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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.09258
Alsubai et al. (2019)
Qatar Exoplanet Survey: Qatar-8b, 9b and 10b --- A Hot Saturn and Two Hot Jupiters
(カタール系外惑星サーベイ:Qatar-8b,9b と 10bーホットサターンと 2 つのホットジュピター)

概要

Qatar Exoplanet Survey (QES) による新しい系外惑星の発見を報告する.

Qatar-8b はホットサターンで,0.37 木星質量,1.3 木星半径である.太陽型星を 3.7 日周期で公転している.
Qatar-9b はホットジュピターで,1.2 木星質量,1 木星半径である.0.7 太陽質量の低質量中期 K 型主系列星を 1.5 日周期で公転している.
Qatar-10b は平衡温度が 2000 K の高温のサプジュピター質量惑星で,0.7 木星質量,1.54 木星半径である.軌道周期は 1.6 日で,サブジュピター砂漠の縁に位置する.

パラメータ

Qatar-8 系

Qatar-8
等級:V = 11.526
スペクトル型:G0V
質量:1.029 太陽質量
半径:1.315 太陽半径
光度:1.690 太陽光度
有効温度:5738 K
金属量:[Fe/H] = 0.025
距離:276.7 pc
年齢:83 億歳
Qatar-8b
軌道周期:3.71495 日
軌道長半径:0.0474 AU
質量:0.371 木星質量
半径:1.285 木星半径
密度:0.216 g cm-3
平衡温度:1457 K
Qatar-8 系について
Qatar-8b は典型的なホットサターンである.

Qatar-9 系

Qatar-9
等級:V = 14.133
スペクトル型:K5V
質量:0.719 太陽質量
半径:0.696 太陽半径
光度:0.151 太陽光度
有効温度:4309 K
金属量:[Fe/H] = 0.252
距離:211.4 pc
年齢:75 億歳
Qatar-9b
軌道周期:1.540731 日
軌道長半径:0.0234 AU
質量:1.19 木星質量
半径:1.009 木星半径
密度:1.43 g cm-3
平衡温度:1134 K
Qatar-9 系について
Qatar-9b は木星よりやや重い質量を持つが,半径は同程度である.

Qatar-10 系

Qatar-10
等級:V = 12.879
スペクトル型:F7V
質量:1.156 太陽質量
半径:1.254 太陽半径
光度:1.993 太陽光度
有効温度:6124 K
金属量:[Fe/H] = 0.016
距離:539 pc
年齢:32 億歳
Qatar-10b
軌道周期:1.645321 日
軌道長半径:0.0286 AU
質量:0.736 木星質量
半径:1.543 木星半径
密度:0.248 g cm-3
平衡温度:1955 K
Qatar-10 系について
Qatar-10b はサブジュピター質量の惑星であり,HATS-9b (Brahm et al. 2015) と WASP-142b (Hellier et al. 2017) と非常に似ている.

発見された惑星の特徴

今回発見された 3 つの惑星を,Enoch et al. (2012) で予測される半径と観測された半径の関係と比較した.Qatar-9b に関しては,Enoch et al. (2012) の関係式は観測値よりも大きな半径を予測してしまうが,Qatar-8b と 10b に関しては理論予測と近い.ただし 3 つの惑星どれもが一般的な傾向から外れているわけではない.

Qatar-9b に関しては興味深い側面がある.それは,惑星質量が 1.19 木星質量とやや大きく,一方で中心星は 0.72 太陽質量と比較的低質量であるという点である.TEPCat のデータでは,0.8 太陽質量未満の質量を持つ恒星の周りには 59 個の惑星が発見されている.そのうち,惑星質量が 0.7 - 2.5 木星質量の範囲のものは 8 個しか発見されていない.

また Qatar-10b に関しては,サブジュピター砂漠 (Szabó & Kiss 2011,Mazeh et al. 2016など) と呼ばれる領域の上端に位置している.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.07694
Espinoza et al. (2019)
HD 213885b: A transiting 1-day-period super-Earth with an Earth-like composition around a bright (V=7.9) star unveiled by TESS
(HD 213885b:TESS によって明らかにされた明るい (V=7.9) 恒星周りの地球類似組成を持つ 1 日周期のトランジットするスーパーアース)

概要

HD 213885 (TOI-141, TIC 403224672) まわりの超短周期スーパーアース HD 213885b (TOI-141b) の発見について報告する.

