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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.03293
Lellouch et al. (2016)
Detection of CO and HCN in Pluto's atmosphere with ALMA
(ALMA による冥王星大気からの CO と HCN の検出)
この検出は,冥王星大気中の CO (一酸化炭素) の存在を強く支持する結果であり,また HCN (シアン化水素) の冥王星大気中での初検出でもある.CO, HCN のスペクトル線は,それぞれ大気の高度 ~ 450 km, ~ 900 km を探査していることに相当する.
また,冥王星の昼側の大気の高度 ~ 50 - 400 km までの平均温度分布への強い制限が与えられた.具体的には,高度 30 - 50 km の成層圏の上部に明確な温度低下層 (中間圏) が存在することと,高度 300 km での温度が 70 ± 2 K と,先行研究 (81 ± 6 K) よりやや低く,最近のニューホライズンズによる太陽掩蔽観測のデータからの推定とは一致する値であった.
HCN が上空で飽和しているとすると,これは高層大気の温度が > 92 K という高い温度であることを要求する.これは CO の観測から否定される温度ではないものの,ニューホライズンズで測定されたメタンと窒素の視線方向の柱密度の値と非整合的である.
これらを総合すると,HCN の存在度の多さと上空の低温により,7 - 8 桁程度の HCN の過飽和状態が実現されていることが示唆される.これはこれまでの太陽系内の惑星大気には見られなかったものである.
大気上層での過飽和は,ヘイズ (もや) が存在する領域より上層での凝結核の欠乏と,冥王星高層大気での低圧・低温による凝縮速度の遅さが原因である可能性がある.
HCN は,高度 ~ 100 km の低層部にも存在し,モル分率では 10-8 - 10-7 である.これは成層圏の温度によって,飽和か不飽和かどちらも有り得る.
HCN の回転遷移に伴う放射による冷却 (line cooling) は,冥王星大気の熱収支に影響を及ぼす.しかし,観測から推定された量では,明確な中間圏の存在と,高層大気の ~ 70 K という低温を説明するには不十分である.
HCN の柱密度は,(1.6 ± 0.4) × 1014 cm-2 である.また,surface-reffered vertically integrated net production rate は 2 × 107 cm-1 s-1である.
また,HC3N の柱密度の上限値は 2 × 1013 cm-2,HC15N/HC14N < 1/125 である.
arXiv:1606.03293
Lellouch et al. (2016)
Detection of CO and HCN in Pluto's atmosphere with ALMA
(ALMA による冥王星大気からの CO と HCN の検出)
概要
ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) を用いて,2015 年 6 月 12 - 13 日に冥王星・カロン系の観測を行った.この観測の主要な発見は,CO (3-2) と HCN (4-3) の回転遷移を冥王星の大気中から検出したことである.この検出は,HCN のスペクトルの超微細構造の検出も含む.この検出は,冥王星大気中の CO (一酸化炭素) の存在を強く支持する結果であり,また HCN (シアン化水素) の冥王星大気中での初検出でもある.CO, HCN のスペクトル線は,それぞれ大気の高度 ~ 450 km, ~ 900 km を探査していることに相当する.
観測結果の詳細と議論
CO 検出による大気組成と温度構造への制限
CO の検出により,冥王星大気の CO モル分率が精度よく推定され,12 µbar の表面圧力で 515 ± 40 ppm となった.また,冥王星の昼側の大気の高度 ~ 50 - 400 km までの平均温度分布への強い制限が与えられた.具体的には,高度 30 - 50 km の成層圏の上部に明確な温度低下層 (中間圏) が存在することと,高度 300 km での温度が 70 ± 2 K と,先行研究 (81 ± 6 K) よりやや低く,最近のニューホライズンズによる太陽掩蔽観測のデータからの推定とは一致する値であった.
