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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1808.00485
Ment et al. (2018)
A second planet with an Earth-like composition orbiting the nearby M dwarf LHS 1140
(近傍の M 矮星 LHS 1140 を公転する地球類似組成の 2 番目の惑星)
ここでは,この恒星周りのさらなるトランジット惑星 LHS 1140c の発見を報告する.この発見は,MEarth プロジェクトによる測光観測とスピッツァー宇宙望遠鏡による測光観測,および HAPRS を用いたドップラー分光観測によって行なわれた.
LHS 1140c は岩石主体の組成だと推定され,1.81 地球質量,1.282 地球半径である.中心星に近い位置を公転し,軌道周期は 3.77795 日である.
また LHS 1140b についても,より精密な半径と質量の推定を行い,6.98 地球質量と 1.727 地球半径という値を得た.
LHS 1140b と c の平均密度はそれぞれ 7.5, 4.7 g cm-3 である.この値はどちらも,地球と同様な鉄とマグネシウムシリケイトからなる組成であると考えた場合と整合的である.
LHS 1140b と c の軌道離心率は小さく,円軌道と整合的な結果が得られた,軌道離心率はそれぞれ 90% の信頼度で,0.06 未満と 0.31 未満という上限値が与えられた.
2 つの惑星軌道は同一平面上にあり,またこれまでのケプラーによる観測データの解析からは,M 型矮星を公転する小さい惑星のコンパクトな系は普遍的な存在であることが知られている.そのため,この惑星系におけるさらなるトランジット惑星の探査は有意義であると考えられる.
また惑星 LHS 1140c は,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いて大気を研究できる,数少ない太陽系近傍の地球型惑星の一つである.
太陽類似の恒星の周囲での小さい惑星と比べると,M 型星周りの小さい惑星は比較的発見しやすい,これは中心星が低質量かつサイズが小さいためである.つまり,惑星のトランジット深さと視線速度のドップラーシグナルが大きくなる.
太陽系から 15 pc 以内の 0.3 太陽質量より軽い恒星のうち,トランジット惑星を持っていることが確認されているのは 4 つのみである.GJ 1214 (Charbonneau et al. 2009),GJ 1132 (Berta-Thompson et al. 2015),TRAPPIST-1 (Gillon et al. 2017),LHS 1140 (Dittmann et al. 2017) である.
トランジットを起こさない惑星を持っているものは 7 個存在する.プロキシマ・ケンタウリ (Anglada-Escude et al. 2016),Ross 128 (Bonfils et al. 2018),YZ Cet (くじら座 YZ 星,Astudillo-Defru et al. 2017),GJ 273 と GJ 3323 (Astudillo-Defru et al. 2017),ウォルフ 1061 (Astudillo-Defru et al. 2017,Wright et al. 2016),カプタイン星 (Anglada-Escud ́e et al. 2014) である.
質量:6.98 地球質量
半径:1.727 地球半径
密度:7.5 g cm-3
軌道長半径:0.0936 AU
平衡温度:235 K
質量:1.81 地球質量
半径:1.282 地球半径
密度:4.7 g cm-3
軌道長半径:0.02675 AU
平衡温度:438 K
arXiv:1808.00485
Ment et al. (2018)
A second planet with an Earth-like composition orbiting the nearby M dwarf LHS 1140
(近傍の M 矮星 LHS 1140 を公転する地球類似組成の 2 番目の惑星)
概要
LHS 1140 は太陽系近傍にある中期 M 型星であり,温暖で岩石主体のスーパーアース LHS 1140b を持つことが知られている.この惑星の軌道周期は 24.737 日周期である.ここでは,この恒星周りのさらなるトランジット惑星 LHS 1140c の発見を報告する.この発見は,MEarth プロジェクトによる測光観測とスピッツァー宇宙望遠鏡による測光観測,および HAPRS を用いたドップラー分光観測によって行なわれた.
LHS 1140c は岩石主体の組成だと推定され,1.81 地球質量,1.282 地球半径である.中心星に近い位置を公転し,軌道周期は 3.77795 日である.
また LHS 1140b についても,より精密な半径と質量の推定を行い,6.98 地球質量と 1.727 地球半径という値を得た.
LHS 1140b と c の平均密度はそれぞれ 7.5, 4.7 g cm-3 である.この値はどちらも,地球と同様な鉄とマグネシウムシリケイトからなる組成であると考えた場合と整合的である.
