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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.07844
Johnson et al. (2016)
Confirmation of Two Hot Jupiters from K2 Campaign 4
(K2 キャンペーン 4 による 2 つのホットジュピターの確認)

概要

ケプラーの K2 ミッションの Campaign 4 で検出された 2 つのトランジットを起こすホットジュピターを,視線速度観測を用いて確認した.

観測に用いたのは,カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にある,2.56 m Nordic Optical Telescope に搭載されている,FIbre-fed E ́chelle Spectro- graph (FIES, Frandsen & Lindberg 1999など) と,テキサス州のマクドナルド天文台にある 2.7 m Harlan J. Smith Telescope に搭載されている Robert G. Tull coud ́e spectrograph を用いた.さらに,ラ・パルマ島にある HARPS-N も用いている.


なお,観測で惑星が確認された恒星の名前は EPIC 211089792EPIC 210957318 であるが,当論文中ではケプラーの Campaign 4 から,C4_9792, C4_7318 と略記している.
"EPIC" は "Ecliptic Plane Input Catalogue" であり,ケプラー K2 ミッションのための恒星カタログである.EPIC + [9 桁の数字] という名称になっており,従来のケプラーミッションにおける KIC (Kepler Input Catalogue) カタログと同じ位置付けである.EPIC の後の数値は 210000000 から始まり,220000000 程度かそれ以上まで数字が振られている.

パラメータ

EPIC 211089792 系

・EPIC 211089792
スペクトル型:K1V
金属量:[Fe/H] = 0.00
有効温度:5222 K
自転周期:10.777日
質量:0.864太陽質量
半径:0.748太陽半径
光度:0.374太陽光度
年齢:2.6 Gyr
距離:167.1 pc

・EPIC 211089792b
公転周期:3.2589263日
軌道長半径:0.04097 AU
軌道離心率:0.086
質量:0.613木星質量
半径:0.998木星半径
平衡温度:1076 K

EPIC 210957318 系

・EPIC 210957318
スペクトル型:G6V
金属量:[Fe/H] = -0.15
有効温度:5925 K
質量:0.900太陽質量
半径:0.844太陽半径
光度:0.554太陽光度
年齢:3.9 Gyr
距離:279.0 pc

・EPIC 210957318b
公転周期:4.098503日
軌道長半径:0.04839 AU
軌道離心率:0 (fixed)
質量:0.579木星質量
半径:1.079木星半径
平衡温度:1092 K

各系の特徴

EPIC 211089792 系

発見された惑星 EPIC 211089792b は,太陽に近い金属量を持った恒星周りの,木星よりやや軽い,木星半径程度の惑星である.

軌道離心率が大きいのが特徴である.同程度の規模のホットジュピターの中でこの値は大きい部類に入る.

中心星は,等時線 (isochrone) から示唆される年齢は 2.6 Gyr である.しかし恒星の自転から年齢を割り出す手法である gyrochronology では 367 Myr と非常に若い値を示す.ホットジュピターを持つ恒星の場合,等時線から導かれる年齢に比べると,gyrochronology では若い年齢を示しがちである.これは恒星と惑星の潮汐か磁場の相互作用によるものと考えられる.

惑星の軌道離心率が大きいのは,別の擾乱源が存在する可能性もある.仮にそうであれば,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) に兆候が現れる可能性がある.しかし K2 のデータはそれを探るには不十分であるため,今回はその可能性については追求していない.

EPIC 210957318 系

発見された惑星 EPIC 210957318b については,軌道離心率を制限するほどの十分な視線速度データが得られなかった.そのため,今回の解析では 0 に固定している.

