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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1807.06102
Heng et al. (2018)
What Does "Metallicity" Mean When Interpreting Spectra of Exoplanetary Atmospheres?
(系外惑星大気のスペクトルを解釈する際に「金属量」は何を意味するか?)

概要

天文学者はしばしば,「金属量 (metallicity)」を広い意味で用いる.

バルクの金属量のモデリングを行う際は,鉄の元素存在度を金属量とみなしている (Fe/H).

対照的に系外惑星大気の研究者が,低分解能のハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の分光測光観測の解析から導出した金属量について言及する時は,酸素 (O/H) と炭素 (C/H) の存在度を指している場合がある.また,最近重要度が増している窒素の存在度 (N/H) について述べている場合もある.

系外惑星観測においては,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 は特に水に対して感度があり,またシアン化水素 HCN とアンモニアに二次的な寄与がある.一方でスピッツァー宇宙望遠鏡の測光では,メタンと一酸化炭素に感度がある.

系外惑星大気中の水の存在度の復元結果から,Kreidberg et al. (2014),Wakeford et al. (2017, 2018),Arcangeli et al. (2018),Mansfield et al. (2018) などは,大気中の「金属量」と系外惑星の質量の関係を示すグラフを提示している.また,大気中のナトリウムの存在度の復元結果から,Nikolov et al. (2018) も同様のグラフを提示している.


この研究ノート執筆の動機は,惑星のバルク組成と大気中の元素存在度が等しいと仮定したとしても,大気中の水の存在度と O/H 比の間の変換は直接的でないことを実証することにある.
この主張を実証するため,炭素,水素,酸素のみを含む単純で再現性の高い大気モデルを使用した.

さらに大気は水素分子主体であることと,化学平衡,純粋なガス化学過程を仮定した.これは,窒素の存在,光化学,大気の混合と凝縮を考慮すると問題が複雑になり,また事態の改善には繋がらないからである.
従って,水の体積混合率 (相対的な存在数) は,水の数密度を水素分子 (水素原子ではなく) の数密度で割ったものとなる.

大気の鉛直混合の効果を模擬するため,圧力は 10 mbar から 10 bar までの範囲を仮定した.
これは化学平衡における水が大気のより深い領域から混合していることに類似しており,”quenching” として知られる現象である (Tsai et al. 2017).一度高高度 (低圧) に混合されると,そこでの力学的タイムスケールは化学反応のタイムスケールよりも遥かに短いため,水の存在度は quench された値に "凍結" させることが出来るという仮定がある.


「金属量」が何を意味するのかは明確ではない.
ここでは C/H と O/H に注目する.”太陽金属量” と言った場合,O/H = 6 × 10-4,C/H = 3 × 10-4 であり,従って太陽の C/O 比は 0.5 となる.

これらの定義を持ってしても,「太陽金属量における水」の量は,温度と圧力に依存するステートメントである.これは,O/H = 6 × 10-4,C/H = 3 × 10-4 に対応する水の体積混合比の単一の値が存在しないことが原因である.

結局,水の体積混合比と O/H の間の変換係数は 1 ではなく,非平衡化学過程 (光化学や大気混合) を考慮しない場合でも,温度,圧力,O/H,C/H と C/O に依存することになる.この場合の変換係数は 1 からファクターずれる.

ここでは考慮していない非平衡化学過程や凝縮過程が,変換係数を常に 1 に戻すかどうかは不明である.従って,系外惑星の大気復元結果から示唆される「金属量」の推定値は,モデルに依存した量であると考えるのが公正な見方である

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1807.06548
Barkaoui et al. (2018)
Discovery of three new transiting hot Jupiters: WASP-161 b, WASP-163 b and WASP-170 b
(3 つの新しいトランジットするホットジュピターの発見:WASP-161b,WASP-163b と WASP-170b)

概要

WASP-South トランジットサーベイで,3 つの新しいトランジットホットジュピターを発見した.発見されたのは,WASP-161b, 163b, 170b である.