軌道周期は 1.008 日であり,中心星は明るい (V=7.9) 恒星である.この惑星は TESS の測光観測によって発見された.半径は 1.745 地球半径であり,FEROS,HARPS,CORALIE を用いた視線速度観測で質量は 8.83 地球質量と測定された.これにより,全体の組成を制約するのに十分な情報が得られた.この惑星は,地球の組成に類似しているが鉄が多いと考えられる.

HD 213885b の半径,質量と受ける日射量は 55 Cancri e (かに座55番星e) とほぼ同じであり,物理的特性という意味での初めての「双子」の系外惑星である.しかし HD 213885b は 55 Cancri e よりも高密度である (9.15 g cm-3).

精密な視線速度測定からは,4.78 日周期のさらなるシグナルが検出された.これは 2 番目のトランジットしない惑星 (HD 213885c) によるものと解釈される.この場合,最小質量は 19.95 地球質量であり海王星質量の系外惑星であると考えられる.

HD 213885 系は将来の惑星大気の特徴付けの対象として非常に興味深い.これは,中心星である HD 213885 はトランジットする超短周期スーパーアースを持つ恒星としては 2 番目に明るいからである.なお,1 番明るいのは 55 Cancri である.

パラメータ

HD 213885
別名:TOI-141, TIC 403224672
有効温度:5978 K
スペクトル型:G
金属量:[Fe/H] = -0.04
等級:V = 7.9960
質量:1.068 太陽質量
半径:1.1011 太陽半径
光度:1.376 太陽光度
年齢:38.0 億年
距離:47.97 pc
HD 213885b
軌道周期:1.008035 日
質量:8.83 地球質量
半径:1.745 地球半径
密度:9.15 g cm-3
表面重力:28.5 m s-2
軌道長半径:0.02012 AU
平衡温度:2128 K
HD 213885c
軌道周期:4.78503 日
最小質量:19.95 地球質量
軌道長半径:0.056798 AU
平衡温度:1265.4 K

HD 213885c のトランジット探査

TESS の測光観測データから,HD 213885c のトランジットが起きていないかの調査を行った.ここでは,双方の惑星が円軌道であることを仮定して調査した.

仮に HD 213885c がトランジットを起こすとした場合,軌道傾斜角は 84.82° より大きくなる必要があり,この場合 HD 213885c の質量は 19.95-20.05 地球質量の範囲となる.HD 213885c のトランジットは検出されていないことから,HD 213885c の半径の上限を 1.7 地球半径とすると,HD 213885c の密度は HD 213885b の 2 倍と非常に高密度な天体でなければならない.そのような天体は希少であることからも,HD 213885c はトランジットを起こしていないであろうことを支持する統計的な証拠となる.

二次食は HD 213885b, c ともに非検出であった.これは TESS が観測を行っているバンドパスでの惑星の反射光と放射光両方は極めて低いと予想されることからも整合的な結果である.

またトランジットタイミング変化 (transit timing variation, TTV) の調査を HD 213885b に対して行った.その結果,TESS による 12 回目のトランジット時を除いて明確な TTV の兆候は見られなかった.12 回目は予測よりも 30 分ほど遅くトランジットが起きているように見えるが,おそらくは機器の影響と思われる,トランジットの egress 時 (惑星がトランジットを終える段階) の減光が起きている.

27 日間に渡る観測での TTV の振幅への上限はおよそ 2 分である.HD 213885c による HD 213885b のトランジット時刻への影響は,オーダー計算では 4 秒程度と見積もられており,これと観測からの上限は整合的である.

HD 213885 系について

HD 213885b は確実なスーパーアースである.惑星内部モデルから,組成の大部分は岩石であり,非常に薄い地球型の大気を持つのみであると推定される.