中心星は,太陽よりも金属量が乏しい恒星である.金属量 [Fe/H] = -0.15 は,ホットジュピターを持つ恒星としては目立って小さい値であるが,前例が無いわけではない.例として,WASP-98 の金属量は [Fe/H] = -0.6 である (Hellier et al. 2014).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1602.01740
Maxted et al. (2016)
Five transiting hot Jupiters discovered using WASP-South, Euler and TRAPPIST: WASP-119 b, WASP-124 b, WASP-126 b, WASP-129 b and WASP-133 b
(WASP-South と TRAPPIST を用いた 5 つのトランジットするホットジュピターの発見:WASP-119b,WASP-124b,WASP-126b,WASP-129b,WASP-133b)

概要

WASP-South プロジェクトを用いて多数の恒星の測光観測を行って,トランジット法による惑星の検出を行っている.また Swiss Euler 1.2 m 望遠鏡の Euler Cam と,TRAPPIST 望遠鏡を用いて測光観測を行った.さらに,CORALIE 分光観測器を用いて分光観測から視線速度観測を行い,5つの新しい系外惑星の発見を確認した.

系のパラメータと特徴

WASP-119 系

・WASP-119
スペクトル型:G5
等級:12.2
質量:1.02太陽質量
半径:1.2太陽半径
有効温度:5650 K
金属量:[Fe/H] = 0.14

・WASP-119b
軌道周期:2.49979日
質量:1.23木星質量
半径:1.4木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.5倍
軌道長半径:0.0363 AU
軌道離心率:0.058 未満
平衡温度:1600 K

WASP-119b は典型的なホットジュピターである.
中心星は太陽に類似した恒星である.しかし有効温度と平均密度の違いから,太陽よりは年老いた恒星である可能性がある.

中心星の WASP-119 のスペクトルの解析から算出した表面重力は,その他のデータからの算出よりも有意に大きな値を示す.これは,別の第三の星からの光が光度曲線に混入していると考えることで部分的に説明が可能であるかもしれない.この場合,トランジットは実際よりも浅く見えていることになる.

現在のところ,3つ目の天体の存在を示す直接的な証拠は無い.今後の高い S/N 比のスペクトル観測や,高精度の撮像観測から明らかになるだろうと考えられる.

WASP-124 系

・WASP-124
スペクトル型:F9
等級:12.7
質量:1.07太陽質量
半径:1.02太陽半径
有効温度:6050 K
金属量:[Fe/H] = -0.02

・WASP-124b
軌道周期:3.372650日
質量:0.60木星質量
半径:1.24木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.32倍
軌道長半径:0.0449 AU
軌道離心率:0.017 未満
平衡温度:1400 K

WASP-124b も同じく典型的なホットジュピターである.

中心星の投影された自転速度は今回のサンプルの中で最も大きく,3 km s-1である.この高速の自転は中心星 WASP-124 の年齢が若いことを示唆するが,惑星を持っている恒星の gyrochronology (自転速度から年齢を推定する方法) については信頼性が微妙であることが指摘されている (Maxted et al. 2015b).

また,トランジット光度曲線の解析から示される恒星の高い平均密度は,恒星のスペクトルの解析から導かれる表面重力とは非整合的である.

WASP-126 系

・WASP-126
スペクトル型:G2
等級:10.8
質量:1.12太陽質量
半径:1.27太陽半径
有効温度:5800 K
金属量:[Fe/H] = 0.17

・WASP-126b
軌道周期:3.28880日
質量:0.28木星質量
半径:0.96木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.31倍
軌道長半径:0.0449 AU
軌道離心率:0.18 未満
平衡温度:1480 K

WASP-126b は比較的低質量で大きな半径をもつガス惑星であり,表面重力が小さい,つまり大気のスケールハイトが大きいことを意味する.そのため,大気の透過スペクトル観測の対象として適していると考えられる.

WASP-129 系

・WASP-129
スペクトル型:G1
等級:12.3
質量:1.00太陽質量
半径:0.90太陽半径
有効温度:5900 K
金属量:[Fe/H] = 0.15

・WASP-129b
軌道周期:5.748145日
質量:1.0木星質量
半径:0.93木星半径
平均密度:木星平均密度の 1.2倍
軌道長半径:0.0628 AU
軌道離心率:0.096 未満
平衡温度:1100 K

中心星 WASP-129 は平均密度が大きい.これは,初期のヘリウムの存在度が多かったと考えると説明することが出来る.太陽型星の初期のヘリウム存在度の分布は不明な点が多く,中心星の年齢は質量の分布の理解にどの程度初期のパラメータが影響するのかも不明瞭である.

