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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1610.01186
Nikolov et al. (2016)
VLT FORS2 comparative transmission spectroscopy: Detection of Na in the atmosphere of WASP-39b from the ground
(VLT FORS2 の透過スペクトルの比較観測:WASP-39b の大気中のナトリウムの地上からの検出)

概要

温暖な土星質量惑星 ("warm-Saturn") である WASP-39b の透過光分光観測を,Very Large Telescope (VLT) の FOcal Reducer and Spectrograph (FORS2) を用い,411 - 810 nm の範囲で行った.中心星の光度は V = 12.1 であり,波長分解能は 10 nm,典型的な精度は 240 ppm である.

観測の結果,ナトリウムの吸収を 3.2 σ で検出した.また,カリウムの吸収の兆候を 1.7 σ で検出した.

今回の地上望遠鏡での観測結果は,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測結果と整合的なものである.これは,WASP-39b が雲のない晴れた大気を持つという解釈を補強するものである.

また,最近アップグレードされた FORS2 (可視光での透過光分光) での観測は,ハッブル宇宙望遠鏡と同程度の性能を持つ潜在的な能力があるということを示した.

FORS2 での観測と結果

アップグレードされた FORS2 では,WASP-19b の透過光分光観測も行われている (Sedaghati et al. 2015).しかしこの惑星は平坦なスペクトルを示し,これは雲の多い大気を持つことを示唆する.

WASP-39b は warm-Saturn であり,大気のスケールハイトは 1000 km を超え,大気成分での吸収は 445 ppm に達すると考えられる (Winn 2010).さらに,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測では,この惑星の大気は晴れており,ナトリウムとカリウムの吸収を持つという大気モデルと一致した結果が得られている (Sing et al. 2016, Fischer et al. 2016).従って,観測対象として優れている.

観測の結果は,雲なし・太陽組成と同じ金属量の大気で,大きい粒子による一様な吸収を加えた場合の大気モデル,および小さい粒子によるレイリー散乱を通常モデルの 10 倍にしたモデルの双方とよく一致する.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1610.01333
Fukui et al. (2016)
Ground-based Transit Observation of the Habitable-zone super-Earth K2-3d
(ハビタブルゾーン内のスーパーアース K2-3d の地上からのトランジット観測)

概要

K2-3d の初めての地上からのトランジット観測を行った.この惑星は 1.5 地球半径であり,明るい M 型星のハビタブルゾーン内にあると考えられている.

観測には,岡山の 188 cm 望遠鏡の多波長 (g, r, z バンド) 撮像装置の MuSCAT を用いた.トランジット深さは 0.7 mmag であり,MuSCAT の測光精度よりも小さいが (g, r, z それぞれで 60 秒で 1.2, 0.9, 1.2 mmag),3 バンドで,わずかだが整合的なトランジットシグナルを検出することが出来た.

今回の観測により,K2-3d の軌道周期の精度を改善し,周期は 44.55612 日となった.これにより,2019年 (ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測が可能になっている時期) のトランジットの時刻を ~ 80 分改善することが出来た.

この観測では,
  1. 地上の 2 m 望遠鏡でも,小サイズ・長周期の惑星の天体暦の改善に重要な役割を果たす
  2. 多波長撮像装置は,地球大気由来の系統的な影響 (特に青い波長側での) を軽減するのに有用であり,また標高の低い場所からの観測で有用である
という事が示された.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1610.00600
Brown et al. (2016)
Rossiter–McLaughlin models and their effect on estimates of stellar rotation, illustrated using six WASP systems
(ロシター・マクローリンモデルとその恒星の自転の推定における影響,6 個の WASP 系を例として)

概要

6 個の WASP で発見された惑星系の,spin-orbit misalignment (恒星自転軸と惑星公転軸の不一致) の新しい測定を行った.このうち WASP-61, 62, 76, 78 の 4 つの系は今回が初測定であり,残り 2 つの WASP-71, 79 については過去に測定がされている系である.