HD 213885c は,HD 213885b との相互軌道傾斜角が大きすぎない限り,短周期の海王星型惑星であると考えられる.トランジットを起こしていないことから傾斜角は 84.829° より小さく,真の質量は 18.54 地球質量より大きい.なお HD 213885b と c の相互軌道傾斜角への制約は与えられていない.

HD 213885b は 55 Cancri e (かに座55番星e,55 Cnc e) と類似している.
超短周期惑星を持つ恒星の中で,HD 213885 は 55 Cnc 続いて 2 番目に明るい中心星である.しかし K2 バンドではかに座55番星に比べて 2.4 等級暗く,V バンドでは 2 等級暗いため,大気の特徴付は 55 Cnc e よりも難しいものになるだろう.

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arXiv:1903.08017
Kostov et al. (2019)
The L 98-59 System: Three Transiting, Terrestrial-Sized Planets Orbiting a Nearby M-dwarf
(L 98-59 系:近傍の M 矮星を公転する 3 つのトランジット地球サイズ惑星)

概要

Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) を用いた観測で,L 98-59 (TOI-175, TIC 307210830) の周りの 3 つの地球サイズトランジット惑星を発見したことを報告する.

L 98-59 は 10.6 pc の距離にある明るい M 型星である.Gaia で測定したこの天体までの距離と広帯域の測光観測から,中心星は M3 型の矮星と判明した.
TESS の 1 セクター分の観測を合わせ,恒星のパラメータを元にすると,発見された惑星の大きさは 0.7 - 1.3 地球半径の範囲内である.3 つの惑星は全て短周期であり,軌道周期は 2.25 - 7.45 日の範囲で,外側の 2 つは 2:1 周期共鳴のすぐ外にある.

TESS Data Validation と,調査パッケージ DAVE を用いて,検出されたシグナルが共通の偽陽性起源である可能性は否定される.これらの解析と,並行して行われたフォローアップ観測,およびこの系が複数惑星系であるという性質から,観測されたシグナルはトランジット惑星である可能性が高く,TESS の観測視野内の他の天体に伴ったものではないと結論付けた.


この系は,複数の理由で興味深い.

中心星が明るく (V = 11.7,K = 7.1),惑星は詳細な視線速度による質量測定を含むさらなるフォローアップ観測の主要な対象であり,また将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いたトランジット分光観測の対象にもなる.

また惑星が軌道共鳴に近い軌道配置をしており,惑星系の力学的進化を調べる対象としても適している.発見された 3 つの惑星はいずれも比較的似たサイズをしており,惑星の他の物理量 (年齢や金属量など) も似ているかどうかを検証する対象として適している.

この恒星は TESS でさらに 6 セクターの期間にわたって観測される予定であり,今回発見された 3 つの惑星と,系内にあるかもしれないさらなる惑星に関する情報がもたらされるだろう.

パラメータ

L 98-59
別名:TOI-175, TIC 307210830
距離:10.623 pc
等級:V = 11.685
スペクトル型:M3V
有効温度:3500 K
金属量:[Fe/H] = -0.5
質量:0.32 太陽質量
半径:0.291 太陽半径
Planet 1
軌道周期:2.2532 日
半径:0.72 地球半径
日射量:地球の 21.9 倍
軌道長半径:0.0227 AU
Planet 2
軌道周期:3.69040 日
半径:1.29 地球半径
日射量:地球の 11.42 倍
軌道長半径:0.0315 AU
Planet 3
軌道周期:7.4513 日
半径:1.37 地球半径
日射量:地球の 4.46 倍
軌道長半径:0.050 AU

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arXiv:1903.06217
Gaidos et al. (2019)
Monitoring of the D Doublet of Neutral Sodium during Transits of Two "Evaporating" Planets
(2 つの「蒸発する」惑星のトランジット中の中性ナトリウム D 二重項のモニタリング)

概要

恒星に近接した軌道にある「蒸発する」トランジット惑星からのアウトフロー中の大気成分の分光学的なトランジット検出は,その天体の組成,形成,軌道進化に関する必然的に必要な情報を与えてくれる.