LHS 1140b と c の軌道離心率は小さく,円軌道と整合的な結果が得られた,軌道離心率はそれぞれ 90% の信頼度で,0.06 未満と 0.31 未満という上限値が与えられた.
2 つの惑星軌道は同一平面上にあり,またこれまでのケプラーによる観測データの解析からは,M 型矮星を公転する小さい惑星のコンパクトな系は普遍的な存在であることが知られている.そのため,この惑星系におけるさらなるトランジット惑星の探査は有意義であると考えられる.
また惑星 LHS 1140c は,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いて大気を研究できる,数少ない太陽系近傍の地球型惑星の一つである.
背景
M 型矮星の周囲には,小さい惑星は普遍的に存在する.M 型惑星周りでの小型の惑星の累積存在頻度は,M 型星 1 個あたり少なくとも 2.5 ± 0.2 個と推定されている.太陽類似の恒星の周囲での小さい惑星と比べると,M 型星周りの小さい惑星は比較的発見しやすい,これは中心星が低質量かつサイズが小さいためである.つまり,惑星のトランジット深さと視線速度のドップラーシグナルが大きくなる.
太陽系から 15 pc 以内の 0.3 太陽質量より軽い恒星のうち,トランジット惑星を持っていることが確認されているのは 4 つのみである.GJ 1214 (Charbonneau et al. 2009),GJ 1132 (Berta-Thompson et al. 2015),TRAPPIST-1 (Gillon et al. 2017),LHS 1140 (Dittmann et al. 2017) である.
トランジットを起こさない惑星を持っているものは 7 個存在する.プロキシマ・ケンタウリ (Anglada-Escude et al. 2016),Ross 128 (Bonfils et al. 2018),YZ Cet (くじら座 YZ 星,Astudillo-Defru et al. 2017),GJ 273 と GJ 3323 (Astudillo-Defru et al. 2017),ウォルフ 1061 (Astudillo-Defru et al. 2017,Wright et al. 2016),カプタイン星 (Anglada-Escud ́e et al. 2014) である.
パラメータ
LHS 1140b
軌道周期:24.736969 日質量:6.98 地球質量
半径:1.727 地球半径
密度:7.5 g cm-3
軌道長半径:0.0936 AU
平衡温度:235 K
LHS 1140c
軌道周期:3.777931 日質量:1.81 地球質量
半径:1.282 地球半径
密度:4.7 g cm-3
軌道長半径:0.02675 AU
平衡温度:438 K
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1808.00575
Palle et al. (2018)
Detection and Doppler monitoring of EPIC 246471491, a system of four transiting planets smaller than Neptune
(トランジットする海王星より小さい 4 惑星の系,EPIC 246471491 の検出とドップラーモニタリング)
これらのシグナルが惑星によるものであることを確認し,また惑星系の特徴付けを行うことを目的とし,HARPS-N 分光器と CARMENES 分光器で詳細な視線速度測定を行い,惑星の質量を測定した.
その結果,内側の 2 惑星は 15% より良い精度で質量を決定出来た,外側の 2 惑星については,質量の上限値を与えた.
この系は,ほぼ海王星質量・半径を持つ惑星が 1 つ,海王星より小さく,また密度とバルク組成の推定が非常に異なる 2 つの惑星,そして最も外側の軌道にある 4 番目の惑星からなっている.なお,4 番目の惑星はスーパーアースとサブネプチューンの半径ギャップの間に位置するサイズを持つ.
等級:V=12.030
金属量:[Fe/H] = 0.0
質量:0.830 太陽質量
半径:0.787 太陽半径
距離:155.6 pc
質量:9.68 地球質量
半径:2.59 地球半径
密度:3.07 g cm-3
軌道長半径:0.03817 AU
平衡温度:1088.9 K
質量:15.68 地球質量
半径:3.53 地球半径
密度:1.95 g cm-3
軌道長半径:0.0824 AU
平衡温度:741.4 K
質量:6.5 地球質量未満
半径:2.48 地球半径
軌道長半径:0.1178 AU
平衡温度:619.9 K
質量:10.7 地球質量未満
半径:1.95 地球半径
軌道長半径:0.18041 AU
平衡温度:500.9 K
arXiv:1808.00575
Palle et al. (2018)
Detection and Doppler monitoring of EPIC 246471491, a system of four transiting planets smaller than Neptune
(トランジットする海王星より小さい 4 惑星の系,EPIC 246471491 の検出とドップラーモニタリング)
概要
ケプラー K2 ミッションのデータ中から,EPIC 246471491 まわりの複数惑星系を発見した.この系には 4 個の惑星が検出され,地球の 2 倍のサイズから海王星に近いサイズまでの範囲にある.これらのシグナルが惑星によるものであることを確認し,また惑星系の特徴付けを行うことを目的とし,HARPS-N 分光器と CARMENES 分光器で詳細な視線速度測定を行い,惑星の質量を測定した.
