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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.10671
Kreidberg & Oklopčić (2018)
Non-Detection of a Helium Exosphere for the Hot Jupiter WASP-12b
(ホットジュピター WASP-12b でのヘリウム外気圏の非検出)

概要

低密度のウォームネプチューン WASP-107b では外気圏が検出されている (Spake et al. 2018).これは準安定ヘリウムの 10833 Å 波長での吸収の特徴にの検出に基づくものであり,Seager & Sasselov (2000) および Oklopˇci ́c & Hirata (2018) で予測されていたものである.

ヘリウムでの惑星からの大気散逸の探査には,いくつかの面で優位性がある.例えば,
(1) 近赤外線の装置で観測可能である.他の大部分の大気散逸の兆候は紫外線領域で現れる.
(2) 星間物質の吸収による影響が小さい.
というものである.そのため,多くの惑星系における大気散逸の研究の可能性を広げることに繋がる.

WASP-12b は最も高温な惑星のひとつであり,平衡温度は 2500 K と (Hebb et al. 2009),この手の探査の良い対象である.この惑星が受けている水準の輻射強度では,惑星大気からの大量の原子と分子の散逸が発生することが理論的に予測される.さらに,紫外線でのトランジット観測では,惑星から散逸する物質による吸収の特徴が検出されている (Nichols et al. 2015,Salz et al. 2016).

WASP-107b でのヘリウムの検出をモチベーションとして,ここではハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータから,大気散逸を起こしている惑星である WASP-12b でのヘリウム外気圏の探査を行った

その結果,WASP-12b ではヘリウム外気圏は検出されなかった

再解析の結果

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた WASP-12b の過去の観測結果の再解析を行った.この観測は,70 Å の狭帯域の binning を含む.

解析の結果,透過スペクトルは Kreidberg et al. (2015) での過去の報告と整合的なものであった,また,トランジットの各時期での変動は検出されなかった.

驚くべきことに,WASP-12b では 10833 Å での明確なトランジット深さの増加は見られなかった

10833 Å を含むバンドでのトランジット深さは,隣接する波長ビンでの重み付け平均をしたトランジット深さより 59 ± 143 ppm 大きいだけであった.これは近紫外線 (NUV) での過去の外気圏の検出とは対照的な結果である.NUV では,可視光のトランジット深さよりも 1% ほど深いトランジットが検出されている (Nichols et al. 2015).

理論モデルとの比較

Oklopˇci ́c & Hirata (2018) の理論モデルを用いて,この惑星のヘリウム吸収シグナルを予測した.

この一次元モデルでは,惑星の熱圏は水素原子とヘリウムが 9:1 で存在していると仮定している.

また,熱圏の密度と速度分布は,等温パーカー風モデルを使用し,ガス温度は 104 K,質量散逸率 4 × 1011 g/s を仮定している.これらの仮定は,Salz et al. (2016) の流体力学シミュレーションに基づくものである.また,恒星のスペクトルとして太陽のスペクトルを使用した.

高層大気中での準安定ヘリウムの密度分布として 2 パターンを考慮した.
ひとつは恒星直下点で計算したもの,もう一つは昼夜境界で計算したものであり.それぞれモデル A と B とする.双方のモデルに対して,吸収シグナルが 1) 惑星のロッシュ半径内のガスのみによって引き起こされているケースと,2) ガスが 20 惑星半径まで広がっているケースの 2 つを考慮した.1) のケースは,一次元大気モデルの仮定がより有効なケースである.

その結果,ヘリウム吸収の特徴は一般に小さく,これは観測と整合的である.ただし,最も物理的にもっともらしくないシナリオである,モデル A かつ 2) のシナリオは,観測と 5.2 σ で非整合的である.

ヘリウム外気圏非検出の要因

WASP-107b では大きなヘリウムの吸収が検出されたが,外気圏を持っている WASP-12b では非検出であった原因について考察する.WASP-12b は WASP-107b よりも 20 倍大きい恒星からのボロメトリックフラックスを受けているにも関わらず,WASP-107b のヘリウムによる吸収の方が大きくなり得る,いくつかの要素がある.

