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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.04116
Mommert et al. (2015)
ExploreNEOs VIII: Dormant Short-Period Comets in the Near-Earth Asteroid Population
(地球近傍小惑星中の短周期休眠彗星)

概要

地球近傍小惑星 (Near-Earth asteroid, NEA)中の、彗星に起源を持つ小惑星天体、"dormant comet" (休眠状態の彗星)について調査した。
統計的なアプローチから、小天体の木星に対するティスランパラメータ (Tisserand's parameter)、遠日点距離、木星との最小軌道交差距離を用いて、短周期地球近傍彗星に類似した軌道を持つ小惑星を識別した。

彗星状の軌道を持つNEAのサンプルから、幾何学的アルベドが 0.064以下のものを "dormant comet"として選択した。
彗星状の軌道を持つNEAのうち、~ 50%のみが彗星と同程度のアルベドを持っていた。

23個のNEAを休眠状態の彗星候補として識別した。
また、NEOWISEによる超低温サーベイに用いられたバイアスを外すためのプロシージャを用いて、小天体の光度とサイズから、単酒気の休眠状態の彗星のNEA中の個数について制限を与えた。
結果、等級 H が21以下のNEAのうち 0.3 - 3.3%と、直径が 1 km以上のもののうち ~ 9%は、短周期の休眠状態の彗星であると考えられる。

研究背景

地球近傍天体とその起源

地球近傍小惑星 (Near-Earth asteroid, NEA)の個体群は、彗星と小惑星の両方に起源を持つと考えられており、力学的パラメータと物理量は広範囲に分布している。
この多様性から、NEAは異なる起源と進化をしてきた天体たちの集合であるということが示唆されている。

NEAの力学的な寿命は、107年程度と考えられており(Morbidelli & Gladman 1998)、これは太陽系の年齢よりもずっと短いものである。
従って、現在のNEAの状態からは、何らかの供給源が存在する必要があるということが言える。
NEAの供給源としては大部分はメインベルト (小惑星帯)に起源を持つと考えられており、NEAへの輸送メカニズムはよく理解されている。

彗星は長い間、NEAの集団のうちの彗星的な天体だけではなく、小惑星的な天体の供給にも関わっていると疑われてきた。
彗星は太陽系の外縁領域からやってくる天体であり、氷を含み、巨大惑星の重力によって軌道が擾乱を受け太陽系の内側領域までやってくるものである。

彗星の起源

力学的な観点から、彗星は2つの主要なグループに分類することが出来る。
軌道周期が 200年を超える長周期彗星と、20年以下の短周期彗星である。

短周期彗星は低い軌道離心率を持ち、木星の強い影響下にある。
これらの黄道面に近い軌道と短い周期からは、短周期彗星はカイパーベルト天体、特に散乱円盤とケンタウルス族に起源を持つものだという事が強く示唆される(Duncan et al. 2004)。

一方の長周期彗星は、軌道傾斜角はほぼ等方的に分布しており、また大きな軌道離心率を持っている。
これらの事実は、長周期彗星はオールトの雲起源であるということが示唆されている(Lowry et al.2008)。

ほとんどのハレー彗星タイプの彗星は 20 - 200年の周期を持ち、これらは長周期彗星の分布のうちの短周期側のテールだと考えられている(Weissman 1996)。
これらの起源にはまだ議論があり、モデルによってはカイパーベルト起源を示唆したり(Levison et al. 2006)、オールトの雲起源を示唆したりする(Wang & Brasser 2014)。

ここでは、地球近傍天体の分布における短周期彗星、短周期の地球近傍彗星(bear-Earth comet, NEC)に着目する。

休眠した、あるいは死んだ彗星

彗星が太陽に近づくに連れて受け取るエネルギーが増加するため、表面温度は上昇する。
表面付近の揮発性物質の昇華によって彗星の活動が起こり、コマと尾を形成する。

Levison & Duncan (1997)によると、短周期彗星の活動寿命のもっともらしい値は ~ 12000年であり、これは短周期彗星の力学的な寿命の平均である 4.5 × 107年やNEAの力学的な寿命の平均 (107)よりもずっと短い値である。
従って、地球近傍の空間で長時間を過ごした彗星はその活動を終え、"dormant" (休眠した)、あるいは"extinct" (死んだ)彗星となり、アルベドが低い小惑星との区別がつかなくなる(Wetherill 1991)。