その結果,内側の 2 惑星は 15% より良い精度で質量を決定出来た,外側の 2 惑星については,質量の上限値を与えた.
この系は,ほぼ海王星質量・半径を持つ惑星が 1 つ,海王星より小さく,また密度とバルク組成の推定が非常に異なる 2 つの惑星,そして最も外側の軌道にある 4 番目の惑星からなっている.なお,4 番目の惑星はスーパーアースとサブネプチューンの半径ギャップの間に位置するサイズを持つ.
パラメータ
EPIC 246471491
スペクトル型:K2V等級:V=12.030
金属量:[Fe/H] = 0.0
質量:0.830 太陽質量
半径:0.787 太陽半径
距離:155.6 pc
EPIC 246471491b
軌道周期:3.471745 日質量:9.68 地球質量
半径:2.59 地球半径
密度:3.07 g cm-3
軌道長半径:0.03817 AU
平衡温度:1088.9 K
EPIC 246471491c
軌道周期:7.138048 日質量:15.68 地球質量
半径:3.53 地球半径
密度:1.95 g cm-3
軌道長半径:0.0824 AU
平衡温度:741.4 K
EPIC 246471491d
軌道周期:10.45582 日質量:6.5 地球質量未満
半径:2.48 地球半径
軌道長半径:0.1178 AU
平衡温度:619.9 K
EPIC 246471491e
軌道周期:14.76289 日質量:10.7 地球質量未満
半径:1.95 地球半径
軌道長半径:0.18041 AU
平衡温度:500.9 K
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1808.00404
Vidotto et al. (2018)
Characterisation of the HD219134 multi-planet system II. Stellar-wind sputtered exospheres in rocky planets b & c
(HD 219134 複数惑星系の特徴付け II.岩石惑星 b と c における恒星風スパッタリングを受けた外気圏)
スパッタリングを起こす恒星風の性質は,磁気流体力学シミュレーションから導出した.これは観測によって導かれた恒星の磁場マップを元にしており,また Lyα の観測による恒星風の質量放出率の推定値によって制約されたものである.
惑星が中心星に近いため,惑星へ入射する恒星風の粒子のフラックスは大きいことが示唆される.従ってスパッタリングは,比較的密度が高く難揮発性豊富な外気圏を形成するのに十分効果的である.
スパッタリングによって惑星の昼側の表面全体から難揮発性元素が解放される.成分としては,例えば酸素原子やマグネシウム原子などである.これらが,広がった中性の外気圏を形成する.この個数密度は 10 cm-3 よりも大きい.この外気圏は惑星半径の数倍にまで広がる.
惑星 HD 219134b に関しては,視線方向に沿った OI の柱密度は 1013 cm-2 に達する.この最も高い値は,惑星の軌道運動方向の前方で見られる.この非対称性により,外気圏によるトランジットは非対称な分布になるだろうと考えられる.
この観測可能性を評価するため,HD 219134b の OI 外気圏の期待されるトランジット深さを計算するための ray tracing 光線追跡法の計算を行った.
その結果,OI 1302.2 Å 線でのトランジット深さは 0.042% と推定される.これは連続波のトランジット深さ 0.036% と比較して増加量は小さい.そのため,スパッタリングによって形成されたこの惑星の外気圏は,我々の現在の紫外線観測装置では検出できないだろう.
arXiv:1808.00404
Vidotto et al. (2018)
Characterisation of the HD219134 multi-planet system II. Stellar-wind sputtered exospheres in rocky planets b & c
(HD 219134 複数惑星系の特徴付け II.岩石惑星 b と c における恒星風スパッタリングを受けた外気圏)
概要
岩石惑星 HD 219134b と HD 219134c の周囲の,難揮発性物質豊富な外気圏の形成についての 3 次元的研究を行った.これらの外気圏は,恒星風によってスパッタリングされた表面粒子によって形成される.スパッタリングを起こす恒星風の性質は,磁気流体力学シミュレーションから導出した.これは観測によって導かれた恒星の磁場マップを元にしており,また Lyα の観測による恒星風の質量放出率の推定値によって制約されたものである.
