある.
中心星に近接して公転するガス惑星は半径が膨張している可能性がある.この惑星が受け取るフラックスと惑星質量を考慮すると,半径が 1.5 木星半径より大きいとは考えにくい.
等級:V = 12.73
質量:0.948 太陽質量
半径:1.167 太陽半径
光度:1.047 太陽光度
有効温度:5404 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
年齢:128.2 億歳
距離:362.1 pc
質量:1.18 木星質量
軌道周期:2.0845435 日
軌道長半径:0.03138 AU
平衡温度:1588 K
等級:V = 12.36
質量:1.147 太陽質量
半径:1.288 太陽半径
光度:1.789 太陽光度
有効温度:5880 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
年齢:47 億歳
距離:412.5 pc
質量:0.791 木星質量
軌道周期:2.2554477 日
軌道長半径:0.03524 AU
平衡温度:1715 K
今回発見された 3 惑星の中で最も長周期だが,惑星が受ける輻射は一番大きく,海王星砂漠の右端に位置している.惑星が受けている輻射の強度を考えるとこの惑星は非常に高密度であり,これは大気の揮発性物質の層が光蒸発で剥ぎ取られ,惑星の自己重力が大気散逸に対抗できる程度にまでなったという見方を支持している.
arXiv:2003.05932
Nielsen et al. (2020)
Three Short Period Jupiters from TESS
(TESS による 3 つの短周期木星型惑星)
概要
Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) ミッションでの 3 つのホットジュピターの発見の確認と質量決定について報告する.パラメータ
HIP 65A 系
HIP 65A
スペクトル型:K4V等級:V = 11.13
質量:0.781 太陽質量
半径:0.7242 太陽半径
光度:0.2099 太陽光度
有効温度:4590 K
金属量:[Fe/H] = 0.18
年齢:41 億歳
距離:61.89 pc
自転周期:12.3 日
HIP 65Ab
半径:2.03 木星半径質量:3.213 木星質量
軌道周期:0.9809734 日
軌道長半径:0.01782 AU
平衡温度:1411 K
HIP 65B
等級:V = 16.55有効温度:3861 K
質量:0.30 太陽質量
スペクトル型:M 型星
HIP 65A 系について
HIP 65Ab (TOI-129, TIC-201248411) は超短周期惑星である.トランジットは中心星をかすめる grazing transit であり,衝突係数は 1.17 と 1 より大きい値である.そのため惑星半径の制約はかなり誤差が大きいものとなった.TESS のデータから,全位相曲線の解析を実行した,反射光と潮汐力による楕円変形による変光,およびドップラーブーストによる変光を検出した.
中心星の HIP 65A は連星系の片方であり,伴星の HIP 65B は 269 AU 離れた位置を公転している.
惑星の半径は grazing transit のため弱い制約しか与えることができず,2.03 (+0.61, -0.49) 木星半径と推定される.惑星半径は非常に大きいが,トランジットがかすめる配置であるため半径が過大評価されている可能性がある.
中心星に近接して公転するガス惑星は半径が膨張している可能性がある.この惑星が受け取るフラックスと惑星質量を考慮すると,半径が 1.5 木星半径より大きいとは考えにくい.
TOI-157 系
TOI-157
スペクトル型:G9IV等級:V = 12.73
質量:0.948 太陽質量
半径:1.167 太陽半径
光度:1.047 太陽光度
有効温度:5404 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
年齢:128.2 億歳
距離:362.1 pc
TOI-157b
半径:1.286 木星半径質量:1.18 木星質量
軌道周期:2.0845435 日
軌道長半径:0.03138 AU
平衡温度:1588 K
TOI-157 系について
TOI-157b (TIC 140691463) は典型的なホットジュピターである.中心星は進化した G9 準巨星であり,興味深い惑星系である.また,惑星半径は膨張している.TOI-169 系
TOI-169
スペクトル型:G1V等級:V = 12.36
質量:1.147 太陽質量
半径:1.288 太陽半径
光度:1.789 太陽光度
有効温度:5880 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
年齢:47 億歳
距離:412.5 pc
TOI-169b
半径:1.086 木星半径質量:0.791 木星質量
軌道周期:2.2554477 日
軌道長半径:0.03524 AU
平衡温度:1715 K
TOI-169 系について
TOI-169b (TIC 183120439) は膨張したホットジュピターである.今回発見された 3 惑星の中で最も長周期だが,惑星が受ける輻射は一番大きく,海王星砂漠の右端に位置している.惑星が受けている輻射の強度を考えるとこの惑星は非常に高密度であり,これは大気の揮発性物質の層が光蒸発で剥ぎ取られ,惑星の自己重力が大気散逸に対抗できる程度にまでなったという見方を支持している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.04904
Chandler et al. (2020)
Cometary Activity Discovered on a Distant Centaur: A Non-Aqueous Sublimation Mechanism
(遠方ケンタウルス族で発見された彗星活動:非水揮発メカニズム)
1927年以降,活発な活動を示すケンタウルス族は 18 個のみが確認されており,活動のメカニズムはほとんど分かっていない.