HCN と大気組成・大気構造
HCN のスペクトル線の形状より,高層大気には HCN が多く存在することが示唆される.高度 450 km より上では,モル分率が > 1.5 × 10-4 と推定される.また ~ 800 km では ~ 4 × 10-5 となる.HCN が上空で飽和しているとすると,これは高層大気の温度が > 92 K という高い温度であることを要求する.これは CO の観測から否定される温度ではないものの,ニューホライズンズで測定されたメタンと窒素の視線方向の柱密度の値と非整合的である.
これらを総合すると,HCN の存在度の多さと上空の低温により,7 - 8 桁程度の HCN の過飽和状態が実現されていることが示唆される.これはこれまでの太陽系内の惑星大気には見られなかったものである.
大気上層での過飽和は,ヘイズ (もや) が存在する領域より上層での凝結核の欠乏と,冥王星高層大気での低圧・低温による凝縮速度の遅さが原因である可能性がある.
HCN は,高度 ~ 100 km の低層部にも存在し,モル分率では 10-8 - 10-7 である.これは成層圏の温度によって,飽和か不飽和かどちらも有り得る.
HCN の回転遷移に伴う放射による冷却 (line cooling) は,冥王星大気の熱収支に影響を及ぼす.しかし,観測から推定された量では,明確な中間圏の存在と,高層大気の ~ 70 K という低温を説明するには不十分である.
HCN の柱密度は,(1.6 ± 0.4) × 1014 cm-2 である.また,surface-reffered vertically integrated net production rate は 2 × 107 cm-1 s-1である.
また,HC3N の柱密度の上限値は 2 × 1013 cm-2,HC15N/HC14N < 1/125 である.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.02294
Sheppard et al. (2016)
Beyond the Kuiper Belt Edge: New High Perihelion Trans-Neptunian Objects With Moderate Semi-major Axes and Eccentricities
(カイパーベルトの外縁を越えて:中程度の軌道長半径と軌道離心率を持つ近日点の遠い新しい太陽系外縁天体)
観測の結果,extreme trans-Neptunian objects (ETNOs) の発見に加え,大きな近日点距離を持つ (> 40 AU),ETNO とも内オールトの雲 (inner Oort) とも異なるグループに属する天体を複数発見した.これらが ETNO とも 内オールトの雲とも異なるとした理由は,軌道長半径が中程度 (50 ~ 100 AU) であり,軌道離心率も中程度である (~ 0.3 以下) という特徴があったからである.
新しく発見された 2014 FZ71 と 2015 FJ 345 は,セドナと 2012 VP 113 に次いで大きな近日点距離を持つ天体である.しかしその軌道は高軌道離心率でもなく極端に大きな軌道長半径を持ってもいない.これらの天体は海王星との平均運動共鳴 (mean motion resonance) に近く,また軌道傾斜角は大きい (> 20°).これらの異常な軌道は,2004 XR190 の軌道の原因のシナリオとして考えられているように,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴 (Kozai resonance) の組み合わせで実現されると考えられる.
軌道長半径:76.4 AU
軌道離心率:0.268
軌道傾斜角:25.440°
現在の距離:56.8 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:4:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:62.5 AU
軌道離心率:0.17
軌道傾斜角:35.00°
現在の距離:58.5 AU
推定直径:100 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:63.2 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:25.70°
現在の距離:66.8 AU
推定直径:250 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:61.9 AU
軌道離心率:0.33
軌道傾斜角:28.8°
現在の距離:58.8 AU
推定直径:800 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:72.3 AU
軌道離心率:0.44
軌道傾斜角:30.1°
現在の距離:83.7 AU
推定直径:500 km
海王星との関係:11:3 の平均運動共鳴?
軌道長半径:55 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:24.23°
現在の距離:68.2 AU
推定直径:200 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
軌道長半径:56.4 AU
軌道離心率:0.24
軌道傾斜角:3.62°
現在の距離:68.1 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
また上 6 つは,海王星との平均運動共鳴 + 古在共鳴,下 1 つは古典的カイパーベルト天体の外縁部の天体である.この他にも複数発見したが,詳細は Sheppard & Trujilo (in prep) で紹介することとし,ここでは上記 7 天体に注目する.