彗星が活動を終えて小惑星場の天体になるというのは、彗星の運命の一つの可能性にすぎない。
観測からは、彗星は小さい破片に分解することもあるし、また最近ISON彗星が起こしたように完全に破壊することもあることが分かっている。

しかし Whitman et al. (2006)によると、短周期惑星の活動の寿命になる頃には、彗星は破壊するよりも休眠した状態になる方が多いという事が示されている。
Levison & Duncan (1997)の推定によると、短周期彗星の78%は死んでいると考えられる。

さらに、これまで小惑星だと思われていたが再び彗星活動を起こした天体もある。
一例が地球近傍小惑星の 4015 Wilson-Harrington (ウィルソン・ハリントン彗星)で、1949年には彗星活動が観測されたが、その後は観測されていない。
また地球近傍小惑星 3522 Don Quixote (ドン・キホーテ)も、小惑星として発見された後に30年近く経ってから彗星活動が確認されたものもある (Mommert et al. 2014)。

ドン・キホーテは死んだ彗星 (extinct comet)と考えられているが、休眠した彗星 (dormant comet)とするほうがより正確である。
なぜなら、それらの活動が継続的で弱いものなのか、一時的なものなのかは明確ではないからである。
これら全ての天体が実際に死んでいるのかははっきりしないため、ここでは"dormant comet"、休眠した彗星という言葉を用いている。

その他の活動的な彗星と同様、休眠した彗星も地球に衝突して、地球に揮発性物質を運ぶ可能性がある。
そのためこれらの理解は、太陽系や惑星形成の理解にも繋がるものである。

ここでは、地球近傍天体の統計的な解析から、彗星起源の天体を識別している。

結論

・23個の、短周期NECに似た軌道とアルベドを持つNEAを識別した。これらは休眠した短周期地球近傍彗星だと考えられる。

・NEOWISEサーベイのde-biasingから、等級 Hが21以下のNEAの 0.3 - 3.3%、直径が 1 km以下の天体の およそ9% (4 - 11%)のNEAが休眠した短周期NEC候補である。光度による制限から得られた値はこれまでの推定よりわずかに低い。しかしサイズからの制限はこれまでのものと一致する。

・今回用いたサンプル中の地球近傍彗星に類似した天体のうち~ 50%だけが、彗星と同じ程度のアルベドを持つ。しかし、NEAの中で木星とのティスランパラメータが 2.0 - 2.8で、幾何学的アルベドが 0.064以下のものは 96%の割合で彗星起源である。

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.03350
Kenyon & Bromley (2015)
Collisional Cascade Caclulations for Irregular Satellite Swarms in Fomalhaut b
(フォーマルハウトbでの不規則衛星群の衝突カスケード計算)

概要

フォーマルハウトにおける、軌道長半径 120 AUの位置にある 1 - 300地球質量の惑星まわりでの、不規則衛星群 (Irregular satellite swarms)の衝突進化の数値計算を行った。
10 - 100地球質量の惑星においては、衛星群の初期質量が惑星質量の ~1%を持つ場合は、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同程度の断面積を持つことが分かった。
30 - 300地球質量の惑星の場合は、1 - 10 Myrの間は光学的に厚い衛星群を維持できる。
このような系がどの程度の頻度で存在するのかは、β Pictoris moving group (がか座ベータ運動星団)中の恒星をハッブル宇宙望遠鏡や地上から補償光学を用いて観測することによって、制限をかけることが出来る。また、他の近傍の若い恒星のアソシエーションの観測でも同様である。