惑星の WASP-129b は多くのホットジュピターよりも軌道が大きく,軌道周期も長い.また同程度の質量のホットジュピターよりも半径が小さく,従って平均密度も高い値となっている.この WASP-129b の平均密度の高い値は,中心星の質量がより良い精度で決定されるまでは注意深く扱う必要がある.

WASP-133 系

・WASP-133
スペクトル型:G4
等級:12.9
質量:1.16太陽質量
半径:1.44太陽半径
有効温度:5700 K
金属量:[Fe/H] = 0.29

・WASP-133b
軌道周期:2.176423日
質量:1.16木星質量
半径:1.21木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.66倍
軌道長半径:0.0345 AU
軌道離心率:0.17 未満
平衡温度:1790 K

中心星 WASP-133 は,古く金属量豊富な恒星であると考えられる.
中心星の表面のリチウム存在度は,他の似た年齢・有効温度の恒星よりも有意に高い値を示す.これは,惑星を持つ恒星は,似た物理量で惑星を持たない恒星に比較するとリチウムが欠乏しているという傾向の反例となる (Maxted et al. 2010など).

WASP-133b は今回発見された中では最も短い周期を持つホットジュピターである.

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arXiv:1601.06832
Niedzielski et al. (2016)
Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) with HARPS-N. III. HD 5583 and BD+15 2375 - two cool giants with warm companions
(NARPS-N での Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) III. 暖かい惑星を持つ 2 つの低温な巨星 HD 5583 と BD+15 2375)

概要

進化した恒星は,惑星形成機構の恒星質量依存性や,恒星・惑星間の相互作用を理解するための重要な研究対象である.過去 10年程度に渡って,1000個にも及ぶ進化した恒星周りでの低質量の伴星の存在を視線速度法を用いて探査してきた.探査には,TAPAS プロジェクトの下,3.6 m Telescopio Nazionale Galileo にある HARPS-N を用いた視線速度観測を行っている.

ここでは,HD 5583 を,Hobby-Eberly 望遠鏡 (HET) を用いて 2313日に渡る詳細な視線速度データを取得した.また HARPS-N では 976日に渡る,超高精度のデータを取得した.
また BD+15 2375 については,HET で 3286日,HARPS-N で 902日間のデータを取得した.

これらの観測の結果,惑星を 2つ発見した.

パラメータ

HD 5583 系

・HD 5583
等級:7.60
質量:1.01太陽質量
半径:9.09太陽半径
光度:40.7太陽光度
有効温度:4830 K
表面重力:log g = 2.53
金属量:[Fe/H] = -0.50
年齢:~ 7.4 Gyr
距離:221 pc
自転周期:209日
変光周期:0.28日

・HD 5583b
軌道周期:138.35日
軌道長半径:0.53 AU
軌道離心率:0.076
最小質量:5.78木星質量

BD+15 2375 系

・BD+15 2375
等級:10.31
質量:1.08太陽質量
半径:8.95太陽半径
光度:37.2太陽光度
有効温度:4649 K
表面重力:log g = 2.61
金属量:[Fe/H] = -0.22
年齢:~ 7.4 Gyr
距離:153.22 pc
自転周期:181日
変光周期:0.25日

・BD+15 2375b
軌道周期:153.22日
軌道長半径:0.576 AU
軌道離心率:0.001
最小質量:1.061木星質量

議論

HD 5583 系

HD 5583 の惑星である HD 5583b は質量としては典型的な巨大ガス惑星である.しかし,ほぼ円軌道での軌道長半径 0.53 AU という値は,太陽型星 (1.2太陽質量未満) の進化した恒星周りに視線速度法によって検出された惑星の中では,最も近接した軌道を持っている.
(参考までに,BD+15 2940b は軌道長半径が 0.539 AU (Newak et al. 2013),HD 32518b は 0.59 AU (Döllinger et al. 2009))

また,中心星の HD 5583 は,この質量・光度に期待される視線速度の見かけの変動よりも 3 - 4 倍大きな値を示す.これは,この恒星が既に水平分枝 (horizontal branch) 段階に達している可能性を示唆する.