しかし 2014 FZ71 はセドナとも 2012 VP113 とも異なり,軌道長半径と軌道離心率は中程度の値となっている.そのため,2014 FZ71 はセドナや 2012 VP113 とは異なる起源を持つ事が示唆される.
2014 FZ71 は海王星との 4:1 平均運動共鳴に近く,海王星の影響を受けたと考えられる.興味深いことに,この天体の大きな近日点距離は,現在では海王星の影響を強く受けてはいないことを意味する.また,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴の両方の影響を受けていると考えられる.
これが正しい場合,軌道離心率と軌道傾斜角の間に存在する保存量より,2014 FZ71 は軌道離心率が最も大きい時は近日点距離は ~ 38.5 AU になると考えられる.これは,Gomes et al. (2008) が示した,古在共鳴と海王星との平均運動共鳴を起こしている天体にとっても上限値 (40 AU) のわずか内側である.
しかし 2014 FZ71 が 2004 XR190 に近い起源を持つ天体なのか,セドナや 2012 VP113 に近い期限を持つのかは不明瞭である.2014 FZ71 は,海王星との 4:1 平均運動共鳴と古在共鳴の組み合わせで出来たと考えられる 2005 TB190 (Gomes et al. 2008) の,極端な事例であるかもしれない.
arXiv:1606.02294
Sheppard et al. (2016)
Beyond the Kuiper Belt Edge: New High Perihelion Trans-Neptunian Objects With Moderate Semi-major Axes and Eccentricities
(カイパーベルトの外縁を越えて:中程度の軌道長半径と軌道離心率を持つ近日点の遠い新しい太陽系外縁天体)
概要
すばる望遠鏡の 8 m 望遠鏡と CTIO 4 m 望遠鏡を用いて,エッジワース・カイパーベルトの外縁 (~ 50 AU) 以遠で天体の探査を行った.この観測の主な興味は,Trujillo & Sheppard (2014) で初めて存在が示唆された数百 AU での重い惑星が存在するかどうかを含めた,太陽系の遠方・外側領域の探査である.このような領域は,巨大惑星の影響下にはないと考えられる.観測の結果,extreme trans-Neptunian objects (ETNOs) の発見に加え,大きな近日点距離を持つ (> 40 AU),ETNO とも内オールトの雲 (inner Oort) とも異なるグループに属する天体を複数発見した.これらが ETNO とも 内オールトの雲とも異なるとした理由は,軌道長半径が中程度 (50 ~ 100 AU) であり,軌道離心率も中程度である (~ 0.3 以下) という特徴があったからである.
新しく発見された 2014 FZ71 と 2015 FJ 345 は,セドナと 2012 VP 113 に次いで大きな近日点距離を持つ天体である.しかしその軌道は高軌道離心率でもなく極端に大きな軌道長半径を持ってもいない.これらの天体は海王星との平均運動共鳴 (mean motion resonance) に近く,また軌道傾斜角は大きい (> 20°).これらの異常な軌道は,2004 XR190 の軌道の原因のシナリオとして考えられているように,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴 (Kozai resonance) の組み合わせで実現されると考えられる.
発見された太陽系外縁天体
2014 FZ71
近日点距離:55.9 AU軌道長半径:76.4 AU
軌道離心率:0.268
軌道傾斜角:25.440°
現在の距離:56.8 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:4:1 の平均運動共鳴
2015 FJ345
近日点距離:51.8 AU軌道長半径:62.5 AU
軌道離心率:0.17
軌道傾斜角:35.00°
現在の距離:58.5 AU
推定直径:100 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2013 FQ28
近日点距離:45.8 AU軌道長半径:63.2 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:25.70°
現在の距離:66.8 AU
推定直径:250 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2015 KH162
近日点距離:41.4 AU軌道長半径:61.9 AU
軌道離心率:0.33
軌道傾斜角:28.8°
現在の距離:58.8 AU
推定直径:800 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2014 FC69
近日点距離:40.3 AU軌道長半径:72.3 AU
軌道離心率:0.44
軌道傾斜角:30.1°
現在の距離:83.7 AU
推定直径:500 km
海王星との関係:11:3 の平均運動共鳴?
