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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1810.10084
Khain et al. (2018)
Dynamical Analysis of Three Distant Trans-Neptunian Objects with Similar Orbits
(類似した軌道を持つ 3 つの遠方太陽系外縁天体の力学的解析)
3 つとも軌道長半径は 172 AU 程度,離心率は 0.77 程度である.角度要素 (\(i,\,\omega\,\Omega\)) は 3 つの天体間でそれぞれ 6, 15, 49 度異なる (軌道傾斜角,近日点引数,昇交点黄経).新しく発見された 2 つの天体は,軌道長半径が 150 - 250 AU の範囲にある,現在知られている TNOs の数少ないメンバーの一員である.また,太陽系の外縁部を知るための興味深い力学的な観察対象となる.
大量の数値積分の組み合わせから,これらの天体の軌道は軌道長半径-軌道離心率平面上でより拡散した値に広がるまで,1 億年程度に渡って近くに存在することが期待されることが分かった.
これらの天体の遠日点距離は 300 AU 以上であり,これらの ETNOs は古典的なカイパーベルトを大きく超えた軌道を持つ.また海王星よりも一桁遠くなる.その結果として,これらの天体の軌道要素は,新しい太陽系のメンバーとして存在が提唱されている Planet Nine に影響される可能性がある.また近日点距離は 35- 40 AU であり,これらの軌道は海王星との共鳴相互作用にも影響される.
Planet Nine などの新しい太陽系惑星の可能性を十分に評価するためには,現在発見が増えているこのような TNOs の新しいクラスを考慮する必要がある.
軌道離心率:0.798
軌道傾斜角:26.081 度
近日点引数:282.87 度
昇交点黄経:176.543 度
近日点距離:35.0 AU
遠日点距離:312 AU
絶対等級:7.7
軌道離心率:0.76731
軌道傾斜角:21.38750 度
近日点引数:281.093 度
昇交点黄経:173.2150 度
近日点距離:39.95 AU
遠日点距離:303.45 AU
絶対等級:5.9
軌道離心率:0.79439
軌道傾斜角:16.97552 度
近日点引数:303.337 度
昇交点黄経:102.8996 度
近日点距離:35.249 AU
遠日点距離:307.63 AU
絶対等級:7.95
このサーベイは,ワイドサーベイと超新星サーベイの 2 つのモードを有している.
広視野サーベイは,おおよそ 6 ヶ月に 2 - 4 回の観測で,各観測波長で 5000 平方度の範囲内を観測している.超新星サーベイではおおむね 6 日ごとに 10 個の視野を観測している.超新星サーベイでの視野はそれぞれ 3 平方度と小さいが,観測頻度が多いため太陽系内の移動天体の探査に適している.
これまでに,DES による TNOs の発見は,超新星サーベイ (Gerdes et al. 2016) とワイドサーベイ (Gerdes et al. 2017,Becker et al. 2018,Lin et al. 2018) の両方から報告されている.
arXiv:1810.10084
Khain et al. (2018)
Dynamical Analysis of Three Distant Trans-Neptunian Objects with Similar Orbits
(類似した軌道を持つ 3 つの遠方太陽系外縁天体の力学的解析)
概要
2 つの新しい extreme trans-Neptunian objects (ETNOs) である 2016 QV89 と 2016 QU89 の発見と軌道の特徴付けについて報告する.この 2 つは,過去に発見されていた 2013 UH15 と類似した軌道を持つ.3 つとも軌道長半径は 172 AU 程度,離心率は 0.77 程度である.角度要素 (\(i,\,\omega\,\Omega\)) は 3 つの天体間でそれぞれ 6, 15, 49 度異なる (軌道傾斜角,近日点引数,昇交点黄経).新しく発見された 2 つの天体は,軌道長半径が 150 - 250 AU の範囲にある,現在知られている TNOs の数少ないメンバーの一員である.また,太陽系の外縁部を知るための興味深い力学的な観察対象となる.
大量の数値積分の組み合わせから,これらの天体の軌道は軌道長半径-軌道離心率平面上でより拡散した値に広がるまで,1 億年程度に渡って近くに存在することが期待されることが分かった.
これらの天体の遠日点距離は 300 AU 以上であり,これらの ETNOs は古典的なカイパーベルトを大きく超えた軌道を持つ.また海王星よりも一桁遠くなる.その結果として,これらの天体の軌道要素は,新しい太陽系のメンバーとして存在が提唱されている Planet Nine に影響される可能性がある.また近日点距離は 35- 40 AU であり,これらの軌道は海王星との共鳴相互作用にも影響される.
Planet Nine などの新しい太陽系惑星の可能性を十分に評価するためには,現在発見が増えているこのような TNOs の新しいクラスを考慮する必要がある.
パラメータ
2013 UH15
軌道長半径:173.6 AU軌道離心率:0.798
軌道傾斜角:26.081 度
近日点引数:282.87 度
昇交点黄経:176.543 度
近日点距離:35.0 AU
遠日点距離:312 AU
絶対等級:7.7
2016 QV89
軌道長半径:171.70 AU軌道離心率:0.76731
軌道傾斜角:21.38750 度
近日点引数:281.093 度
昇交点黄経:173.2150 度
近日点距離:39.95 AU
遠日点距離:303.45 AU
絶対等級:5.9
2016 QU89
軌道長半径:171.40 AU軌道離心率:0.79439
軌道傾斜角:16.97552 度
近日点引数:303.337 度
昇交点黄経:102.8996 度
近日点距離:35.249 AU
遠日点距離:307.63 AU
絶対等級:7.95
サイズの推定
アルベド 10% を仮定すると,2016 QV89,QU89,UH15 はそれぞれ直径 280 km,110 km,120 km と推定される.Dark Energy Survey による太陽系外縁天体探査
これらの天体は,The Dark Energy Survey (DES) (Dark Energy Survey Collaboration et al. 2016) の一環で観測された.これはチリの Cerro Tololo Inter-American Observatory の 4 m Blanco telescope を用いた可視光でのサーベイで,南天の 5000 平方度に近い範囲をサーベイするプロジェクトである.観測には Dark Energy Camera (DECam) を使用している.このサーベイは,ワイドサーベイと超新星サーベイの 2 つのモードを有している.
広視野サーベイは,おおよそ 6 ヶ月に 2 - 4 回の観測で,各観測波長で 5000 平方度の範囲内を観測している.超新星サーベイではおおむね 6 日ごとに 10 個の視野を観測している.超新星サーベイでの視野はそれぞれ 3 平方度と小さいが,観測頻度が多いため太陽系内の移動天体の探査に適している.
これまでに,DES による TNOs の発見は,超新星サーベイ (Gerdes et al. 2016) とワイドサーベイ (Gerdes et al. 2017,Becker et al. 2018,Lin et al. 2018) の両方から報告されている.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.23 Gerdes et al. (2015) ダークエネルギー探査プロジェクトによる海王星のトロヤ群天体の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.379 Gerdes et al. (2017) 92 AU の位置にある準惑星候補天体 2014 UZ224 の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.903 Becker et al. (2018) 極端な軌道にある太陽系外縁天体 2015 BP519 の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.945 Lin et al. (2018) 始原的な海王星トロヤ群における色の二分性の兆候