惑星が中心星に近いため,惑星へ入射する恒星風の粒子のフラックスは大きいことが示唆される.従ってスパッタリングは,比較的密度が高く難揮発性豊富な外気圏を形成するのに十分効果的である.
スパッタリングによって惑星の昼側の表面全体から難揮発性元素が解放される.成分としては,例えば酸素原子やマグネシウム原子などである.これらが,広がった中性の外気圏を形成する.この個数密度は 10 cm-3 よりも大きい.この外気圏は惑星半径の数倍にまで広がる.
惑星 HD 219134b に関しては,視線方向に沿った OI の柱密度は 1013 cm-2 に達する.この最も高い値は,惑星の軌道運動方向の前方で見られる.この非対称性により,外気圏によるトランジットは非対称な分布になるだろうと考えられる.
この観測可能性を評価するため,HD 219134b の OI 外気圏の期待されるトランジット深さを計算するための ray tracing 光線追跡法の計算を行った.
その結果,OI 1302.2 Å 線でのトランジット深さは 0.042% と推定される.これは連続波のトランジット深さ 0.036% と比較して増加量は小さい.そのため,スパッタリングによって形成されたこの惑星の外気圏は,我々の現在の紫外線観測装置では検出できないだろう.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1808.00406
Folsom et al. (2018)
Characterisation of the HD 219134 multi-planet system I. Observations of stellar magnetism, wind, and high-energy flux
(HD 219134 複数惑星系の特徴付け I.恒星の磁気活動,恒星風と高エネルギーフラックスの観測)
Observatoire du Pic du Midi の Narval spectropolarimeter を用いて中心星を観測した,
ゼーマンドップラー観測で,恒星の磁場の大規模構造の特徴付けを行った.その結果,平均強度 2.5 G の弱いポロイダル磁場を発見した.これらのデータから,この恒星の自転周期が 42 日であることを確認し,また差動回転の証拠も発見した.
ハッブル宇宙望遠鏡の STIS の Lyα の観測から,恒星風の質量放出率が測定され,太陽の半分ほどである,10-14 太陽質量/年と推定された.
また中心星に最も近い惑星のトランジット測光観測を,近紫外線波長で観測した.Mg II h&k 共鳴線を Astrosat で観測した.その結果,観測波長では検出可能な吸収は検出されなかった,これにより,この波長でのトランジット深さに対して 3% という上限値を与えた,これにより,巨大なマグネシウム雲が 9 惑星半径よりも大きく広がって存在している可能性は否定された.
最後に,中心星の高エネルギーフラックス分布を推定した.その結果,惑星は 100 - 912 Å を積分した値として 500 erg s-1 cm-2 の高エネルギーフラックスを受けていると推定される.
今回の結果は,この恒星の詳細な同時観測による特徴付けである.またこれらは,高エネルギーの恒星フラックス,恒星風,そしてこれらが 2 つの短周期惑星に与える影響を正確にモデル化するのに必要な要素を与える.これについては,このシリーズの 2 番目の論文で紹介する.
arXiv:1808.00406
Folsom et al. (2018)
Characterisation of the HD 219134 multi-planet system I. Observations of stellar magnetism, wind, and high-energy flux
(HD 219134 複数惑星系の特徴付け I.恒星の磁気活動,恒星風と高エネルギーフラックスの観測)
概要
HD 219134 は複数の惑星を持つ恒星である.これまでに 7 つの惑星候補の存在が報告されており, このうち 2 つの最も短周期の惑星は岩石質の 4-5 地球質量惑星と推定される.ここではこの惑星系の同時多波長観測について報告する.Observatoire du Pic du Midi の Narval spectropolarimeter を用いて中心星を観測した,
ゼーマンドップラー観測で,恒星の磁場の大規模構造の特徴付けを行った.その結果,平均強度 2.5 G の弱いポロイダル磁場を発見した.これらのデータから,この恒星の自転周期が 42 日であることを確認し,また差動回転の証拠も発見した.