2015 GP50
近日点距離:40.2 AU軌道長半径:55 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:24.23°
現在の距離:68.2 AU
推定直径:200 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
2012 FH84
近日点距離:42.7 AU軌道長半径:56.4 AU
軌道離心率:0.24
軌道傾斜角:3.62°
現在の距離:68.1 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
補足
天体の直径は,アルベド 0.10 を仮定した場合の大きさである.また上 6 つは,海王星との平均運動共鳴 + 古在共鳴,下 1 つは古典的カイパーベルト天体の外縁部の天体である.この他にも複数発見したが,詳細は Sheppard & Trujilo (in prep) で紹介することとし,ここでは上記 7 天体に注目する.
2014 FZ71 の大きな近日点について
太陽系内の天体で,最も近日点距離が大きいのは 2012 VP 113,2 番目がセドナである.今回発見された 2014 FZ71 が 3 番目,2015 FJ345 が 4 番目であり,5 番目は 2004 XR190 となっている.しかし 2014 FZ71 はセドナとも 2012 VP113 とも異なり,軌道長半径と軌道離心率は中程度の値となっている.そのため,2014 FZ71 はセドナや 2012 VP113 とは異なる起源を持つ事が示唆される.
2014 FZ71 は海王星との 4:1 平均運動共鳴に近く,海王星の影響を受けたと考えられる.興味深いことに,この天体の大きな近日点距離は,現在では海王星の影響を強く受けてはいないことを意味する.また,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴の両方の影響を受けていると考えられる.
これが正しい場合,軌道離心率と軌道傾斜角の間に存在する保存量より,2014 FZ71 は軌道離心率が最も大きい時は近日点距離は ~ 38.5 AU になると考えられる.これは,Gomes et al. (2008) が示した,古在共鳴と海王星との平均運動共鳴を起こしている天体にとっても上限値 (40 AU) のわずか内側である.
しかし 2014 FZ71 が 2004 XR190 に近い起源を持つ天体なのか,セドナや 2012 VP113 に近い期限を持つのかは不明瞭である.2014 FZ71 は,海王星との 4:1 平均運動共鳴と古在共鳴の組み合わせで出来たと考えられる 2005 TB190 (Gomes et al. 2008) の,極端な事例であるかもしれない.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.00848
Penev et al. (2016)
HATS-18 b: An Extreme Short--Period Massive Transiting Planet Spinning Up Its Star
(HATS-18b:中心星の自転を加速している極めて短周期の重いトランジット惑星)
惑星は質量が大きく,また周期が短い.この系では,惑星の軌道と中心星の間の強い潮汐相互作用が存在することが示唆される.実際,中心星の HATS-18 の年齢と自転周期からは,中心星の自転周期が惑星によって加速されている可能性が指摘される.
この系によく似た惑星系である HATS-19b の解析と合わせ,非常に大きなモデルの不定性を考慮した上でも,潮汐の大きさについて 6.5 < log10(Q*/k2) < 7 という制限を付けることが出来た.
有効温度:5600 K
金属量:[Fe/H] = 0.280
質量:1.037 太陽質量
半径:1.020 太陽半径
光度:0.93 太陽光度
年齢:4.2 Gyr
距離:645 pc
自転周期:9.8 日
質量:1.980 木星質量
半径:1.337 木星半径
軌道長半径:0.01761 AU
平衡温度:2060 K
arXiv:1606.00848
Penev et al. (2016)
HATS-18 b: An Extreme Short--Period Massive Transiting Planet Spinning Up Its Star
(HATS-18b:中心星の自転を加速している極めて短周期の重いトランジット惑星)
概要
HATSouth ネットワークによる,系外惑星 HATS-18b の発見を報告する.惑星は質量が大きく,また周期が短い.この系では,惑星の軌道と中心星の間の強い潮汐相互作用が存在することが示唆される.実際,中心星の HATS-18 の年齢と自転周期からは,中心星の自転周期が惑星によって加速されている可能性が指摘される.