仮に水平分枝星である場合,HD 5583b は,中心星が赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) 段階にある時の,中心星による飲み込みと軌道長半径の減少を生き延びたことになる.そのため,この惑星は中心星の進化の段階の飲み込みを生き延びた稀なケースである可能性がある (Niedzielski et al. 2015c).

BD+15 2375 系

BD+15 2375 の惑星である BD+15 2375b は,進化した恒星付近では稀な木星質量天体であり,視線速度法で進化した恒星周りに発見された惑星としては最も軽い.
類似した惑星は 2つのみであり,BD+48 738b の,最小質量が 1.16木星質量 (Gettel et al. 2012, Niedzielski et al. 2015a),BD+15 2940b の最小質量が 1.17木星質量 (Nowak et al. 2013, Niedzielski et al. 2015a) である.

これらの惑星はともに 0.6 AU 以内の軌道を持ち,進化した恒星周りの惑星欠乏領域の端に位置している.

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arXiv:1601.05428
Fujii et al. (2016)
Radio Emission from Red-Giant Hot Jupiters
(赤色巨星周りのホットジュピターからの電波放射)

概要

惑星を持つ恒星が主系列段階を離れ赤色巨星分枝 (red giant branch) へと進化した時,恒星は数桁明るくなり,同時に主系列段階の時よりも大量の質量を放出する.結果として,中心星から数 AU の位置に仮に惑星が存在した場合は,標準的なホットジュピターと同等程度にまで加熱される,また濃密な恒星風に晒されることになる.

磁場を持った惑星は恒星風と相互作用を起こして電波を放射するというプロセスを考えると,このような "Red-Giant Hot Jupiters" (以下,RGHJs と表記) も電波放射源の候補となる.ここでは,恒星風と電波放射の間の経験的な関係と,これまでに提案されている惑星磁場のスケーリング即に基づき,RGHJs からのオーロラ電波のスペクトル強度の推定を行った.

その結果,RGHJs からの電波放射は本質的に,標準的なホットジュピターからの放射と同程度か,あるいは明るく,また中心星が主系列段階にある場合と比較すると ~ 100 倍程度明るいことが分かった.さらにこの電波の検出可能性について議論を行い,RGHJs からの電波放射は,SKA を用いて観測した場合は最大で数百 pc 以内の距離にあるものは検出可能であることが判明した.

研究背景

惑星磁気圏からの電波放射

強い磁場を持つ惑星は,高エネルギーの荷電粒子と相互作用した際に電波や X 線を放射する.有名な例は,木星のオーロラ領域からのサイクロトロン放射やメーザー不安定による電波放射である (Wu & Lee 1979, Zarka 1998, Treumann 2006).系外惑星においても,惑星の磁場や周辺環境 (恒星風の粒子,イオのような惑星からの粒子の存在) 次第では同様の放射が期待される.

太陽系の惑星からの電波放射に関しては,オーロラ電波の放射は惑星の磁気圏内に入る太陽風のエネルギーに比例するという経験則が示唆されている.これは "radiometric Bode's law" と呼ばれるものである (Desch & Kaiser 1984, Zarka et al. 2001).
(※チチウス・ボーデの法則に倣って付けられた名称)

この経験則を系外惑星系に外挿した先行研究が存在する.
ある研究では複数の系外惑星系に適用し,軌道長半径が小さい場合は ~ 1 mJy 程度の水準になるだろうと予測している (Farrell et al. 1999, Zarka et al. 2001, Lazio et al. 2004).また,恒星からの X 線放射フラックスから恒星の質量散逸率を推定し,惑星からの電波放射を再評価した研究もある (Stevens 2005).Grießmeier et al. (2005) では,恒星の初期の高い活動度から,若い系は惑星からの電波放射を検出する候補として適していると提案している.