ハッブル宇宙望遠鏡の STIS の Lyα の観測から,恒星風の質量放出率が測定され,太陽の半分ほどである,10-14 太陽質量/年と推定された.
また中心星に最も近い惑星のトランジット測光観測を,近紫外線波長で観測した.Mg II h&k 共鳴線を Astrosat で観測した.その結果,観測波長では検出可能な吸収は検出されなかった,これにより,この波長でのトランジット深さに対して 3% という上限値を与えた,これにより,巨大なマグネシウム雲が 9 惑星半径よりも大きく広がって存在している可能性は否定された.
最後に,中心星の高エネルギーフラックス分布を推定した.その結果,惑星は 100 - 912 Å を積分した値として 500 erg s-1 cm-2 の高エネルギーフラックスを受けていると推定される.
今回の結果は,この恒星の詳細な同時観測による特徴付けである.またこれらは,高エネルギーの恒星フラックス,恒星風,そしてこれらが 2 つの短周期惑星に与える影響を正確にモデル化するのに必要な要素を与える.これについては,このシリーズの 2 番目の論文で紹介する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1807.11920
Weber et al. (2018)
Supermassive Hot Jupiters Provide More Favourable Conditions for the Generation of Radio Emission via the Cyclotron Maser Instability - A Case Study Based on Tau Bootis b
(非常に重いホットジュピターはサイクロトロンメーザー不安定を介した電波放射の生成のためのより良い状況を提供する - うしかい座タウ星b を基準にしたケーススタディ)
うしかい座タウ星b 的な惑星 (非常に重いホットジュピター,5.84 木星質量,1.06 木星半径) を念頭に置いたケーススタディを行った.ただし惑星の軌道長半径は 0.046 - 0.2 AU までの範囲に位置しているものを想定した.
このような重い惑星では,強い重力と効率的な輻射冷却のため,高層大気はほとんど静水圧平衡の状態にあり,外圏底 (exobase) は惑星に非常に近い状態になる.そのため,電波観測のための良い候補となり得る.木星に関してもこれと似た状況が期待される.つまり,磁気圏の空洞全体が外向きに動力学的に流れる電離圏プラズマによって満たされている状態と比べて,外圏底と磁気圏界面の間の減衰したプラズマ密度で満たされている領域が存在する.
従って,これまでに研究された HD 209458b や HD 189733b などの古典的なホットジュピターとは異なり,非常に重いホットジュピターは電波観測の観点からは一般的に良い観測対象であると考えられる.
arXiv:1807.11920
Weber et al. (2018)
Supermassive Hot Jupiters Provide More Favourable Conditions for the Generation of Radio Emission via the Cyclotron Maser Instability - A Case Study Based on Tau Bootis b
(非常に重いホットジュピターはサイクロトロンメーザー不安定を介した電波放射の生成のためのより良い状況を提供する - うしかい座タウ星b を基準にしたケーススタディ)
概要
どのようなコンディションにおいて非常に重いホットジュピターが電波放射のソース領域を維持できるか,またこの電波放射がその惑星系の外にいる観測者まで伝播できるかどうかについて調査を行った.うしかい座タウ星b 的な惑星 (非常に重いホットジュピター,5.84 木星質量,1.06 木星半径) を念頭に置いたケーススタディを行った.ただし惑星の軌道長半径は 0.046 - 0.2 AU までの範囲に位置しているものを想定した.
このような重い惑星では,強い重力と効率的な輻射冷却のため,高層大気はほとんど静水圧平衡の状態にあり,外圏底 (exobase) は惑星に非常に近い状態になる.そのため,電波観測のための良い候補となり得る.木星に関してもこれと似た状況が期待される.つまり,磁気圏の空洞全体が外向きに動力学的に流れる電離圏プラズマによって満たされている状態と比べて,外圏底と磁気圏界面の間の減衰したプラズマ密度で満たされている領域が存在する.
従って,これまでに研究された HD 209458b や HD 189733b などの古典的なホットジュピターとは異なり,非常に重いホットジュピターは電波観測の観点からは一般的に良い観測対象であると考えられる.
天文・宇宙物理関連メモ vol.450 Dittmann et al. (2017) 近傍のハビタブルスーパーアース LHS 1140b