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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.04322
Currie et al. (2019)
No Clear, Direct Evidence for Multiple Protoplanets Orbiting LkCa 15: LkCa 15 bcd are Likely Inner Disk Signals
(LkCa 15 を公転する複数の原始惑星の明確な直接証拠は存在しない:LkCa 15 bcd はおそらく円盤内側のシグナルである)

概要

スパース開口マスキング干渉法 (sparse aperture-masking (SAM) interferometry) と Hα の微分撮像観測を用いた 2 つの研究で,若い太陽質量星 LkCa 15 の周りに複数の木星質量天体の検出が報告されている (LkCa 15b, c, d).これらは,新しく形成された若い惑星 (原始惑星) の初めての直接発見の主張である.

ここでは,すばる望遠鏡の Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Optics (SCExAO) を用いた新しい近赤外線直接撮像/分光観測と,Coronagraphic High Angular Resolution Imaging Spectrograph (CHARIS) (カリス,高コントラスト近赤外線面分光装置) の面分光観測,および Keck/NIRCs による複数時期の高いストレールレシオでの熱赤外線撮像観測を実施した.これらのデータは,過去の研究が LkCa 15 の原始惑星を同定したのと同じ波長と場所での初めての直接撮像での画像であり,従ってこれらの惑星の存在の初めての決定的な検証を提供するはずである.

しかし,今回の観測データ中にはこれらの惑星は見られなかった.代わりに,LkCa 15 bcd の存在主張と明るさ・位置が整合的な,ダスト円盤をトレースする広がった放射が解像された.このシグナルが公転する惑星によるものだとするフォワードモデルは,SCExAO/CHARIS と Keck/NIRC2 を合わせた観測データとは非整合であった.

内側円盤からの放射は,SAM での観測結果に対するより説得力のある説明である.またおそらくは,検出主張のある惑星からの Hα 放射についても内側円盤起源である可能性がある.

結論としては,この LkCa 15 系は少なくとも 1 つの未発見の木星質量天体を持っている可能性はあるものの,LkCa 15 を公転する複数の原始惑星が存在することを示す明確な直接証拠は,現在の所存在しない.

将来の観測でこの天体の周りに木星質量天体が存在することを同定するためには,内側円盤が検出され,その影響がモデル化され,観測結果から取り除かれ,惑星と識別可能であることが示される必要がある.
また,これまでに同様の惑星系で同定された原始惑星候補天体も,モデル化を通じて円盤の放射と明確に区別されるべきである.

LkCa 15 系について

原始惑星系円盤の検出

LkCa 15 は太陽質量の T Tauri 星 (おうし座T型星) で,100万-300万歳 の Taurus-Auriga 星形成領域の一員である (Kenyon et al. 2008).

この天体は,ガスが豊富な降着する原始惑星系円盤に取り囲まれている.
円盤は複数のダスト成分を持つ.有効温度 1400 K の高温な sub-au スケール (1 au 程度よりも小さいスケール) のダスト成分は広帯域での近赤外線の超過を生み出しており,また低温で重い外側のダストとは太陽系スケールの空隙で隔てられている.この空隙は木星質量程度の原始惑星によって形成された可能性がある (Espaillat t al. 2007など).

複数の原始惑星の発見主張

Kraus & Ireland (2012) はスパース開口マスキング干渉法 (SAM) を用いて,はっきりとしたダスト放射のギャップの中にある原始惑星 1 つを検出したと報告した.
同じく SAM を用いて,Sallum et al. (2015) は 25 au 以内に 3 つの原始惑星を検出したと報告した (LkCa 15b, c, d).

これらの報告により,LkCa 15 は複数の木星型原始惑星の徴候を示す天体となり,そのような系の初めての報告例となった.

しかし SAM データ中の円盤の closure phase signal は,これらの原始惑星を模倣するシグナルを発生させうる (Cieza et al. 2013,Kraus et al. 2013).この天体の散乱光に見られる星周環境は複雑であり,この中には明るい外側のダストのウォールが見られる (Thalmann et al. 2010, 2014).さらに,現在では内側のダスト円盤物質が可視光の波長と近赤外線の偏光観測で,惑星が存在するあたりまで解像された (Oh et al. 2016,Thalmann et al. 2016)

結果と議論

今回の観測では,過去に発見が報告されていた原始惑星の代わりに,直接撮像では広がった分解されていない内側円盤が検出された.

フォワードモデルでは,SCExAO のデータは K バンドの測光と位置天文で円盤放射と点源を区別する能力があることを示す.一方で内側の円盤からのシグナルは,Sallum et al. (2015) による LkCa 15b, c, d の合計のフラックス密度と同程度.そのため,Sallum et al. (2018) の SAM データは多波長で内側円盤を検出したものだろうということを強調する.

さらに,この天体の周囲の円盤構造の中に分解されているギャップとずれ,また sub-au 要素から存在が示唆される円盤のワープ構造 (Alencar et al. 2018) は,未発見の木星型惑星が存在する可能性を示唆している (Dong & Fung 2017).この未発見の惑星は,将来の装置で発見可能だろう.

その他の議論としては,LkCa 15b, c, d を実際には円盤放射の散乱光であるとみなすには赤すぎるという議論もある (Kraus & Ireland 2012,Ireland & Kraus 2014).しかしこの天体のような前遷移円盤 (pre-transitional disk) では,円盤の散乱光は非常に赤くなりうる.それは,sub-au スケールのダスト成分は近赤外線広帯域フラックスに大きく寄与し,また恒星光の大部分を受け取って再放射するからである (Mulders et al. 2013,Currie et al. 2017).そのため,LkCa 15 周りの 20 au スケールの円盤が「見る」のは,恒星が実際に放射するものよりもずっと赤い光である.

今回の解析は,LkCa 15b の MagAO の Hα 線での一回の観測で主張された検出を直接否定するものではない.これは厳密には候補天体として残る.

中心星自身が降着により Hα 波長で明るいため,円盤構造も Hα 光度は上昇するだろう.Mendigutia et al. (2018) は最近,この天体の Hα 波長での分光位置天文学的な特徴が惑星のものとは整合的ではないが,円盤のものとは整合的であることを指摘している.

現在のところ,LkCa 15 の周囲に複数の原始惑星が存在する明確な直接的な証拠は存在しない.この系は少なくとも 1 つの未発見の木星型惑星を持つという間接的な証拠は示している一方,明るい内側円盤の存在がこの未発見の惑星の検出を阻害する.将来の観測で LkCa 15 の周囲に惑星を検出するためには,内側円盤が解像され,その影響がモデル化され取り除かれ,惑星と識別できることが示される必要がある.

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