ここでは,ケプラー1520b の 1 回のトランジットと,K2-22b の 2 回のトランジットの最中の,中心星の可視光の高分散スペクトルを取得した.これは惑星大気による中性ナトリウムの D 線のドップラー偏位した吸収を探査することが目的である.

大気中のナトリウムは,光度曲線における周期的な減光の原因となるダストを高高度に持ち上げるアウトフローと一緒に放出されるはずのものであると考えられる.

結果として,いかなるトランジットの最中にも,予測されるドップラーシフトした波長における 30% を超える深さの吸収は検出されなかった.
検出の感度は,飽和したスペクトル線を希釈する機器の分解能,および惑星の短い軌道周期とこれらの暗い恒星に対する長い積分時間によるドップラー加速によるスペクトル線のぼやけによって制限される.

中性ナトリウムの生成,散逸と紫外線放射による電離のモデルによると,中心星と同程度のサイズを持ち,D 線の波長で光学的に厚い,部分的に電離したナトリウムの雲がこれらの惑星に伴っている可能性がある.
また,今後の TESS による明るい恒星の全天サーベイによる検出可能性と,Extremely Large Telescopes での高分散分光器での検出可能性についても議論を行った.

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arXiv:1903.06622
Turner et al. (2019)
Three Hot-Jupiters on the upper edge of the mass-radius distribution: WASP-177, WASP-181 and WASP-183
(質量半径分布の上端にある 3 つのホットジュピター:WASP-177,WASP-181 と WASP-183)

概要

WASP サーベイによる 3 つのトランジット惑星の発見について報告する.

今回発見されたのは,ホットジュピター 2 つとホットサターン 1 つである.
WASP-177b は 0.5 木星質量,1.6 木星半径,軌道周期 3.07 日の惑星で,V = 12.6 の K2 星を公転している,
WASP-183b は 0.5 木星質量,1.5 木星半径,軌道周期 4.11 日の惑星で,V = 12.8 の G9/K0 星を公転している.
WASP-181b は 0.3 木星質量,1.2 木星半径,軌道周期 4.52 日の惑星で,V = 12.9 の G2 星を公転している.

どの惑星も発見されている系外惑星の質量-半径空間での分布の上端に近く,規格化された軌道長半径 \(a/R_{*}\) は 9.6 - 12.1 の間である.これらは,中心星の自転軸とよく揃った軌道にある傾向がある惑星系と,より大きなばらつきを示す惑星系のパラメータの遷移領域にある.

パラメータ

WASP-177 系

WASP-177
等級:V = 12.58
スペクトル型:K2
有効温度:5017 K
金属量:[Fe/H] = 0.25
年齢:97 億歳
距離:178 pc
質量:0.876 太陽質量
半径:0.855 太陽半径
WASP-177b
軌道周期:3.071722 日
軌道長半径:0.03957 au
質量:0.508 木星質量
半径:1.58 木星半径
密度:0.130 木星密度
平衡温度:1142 K (アルベドゼロ,完全な熱の再分配を仮定)

WASP-181 系

WASP-181
等級:V = 12.91
スペクトル型:G2
有効温度:5839 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
年齢:25 億歳
距離:443 pc
質量:1.04 太陽質量
半径:0.965 太陽半径
WASP-181b
軌道周期:4.5195064 日
軌道長半径:0.05427 au
質量:0.299 木星質量
半径:1.184 木星半径
密度:0.179 木星密度
平衡温度:1186 K (アルベドゼロ,完全な熱の再分配を仮定)

WASP-183 系

WASP-183
等級:V = 12.76
スペクトル型:G9/K0
有効温度:5313 K
金属量:[Fe/H] = -0.31
年齢:149 億歳
距離:328 pc
質量:0.784 太陽質量
半径:0.871 太陽半径
WASP-183b
軌道周期:4.1117771 日
軌道長半径:0.04632 au
質量:0.502 木星質量
半径:1.47 木星半径
密度:0.16 木星密度
平衡温度:1111 K (アルベドゼロ,完全な熱の再分配を仮定)

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