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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1810.11490
Bialy & Loeb (2018)
Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration?
(太陽放射圧はオウムアムアの奇妙な加速を説明できるか?)
このような天体の非重力的な加速は彗星では自然に起こることであり,彗星では表面から蒸発する物質によって加速が駆動される.しかし最近の観測と理論研究では,オウムアムアは活動的な彗星ではないことが示唆されている.
ここでは,太陽光圧によるオウムアムアの加速について検証を行った.その結果,観測された加速を太陽光圧で説明するのに必要な質量対面積比は,0.1 g cm-2 と推定される.薄いシート状の構造を考えた場合,これは厚みが 0.3 - 0.9 mm であることを要求する.これは天体としては著しく薄い値であるが,このような天体はガスとダスト粒子との衝突,自転や潮汐からの応力などに耐えて銀河系内を 5 kpc 程度の距離を生き延びることが出来ると結論付けた.
Micheli et al. (2018) ではオウムアムアの軌道を分析した結果,オウムアムアの非重力的な加速の検出を報告している.この加速の存在の統計的信頼度は 30σ である.Micheli et al. (2018) では,これは彗星活動による加速だと推定されている.
しかしオウムアムアは太陽に 0.25 AU の距離まで接近したにも関わらず,彗星活動の兆候は示していない.彗星の尾も,ガスの輝線や吸収線のいずれも観測されていない.理論的には,Rafikov (2018) は非重力的な加速が天体からの脱ガスによる加速だとした場合,脱ガスによるトルクがオウムアムアの自転を急速に進化させるため観測と一致しないことを指摘している.
では,もし彗星活動が原因でなかった場合,非重力的な加速の原因はなんだろうか?
ここでは,太陽光圧によってオウムアムアが加速されているという可能性について考慮した.
このような薄い天体が,ダスト粒子との衝突,ガス粒子との衝突でのエネルギー輸送でどの程度ダメージを受けるかなどを推定した.また自転や太陽との潮汐に耐えうる引張応力も推定した.その結果,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星などで測定されている引張応力の典型値よりも十分小さいため,耐えうると結論付けた.
このような天体の起源について考察する.太陽系内の小惑星や彗星の質量対面積比は,今回推定されたものよりも数桁大きい.もし太陽光圧がオウムアムアの加速の原因である場合,オウムアムアは薄い恒星間物質という新しい分類に属するかもしれない.
もしオウムアムアが人工物起源だとすると,高度文明からのデブリとして恒星間天体を漂う太陽帆のような物体であるかもしれない.例えば,IKAROS や Starshot Initiative のような人工物である.
オウムアムアで観測されている非重力的な加速が,もし太陽光圧起源だとしたらオウムアムアはどのような天体である必要があるか?という趣旨の論文です.その結果非常に薄い天体である必要があるというのが論文の結論ですが,論文中で太陽系外文明の太陽帆のような物体である可能性に言及しており,ニュースではその部分が大きく取り上げられて話題になりました.
例:
「オウムアムア」の正体は異星人の探査機? ハーバード大の研究者が驚くべき論文
恒星間天体「オウムアムア」は宇宙人の探査機? - ハーバード大が論文発表
arXiv:1810.11490
Bialy & Loeb (2018)
Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration?
(太陽放射圧はオウムアムアの奇妙な加速を説明できるか?)
概要
恒星間天体 ’Oumuamua (1I/2017 U1) (オウムアムア) について,Micheli et al. (2018) では高い信頼度でケプラー軌道からのズレが見られることを報告している.そこでは,観測されたオウムアムアの軌跡は太陽からの距離の 2 乗に反比例する形の加速で説明できるとした.このような天体の非重力的な加速は彗星では自然に起こることであり,彗星では表面から蒸発する物質によって加速が駆動される.しかし最近の観測と理論研究では,オウムアムアは活動的な彗星ではないことが示唆されている.