1 つ目は,WASP-107b の中心星に対するロッシュ半径は,WASP-12b のそれより 2 倍大きいという点である.

2 つ目は,WASP-107b が受ける恒星輻射のスペクトルが,準安定ヘリウムを生成するのに適しているという点である.

中心星の WASP-107 は活発な恒星であり,極端紫外線 (EUV) で明るいことが予想される.EUV は準安定状態にあるヘリウムを増やすはたらきがある.対照的に,一般的な恒星活動度指標に基づくと,WASP-12 は異常に非活動的な恒星であることが示唆され,典型的な太陽類似星よりも EUV 光度が小さい可能性がある.

さらに,WASP-107 のスペクトル型は K6 と晩期である一方,WASP-12 は G0 と早期である.そのため,WASP-107 の方が水素を電離する輻射は低い.この場合,自由電子の密度を下げる (自由電子との衝突は,準安定状態のヘリウムを減少させる主要な要因である).

3 つ目は,WASP-12b からの大気散逸率が非常に高く,恒星周りに物質のトーラス構造を形成している可能性があるという点である (Haswell 2017,Debrecht et al. 2018).もし準安定ヘリウムが恒星周りに一様に分布していた場合,ヘリウムによる吸収の特徴は,惑星がトランジットしている間だけではなく,すべての軌道位相で存在することになる.


結論としては,準安定ヘリウムは系外惑星からの大気散逸の有望な探査手法ではあるが,期待されるシグナルの振幅は,中心星のスペクトルと蒸発ガス雲の幾何学配置に敏感に依存する.将来のヘリウム外気圏の探査計画は,これらを考慮する必要がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.10345
Raymond et al. (2018)
Migration-driven diversity of super-Earth compositions
(スーパーアース組成の軌道移動に起因する多様性)

概要

スーパーアースの起源に関する主要なモデルは,planetary embyo (惑星の胚) が原始惑星系円盤中を内側に移動し,恒星に近接した軌道に溜まるという過程を提案している.大きな planetary embryo はスノーラインより遠方で優先的に形成されると考えられているため,主要なモデルでは単純には大部分のスーパーアースは水が豊富な組成であるということを予測する.

ここでは,惑星移動モデルで形成された最も短周期の惑星は,大抵は純粋な岩石組成になることを示す.

地球型惑星が形成される領域を通過する氷の planetary embryo の内側移動は,共鳴 shepherding を介して岩石惑星の降着を加速する.このプロセスを,密度が非常に異なる 2 つの惑星が近接した軌道にある惑星系である,ケプラー36 系に一致させたシミュレーションで説明する.

シミュレーションでは,2 つのスーパーアースはケプラー36 的な軌道配置で形成される.内側惑星は純粋な岩石組成の一方,外側の惑星は氷豊富な組成になる.一連のシミュレーションから,近接スーパーアースの feeding zone はおそらくは広く,また最終的な軌道半径とは接続していない可能性が高いと結論付けた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.10449
Raynard et al. (2018)
NGTS-2b: An inflated hot-Jupiter transiting a bright F-dwarf
(NGTS-2b:明るい F 矮星をトランジットする膨張したホットジュピター)

概要

ホットジュピター NGTS-2b の発見を報告する.これは Next Generation Transit Survey (NGTS) で発見されたものである.この惑星は膨張半径を持っており,平均密度は 0.226 g cm-3 と,知られている中で最も低密度の系外惑星のひとつである.

トランジット深さは 1% と比較的深く,中心星は明るいため,大気の透過分光観測の対象として適している.また中心星の自転速度が速いため,天球上に投影した傾斜角を推定するためのロシター効果を測定する対象としても適している.

NGTS での測光の精度が非常に高いため,この惑星はフォローアップ測光観測の必要なく惑星の存在を確定することが可能であった.