視線速度観測でのフォローアップ観測を,Euler/CORALIE 分光器を用いて行った.また高精度のトランジット光度曲線を TRAPPIST-North, TRAPPIST-South, SPECULOOS-South,NITE と Euler telescope で行った.これにより,惑星の質量と半径を正確に決定した.

これらの惑星が受けている輻射のレベルと惑星質量から,これらの惑星サイズは強い輻射を受けている巨大惑星の一般的な構造モデルとよく一致することが分かった.

パラメータ

WASP-161 系

WASP-161
有効温度:6400 K
金属量:[Fe/H] = 0.16
スペクトル型:F6V
質量:1.39 太陽質量
半径:1.712 太陽半径
光度:4.44 太陽光度
等級:V = 11.1
WASP-161b
軌道周期:5.4060425 日
軌道長半径:0.0673 AU
密度:1.66 木星密度
質量:2.49 木星質量
半径:1.143 木星半径
平衡温度:1557 K
日射量:1.35 × 109 erg s-1 cm-2

WASP-163 系

WASP-163
有効温度:5500 K
金属量:[Fe/H] = -0.34
スペクトル型:G8
質量:0.97 太陽質量
半径:1.015 太陽半径
光度:0.84 太陽光度
等級:V = 12.5
WASP-163b
軌道周期:1.6096884 日
軌道長半径:0.0266 AU
密度:1.07 木星密度
質量:1.87 木星質量
半径:1.202 木星半径
平衡温度:1638 K
日射量:1.63 × 109 erg s-1 cm-2

WASP-170 系

WASP-170
有効温度:5600 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
スペクトル型:G1V
質量:0.93 太陽質量
半径:0.938 太陽半径
光度:0.77 太陽光度
等級:V = 12.8
WASP-170b
軌道周期:2.34478022 日
軌道長半径:0.0337 AU
密度:1.21 木星密度
質量:1.6 木星質量
半径:1.096 木星半径
平衡温度:1422 K
日射量:9.3 × 109 erg s-1 cm-2

議論

今回発見された惑星の半径は木星よりやや大きく,質量は木星より重い.これらの質量と受ける輻射を元にすると,理論モデル (Fortney et al. 2007) は半径をよく再現可能である.このモデルでは,コア質量が数十地球質量で,系の年齢は数億年以上を仮定している.

150 地球質量より重い惑星に対して導出された経験的な関係 (Weiss et al. 2013) では,
\[
\frac{R_{p}}{R_{\bigoplus}}=2.45\left(\frac{M_{p}}{M_{\bigoplus}}\right)^{-0.039\pm0.01}\left(F/\rm erg\,s^{-1}\,cm^{-2}\right)
\]
と書ける.これを用いると,半径はそれぞれ 1.61 ± 0.30,1.20 ± 0.34,1.15 ± 0.31 木星半径と推定され,これらは測定された半径と整合的である.そのためこれらは “標準的” なホットジュピターであり,標準的なモデルから外れた半径異常を示すホットジュピターではない

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1807.05267
Mullan & Bais (2018)
Photosynthesis on a planet orbiting an M dwarf: enhanced effectiveness during flares
(M 矮星を公転する惑星における光合成:フレアの最中の増幅された有効性)

概要

M 矮星の近くを公転する惑星では, 400 - 700 nm の間の波長を持つ可視光の光子の供給に依存した効率で光合成が起きる.

ここでは M 矮星に関連した 2 つの文脈で,周囲の惑星における光合成の効率を定量化した.まずは,静穏でフレアを起こしていない状態の M 矮星からの光子による光合成について調べた.

その結果,M 矮星周りでは,恒星のハビタブルゾーン内にある惑星での光合成は,地球での光合成の効率よりも 10 倍ほど低いことを見出した.これは M 型星が中期 M 型のスペクトル型を持ち,フレア星である場合の値である.晩期 M 型のスペクトル型を持つフレア星の場合は,光合成の効率は地球よりも 100 倍かそれ以上低い値となる.