これらの先行研究は,恒星風の運動エネルギーだけではなく,恒星風とコロナ質量放出の磁場のエネルギーも考慮している.しかし惑星の磁場スケーリング則はまちまちである.
Reiners & Christensen (2010) では,Christensen et al. (2009),Jardine & Collier Cameron (2008) に基づき,"radiometric Bode's law" に基づかない新しい惑星磁場のスケーリング則を適用した.

観測的観点からは,これまでに系外惑星からの電波放射の明確な検出例は存在しないが,肯定的な結果を示す初期成果は存在する (Lecavelier des Etangs et al. 2013, Sirothia et al. 2014).

赤色巨星まわりの惑星からの電波放射

質量が ~ 8太陽質量よりも小さい主系列星は,その後赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) や漸近巨星分枝 (asymptotic giant branch, AGB) 段階へ進化する.この段階においては恒星の半径と光度は桁で上昇する.

この時,恒星を公転する木星型惑星は,潮汐トルクや恒星からの質量散逸などの影響を受けて,軌道が内側もしくは外側に移動する (Nordhaus et al. 2010など).この時,恒星の質量次第だが,~ 10 AU 程度までの軌道を持つ惑星はホットジュピターになる.これをここでは Red-Giant Hot Jupiters (RGHJs) と呼ぶ (Spiegel & Madhusudhan 2012).

RGHJs は,重く,しかし低速の恒星風に晒される.恒星からの質量散逸率は 10-8 - 10-5 太陽質量/年 程度となる (Reiners 1975など).惑星からの電波放射が恒星風に関係しているという仮定のもとでは,進化した恒星周りの惑星からは強い電波放射が可能となる.

RGHJs からの電波放射に関しての先行研究である Ignace et al. (2010) では,低温の進化した恒星周りの惑星質量天体からの電波放射について調査している.
これによると,進化した恒星からの恒星風は電離度が低いため,電波放射が抑制される.またここではバウショック通過後の加熱による水素原子イオンの生成のシナリオについても検討している.結果として,RGHJs まわりでの電波生成は太陽系の惑星の場合と異なるとした.また,下限値の見積もりでは,電波放射は検出限界以下であるとした.

新たに考慮すること

ここでは,重い恒星風の惑星への降着を考慮する.降着の際に紫外線や X 線が放射されるため,惑星付近の恒星風を電離するという現象が起きる.恒星風が電離された場合,太陽系の惑星で起きているものと同様の磁気圏と恒星風の相互作用が期待される.そこで "radiometric Bode's law" を咳嗽し,過去の研究よりも楽観的な見積もりができる.

さらに,RGHJs からの電波放射の検出に関して障害になり得る,恒星風のプラズマ周波数のカットオフの推定と,惑星磁場のスケーリング則をもちいてパラメータサーチを行うことによって,先行研究よりも改善を行っている.

モデル

電波放射の周波数

電子が惑星の磁場に沿って流れ,局所的なサイクロトロン周波数で電波放射を行う.上限は,惑星表面での磁場によるサイクロトロン周波数となる.

これが地球の表面で観測できるためには,系外惑星からの電波の周波数の上限値が,地球の電離圏でのプラズマ周波数よりも大きくなっている必要がある.加えて,視線方向の最大のプラズマ周波数よりも大きくなっている必要がある.

プラズマ周波数は,
νplasma = √(nee2/πme)
である.ne は電子の数密度,e は素電荷,meは電子の質量である.

地球の電離圏は電子の数密度は 106 cm-3 程度以下であり,プラズマ周波数は 10 MHz 程度以下となる.