フォーマルハウトbについて

フォーマルハウトbの発見と疑義

フォーマルハウトb (Formalhaut b)は、A型主系列星フォーマルハウトを公転する、~ 120 AUにある惑星候補天体である。

光学観測での色と、1 μmより長波長での観測では検出できていないことから、フォーマルハウトbは惑星ではなく、ダスト雲からの放射であるという主張が存在する (Marengo et al. 2009, Jansen et al. 2012, Currie et al. 2012, Kalas et al. 2013, Jansen et al. 2015)。
また、可視光での放射の観測からは、この天体の合計の断面積 (cross-sectional area)は、~ 1023 cm2と推定されている(Kalas et al. 2008, Currie et al. 2012, Galicher et al. 2012, Kalas et al. 2013)。

ダスト雲の生成機構

A型星まわりの遠距離におけるダスト雲の放射は、大きく分けると2タイプの衝突モデルによって説明ができると考えられている。
小天体の高速衝突
最もシンプルなモデルが、半径 ~ 100 kmの2天体が高速で衝突し、拡大する小粒子の雲が生成されるというものである(Kalas et al. 2008, Galicher et al. 2013, Kenyon et al. 2014, Lawler et al. 2015)。
半径が 100 km程度の2天体からの脱出速度で拡大するダスト雲は、50 - 100年のタイムスケールでは分離して観測することが出来ない(Galicher et al. 2013, Kenyon et al. 2014, Lawler et al. 2015)。

より小さく、大きな光学的厚みを持つ粒子は、一般に速く拡散する。従ってこの粒子が一定の質量を持っている場合は、ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた次の10年の観測で検出できるだろう。
また拡大していくダスト雲が内部速度分散を持っていれば、差動運動によってダスト雲はリングを形成するだろう(Kenyon & Bromley 2005, Kenyon et al. 2014)。
これも、同じくハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で次の10年で検証可能だろう。
不規則衛星群
円盤状、または半球状に分布した不規則衛星の群れが、スーパーアース質量の惑星の周りを覆っていると仮定する説がある(Kalas et al. 2008, Kennedy & Wyatt 2011, Kenyon et al. 2014)。
半径が 500 - 1000 km以下の粒子の衝突カスケードによって、200 - 400 Myr (フォーマルハウトの年齢と同程度)の間、惑星周りの大量のダスト粒子を維持するというものである。

長時間進化の解析的モデルでは、べき乗則に従ったサイズ分布を持つ粒子を仮定した場合、~ 10地球質量まわりにある 0.1地球質量程度の不規則衛星群で説明できるとしている。
しかし、カスケード中の最大物体の半径 rmaxは、べき乗則の指数 qに依存する。
小さいqの場合は、観測結果の説明のためには大きなrmaxが必要とされる。大きなrmaxには、重い不規則衛星群が必要とされる。

不規則衛星群のシミュレーション

輻射圧は、半径が 100 μm以下の粒子が惑星の重力圏に留まり続けるのを妨げる。
従って惑星の重力圏から放出された粒子によって尾が形成される。この痕跡は検出可能であると考えられる(Kenyon et al. 2014)。
これを検証するためには、衛星群から放出される粒子についてさらなる解析が必要である。

よって、ここではスーパーアースまわりの球対称に分布した不規則衛星群のシミュレーションを行った。
スタンダードなモデルでは、0.01惑星質量、rmax ~ 200 - 400 kmの初期条件での不規則衛星群で観測されているフォーマルハウトbの断面積を説明することが出来る。
より小さな衛星も考慮して計算することによって、より小さな衛星群でも観測を説明することが出来る。

計算

計算には、Orchestraコードを用いた。
これは集積計算を行うためのコードである。
本来は原始惑星系円盤中での固体の集積計算のために開発されたものであるが、これを球殻中での計算を行うために改良した。
また、Orchestraコードは大きい天体の力学的相互作用と軌道計算を行うためのN体計算も含んでいる。