この系によく似た惑星系である HATS-19b の解析と合わせ,非常に大きなモデルの不定性を考慮した上でも,潮汐の大きさについて 6.5 < log10(Q*/k2) < 7 という制限を付けることが出来た.
パラメータ
HATS-18
等級:14.067有効温度:5600 K
金属量:[Fe/H] = 0.280
質量:1.037 太陽質量
半径:1.020 太陽半径
光度:0.93 太陽光度
年齢:4.2 Gyr
距離:645 pc
自転周期:9.8 日
HATS-18b
軌道周期:0.83784340 日質量:1.980 木星質量
半径:1.337 木星半径
軌道長半径:0.01761 AU
平衡温度:2060 K
自転周期と年齢
中心星は,年齢を考えると太陽と同程度の自転周期 (~ 30 日) であるはずである.しかし観測で判明した自転周期はそれよりも明らかに短い.これは,惑星軌道との相互作用によって中心星の自転が加速 (spin-up) されていることを示す.論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.01105
de Wit et al. (2016)
Direct Measure of Radiative and Dynamical Properties of an Exoplanet Atmosphere
(系外惑星大気の放射特性と力学的特性の直接測定)
観測の結果,大気層は 500 K から 1400 K まで急速に加熱されることが分かった.放射のタイムスケールは ~ 4 時間であった.また,近星点通過中に 20%の入射光を吸収していることが分かった.
解析から,惑星の自転周期は 93 (+85, -35) 時間であることが示唆された.これは,この惑星の自転周期として予測されていた擬同期周期 (pseudo-synchronous period) である 40 時間よりも長い.
惑星は軌道周期が 111.43677 日であり,軌道離心率は 0.93366 と非常に大きい.また,惑星の軌道平面と中心星の赤道平面は 42°ずれていることが分かっている (Moutou et al. 2009など).
惑星が近星点を通過する際の近星点距離は,恒星の表面から ~ 6 太陽半径であり,近星点を通過する度に周期的な強い輻射と潮汐を経験することになる.そのため,HD 80606b の天候は極端な状態になると考えるのが自然である.
惑星が受け取るフラックスの比 f は,軌道離心率を用いて
^{2})
と表され,この惑星の軌道離心率を用いると f ~ 850 となる (近星点と遠星点での比).
近星点通過の ~ 24 時間前から急激に日射が増加する.そのため,シューメーカー・レヴィ第9彗星が衝突の際に木星に与えたものの ~ 1000 倍のエネルギーの短時間での注入が発生することになる.これによって全球的な温度の上昇を引き起こし,この温度の上昇はスピッツァー宇宙望遠鏡で観測されている (Werner et al. 2004).
また,最後の 30 時間の間は,惑星からの放射の増加は観測されなかった.これは, 4.5 µm で見た時の大気層の放射のタイムスケールが,惑星の自転周期よりも短いことを示唆している.
観測結果の解析から,惑星の自転周期は 93 (+85, -35) 時間と推定される.
Pseudo-synchronous state についてよく知られているモデルは Hut (1981) によるものである.これは平衡潮汐理論 (Darwin 1908) を用いたものであり,Darwin (1908) では水星の非同期回転状態を定性的に説明する事ができる (Peale & Gold 1965).
このモデルによると,HD 80606b の自転周期は 39.9 時間程度になると予想される.しかしこれは今回の結果とやや異なる.
Hut (1981) による理論の他にも説はあるが,それらは Hut (1981) での予測よりも短いものである.例えば,Ivanov & Papaloizou (2007) は,高軌道離心率惑星の自転周期は,近星点付近での円軌道を仮定した場合の軌道周期の 1.55 倍になると予測している.これは,HD 80606b に適用すると ~ 28 時間となる.