パラメータ

NGTS-2
等級:V = 10.961
距離:360.3 pc
スペクトル型:F5V
有効温度:6478 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
年齢:21.7 億歳
質量:1.64 太陽質量
半径:1.702 太陽半径
NGTS-2b
軌道周期:4.511164 日
軌道長半径:0.0630 AU
半径:1.595 木星半径
質量:0.74 木星質量
密度:0.226 g cm-3
平衡温度:1468 K

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.09352
Yee et al. (2018)
HAT-P-11: Discovery of a Second Planet and a Clue to Understanding Exoplanet Obliquities
(HAT-P-11:2 番目の惑星の発見と系外惑星傾斜角の理解への手掛かり)

概要

HAT-P-11 はスペクトル型が中期 K 型の恒星であり,惑星を 1 つ持っていることが分かっている.この惑星 HAT-P-11b は,太陽系外で初めて発見された海王星サイズの惑星のひとつである.

HAT-P-11b の軌道の公転軸は,恒星の自転軸とずれていることが分かっている.太陽より軽い恒星を公転する惑星のうち,公転軸と自転軸がずれている数少ない例のひとつである.

ここでは,10 年に渡る Keck/HIRES での精密な視線速度測定によって,この系に 2 つ目の惑星が発見されたことを報告する.
今回発見された HAT-P-11c は,最小質量が 1.6 木星質量と木星に近く,軌道周期も 9.3 年と同じく木星に近い.しかし軌道離心率はずっと大きく,0.60 程度である.

視線速度と恒星活動の共同解析から,恒星活動によって誘起される視線速度シグナルの振幅は 7 m/s 程度であり,これはその他の活発な K 型矮星と整合的な値である,しかしこの振幅は,HAT-P-11c の公転による視線速度変動の振幅 31 m/s よりはずっと小さい.


HAT-P-11b と HAT-P-11c との力学的な結合についても調査を行った.HAT-P-11c の存在によって,HAT-P-11b のずれた軌道を説明できる可能性があるためである.

その結果,この系での惑星間の Kozai 相互作用は,HAT-P-11b の軌道を観測されている値にまで傾けることが出来ないことを見出した.これは,一般相対論的な歳差が影響している.しかし,数百万年程度のタイムスケールで起きる交点の歳差運動は,高い傾斜角を説明するメカニズムとして有り得る.この場合,HAT-P-11c はなぜこのような傾いた軌道を持つに至ったのかという新たな疑問を生む.

この系は太陽系から 38 pc と近い距離にあるため,アストロメトリと直接撮像観測での系外惑星のさらなる特徴付けの対象として適している.

HAT-P-11 系について

HAT-P-11b の発見

HAT-P-11b は軌道周期が 4.88 日であり,23.4 地球質量,4.36 地球半径の惑星である.この惑星は最初に Bakos et al. (2010) によって地上からの測光観測で検出され,視線速度測定で惑星と確認,さらに質量と離心率への制約が与えられた.この惑星の軌道離心率は 0.198 と,やや大きな値を持つ.これはこの系が力学的に熱い事を示す初めの手掛かりである.

HAT-P-11b が発見された段階では,この惑星は地上からのトランジット測光観測で発見された中では最も小さい惑星のうちのひとつであった.

Spin-orbit angle のずれの検出

その後この惑星は,ケプラーの主ミッション期間にトランジットが観測された.

Deming et al. (2011) と Sanchis-Ojeda &Winn (2011) のケプラーのデータ解析では,惑星のトランジットの途中で恒星に存在する黒点を横断している事によるアノマリーが検出された.これらの解析結果は,恒星表面の活動的な緯度 2 箇所 (赤道を挟んだ 2 領域) を,ほぼ極軌道で公転しているというモデルと整合的なものであった.

HAT-P-11b が極軌道で公転しているという結果は,後の 2 つの独立した視線速度観測である Winn et al. (2010) と Hirano et al. (2011) の結果とも整合している.これら 2 つでは,ロシター効果を用いて惑星公転軸の傾斜が 100° 程度と測定されている.

さらに,ケプラーでの測光観測結果から,HAT-P-11b の二次食 (secondary eclipse) と思われる兆候も検出されている (Huber et al. 2017).