ここでは、集積粒子間の相互作用、トレーサー粒子を介したN体計算は無効化してある。

結果概要

中心星質量が1.4太陽質量、軌道長半径が 120 AU、1 - 300地球質量の惑星周りでの、不規則衛星群の集積計算を行った。

基本のモデルでは、10 - 100地球質量周りでの衛星群は、100 - 400 Myrの間にわたって、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同じ断面積を持つ。
この計算中では、惑星と衛星群の質量比は 0.01、粒子の最小半径は 100 μmである。
質量比が小さく、最小半径が大きい場合は、より重い惑星周りの衛星群でも観測結果を説明することが出来る。
最小半径が小さい場合は、観測結果を説明するためには惑星質量は軽い必要がある。
不規則衛星群の初期サイズ分布は、この結果には大きな影響を与えない。

また太陽系での現象にも言及した。
木星周りにある 0.1 - 1 kmサイズの不規則衛星が、モデルに興味深い制限を与えるだろう。
また、フォーマルハウトbでは小さい粒子の散逸による痕跡は検出可能であると推測される。






フォーマルハウトbは、直接撮像で発見された系外惑星であり、初めて可視光領域の直接撮像で発見された系外惑星でもあります。
中心星から遠く離れた位置にある木星型惑星だと考えられていますが、様々な観測からその地位に疑義を呈する意見もあります。

例えば円盤中での小天体の衝突によって生成されたダストからの放射を見ているというものや、より軽い惑星の周りの衛星やダストを見ているというものです。
変わったものでは、"フォーマルハウトとは無関係の、背景の中性子星を観測している"などという説まで出されています(Neuhaeuser et al. 2015)。
The companion candidate near Fomalhaut - a background neutron star?

この論文は、スーパーアース程度の惑星の周りにある衛星群と、それらの衝突で生み出されるダストによってフォーマルハウトbの放射を説明するという説を、集積シミュレーションから検証したものです。

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.03084
Macintosh et al. (2015)
Discovery and spectroscopy of the young Jovian planet 51 Eri b with the Gemini Planet Imager
(GPIによる若い木星型惑星エリダヌス座51番星bの発見と分光観測)

概要

Gemini Planet Imager (GPI)を用いて、若い(~ 20 Myr)恒星であるエリダヌス座51番星 (51 Eridani, 51 Eri)の周りに直接撮像によって惑星を発見した
恒星と惑星の投影距離は 13 AUである。

エリダヌス座51番星bの近赤外線観測から、強いメタンと水の吸収スペクトルが得られた。
スペクトルと測光観測からのモデルでは、惑星の光度は 1.6 - 4.0 × 10-6 太陽光度であり、有効温度は 600 - 750 Kと推定された。
これらの年齢と惑星の光度から、惑星が"hot-start"で形成されたとするモデルでは、惑星質量は 2木星質量であると推定される。
またこの惑星の低い光度は、木星と同じくコア集積による"cold-start"とも合うものである。

Hot-startとcold-start

系外惑星の直接撮像の観測からは、惑星の光度が分かる。
惑星の光度は、年齢と質量、初期条件の関数であり、つまり惑星の光度は惑星形成時の情報を得るための重要な物理量である。

惑星形成の初期条件には大きく分けて2つある。

・Hot-start
これは惑星が急速に形成されるモデルである。力学的タイムスケールでの原始惑星系円盤の不安定性によって惑星が形成される。
この形成方法では、高エントロピーの惑星が形成され、若い時に大きな光度を持つことになる。

・Cold-start
これは、まず固体コアが形成され、その後円盤内のガスが衝撃波を介して固体コアに降着して木星型惑星を形成するというものである。
この形成方法では初期のエントロピーは小さいため、hot-startによるものと比べると温度は低く、半径もわずかに小さくなる。

直接撮像で発見されている若い系外惑星は、ほとんどがcold-startで説明するには明るすぎる。
(ただし、cold-startでも降着時の衝撃波の様子が特別である場合は、高エントロピーになる場合もあり得る。)