ここでは,太陽光圧によるオウムアムアの加速について検証を行った.その結果,観測された加速を太陽光圧で説明するのに必要な質量対面積比は,0.1 g cm-2 と推定される.薄いシート状の構造を考えた場合,これは厚みが 0.3 - 0.9 mm であることを要求する.これは天体としては著しく薄い値であるが,このような天体はガスとダスト粒子との衝突,自転や潮汐からの応力などに耐えて銀河系内を 5 kpc 程度の距離を生き延びることが出来ると結論付けた.
背景
オウムアムアは,明確に双曲線軌道にあることが確認された初めての恒星間天体である (Meech et al. 2017).オウムアムアの光度曲線には,見かけの等級の大きな変動と非自明な周期変動が見られており,この天体が励起された自転状態 (タンブリング状態) にあり,極端なアスペクト比 (少なくとも 5:1 以上) を持つ天体だと推定されている (Fraser et al. 2018,Drahus et al. 2018).Micheli et al. (2018) ではオウムアムアの軌道を分析した結果,オウムアムアの非重力的な加速の検出を報告している.この加速の存在の統計的信頼度は 30σ である.Micheli et al. (2018) では,これは彗星活動による加速だと推定されている.
しかしオウムアムアは太陽に 0.25 AU の距離まで接近したにも関わらず,彗星活動の兆候は示していない.彗星の尾も,ガスの輝線や吸収線のいずれも観測されていない.理論的には,Rafikov (2018) は非重力的な加速が天体からの脱ガスによる加速だとした場合,脱ガスによるトルクがオウムアムアの自転を急速に進化させるため観測と一致しないことを指摘している.
では,もし彗星活動が原因でなかった場合,非重力的な加速の原因はなんだろうか?
ここでは,太陽光圧によってオウムアムアが加速されているという可能性について考慮した.
太陽光圧による加速
太陽光圧が加速源として十分働くためには,天体の質量対面積比 (あるいは有効幅) が非常に小さい必要がある.報告された非重力的加速を説明するためには,この値が 0.1 g cm-2 である必要があると推定される.これは 0.3 mm の厚さに相当する.天体の密度が 1 - 3 g cm-3 とすると,天体の厚みは 0.9 - 0.3 mm である必要がある.このような薄い天体が,ダスト粒子との衝突,ガス粒子との衝突でのエネルギー輸送でどの程度ダメージを受けるかなどを推定した.また自転や太陽との潮汐に耐えうる引張応力も推定した.その結果,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星などで測定されている引張応力の典型値よりも十分小さいため,耐えうると結論付けた.
このような天体の起源について考察する.太陽系内の小惑星や彗星の質量対面積比は,今回推定されたものよりも数桁大きい.もし太陽光圧がオウムアムアの加速の原因である場合,オウムアムアは薄い恒星間物質という新しい分類に属するかもしれない.
もしオウムアムアが人工物起源だとすると,高度文明からのデブリとして恒星間天体を漂う太陽帆のような物体であるかもしれない.例えば,IKAROS や Starshot Initiative のような人工物である.
オウムアムアで観測されている非重力的な加速が,もし太陽光圧起源だとしたらオウムアムアはどのような天体である必要があるか?という趣旨の論文です.その結果非常に薄い天体である必要があるというのが論文の結論ですが,論文中で太陽系外文明の太陽帆のような物体である可能性に言及しており,ニュースではその部分が大きく取り上げられて話題になりました.
例:
「オウムアムア」の正体は異星人の探査機? ハーバード大の研究者が驚くべき論文
恒星間天体「オウムアムア」は宇宙人の探査機? - ハーバード大が論文発表
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天文・宇宙物理関連メモ vol.948 Micheli et al. (2018) オウムアムアの軌跡における脱ガスによる非重力的加速
天文・宇宙物理関連メモ vol.995 Rafikov (2018) オウムアムアの自転状態進化と彗星という解釈への批判的考察