ここでは,ケンタウルス族天体 2014 OG392 における活動の発見を報告する.過去の観測データと,Dark Energy Camera (Cerro Tololo Inter-American Observatory Blanco 4 m telescope),Inamori-Magellan Areal Camera & Spectrograph (Las Campanas Observatory 6.5 m Walter Baade Telescope),Large Monolithic Imager (Lowell Observatory 4.3 m Discovery Channel Telescope) での観測から.天体から 400000 km 離れた位置でのコマを検出した.また昇華過程と力学的な寿命の最新の解析から,二酸化炭素かアンモニア,もしくはその両方がこの天体と活発なケンタウルス族天体の活動を引き起こしている可能性が高いと示唆した.
この天体は可視光では赤いが,二酸化炭素とアンモニアはこの波長領域ではスペクトル的に中間的であるため,赤みの原因となっている要因は不明である.
arXiv:2003.04904
Chandler et al. (2020)
Cometary Activity Discovered on a Distant Centaur: A Non-Aqueous Sublimation Mechanism
(遠方ケンタウルス族で発見された彗星活動:非水揮発メカニズム)
概要
ケンタウルス族は,カイパーベルトとして知られる外部太陽系領域に起源を持つとされる小天体の集団である.不思議なことに,活発なケンタウルス族は尾やコマといった彗星のような特徴を示すが,これが起きるのは巨大惑星周辺という水が昇華するには低温すぎる軌道である.1927年以降,活発な活動を示すケンタウルス族は 18 個のみが確認されており,活動のメカニズムはほとんど分かっていない.
ここでは,ケンタウルス族天体 2014 OG392 における活動の発見を報告する.過去の観測データと,Dark Energy Camera (Cerro Tololo Inter-American Observatory Blanco 4 m telescope),Inamori-Magellan Areal Camera & Spectrograph (Las Campanas Observatory 6.5 m Walter Baade Telescope),Large Monolithic Imager (Lowell Observatory 4.3 m Discovery Channel Telescope) での観測から.天体から 400000 km 離れた位置でのコマを検出した.また昇華過程と力学的な寿命の最新の解析から,二酸化炭素かアンモニア,もしくはその両方がこの天体と活発なケンタウルス族天体の活動を引き起こしている可能性が高いと示唆した.
この天体は可視光では赤いが,二酸化炭素とアンモニアはこの波長領域ではスペクトル的に中間的であるため,赤みの原因となっている要因は不明である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05052
Fujii & Ogihara (2020)
Formation of single-moon systems around gas giants
(巨大惑星周りでの単一衛星系の形成)
ここでは,土星の周りにあるタイタンのような,単一の大きい衛星を持つ系を形成する経路を見出すことを目的とした研究を行った.
円盤内での衛星の軌道移動について調査を行った.衛星の軌道移動の方向と速度は,周惑星円盤の特性に依存する.円盤の温度構造の効果を取り入れた,散逸する周惑星円盤をモデル化し,様々な周惑星円盤の最終進化段階におけるタイタン質量の衛星の軌道進化を計算した.
また N 体シミュレーションを用いて,初期に複数の衛星を持っている系が最終的に単一の衛星を維持するかを調査した.