エリダヌス座51番星での惑星発見

エリダヌス座51番星の概要

Gemini Planet Imager (GPI)による、Gemini Planet Imager Exoplanet Survey (GPIES)では、600個あまりの近傍の若い恒星をターゲットとして観測している。
エリダヌス座51番星は、近傍にあり若いため、初期の観測対象として選定されていた。

エリダヌス座51番星は、中間赤外、遠赤外領域に赤外超過があることが分かっている。これは、5.5 AU, 82 AUに軽いダストのベルトが存在することによるものだと考えられている。
また、2000 AUの距離に、お互いに6 AU離れたM型星の連星 (GJ 3305A, GJ 3305B)を持っている。

これら3つの恒星は、2001年にβ Pictoris moving group (がか座ベータ運動星団)の一員であるということが判明している。
がか座ベータ運動星団の年齢は 12 - 23 Myrであり、またリチウム欠乏の年齢制限から、エリダヌス座51番星は 20 ± 6 Myrと推定されている。

エリダヌス座51番星bの発見

2014年12月に、H band (1.65 μm)で観測を行った。この観測はGPIESの44番目のターゲットであった。
観測の結果、エリダヌス座51番星bを発見した。また、メタンと水の吸収を検出した。

2015年1月には波長の範囲を広げ、GPIで J band (1.25 μm)の観測を行った。さらに、NIRC2/W、Keck2 (3.8 μm)でも観測を行い、双方で惑星の存在を確認した。
惑星のスペクトルは、褐色矮星のスペクトル型で言うと T4.5 - T6に類似している。

エリダヌス座51番星bの特徴

この惑星がhot-startで形成されたとする場合、惑星の光度からは質量は2木星質量と推定される。
一方cold-startの場合は、形成後 ~ 20 Myrでの光度は惑星質量にほとんど依存しない。
これらの解析より、エリダヌス座51番星bは 2 -12木星質量であると推定される。

エリダヌス座51番星は連星の伴星を持ってるが、エリダヌス座51番星bの軌道に大きな影響を与えるには遠い。
また若い系であるため、Lidov-Kozai振動が軌道離心率と軌道傾斜角に影響を与えることはあるものの、軌道離心率が非常に大きくなって潮汐が効き、惑星の軌道長半径を変えるほどの影響があったとは考えづらい。
そのため、惑星は現在ある場所周辺で形成されたものだと考えられる。

太陽型星まわりの15 AUの位置にある2木星質量の惑星は、コア集積モデルの枠組みで説明可能である。

大気にメタンを多く含むスペクトルを持ち、光度が小さい、おそらくは低エントロピー状態の初期条件であったと考えられるエリダヌス座51番星bは、中心星から大きく離れた軌道を持ち、高温でより重い惑星と、木星型惑星を繋ぐ存在であると考えられる。

諸物理量

・エリダヌス座51番星
スペクトル型:F0IV
質量:1.75太陽質量
光度:7.1太陽光度
距離:29.4 pc (~ 95.89光年)
年齢:20 ± 6 Myr
金属量:[M/H] = -0.027

・エリダヌス座51番星b
Cloud-free equilibrium model (SM-750K)での解析の結果は、有効温度 750 K、0.76木星半径、年齢が 10000 Myr、67木星質量となった。
半径の割に質量が大きすぎること、年齢がその他の観測と全く合わないことから、このモデルの結果は間違っていると考えられる。
(雲が存在しないという仮定は適用できない事を示唆)

Partial-cloud model (TB-700K)では、有効温度 700 K、1木星半径、年齢が 20 Myr、2木星質量となった。年齢はその他の観測からの推定とよく一致し、半径と質量もリーズナブルな範囲である。






「若い木星を発見」としてニュースにもなった系外惑星の発見報告論文です。

参考リンク
「若い木星」発見、地球から100光年の系外惑星 (AFPBB News)

リンク先には質量は木星の2倍と書かれていますが、これはあくまで見積もりの下限値であって、形成の初期条件やモデルによって不定性があるものです。
一般に、直接撮像で発見された惑星の質量は惑星の光度と年齢から決定しますが、形成過程の違いがこの見積もりに大きな影響を及ぼすので、誤差も大きくなります。