次に,フレアの最中にハビタブルゾーン内の惑星に入射する光子を使用して光合成の効率について調査した.

その結果,フレアの最中における光合成の効率は,静穏時の値の 5 - 20 倍になることが分かった.中期 M 型星のフレア星の場合,フレアの最中の光合成の効率は地球での光合成の効率の 50 - 60% 程度にまで増加することがある.しかし晩期 M 型星のフレアでは,フレアの最中であっても光合成の効率は地球よりおおむね一桁ほど小さい値に留まる.

これらの結果を考慮すると,M 矮星まわりの惑星における生物学的な過程に関しては,公転周期による変化よりも恒星の活動サイクルによる変化の方が支配的になるだろうと考えられる

M 型星まわりでの "年" のサイクル

“年” のタイムスケールに関して,地球では公転平面に対する自転軸の傾きによってある緯度における光子のフラックスに変動が生じ,それによって軌道周期によって季節のサイクルが生じる (これが 1 年にあたる).

しかし,M 矮星周りのハビタブルゾーン内の惑星は,地球より軌道周期が短い.例えば TRAPPIST-1 でのハビタブルゾーン内の惑星 TRAPPIST-1e, f, g は,軌道周期が 6 - 12 日である.

惑星の温度が 288 K だとして,この温度での化学反応に必要な有限のタイムスケールを考えると,TRAPPIST-1 のハビタブルゾーン内の惑星上の植物が,わずか数日の間に,成長と休眠の完全なサイクルをどう辿ることになるのか,想像するのは難しい.
その一方で,もし光合成が中心星のフレアによる輻射で増幅される場合,その中心星の活動サイクルの周期は,光合成活動の自然な過程を提供しうる.

そのため M 型星まわりのハビタブルゾーンにある惑星では,"年" のサイクルは軌道周期によって決まるのではなく,中心星の活動サイクルによって決まる可能性がある.

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arXiv:1807.05865
Smith et al. (2018)
EPIC 220501947 b and K2-237 b: two transiting hot Jupiters
(EPIC 220501947b と K2-237b:2 つのトランジットするホットジュピター)

概要

ケプラー K2 ミッションのデータ中から,新しいトランジットホットジュピターを発見した.

EPIC 220501947b は K2 ミッションの Campaign 8 で観測され.K5 矮星 EPIC 220501947 を公転している.サイズは木星よりやや小さい.軌道周期は 4.0 日である.

また K2-237b を独立して発見した.この天体は Campaign 11 で観測され,F6 矮星 K2-237 を公転している.軌道周期は 2.2 日であり.木星より 50 - 60% 膨らんだ半径を持っている.

高精度視線速度測定を HARPS と FIES を用いて行い,惑星質量の測定を行った.その結果,EPIC 220501947b は土星に類似した質量を持ち,K2-237b は木星よりやや重い.

パラメータ

EPIC 220501947 系

EPIC 220501947
有効温度:4444 K
半径:0.71 太陽半径
質量:0.74 太陽質量
金属量:[Fe/H] = 0.14
距離:234 pc
スペクトル型:K5V
EPIC 220501947b
軌道周期:4.024866 日
質量:0.336 木星質量
半径:0.947 木星半径
軌道長半径:0.0467 AU
平衡温度:850 K

K2-237 系

K2-237
有効温度:6099 K
半径:1.34 太陽半径
質量:1.22 太陽質量
金属量:[Fe/H] = 0.00
距離:318 pc
スペクトル型:F6V
K2-237b
軌道周期:2.1805567 日
質量:1.231 木星質量
半径:1.570 木星半径
軌道長半径:0.0352 AU
平衡温度:1817 K
K2-237 系について
この惑星は Soto et al. (2018) で発見報告されており.今回の報告は独立の発見報告かつ,過去の発見報告の確認になる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1807.04877
Cunha et al. (2018)
Gravitational Waves From Ultra Short Period Exoplanets
(超短周期系外惑星からの重力波)

概要

過去 20 年の間に,様々な観測技術によって数千個の系外惑星が発見されている.この発見数は,現在進行中の,そして近い将来に計画されているミッションと装置によってさらに増加する.