観測結果の解釈について,ここでは 2 つの異なる手法を用いた 3 つの異なるモデルを使用した.
1 つは,ロシター・マクローリン効果 (Rossiter-McLaughlin effect, ロシター効果,RM 効果とも) の視線速度観測で,もう 1 つはドップラートモグラフィー (Doppler tomography) である.ロシター効果のモデルには,Hirano モデルと Boue モデルの 2 つを用いた.

異なるモデル間の比較より,射影された恒星の自転速度の測定はモデルによって互いに異なる値を導き出すことが判明した.またこの値はしばしばスペクトル線の広がり (line broadening) からの推定とも異なることが分かった.

ロシター効果の分析では,Boue モデルは一貫して Hirano モデルよりも恒星の (射影された) 自転速度を過小評価することが分かった.ただし今回の 6 つの系においては,恒星の自転速度の見積もりが異なっても,spin-orbit angle (恒星の自転軸と惑星の公転軸の傾き) の見積もりへの影響は小さく,3 つの手法 (Hirano モデルでのロシター効果,Boue モデルでのロシター効果,ドップラートモグラフィー) はともに整合的な spin-orbit angle となった.

各系での値は,WASP-61b は ~ 4°.0,WASP-71b は ~ -1°.4,WASP-78b は ~ 6°.4 となり,恒星の自転軸と惑星の公転軸は揃っている.また WASP-62b は ~ -19°.4 となり,やや傾いている.さらに WASP-79b は ~ -95°.2 となり,大きく傾き,逆行軌道であることが確認された.
WASP-76b は値の制限はできなかったものの,正の値に大きく傾いていると推測される.

Spin-orbit angle について

太陽系の惑星の場合は,太陽の自転軸と惑星の公転軸がおおむね揃っている.しかし系外惑星系ではそのようになっているという保証はない.

地球から観測できるのは,天球面上に射影した角度 λ である.この値が初めて測定されたのは,HD 209458 系に対してである (Queloz et al. 2000).その後,spin-orbit angle が測定された系は 100 個程度となっており,そのほとんどはトランジットするホットジュピターにおいてである.

測定は主にロシター効果によって行われている (Holt 1983, Schlesinger 1910, 1916, Rossiter 1924, McLaughlin 1924).恒星は自転の効果によって,スペクトルが赤方偏移した半球と青方偏移した半球に分けられるが,惑星がこの上をトランジットして隠すことによって,分光学的なシグナルが現れる.このシグナルは spin-orbit angle の値によって現れ方が変わり,これをロシター・マクローリン効果と呼ぶ,この効果を測定することによって spin-orbit angle を測定する事ができる.

その他の手法としては,ドップラートモグラフィー (Collier Cameron et al. 2010),重力減光効果を用いるもの (Barnes et al. 2011など),photometric variability distribution の分析 (Mazeh et al. 2015) などが補完的な手法として知られている.

これまでに spin-orbit angle が測定された系は大部分がロシター効果によるが,そこで用いられるモデルは時によって変わる.例えば,より複雑に,詳細な物理を含むように改良される.
初期は Ohta et al. (2005, 2009) と Gimenez (2006) が用いられ,後に Hirano et al. (2011),Boue et al. (2013) が用いられている.この 2 つは異なるアプローチを用いている.また最近では,Baluev & Shaidulin (2015) のモデルも加わった.

モデリング

ロシター効果のモデリング

今回は,ロシター効果のモデルは Hirano et al. (2011) と Boue et al. (2013) を用いた.

Hirano モデルは,デファクトスタンダードとなっているモデルであり,よく使われるものである.
Boue et al. (2013),Hirano モデルはヨードセル法を用いた視線速度観測 (Keck 望遠鏡の HIRES など) の場合は良いが,HARPS による観測データの場合は Boue モデルの方が良いとされている.

ドップラートモグラフィーのモデリング

ドップラートモグラフィーは,Collier Cameron et al. (2010) で開発された手法である.
高温で高速自転する中心星では,ロシター効果の測定が難しい.このような系では,惑星がトランジットしている最中に計測されたスペクトル線の形状と,トランジットしていない時の中心星のスペクトル線の形状の平均のモデルとを比較・分析を行うことによって spin-orbit angle を測定することが可能となる.

