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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1509.08953
Rodriguez et al. (2015)
KELT-14b and KELT-15b: An Independent Discovery of WASP-122b and a New Hot Jupiter
(KELT-14b, KELT-15b;独立したWASP-122bの発見と新しいホットジュピター)

概要

KELT-Southサーベイプロジェクトによって、KELT-14bとKELT-15bを発見した。
KELT-14bは最近発見が報告された、WASP-122bの独立した発見である。

両惑星は共に膨張半径をもつホットジュピターである。
また、共に地上望遠鏡からの観測によって二次食を検出出来るだけの十分に強い放射を持つだろうと予測される。

各系の詳細

KELT-14系

KELT-14
中心星KELT-14の主なパラメータは以下のとおり。
質量:1.18太陽質量
半径:1.37太陽半径
有効温度:5802 K
金属量:[Fe/H] = 0.33
年齢:5.0 Gyr

TYC 7638-981-1という別名がある。

この恒星は視等級が 11.0であり、スペクトル型は G2である。
ヘルツシュプルング・ラッセル図で言う、転回点 (turn-off point, TOP)付近に位置する恒星である。
KELT-14b
惑星KELT-14bの主なパラメータは以下のとおり。
質量:1.196木星質量
半径:1.52木星半径
軌道周期:1.7100588日
軌道離心率:e = 0のモデルと調和的

典型的な、膨張した半径を持つホットジュピターである。
また、この惑星は K < 10.5 よりも明るい等級を持つトランジット惑星の中では、2番目に明るいKバンドでの放射シグナルを持つ。
そのため、地上望遠鏡からの観測で二次食を十分に検出可能だと考えられる。
WASP-122bについて
KELT-14bは、この報告の直前に Turner et al. (2015)によって、WASP-122bとして報告されたものと同一である。
観測データは、WASP-122bの発見公表前から取得し解析していたものなので、ここではKELT-14bとして取り扱う。

ただし、報告が先行したのはWASP-122bの方である。
(※参考記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.66 Turner et al. (2015) WASP-Southサーベイによる3つの惑星発見)

KELT-15系

KELT-15
中心星KELT-15の主なパラメータは以下のとおり。
質量:1.181太陽質量
半径:1.48太陽半径
有効温度:6003 K
金属量:[Fe/H] = 0.05
年齢:5.6 Gyr

TYC 8146-86-1という別名がある。

この恒星は視等級が 11.2であり、スペクトル型は G0である。
ヘルツシュプルング・ラッセル図上における、水平分枝星の"blue hook"周辺に位置しており、ヘルツシュプルングギャップの直前の段階である。
KELT-15b
惑星KELT-15bの主なパラメータは以下のとおり。
質量:0.91木星質量
半径:1.443木星半径
軌道周期:3.329441日
軌道離心率:e = 0のモデルと調和的

KELT-14bと同様に、膨張した半径を持つホットジュピターである。
この惑星も、地上望遠鏡からの観測で二次食を十分に検出可能だと考えられる。

系の進化

両者ともに、膨張した半径を持つホットジュピターである。
しかし、どちらも膨張した半径を持つための中心星からの日射量の経験的な閾値(Demory & Seager 2011など)よりも大きい日射を受けているため、観測された大きな半径は驚くべきことではない。
ただし、恒星の潮汐の Q値が小さい場合は、どちらも初めの ~ 100 Myrの間はこの閾値を下回っていたと考えられる。

KELT-15bは、恒星の潮汐の Q値が小さい場合を除くと、少なくとも今後数Gyrの間は生き残ることが出来る。
しかしKELT-14bは、~ 1 Gyr程度で中心星に落下すると考えられる。Q値が小さい値であれば落下までの時間はより短くなる。
従って、KELT-14bは中心星の準巨星段階を生き残ることが出来ないであろう。







別々の観測グループの率いるプロジェクトが、ほぼ同時に独立して同じ系外惑星を検出するということがあります。
典型的な例としては、HATNetプロジェクトとSuperWASPプロジェクトの競合で、どちらも地上望遠鏡からトランジット法で系外惑星の検出を目指すプロジェクトです。

通常は系外惑星の名前は発見プロジェクトにちなんだ名称が(暫定的に)付けられますが、両者の発見が独立して同時であった場合は、両者の名称を並べて表記することがあります。
例えば、WASP-11-HAT-P-10bHAT-P-27-WASP-40bなどです。
(表記には揺れがあります。)

その他にも、同じ重力マイクロレンズ法での惑星検出を行っている、MOAプロジェクトとOGLEプロジェクトでも発生します。
ただしこちらの場合は重力マイクロレンズ法による天体検出の特性上、競合関係にありつつも、お互いにアラートを出し合って協力しているのが特徴です。

今回はSuparWASPプロジェクトでWASP-122bとして先に発見が公表されていました。
発見報告論文が公開されたのは 2015年9月8日です。
一方のKELTプロジェクト側の発見報告論文が公開されたのは 2015年10月1日であり、1ヶ月弱の開きがあったことになります。


それにしても今回のこの論文、先にWASP-122bとして報告されて完成を焦ったのか、タイポが多かったような…
潮汐進化や膨張半径の日射の閾値の部分も、過去のKELTプロジェクトの文章とほぼ同一だったり。
(こちら→arXiv:1509.02323
あるいは、参考記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.65 Kuhn et al. (2015) KELT-Southによる系外惑星の初発見)

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