また将来的には,近傍の系外惑星とその主星からの重力波も,新世代の検出器で検出することが出来ると期待されている.この新世代の検出器には,宇宙空間で重力波を検出するプロジェクトである Laser Interferometer Space Antenna (LISA) を含む.

ここでは例として,極端に短い軌道周期 (80 分未満) を持つ系外惑星について議論する.これらの惑星は,重力波光度 1030 erg/s,strain (空間のひずみ) 10-22,周波数 > 10-4 Hz を持つと期待される.これは,LISA の一般的な感度曲線の中にある

従ってここでの解析は,放射される重力波のパターンは,超短周期系外惑星を発見するための効率的な手段となり得ることを示唆している.

超短周期惑星系からの重力波

基礎方程式

2 つの天体がケプラー軌道を運動しており,その有効軌道長半径を \(a\),離心率を \(e\) とすると,楕円運動の一周期の間に放出される重力波放射の合計の平均値は,
\[
L_{\rm GW}=\frac{32}{5}\frac{G^{4}}{c^{5}}\frac{m_{1}^{2}m_{2}^{2}\left(m_{1}+m_{2}\right)}{a^{5}\left(1-e^{2}\right)^{7/2}}\left(1+\frac{73}{24}e^{2}+\frac{37}{96}e^{4}\right)
\]
となる.地球から観測できる見かけの光度は \(l=L_{\rm GW}/4\pi d^{2}\) となる.

天体が離心軌道である場合は,放射されるエネルギーは単色的ではなくなる.
連星系がゼロではない軌道離心率を持っているか,重力波の放射が強いかに関わらず,軌道運動は急速に円軌道に縮退していく.ここで注目するのは超短周期惑星からの重力波放射である.そのためここでは \(e=0\) とする.

放出される重力波の周波数は軌道周波数の 2 倍であり,
\[
f_{\rm GW}=\frac{1}{\pi}\sqrt{\frac{G\left(m_{1}+m_{2}\right)}{a^{3}}}
\]
となる.

ひずみ (strain) の大きさは “chirp mass” で特徴付けられる.
\[
h=\left(\frac{32}{5}\right)^{1/2}\frac{G^{5/3}}{c^{4}}\frac{M_{*}^{5/3}}{d}\left(\pi f_{\rm GW}\right)^{2/3}\sqrt{\cos^{4}i+6\cos^{2}i+1}
\]
ここで,
\[
M_{*}\equiv\mu^{3/5}m^{2/5}
\]
が chirp mass であり,換算質量 \(\mu=m_{1}m_{2}/\left(m_{1}+m_{2}\right)\),合計質量 \(m=m_{1}+m_{2}\) である.また \(i\) は連星系の傾斜角で,連星の軌道平面と地球からの視線方向との角度を意味している.一般に傾斜角の影響は小さいが,常にひずみを増加させる効果がある.

その他に,累積の周期変動も連星からの重力波において重要な物理量である.
\[
\frac{\dot{P}}{P}=-\frac{96}{5}\frac{G^{5/3}\mu m^{2/3}}{c^{5}}\left(\frac{P}{2\pi}\right)^{-8/3}
\]

具体例

これらを具体的な超短周期惑星系に適用すると,GP Com b (かみのけ座GP星b) では,1.45 × 1030 erg/s,ひずみは 1.98 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -3.44 × 10^-17 /s となる.
同様に,V396 Hya b (うみへび座V396星b) では,それぞれ 0.17 × 1030 erg/s,0.98 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -0.83 × 10^-17 /s,J1433 b では 2.69 × 1030 erg/s,0.89 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -2.78 × 10^-17 /s となる.
これらは LISA で検出可能な範囲内である




※追記
後に Wong et al. (2018) によって,この検出可能性について疑義を呈するコメントが発表されている.

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