ドップラートモグラフィーでのスペクトル線のモデルは,周辺減光を考慮した恒星の自転プロファイルと,惑星が中心星をトランジットすることによってスペクトル中に現れる "影" (spectroscopic "shadow") の項を畳み込むことによって作られる.この "影" は時間経過につれ変動し,惑星がトランジットの始まりから終わりまで恒星面上を移動することで変化する.その幅からはスペクトル線の形状の幅 σ の情報を引き出すことが出来る.
この幅は独立に測定されるため,中心星の自転によるスペクトル線の広がり (rotational broadening) から,局所的なスペクトル線の形状の乱流速度分布を区別することができ,恒星の (射影された) 自転速度とマクロ乱流の速度を直接測定することが出来る.

スペクトルの "影" の経路は,トランジットのインパクトパラメータ b と spin-orbit angle λ によって決まる.
また,惑星がトランジットの始まりから終わりへと動くにつれ,惑星の陰は,恒星表面の異なる速度を持った領域を順番に隠していく.それにより,b, λ, 自転速度の間の関係を得ることが出来る.これらの未知変数は,スペクトル線の形状と自転によるスペクトル線への影響を畳み込めば観測された恒星のスペクトル線をフィットするはずのものであるため,2 つの道変数に対して 2 つの方程式が得られることになる.

λ と自転速度はこの手法で独立に決まるため,両者が縮退しやすい場合 (b が小さい系) に対して優位性を持つ.

ただしこの手法は,中心星の自転が遅い場合には適用できない.これは,自転速度の測定の不確かさが自転速度自体と同程度になってしまうためである.

その他の優位点としては,λ の測定精度の改善が期待できるという点であり,これは実際に高速自転星である KOI-12 系で実証されている (Bourrier et al. 2015).また,何らかの手法で存在が示唆された惑星の確認,もしくは偽陽性であることの立証にも用いることが出来る (Hartman et al. 2015, HATS-14b の確認に用いられた).

測定結果のまとめ

6 つの WASP 系での spin-orbit angle の測定を,異なるモデル (ロシター効果の Hirano モデルと Boue モデル,ドップラートモグラフィー) を用いて行った.その結果,WASP-61, 71, 78 系は spin-orbit angle は小さく,揃った系であることがわかった.また WASP-79b は大きく傾いた系で,逆行軌道である.WASP-62b はやや傾いた系である.WASP-76b については強い制限を付けることができず,λ は星の大きな値を持って傾いているということしか言えない.

WASP-71 系は,過去の観測では 20°.1 という大きな値を持つと報告されていたが (Smith et al. 2013),その結果とは非整合的であった.

WASP-76b の spin-orbit angle は不確実であるが,中心星 WASP-76 は年齢やスペクトル型から期待されるよりも自転が遅いため,Schlaufman (2010) での指摘のように,恒星の赤道側を見ている (equator-on) ではなく極域を見ている (pole-on) 位置関係であることを示唆する.

これまでに示されていた,ロシター効果に対するドップラートモグラフィーの優位性,特にトランジットのインパクトパラメータ b が小さい系おいて自転速度と λ の縮退を解くという能力は,いつも満たされるわけではない.しかしドップラートモグラフィーは一貫して,ロシター効果のモデリングよりも恒星の自転速度の測定精度を向上する一助となる.

3 つのモデルは,同じ条件下では整合的な λ の値を与える.
恒星の自転速度については,Boue モデルは Hirano モデルよりも一貫して過小評価した値を与えることが判明した.また,ドップラートモグラフィーと比べても過小評価となる.