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arXiv:1508.02763
Essick & Weinberg (2015)
Orbital decay of hot Jupiters due to nonlinear tidal dissipation within solar-type hosts
(太陽型星における非線型潮汐散逸によるホットジュピターの軌道減衰)

概要

太陽型星内部での、潮汐によって駆動されるg-modeの励起と散逸によるホットジュピターの軌道進化について調べた。
非線型のモードのダイナミクスから、力学的潮汐の非線型散逸率は、線型の散逸率よりも数桁大きくなることを示した。

その結果として、0.5木星質量以上、軌道周期 2日以下の惑星は、太陽型星の主系列段階の寿命よりも短いスケールで減衰するという事がわかった。
この潮汐散逸は、潮汐のQ値に直すと 105 - 106に相当する。

発見されているホットジュピターに対して結果を適用したところ、WASP-19bやHAT-P-36bを含む10個程度の系では、軌道減衰のタイムスケールは 1 Gyrよりも短くなった。
潮汐によって引き起こされる軌道の速い減衰は、太陽型星の周りにおいて、木星質量程度以上、軌道周期2日以下の惑星の数が少ないという観測事実を説明出来るかもしれない。
また、軌道減衰は将来的にはトランジット時刻変動 (Transit Timing Variation, TTV)で検出できる可能性がある。

ホットジュピターでの軌道散逸の例

・WASP-19b

中心星(WASP-19)は、0.930太陽質量、0.990太陽半径の太陽型星。
惑星は1.114木星質量、軌道周期 68155.776秒 (~ 0.78884日)の、極めて短周期のホットジュピター。
このホットジュピターの軌道減衰のタイムスケールは ~ 9.2 Myr (920万年)である。

・HAT-P-36b
中心星(HAT-P-36)は、1.022太陽質量、1.096太陽半径の太陽型星。
惑星は1.83木星質量、軌道周期 114682.78秒 (~ 1.327日)の、同じく極めて短周期のホットジュピター。
このホットジュピターの軌道減衰のタイムスケールは ~ 200 Myr (2億年)である。

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arXiv:1508.02411
Becker et al. (2015)
WASP-47: A Hot Jupiter System with Two Additional Planets Discovered by K2
(WASP-47:K2による、ホットジュピター系での2個の追加の惑星検出)

概要

ケプラー宇宙望遠鏡のK2ミッションでの観測データから、WASP-47で既に発見されていたホットジュピターに加え、外側に海王星サイズ、内側にスーパーアースの2個の惑星を発見した。
K2の光度曲線と、トランジット時刻変動 (Transit Timing Variation, TTV)から、外側惑星のパラメータを決定した。

また、数値計算を行ってこの系の安定性とTTVを理論的に予測した。
理論的な予測からのTTVと観測でのTTVは良い一致が見られた。
TTVから2つの惑星の質量を決定し、もう1つの惑星に対しては質量の上限を与えた。

ホットジュピターのトランジット深さが深いため、地上観測からのTTVの検出が可能と考えられ、また中心星の明るさは視線速度での追観測を行うのに適している。

軌道安定性

軌道の安定性を確認するために、N体計算コードであるMercury 6を用いて数値計算を行った。
惑星質量については、トランジットから得られた惑星半径から推定される質量の範囲内でパラメータを振った。また軌道離心率は 0 - 0.3の範囲の初期条件を与えた。
この状態で、合計 1000個の計算を行った。
計算時間は、計算開始から10 Myrに達するまで、あるいは途中で軌道が不安定になり、惑星が系から放り出されるか、惑星同士が衝突するか、惑星が恒星に降着するまで行った。

その結果、30%が短いタイムスケールで不安定になった。
また、90%は長いタイムスケールで不安定だった。
計算開始後 ~ 104年以降は、その段階まで不安定にならずに生き延びたものはその後ほとんど安定に存在した。

