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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.06920
Kubyshkina et al. (2018)
Overcoming the limitations of the energy-limited approximation for planet atmospheric escape
(惑星の大気散逸におけるエネルギー律速近似の限界を克服する)

概要

惑星の大気組成,変動,進化の研究においては,重要な大気パラメータを推定するための適切な理論的及び数値的なツールが必要である.その中でも.惑星からの質量放出率はしばしば最も重要な要素となる.

惑星進化に関する研究では,大気散逸率の計算においてエネルギー律速の式が一般に使われる.これは単純であるために魅力的だが,重要な物理的効果を無視しており,多くの場合不正確になりうる.

この問題を打破するため,7000 グリッドの一次元高層大気流体力学モデルを開発した.これは水素主体大気の広いパラメータ範囲の惑星を計算し,質量放出率を計算することを目的としている.
グリッドの境界は,1 - 39 地球質量,1 - 10 地球半径,平衡温度 300 - 2000 K,中心星の質量 0.4 - 1.3 太陽質量,惑星の軌道長半径 0.002 - 1.3 au,恒星の X 線と極端紫外線光度が 1026 - 5 × 1030 erg s-1 である.

この計算から得られた値へのフィッティングを元にして,大気質量損失率の解析的な表式を導出した.この表式は,質量放出率を惑星質量,半径,軌道間隔,入射する高エネルギーフラックスの関数として表現したものである.

今回得られた表式は,広い惑星のパラメータにおいて質量放出率の推定値をエネルギー律速による近似よりも大きく改善した.ここでの解析的表式は,計算時間を増加させること無く,より正確な惑星進化計算を可能にする.

研究背景

広く使われている質量放出率の近似としては,以下のようなエネルギー律速方程式 (Watson et al. 1981,Erkaev et al. 2007) がある.
\[
\dot{M}_{\rm en} = \frac{\pi \eta R_{\rm pl} R_{\rm eff}^{2} F_{\rm XUV}}{G M_{\rm pl} K}
\]
ここで \(G\) は万有引力定数,\(R_{\rm pl}\) は惑星半径,\(R_{\rm eff}\) は 恒星の XUV 放射を吸収する有効半径,\(\eta\) は加熱効率,\(M_{\rm pl}\) は惑星質量.\(K\) はロッシュローブ効果を表すファクターである.

この式は,大気の散逸が流体力学的で,恒星の XUV フラックスによって駆動されている,従来のホットジュピターではよく機能する.しかし,強く輻射を受けた低密度の惑星では,大気散逸は惑星の内部の熱エネルギーと惑星自身の低重力の組み合わせによっても駆動されるため,エネルギー律速の式での近似では結果として得られる質量放出を著しく過小評価する.この状態は “boil-off” と呼ばれている.
また,静力学的な大気を持つ惑星で,質量放出がジーンズ散逸で支配されている場合は,大気散逸率を過大評価してしまう.

さらにこの式は,有効半径と加熱効率について事前の情報が必要になるが,これらを計算するには複雑なモデルが必要である.加熱効率は系のパラメータによって大きくは変動せず,最初の近似では 10% - 20% の間の値を取る一方,有効半径は大きく変化しうる

またこの式は,分子水素の解離と電離を考慮していない.さらに,流出する大気が超音速であるという事実も考慮されていない.流出する大気が超音速である場合,惑星大気に注入されたエネルギーの一部はガスの運動エネルギーという形で惑星から散逸する.

計算モデル

計算モデルは Kubyshkina et al. (2018) のものを使用する.これは一次元流体力学モデルであり,XUV 加熱と,水素解離,再結合と電離,ライマンアルファと H3+ の冷却を考慮している.

計算の下部境界と上部境界はそれぞれ,惑星の光球とロッシュローブである.
計算を速くするため,XUV のスペクトルは 2 波長に減らし,極端紫外線全体 (60 nm) と X 線全体 (5 nm) で分割している.また全てのモデルで加熱効率 15% を仮定して計算している.

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