さらに,ロシター効果からの恒星の自転速度の推定は,しばしばスペクトル解析からの推定値と異なる.この値の違いは,恒星の自転速度の関数になっていると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1609.09074
Piskorz et al. (2016)
Evidence for the Direct Detection of the Thermal Spectrum of the Non-Transiting Hot Gas Giant HD 88133 b
(トランジットしない高温のガス惑星 HD 88133b の熱スペクトルの直接検出の証拠)

概要

トランジットを起こさないガス惑星 HD 88133 からの熱放射のスペクトルをターゲットとして,近赤外線領域での高分散分光観測を行った.中心星と惑星を分光学的連星 (spectroscopic binary) と見做すことでのデータの取得を行った.

多数回のトランジットの観測から,惑星よりも高温な恒星のスペクトルと,高温ガス惑星の大気のスペクトルを分解することが可能となる.これを行うために,まず観測されたデータから,地球大気によるスペクトルを取り除くための主成分分析を行った.次に,惑星の軌道を決定し大気吸収源の主要なソースを同定するために,中心星と HD 88133b のスペクトルを,相互相関分析によって引き出した.

観測は,6 回のトランジットを Keck 望遠鏡の NIRSPEC を用いて L バンドで,また 3 回のトランジットを同じ装置で K バンドで行った.

2 つの大気モデルと,取得した全データセットの相互相関からの最大尤度曲線の解析から,トランジットしない惑星 HD 88133b の放射スペクトルの検出に成功した.またケプラー速度の視線速度成分を検出し,その値は 40 ± 15 km s-1 であった.さらに,この惑星の真の質量は 1.02 木星質量であることが分かった.
なお大気モデルには,SCARLET (Benneke 2015) と,PHOENIX (Barman et al, 2001) を用いている.

この惑星の軌道はほぼ face-on (地球から見て公転軌道面を正面近くから見ている位置関係) でありその傾きは 15 度である.また高分散での大気の不透明度 (opacity) の起源は,水蒸気が支配的であった.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1609.08718
Kipping et al. (2016)
No Conclusive Evidence for Transits of Proxima b in MOST photometry
(MOSTの測光でのプロキシマb のトランジットの確証は検出できず)

概要

Anglada-Escud ́e et al. (2016) では,太陽系に最も近い星であるプロキシマ・ケンタウリのまわりに,軌道周期 11.2 日の低質量の惑星 (プロキシマb) を視線速度法で検出したという報告があった.先験的な確率では,プロキシマb がトランジットする確率は ~ 1.5%だが,その検出の潜在的な影響は注目に値する.

ここでは,これまでの視線速度法による観測とは独立に,プロキシマ・ケンタウリを MOST 宇宙望遠鏡を用いて観測した.
※注釈
MOST telescope: Microvariability and Oscillations of Stars telescope
カナダ宇宙庁 (CSA) が打ち上げた宇宙望遠鏡.名前の通り,星の微小な変動と振動を観測することが主目的の望遠鏡で,質量 53 kg,サイズが 66 cm × 20 cm という小型望遠鏡である.

観測は,2014年に 12.5 日,2015年に 31 日行われた.

しかし観測の結果,トランジットを示す明確な兆候は得られなかった.惑星の軌道周期と位相の事前情報を元に,期待されるトランジット深さと似たシグナルは検出されたが,これは恒星のフレアによる偽陽性であると考えられる.





太陽系に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリの周りに,視線速度法によって地球型惑星と思われる惑星が検出されました.

トランジットの場合は惑星の半径 (正確には中心星との半径比) を求めることが出来ますが,トランジットしているためには地球から見て中心星のちょうど手前を惑星が通過する位置関係になっている必要があり,一般的にその確率は高くありません.

通常のトランジット観測では,多数の恒星を同時に長期間観測することによって,トランジットの発生確率の低さを補っています.(トランジット確率が 5 %だとしても,惑星を持っている恒星 100 個をモニターすれば,単純計算で惑星 5 個は検出できる)
しかし特定の惑星系において,目当ての惑星がトランジットを起こす位置関係にあるとは限りません.

プロキシマb の場合は,仮に軌道の分布がランダムだとすると,トランジットする位置関係になっている確率はおよそ 5%になります.この観測論文では,プロキシマb の変動を観測し,プロキシマb のトランジットと思われるシグナルは検出できなかったということを報告しています.

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