今回の,理論的な予測と異なる結果は,潮汐により同期しようというプロセスが最近始まったか,あるいはその効率がこれまでの予測よりも低いということを示唆する.また同時に,観測した光度曲線からの自転周期の推定には,惑星の大気組成の時間変化などの影響が混入している可能性もある.この効果は現在のモデルには入っていない.そのため詳細なモデリングは今後の課題である.
arXiv:1606.01105
de Wit et al. (2016)
Direct Measure of Radiative and Dynamical Properties of an Exoplanet Atmosphere
(系外惑星大気の放射特性と力学的特性の直接測定)
概要
軌道離心率が大きい惑星系の観測から,惑星へ入射するフラックスの変化に伴う大気の応答を調べることが出来る.ここでは,エキセントリックな (e ~ 0.93) ホットジュピターである HD 80606b を,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて多数日・多チャンネルの測光観測を行った.大きな軌道離心率を持つ惑星の近星点通過前後の長期間の観測を行うことにより,惑星大気の放射のタイムスケールと力学的なタイムスケールの縮退を解くことが可能となった.また,大気の熱応答への制限を付けることが出来た.観測の結果,大気層は 500 K から 1400 K まで急速に加熱されることが分かった.放射のタイムスケールは ~ 4 時間であった.また,近星点通過中に 20%の入射光を吸収していることが分かった.
解析から,惑星の自転周期は 93 (+85, -35) 時間であることが示唆された.これは,この惑星の自転周期として予測されていた擬同期周期 (pseudo-synchronous period) である 40 時間よりも長い.
HD 80606 系について
中心星の HD 80606 は,等級が 8.93,スペクトル型が G5V の恒星であり,質量が 3.94 木星質量の惑星 HD 80606b を持つ (Naef et al. 2001),また,伴星として HD 80607 が存在し,これは太陽型星で,投影距離は ~ 1000 AU である.惑星は軌道周期が 111.43677 日であり,軌道離心率は 0.93366 と非常に大きい.また,惑星の軌道平面と中心星の赤道平面は 42°ずれていることが分かっている (Moutou et al. 2009など).
惑星が近星点を通過する際の近星点距離は,恒星の表面から ~ 6 太陽半径であり,近星点を通過する度に周期的な強い輻射と潮汐を経験することになる.そのため,HD 80606b の天候は極端な状態になると考えるのが自然である.
惑星が受け取るフラックスの比 f は,軌道離心率を用いて
と表され,この惑星の軌道離心率を用いると f ~ 850 となる (近星点と遠星点での比).
近星点通過の ~ 24 時間前から急激に日射が増加する.そのため,シューメーカー・レヴィ第9彗星が衝突の際に木星に与えたものの ~ 1000 倍のエネルギーの短時間での注入が発生することになる.これによって全球的な温度の上昇を引き起こし,この温度の上昇はスピッツァー宇宙望遠鏡で観測されている (Werner et al. 2004).
結果・議論
観測結果と解析の概説
観測開始後の近星点通過前では,惑星は 4.5 µm では検出不可能なほどの暗さであった.また,近星点通過直後は 4.5 µm も 8 µm も急激に低下した.惑星からのフラックスの低下は,惑星の光球面からの冷却と,暖められた大気の領域が自転によって視線方向から移動することの組み合わせによって発生する.また,最後の 30 時間の間は,惑星からの放射の増加は観測されなかった.これは, 4.5 µm で見た時の大気層の放射のタイムスケールが,惑星の自転周期よりも短いことを示唆している.
観測結果の解析から,惑星の自転周期は 93 (+85, -35) 時間と推定される.
高軌道離心率惑星の自転周期
円軌道を持つ惑星とは異なり,高軌道離心率の惑星の場合は大きく変化する潮汐力が,自転と公転の同期 (spin-orbit synchronization) を阻害する.このような場合,潮汐の効果によって,"pseudo-synvhronous" 状態になると予測されていた.これは,惑星の自転周期は近星点付近の瞬間的な円軌道における軌道周期のオーダーになるというものである.Pseudo-synchronous state についてよく知られているモデルは Hut (1981) によるものである.これは平衡潮汐理論 (Darwin 1908) を用いたものであり,Darwin (1908) では水星の非同期回転状態を定性的に説明する事ができる (Peale & Gold 1965).