電波強度

電波のスペクトルフラックスは,
Fν = P/(Ω l2 ⊿ν)
となる.ここで Ω は放射される立体角,l は地球からの距離,⊿ν は周波数のバンド幅である.また, P は考えている周波数領域でオーロラ電波放射として注入されるエネルギーである.P は木星のオーロラ電波放射と,恒星風からのエネルギー注入でスケーリングを行う (Grießmeier et al. 2005, 2007a, b).

標準値として,P = 2.1 × 1011 W を用いる (Grießmeier et al. 2005, 2007a).

Ω は木星と同じ値を採用する.参考として,木星,土星,地球の Ω はそれぞれ,~ 1.6, 6.3, 3.5 ステラジアンである (Desch & Kaiser 1984).

磁場の見積もり

系外惑星の磁場については,木星の磁場をスケーリングする.木星の場合は表面で ~ 10 G である.

Christensen et al. (2009) で提案され, Reiners & Christensen et al. (2010)で用いられた関係では,ダイナモ領域での磁場と,全散逸に対するオーム散逸の比,ダイナモ領域の平均密度,オーダー 1 の efficiency factor,ダイナモ領域の外端における対流フラックスの関係を用いている.このスケーリングは高速自転している場合にのみ適用できる.一般的なホットジュピターは潮汐固定されているため自転は低速だが,RGHJs の場合は潮汐固定されていないだろうと考えられる.

また,0.1 - 10木星質量のガス惑星の内部構造モデル (Fortney et al. 2007, Spiegel & Burrows 2012, 2013) では,ガス惑星は ~ 1 Gyr 以内に 0.8 - 1.2木星半径に収縮する.そのため惑星の半径としては 1.0木星半径を用いる.

惑星の密度分布は,n = 1 のポリトロープを考える.
ダイナモ領域の外端は,水素が金属的になる臨界密度である 0.7 g cm-3 を超える半径とする (Queloz et al. 2006など).ダイナモ領域の平均密度はコアの平均値を用いる.木星の場合は,ダイナモ領域外端の半径は 0.85木星半径,密度は 1.899 g cm-3 である.

恒星風

恒星風は,球対称の構造を考える.恒星からの質量散逸率と恒星からの距離,恒星風速度から数密度を計算する.

太陽風の場合は,質量散逸率は 2 × 10-14太陽質量/年,速度は ~ 400 km s-1である (Hundhausen et al. 1997).
赤色巨星の場合は,10-8 - 10-7太陽質量/年 程度である (Reimers 1975).さらに,AGB 段階の場合は 10-5 にまでなり得る (Schild 1989など).そのため,恒星風による質量散逸率は 10-6 - 10-9太陽質量/年 とする.

恒星風の速度は,数恒星半径程度では脱出速度と同程度のオーダとなる.したがって,100太陽半径の恒星の場合は,~ 30 km s-1 となる.

惑星周囲での恒星風の電離

Ignace et al. (2010) での議論の通り,恒星が進化すると恒星風の電離度は ~ 10-3 程度となる (Drake et al. 1987).荷電粒子のみが磁場と相互作用を起こすため,電波放射は電離度が低い場合は低下する.

しかし進化した恒星からの恒星風は速度が低下し,惑星の脱出速度よりも低速になる.そのため,惑星への恒星風の降着が発生する.Spiegel & Madhusudhan (2012) では,ボンディ・ホイル降着 (Bondi-Hoyle acceretion) を考慮した.この場合,恒星からの質量散逸率が 10-8太陽質量/年,恒星質量が太陽と同じ,惑星質量が木星と同じ場合,降着による光度は 1025 erg s-1となり,また温度は 2 × 105 K になるとした.

この場合,~ kT 程度 (k はボルツマン定数) の 紫外線/X線光子が生成される.これは 13.6 eV よりも高エネルギーであるため,惑星周りに電離領域を生成することが出来る.これによって電波放射を増加させる効果がある.