パラメータ

HAT-P-11
半径:0.683 太陽半径
質量:0.809 太陽質量
有効温度:4780 K
金属量:[Fe/H] = 0.31
自転周期:29.2 日
年齢:65 億歳
距離:37.89 pc
HAT-P-11b
軌道周期:4.887802443 日
軌道離心率:0.218
質量:23.4 地球質量
軌道長半径:0.05254 AU
質量:4.36 地球質量
HAT-P-11c
軌道周期:3407 日
軌道離心率:0.601
最小質量:507 地球質量
軌道長半径:4.13 AU

HAT-P-11 系の特殊性

恒星の自転軸と惑星の公転軸が成す角度 (spin-orbit angle) が測定されている惑星系の中で,HAT-P-11 系は外れた存在である.この系は,spin-orbit angle が揃っていない惑星系の中では,最も小さい (恒星質量が小さい) もののひとつである.

Winn et al. (2010) は,恒星の有効温度と spin-orbit angle の大きさの関連に初めて言及した.

恒星の有効温度が 6000 K 程度以上のの場合,spin-orbit angle は大きくずれる傾向があることが分かっている.低温な恒星は典型的には大きな対流層を持ち,近接惑星と強い潮汐相互作用を起こすため,軸を揃わせる力が強く働く.これに対して,高温の恒星は大きな対流層が存在しないため恒星と惑星との間の潮汐結合が弱く,潮汐で恒星の自転軸と惑星の公転軸が揃うタイムスケールが長くなる.

実際に,低温の恒星 (6000 K 未満) で spin-orbit angle が測定がされている系の中では,軸が大きくずれているものは a/R* (軌道長半径/恒星半径) も大きい傾向がある.これは,軸が揃うまでのタイムスケールが長いことと対応しており,つまり初期の傾きを潮汐で失わず保持していることを意味していると考えられる.

この見方では,HAT-P-11b は外れた存在ではなくなる.
HAT-P-11b は a/R* = 16.3 と比較的大きな値を持つため,潮汐で軸が揃うタイムスケールは長くなる.Albrecht et al. (2012) を元にすると,この系で軸が揃うまでのタイムスケールは 1015 年程度と計算される.これは惑星系の年齢より遥かに長い.

したがって HAT-P-11b の spin-orbit angle の大きなずれは,軌道の永年歳差によって引き起こされている可能性はあるものの,初期のずれをそのまま保持している可能性もあるため,永年歳差の存在は軸が傾いていることの必要条件ではない.

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arXiv:1805.08820
Cañas et al. (2018)
Kepler-503b: An Object at the Hydrogen Burning Mass Limit Orbiting a Subgiant Star
(ケプラー503b:準巨星を公転する水素燃焼質量限界にある天体)

概要

APOGEE 装置を用いた分光観測による視線速度データと,Gaia での距離測定結果から,従来は惑星だと考えられていたケプラー503b が,実際には褐色矮星と低質量の恒星の境界に近い質量を持つ天体であることが明らかになった.

ケプラー503b は,準巨星ケプラー503 の周りをほぼ円軌道で 7.2 日周期で公転している.

恒星モデルから導出した中心星の推定質量を用いると,ケプラー503b は 0.074 ± 0.003 太陽質量 (78.6 ± 3.1 木星質量),0.099 太陽半径 (0.96 木星半径) と推定される.なおこの推定は,ケプラー503 系の天体が同年代であると仮定している.また中心星の進化状態から,年齢は 67 億歳程度と推定されている.

ケプラー503b は水素核融合を起こす限界質量に近い質量を持ち,褐色矮星と,非常に低質量の恒星の境界をまたぐ質量である

将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による,より詳細な視線速度測定と二次食の分光観測から,ケプラー503b のスペクトルの物理を理解して,よりよく制約するための物理パラメータと年齢の測定値が改善されることが期待される.

この系は,天体物理的な偽陽性から本当の惑星を区別するためには,視線速度観測が重要であるという点を示す例である.また今回の結果は,ケプラーで発見された惑星候補天体の multi-object APOGEE instrument を用いた SDSS-IV モニタリングでの最初の結果である.

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