ダストの不透明度で特徴付けられる円盤の温度構造の動径方向の傾きは,タイタン質量の衛星の内側移動を回避できる軌道の部分的なパッチ領域を生み出し,また円盤の粘性がある範囲内にある場合は外側移動も起きうることが判明した.このパッチ領域の存在は,初期に外側軌道にいた衛星を円盤内にとどまらせるのを助ける一方,内側の軌道の衛星は惑星に落下する.
結果として,巨大惑星の周りに単独の大きな衛星が存在する系の形成を初めて再現した.また N 体シミュレーションは,衛星形成は周惑星円盤の外側領域では効率的ではないことを示唆した.
円盤粘性が α = 10-3 の時は共回転トルクが飽和し,また円盤が急速に散逸するため,衛星はほぼ変わらず残る.そのため長期間に渡って衛星を維持することができる.粘性が 10-5 の場合は,全ての衛星が内側移動によって失われる.10-4 の場合は衛星が外側移動できる領域があり,落下せずとどまりうる.残った衛星が数十土星半径程度の位置に留まるかどうかは,円盤散逸のタイミングで決まる.
N 体シミュレーションで衛星同士の相互作用を入れて計算した場合,7 個のタイタン質量衛星を置いて計算すると,内側は落下し外側一つが生き残る解があり得る.またタイタンの半分の質量の衛星を 9 個置いたケースでは,外側 2 つが合体,残りの内側は合体しつつ落下した.結果として,タイタン質量の衛星が一つだけ残される解がありうる.
arXiv:2003.05052
Fujii & Ogihara (2020)
Formation of single-moon systems around gas giants
(巨大惑星周りでの単一衛星系の形成)
概要
衛星系の形成過程を説明するために,いくつかのメカニズムが提案されている.比較的大きな衛星は,周惑星円盤の中で形成されたと考えられている.大きな衛星が一つだけ存在する単一の衛星系を形成するのは,複数衛星を持つ系や衛星を持たない系を作るのよりも難しいことが知られている.ここでは,土星の周りにあるタイタンのような,単一の大きい衛星を持つ系を形成する経路を見出すことを目的とした研究を行った.
円盤内での衛星の軌道移動について調査を行った.衛星の軌道移動の方向と速度は,周惑星円盤の特性に依存する.円盤の温度構造の効果を取り入れた,散逸する周惑星円盤をモデル化し,様々な周惑星円盤の最終進化段階におけるタイタン質量の衛星の軌道進化を計算した.
また N 体シミュレーションを用いて,初期に複数の衛星を持っている系が最終的に単一の衛星を維持するかを調査した.
ダストの不透明度で特徴付けられる円盤の温度構造の動径方向の傾きは,タイタン質量の衛星の内側移動を回避できる軌道の部分的なパッチ領域を生み出し,また円盤の粘性がある範囲内にある場合は外側移動も起きうることが判明した.このパッチ領域の存在は,初期に外側軌道にいた衛星を円盤内にとどまらせるのを助ける一方,内側の軌道の衛星は惑星に落下する.
結果として,巨大惑星の周りに単独の大きな衛星が存在する系の形成を初めて再現した.また N 体シミュレーションは,衛星形成は周惑星円盤の外側領域では効率的ではないことを示唆した.
タイタン質量衛星の移動
初期に複数のタイタン質量の衛星を置き,相互作用を無視して,円盤内での軌道進化を計算した.円盤粘性が α = 10-3 の時は共回転トルクが飽和し,また円盤が急速に散逸するため,衛星はほぼ変わらず残る.そのため長期間に渡って衛星を維持することができる.粘性が 10-5 の場合は,全ての衛星が内側移動によって失われる.10-4 の場合は衛星が外側移動できる領域があり,落下せずとどまりうる.残った衛星が数十土星半径程度の位置に留まるかどうかは,円盤散逸のタイミングで決まる.
N 体シミュレーションで衛星同士の相互作用を入れて計算した場合,7 個のタイタン質量衛星を置いて計算すると,内側は落下し外側一つが生き残る解があり得る.またタイタンの半分の質量の衛星を 9 個置いたケースでは,外側 2 つが合体,残りの内側は合体しつつ落下した.結果として,タイタン質量の衛星が一つだけ残される解がありうる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.04525
Gan et al. (2020)
LHS 1815b: The First Thick-Disk Planet Detected By TESS
(LHS 1815b:TESS で検出された初めての厚い円盤の惑星)
この惑星は TESS サーベイの一環として発見された.LHS 1815b は,明るい静穏な M 矮星をトランジットしている.この惑星を宇宙空間からと地上からの測光観測,分光観測と撮像から確認された.惑星は 1.088 地球半径で,3σ の質量上限は 8.7 地球質量である.