このモデルによると,HD 80606b の自転周期は 39.9 時間程度になると予想される.しかしこれは今回の結果とやや異なる.
Hut (1981) による理論の他にも説はあるが,それらは Hut (1981) での予測よりも短いものである.例えば,Ivanov & Papaloizou (2007) は,高軌道離心率惑星の自転周期は,近星点付近での円軌道を仮定した場合の軌道周期の 1.55 倍になると予測している.これは,HD 80606b に適用すると ~ 28 時間となる.
今回の,理論的な予測と異なる結果は,潮汐により同期しようというプロセスが最近始まったか,あるいはその効率がこれまでの予測よりも低いということを示唆する.また同時に,観測した光度曲線からの自転周期の推定には,惑星の大気組成の時間変化などの影響が混入している可能性もある.この効果は現在のモデルには入っていない.そのため詳細なモデリングは今後の課題である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.00023
Espinoza et al. (2016)
HATS-25b through HATS-30b: A Half-dozen New Inflated Transiting Hot Jupiters from the HATSouth Survey
(HATS-25b から HATS-30b:HATSouth サーベイによる半ダースの新しい膨張したトランジットホットジュピター)
有効温度:5715 K
金属量:[Fe/H] = 0.020
質量:0.994 太陽質量
半径:1.107 太陽半径
光度:1.17 太陽光度
年齢:7.5 Gyr
距離:466 pc
質量:0.613 木星質量
半径:1.26 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.05163 AU
平衡温度:1277 K
有効温度:6071 K
金属量:[Fe/H] = -0.020
質量:1.299 太陽質量
半径:2.04 太陽半径
光度:5.06 太陽光度
年齢:4.04 Gyr
距離:907 pc
質量:0.650 木星質量
半径:1.75 木星半径
平均密度:0.153 g cm-3
軌道長半径:0.04735 AU
平衡温度:1918 K
有効温度:6438 K
金属量:[Fe/H] = 0.090
質量:1.415 太陽質量
半径:1.74 太陽半径
光度:4.67 太陽光度
年齢:2.30 Gyr
距離:840 pc
質量:0.53 木星質量
半径:1.50 木星半径
平均密度:0.180 g cm-3
軌道長半径:0.06110 AU
平衡温度:1659 K
有効温度:5498 K
金属量:[Fe/H] = 0.010
質量:0.929 太陽質量
半径:0.922 太陽半径
光度:0.696 太陽光度
年齢:6.2 Gyr
距離:521 pc
質量:0.672 木星質量
半径:1.194 木星半径
平均密度:0.48 g cm-3
軌道長半径:0.04131 AU
平衡温度:1253 K
有効温度:5670 K
金属量:[Fe/H] = 0.160
質量:1.032 太陽質量
半径:1.073 太陽半径
光度:1.07 太陽光度
年齢:5.5 Gyr
距離:351 pc
質量:0.653 木星質量
半径:1.251 木星半径
平均密度:0.411 g cm-3
軌道長半径:0.05475 AU
平衡温度:1212 K
有効温度:5943 K
金属量:[Fe/H] = 0.060
質量:1.093 太陽質量
半径:1.061 太陽半径
光度:1.25 太陽光度
年齢:2.3 Gyr
距離:339 pc
質量:0.706 木星質量
半径:1.175 木星半径
平均密度:0.543 g cm-3
軌道長半径:0.04354 AU
平衡温度:1414 K
惑星の平均密度は特に低い部類に入る.これらの惑星は,今後の大気の特徴付けのための観測対象として適切である.また HATS-27b は,主星が明るく自転速度も大きいため,ロシター効果で中心星自転軸と惑星の公転軸のずれを測定するのに向いている.