軌道離心率の依存性について、初期の軌道離心率が低いものは系が生き残りやすく、e > 0.05のものはほとんどが不安定になった。
従って3惑星の軌道離心率はどれも小さいことが示唆される。
また、不安定の起こしやすさの惑星質量への依存性は見られなかった。

軌道計算から、ホットジュピターのWASP-47bと外側の惑星であるWASP-47dの平均運動共鳴の証拠は得られなかった。

恒星と惑星のパラメータ

恒星

・WASP-47
1.04太陽質量
1.15太陽半径
[M/H] = +0.36
有効温度 5576 K
可視等級 11.9

惑星

・WASP-47b
軌道周期:4.15912282日
337地球質量
12.71地球半径
superWASPプロジェクトによって既にトランジット法で発見されていた惑星で、ホットジュピターに分類される惑星。

・WASP-47c
軌道周期:0.789593日
< 8.9地球質量
1.817地球半径
TTVより惑星質量の上限が与えられた。
スーパーアースサイズの惑星である。

・WASP-47d
軌道周期:9.03079日
8.5地球質量
3.60地球半径
こちらはTTVにより惑星質量が決定された。
サイズ・質量的には海王星に似た惑星である。

この系の特徴について

WASP-47は独特の系である。
この系は、ホットジュピターを持つ系で、追加の中心星に近接する惑星が発見された初めての例である。

Exoplanet Orbit Databaseによると、80地球質量より重く、軌道周期10日以下の惑星を持つ系は 224個発見されている。
このうち更に惑星を持っていることが分かっている系はわずか6個であり、さらにその追加の惑星の軌道周期が100日未満であるものは存在しなかった。

3つともがトランジットを起こしていることからこの惑星系はほぼ同一平面上にあり、さらに数値計算からは軌道離心率が e > 0.05の場合は不安定なので、どれもほぼ円軌道であることを示唆する。
そのため、これらの3つの惑星は円盤の中を一緒に移動してきたか、移動の最終段階で系をコンパクトにする何らかのdampingがあった可能性がある。

また、TTVがK2ミッションでの観測で検出されたレアなケースでもある。
これは、
(1) TTV周期(42.7日)がK2ミッションの観測ベースライン(69日)よりも短い
(2) 惑星が検出可能なTTVシグナルを生み出すのに十分なほどの質量を持つ
という理由による。

中心星のWASP-47はVバンド等級が 11.9と比較的明るいので、視線速度での追観測が可能である。
またK2の光度曲線からは、恒星の自転に起因する変動が見られず、活動が静穏な恒星であることも視線速度での追観測に適している理由である。

結論

1. 既に発見されていたWASP-47bに加え、トランジットでさらに2つの惑星を発見した。内側のWASP-47cは超短周期惑星、外側のWASP-47dは海王星に類似したサイズである。

2. 惑星系は力学的に安定である。1000パターンの10 Myrに渡るシミュレーションを行い、初期軌道離心率が最も低い ~ 10%のものが不安定にならず生き残った。

3. 観測されているTTVと数値計算の結果はよく一致した。WASP-47bとWASP-47dの質量を決定することができ、WASP-47bについては視線速度法での先行観測からの値とも無矛盾であった。

4. この同一平面上でほぼ円軌道のコンパクトな系は、少なくとも木星サイズのサブセットは、中心星に向かって力学的に穏やかに移動することが出来るという事を示唆している。





ホットジュピターは単独で存在していることが多いという観測的な傾向があります。
(ただし本当に単独なのか、他にも惑星は存在するが検出できていないだけなのかは不明)
また、ホットジュピター以外にも惑星がある場合は、どれも中心性から遠く離れたところを公転する惑星でした。

今回は、ホットジュピターがある系で、かなり中心星に近い惑星が発見された初めての例ということです。

ここでは、ホットジュピターとこの2つの新発見の惑星が仲良く内側にmigrationしたという事が示唆されているけど、果たしてmigrationがちゃんと止められるのか、途中で共鳴に入らずに落ちてこられるのかは議論の余地がありそう。

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