結果

検出可能性を考えた場合,惑星質量が 4木星質量よりも重く,磁場が木星より強い惑星の場合,電波放出の検出が期待できる.この場合,恒星風のカットオフ周波数の影響は小さい.また地球から ~ 100 pc の距離にある時,電波放射は ~ 10 μJy となり,これは SKA で検出可能な値である.また,VLA のアップグレード後の性能で検出可能である.

電波における RGHJs のサーベイ観測は,トランジット法や視線速度法ではあまり検出の感度が良くない,進化した恒星周りの惑星の探査手法として用いることが出来る.もし検出できた場合は,様々な物理量の推定が可能となる.
例えば,時間変動性からは惑星の自転周期や衛星の存在を探ることが出来る.またスペクトルが分かれば,カットオフ周波数の上限から,惑星表面での磁場の強さが分かる (視線速度法で惑星の質量が判明している場合).カットオフ周波数の下限からは,惑星軌道における恒星風の情報を得ることが出来る.また,"radiometric Bode's law" の検証を行うことも可能である.

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arXiv:1601.05672
Sicardy et al. (2016)
Pluto's atmosphere from the 29 June 2015 ground-based stellar occultation at the time of the New Horizons flyby
(ニューホライズンのフライバイの時期における地上からの恒星の掩蔽観測による冥王星大気)

概要

2015年6月29日に,ニュージーランドとオーストラリアで観測された,冥王星による恒星の掩蔽 (stellar occltation) の観測結果について報告する.

この観測は,NASA の冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」の冥王星フライバイのわずか 2 週間前に行われたものであり,地上観測と宇宙からの観測の良い比較となる.

観測の解析の結果,冥王星大気は現在も拡大している最中であり,2013年の結果と比べると大気圧が 5 ± 2% 増加,さらに 1988年の結果と比べるとファクターで 3 増加している.この傾向は,冥王星が近日点通過後に太陽からの距離が大きくなることによって大気の縮小が起きるというモデルを排除する結果である.

また,稀少なイベントである "central flash" が,ニュージーランドの幾つかの地点で観測された.これは掩蔽の最中に,恒星が冥王星の見かけ上のちょうど真後ろに来た際に,恒星からの光が冥王星大気中で屈折を受けて地球の方向に集光されることによって,短時間の間僅かに増光する現象である.
掩蔽が起きている最中の光度曲線は通常フラットになるが,central flash が発生した際は光度曲線の中心にスパイクが立つ.

この central flash の形状と強度から,冥王星表面から 4 km の位置にベースがある,厚さ ~ 3 km の球対称で透明な大気層の存在を検出した.またその領域の平均熱勾配は 5 K km-1 であって.

モデルと観測された central flash の形状には微妙な違いがある.恒星光を隠す冥王星の縁の形状 (山脈など) によって違いが引き起こされているという可能性についても議論を行った.

また,2つの適用可能な温度構造と,今回得られた圧力構造の外挿より,冥王星表面での気圧は 12.4 - 13.2 μbar と推定された

議論

冥王星の大気圧は,1988年以降単調に増加している傾向がある.冥王星は現在近日点を通過後,太陽からの距離が大きくなっていく時期にあるが,これに伴って大気が縮小するというモデルは現時点では排除されることになる.

このような大気の縮小が起きないとするモデルとして,冥王星の北極に永続的な窒素分子の極冠を持つ高熱慣性モデル (Olkin et al. 2015) の予測と整合的である.また別のモデルでは,数年内に大気圧は減少へ転じるという予測もある (Hansen et al. 2015).

今後の冥王星による掩蔽観測の観測と解析,またニュー・ホライズンズのデータから大気モデルの区別が出来るだろうと考えられる.

また外挿した表面大気圧は 12.4 - 13.2 μbar であった.ニュー・ホライズンズの電波掩蔽観測からは,平均大気圧は 11 ± 1 μbar という値が得られている (Hinson et al. 2015).今回得られた値はニュー・ホライズンズによるデータよりはやや大きいものの,矛盾しない値である.この値の違いが有意なものであるのか,何らかの効果が入っていない結果なのかは,更なる研究が必要である.

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