銀河の運動学と主星の軌道から,この天体は TESS で発見された惑星を持つ他の恒星と比べて,銀河平面からずっと高い想定最大高さ (Zmax = 1.8 kpc) の厚い円盤 (thick disk) に属している可能性が非常に高いと推定される.厚い円盤に属している可能性と薄い円盤に属している可能性の比は 6482 である.
将来のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での内部構造と大気特性の研究から,銀河系内の異なる集団 (厚い円盤,薄い円盤,ハロー) における惑星形成効率と進化の違いについて調査を行うことが可能になるだろう.
現在までに 4000 個以上の系外惑星が発見されているが,厚い円盤に属している可能性がある恒星の周りでの系外惑星の発見報告はわずかである.銀河系の厚い円盤と薄い円盤の間の惑星形成と進化の違いは依然として不明である.
質量:0.502 太陽質量
半径:0.501 太陽半径
光度:0.041 太陽光度
有効温度:3643 K
金属量:[Fe/H] = -0.12
自転周期:47.8 日
半径:1.088 地球半径
質量:4.2 地球質量 (※ただし統計的に有意ではなく,3σ の上限値は 8.7 地球質量)
平衡温度:617 K (アルベド 0,熱の再分配は無いと仮定)
arXiv:2003.04525
Gan et al. (2020)
LHS 1815b: The First Thick-Disk Planet Detected By TESS
(LHS 1815b:TESS で検出された初めての厚い円盤の惑星)
概要
銀河系の厚い円盤 (thick disk) に属する系外惑星 LHS 1815b (TOI-704b, TIC 260004324) の発見を報告する.TESS によって発見された惑星としては,厚い円盤に属する惑星の発見は初めてである.この惑星は TESS サーベイの一環として発見された.LHS 1815b は,明るい静穏な M 矮星をトランジットしている.この惑星を宇宙空間からと地上からの測光観測,分光観測と撮像から確認された.惑星は 1.088 地球半径で,3σ の質量上限は 8.7 地球質量である.
銀河の運動学と主星の軌道から,この天体は TESS で発見された惑星を持つ他の恒星と比べて,銀河平面からずっと高い想定最大高さ (Zmax = 1.8 kpc) の厚い円盤 (thick disk) に属している可能性が非常に高いと推定される.厚い円盤に属している可能性と薄い円盤に属している可能性の比は 6482 である.
将来のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での内部構造と大気特性の研究から,銀河系内の異なる集団 (厚い円盤,薄い円盤,ハロー) における惑星形成効率と進化の違いについて調査を行うことが可能になるだろう.
厚い円盤について
銀河系はいくつかの要素から構成されていると考えられている.薄い円盤 (thin disk),厚い円盤 (thick disk),ハロー,そしてバルジである.太陽近傍の恒星は大部分が銀河円盤に属しており,少数がハローに属している.一般的には,薄い円盤に属する恒星と比べると,厚い円盤の恒星は年老いており,α 元素が多く低金属量である.また厚い円盤に属する恒星は力学的に熱い.これらの違いは,惑星形成の効率に影響を及ぼす可能性がある.現在までに 4000 個以上の系外惑星が発見されているが,厚い円盤に属している可能性がある恒星の周りでの系外惑星の発見報告はわずかである.銀河系の厚い円盤と薄い円盤の間の惑星形成と進化の違いは依然として不明である.
パラメータ
LHS 1815
距離:29.87 pc質量:0.502 太陽質量
半径:0.501 太陽半径
光度:0.041 太陽光度
有効温度:3643 K
金属量:[Fe/H] = -0.12
自転周期:47.8 日
LHS 1815b
軌道周期:3.81433 日半径:1.088 地球半径
質量:4.2 地球質量 (※ただし統計的に有意ではなく,3σ の上限値は 8.7 地球質量)
平衡温度:617 K (アルベド 0,熱の再分配は無いと仮定)