arXiv:1606.00023
Espinoza et al. (2016)
HATS-25b through HATS-30b: A Half-dozen New Inflated Transiting Hot Jupiters from the HATSouth Survey
(HATS-25b から HATS-30b:HATSouth サーベイによる半ダースの新しい膨張したトランジットホットジュピター)
概要
HATS-South の自動化望遠鏡を用いて,トランジット法で HATS-25b 〜 30b までの 6 惑星を発見した.パラメータ
HATS-25 系
HATS-25
等級:13.097有効温度:5715 K
金属量:[Fe/H] = 0.020
質量:0.994 太陽質量
半径:1.107 太陽半径
光度:1.17 太陽光度
年齢:7.5 Gyr
距離:466 pc
HATS-25b
軌道周期:4.2986432 日質量:0.613 木星質量
半径:1.26 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.05163 AU
平衡温度:1277 K
HATS-26 系
HATS-26
等級:12.955有効温度:6071 K
金属量:[Fe/H] = -0.020
質量:1.299 太陽質量
半径:2.04 太陽半径
光度:5.06 太陽光度
年齢:4.04 Gyr
距離:907 pc
HATS-26b
軌道周期:3.3023881 日質量:0.650 木星質量
半径:1.75 木星半径
平均密度:0.153 g cm-3
軌道長半径:0.04735 AU
平衡温度:1918 K
HATS-27 系
HATS-27
等級:12.766有効温度:6438 K
金属量:[Fe/H] = 0.090
質量:1.415 太陽質量
半径:1.74 太陽半径
光度:4.67 太陽光度
年齢:2.30 Gyr
距離:840 pc
HATS-27b
軌道周期:4.637038 日質量:0.53 木星質量
半径:1.50 木星半径
平均密度:0.180 g cm-3
軌道長半径:0.06110 AU
平衡温度:1659 K
HATS-28 系
HATS-28
等級:13.934有効温度:5498 K
金属量:[Fe/H] = 0.010
質量:0.929 太陽質量
半径:0.922 太陽半径
光度:0.696 太陽光度
年齢:6.2 Gyr
距離:521 pc
HATS-28b
軌道周期:3.1810781 日質量:0.672 木星質量
半径:1.194 木星半径
平均密度:0.48 g cm-3
軌道長半径:0.04131 AU
平衡温度:1253 K
HATS-29 系
HATS-29
等級:12.612有効温度:5670 K
金属量:[Fe/H] = 0.160
質量:1.032 太陽質量
半径:1.073 太陽半径
光度:1.07 太陽光度
年齢:5.5 Gyr
距離:351 pc
HATS-29b
軌道周期:4.6058749 日質量:0.653 木星質量
半径:1.251 木星半径
平均密度:0.411 g cm-3
軌道長半径:0.05475 AU
平衡温度:1212 K
HATS-30 系
HATS-30
等級:12.192有効温度:5943 K
金属量:[Fe/H] = 0.060
質量:1.093 太陽質量
半径:1.061 太陽半径
光度:1.25 太陽光度
年齢:2.3 Gyr
距離:339 pc
HATS-30b
軌道周期:3.1743516 日質量:0.706 木星質量
半径:1.175 木星半径
平均密度:0.543 g cm-3
軌道長半径:0.04354 AU
平衡温度:1414 K
発見された惑星の特徴など
HATS-25b, 28b, 29b, 30b は,典型的な G 型星まわりの短周期の膨張した半径を持つホットジュピターである.また,HATS-26b は転回点直後のやや進化した F 型星まわりの,大きく膨張したホットジュピターである.HATS-27b は転回点中のやや進化した恒星まわりの膨張ホットジュピターである.惑星の平均密度は特に低い部類に入る.これらの惑星は,今後の大気の特徴付けのための観測対象として適切である.また HATS-27b は,主星が明るく自転速度も大きいため,ロシター効果で中心星自転軸と惑星の公転軸のずれを測定するのに向いている.

